「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 クラインたか子の日記 | 日本のお姉さん

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 クラインたか子の日記

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 
平成20年(2008年)  3月28日(金曜日) 
通巻第2135号   (27日発行)

 上海の近郊にムスリムの聚落が出現していた
  北京五輪を控え、テロリストの巣窟となる懼れ、なきにしも非ず

***************************

上海郊外に義烏(イーウー)という町がある。世界的に有名な理由はこ
こが偽物工場のメッカだからだ。

観光客もグッチやディオールの偽物を買い込むためにわざわざやってく
る。あれほど著作権侵害を強調してやまないアメリカ人がバスツアーで
一番多いのも矛盾した話。インドやアラブからのバイヤーも多い。

異変は2年ほど前から始まった。アラブ系ムスリムが次々と中国へやってきて義烏に住み着いたのだ。資源重視外交を取る中国がアラブ諸国との交流を深化させようと留学生を大量に受け入れた動きに連動している。アラブ人ははやくも2千人に達しており数年以内には2万人にふくれあがる勢いだという(英誌『エコノミスト』、08年2月15日号)。

彼らは半年間有効のビジネスビザで中国に入り、安い繊維製品を買い付
けて中東の物流拠点であるドバイに輸出し、半年経つと香港へ出国して
ビザを更新して義烏に戻ってくる。中国を出る気配がまったくない。しかも中国国内のムスリムと連帯して新しいイスラム教のコミュニティを形成しつつある。北京は五輪を控えてイスラム過激派によるテロをもっとも警戒している。

昨秋の中国共産党第17回大会開催中は、北京市内随所に軍と警察に加え
84万人もの「私服」がテロ警戒のために配置された。また2月14日には新彊ウィグル自治区で軍と過激派の銃撃戦が展開され新華社によれば「テロリスト十八名を銃殺した」という事件がおきた。

こういう折に上海近辺にムスリムの集落が形成され、イスラム教徒がお
おっぴらな宗教儀式を繰り広げるとなると北京中央の心中は穏やかでは
ないだろう。そうした中国側の神経質をよそに上海空港には陸続としてアラブからの「バイヤー」が到着している。やがて大きな問題に発展する可能性が高い。
~~~~~~~~~~~~~

◎クラインたか子の日記
■2008/03/27 (木) 大丈夫かなあ、うまく取り込まれていないかなあ
■2008/03/26 (水) 小泉元総理の発案と寄付金で野口英世アフリカ賞

外国人参政権シンポで語られた問題の焦点
http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/522554/
によると
<<保守系の民間シンクタンク、国家基本問題研究所の
「外国人参政権」シンポジウムが三月二五日
衆院第2議員会館で開催され、約160人の参加者で満席となり、
立ち見の人もいました>>

とのこと。

一読しての感想は一つ

「アリの穴から堤も崩れる」
-=ホンの小さな欠陥から大事が起こる=
ではないが、
これでは表向き反対を唱えつつ、実は密かに賛成しているような
もの。

特に「参政権行使は国籍取得が条件」といいつつ
「特別永住者には特例帰化制度導入を」という例外事項を設け
「抜けアナ」を編み出していることです。

なるほど、戦後の日本はこうした戦術に、見事に引っ掛かって
現在の日本を作り上げてきてしまったのだなと思いました。

これに対し、会場から、
「帰化した人が日本に対する忠誠心を持つとは限らないという
見方がある」
「日本社会を壊す目的で帰化を望む人もいる」
「日本人となって政治家その他の要職について反日活動を
している例も実際にある
」といった趣旨の懸念が示された
ついての、
3氏の発言で、その疑問はさらに深まりました。
何しろ、日本には成りすまし工作員を取り締まる
諜報機関もなければ「スパイ防止法」もないわけですから。

例えば櫻井氏の発言、

「(日本人となって内部から日本を壊すなど)
そんなことを怖れてはいけない。どうぞどうぞおやりください、
私たちは論破してみせますよ、いつでも来いという気持ちを
持たなければいけない. 日本で生まれた日本人で、
立派なメディアに務めている人が、反日の論説を実際に書いて
いるということはいくらでもある


にしても一見正論を装いつつ
氏の対象は目に見える反日人間のみで、
実は、論破など不可能な、より巧妙かつ高度な方法での

水面下における 反日工作活動については全く触れて

おられない。
この不可解さ!

さらに3氏が異口同音で語っていた
「対外メッセージになる」というのも、

韓国側から出た「竹島は日本領土である」と言う証拠
http://jp.youtube.com/watch?v=zprTx9mIAIE&feature=related
日中ガス田協議 胡主席訪日でも「譲歩なし」 中国が決着に向け牽制
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080216/plc0802160019000-n1.htm  

では通用するはずがない。

このような情緒に訴えての賛成派に有利な発言を保守陣営人間までして
くれるのだから、目に見えない敵など、今頃ここぞとばかり膝をたたき
ほくそえんでいるのではないかしら。
 
■2008/03/26 (水) 小泉元総理の発案と寄付金で野口英世アフリカ賞

ケニアのウェレ博士ら2人に野口英世アフリカ賞
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080326-OYT1T00477.htm

<<両博士には各1億円が贈られるが、
このうち634万円は、同賞発案者の小泉元首相が
首相の退職金全額を寄付した>>

小泉氏、小沢氏をあてこすり?
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/080326/stt0803262332004-n1.htm

<<小泉純一郎元首相は26日夜、都内の料亭で自民党の
武部勤元幹事長らと会合を開き、自ら筆を執った
「その位(くらい)に在らざれば、その政(まつりごと)を謀らず」
との書を披露した。

小泉氏が好む論語の中の一節で、
「権限のある地位にいない人は、あれこれ口出しすべきではない」
といった意味がある。

武部氏は記者団に対し、
「執行部が心をあわせて福田康夫首相をバックアップするという
ことだ」と解説>>

~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 (2回目の掲載なので読んだ人はここは飛ばしてね。)
平成20年(2008年)  3月26日(水曜日) 弐
通巻第2133号   

 馬英九次期政権の何がまだ危険なのか?
  彼の「反日」姿勢は是正されたが、中華ナショナリズムは骨の髄まで
************************

 日本における馬英九(次期台湾総統)への危険視は急速に薄れた。当選を聞いたとき、多くの日本人は失望を禁じ得なかった。しかし国民党圧勝の現実を前にすれば、好むと好まざるとに関わらず、それが台湾民衆の選択である以上、受け入れざるを得ないだろう。
当選の翌日に小生は馬英九との記者会見で『反日』に関して直撃した。
http://www.ohmynews.co.jp/news/20080325/22545

 台湾人の思考回路は、率直に言って日本人のように短絡的二元的ではない。
論理的でもない。目の前の中国大陸の強大な市場と、軍事的脅威とアメリカへの心理的依存。しかも目先の利益と日常の経済と、日本への依存度がありながらも、しかも日本が好きだが、日本は政治的には何もしてくれないではないかとする失望と焦り。

 であるとすれば、当面の現状維持を台湾自らも勝ち取るには、民進党よりも、ベテラン政治を歩むほかの政党でもよい、という輻輳した思考回路から馬英九への期待が醸成された。
 60歳代以上の台湾人に強く残る危機感は、わかい台湾人にはない。
台湾人意識が希釈化したのではなく、むしろ台湾人のアイデンティティは、近年ますます強くなりながらも、それをうまく吸収できなかった民進党の選挙戦術のあやまりが、国民党を中華思想の政党と考える前に執権党の復活を許したのだ。

 産経新聞は3月26日朝刊トップで李登輝(前台湾総統)への独占インタビューを掲載し、「(統一をいう馬が新政権を担っても)『中国台湾統一』の加速はない」と明確に述べている。
 コラム「正論」でも岡崎久彦氏は同様な判断に立って、あの結果は「一種の楽観的見通し」の存在がある、と指摘している(産経、3月26日付け)。

 馬英九は中華ナショナリズムの信奉者であるため、危機に遭遇すると大きな判断ができない危険性が残存する。
しかしながら台湾民衆が「台湾人アイデンティティ」と同時に現状維持の選択をするという絶妙なセンスを見せたのも、馬英九が基本的に親米であり、反共という思想基盤のうえに、台湾の若者のあいだに急速に浸透したシビル意識(市民意識)を刺激しつつ、反日姿勢をすくなくともポーズとしては捨て去り、そのうえで北京と協商のみの交渉をしようとしたところにある。

ビジネスマンの強大な支持があったのも、ビジネス志向、株式市場の回復が優先だったからだろう。
国民党の新装なった本部へ行って驚いた。国民党本部は一流企業のオフィスのごとし、熱烈な蒋介石ファンの、独特な愛国的中華主義の雰囲気はなかった。

 また国民党の利益は北京の利益と大きく抵触するため、馬の目下の関心は国民党の利益擁護だから、早急なる中台統一はない、むしろ遠のくとみる李登輝、岡崎久彦両氏の分析は、それないに正しい。

台北滞在中に得た、信頼できる台湾筋情報では、馬英九は李登輝を尊敬しているという。李が最後の土壇場になるまで民進党支持を見送った理由のひとつに、馬も粛萬長(次期副総統)も国民党時代の自分の後輩、教え子にあたるからだ。


 ▲チベットの虐殺は遠い世界の出来事

 さて小生にとって最大の衝撃は大差による民進党の惨敗ではなかった。
あのチベットにおける中国共産党の暴虐が行われ、仏教徒への虐殺がおこなわれている最中に、台湾総統選挙の争点が梃子となって、チベット問題が逆風を起こさなかったという、あまりにも現実的な台湾選挙の反応だった。

チベットの血の弾圧は台湾でも大きく報道され、日本には伝わっていない残虐な映像がテレビに流れ、自由広場ではチベット人のハンガーストライキを支援する多くの台湾人の輪ができた。

 だが選挙結果にはすこしもチベット問題が影響したという形跡がない。
 筆者は考えた。随唐の時代、チベットは杜蕃といい、いまのチベットから青海省、四川省、甘粛省、峡西省などを勢力圏に、つまり当時は随唐とならぶか、版図としては随唐よりも広い帝国、一時は長安を軍事的に陥落させたほどの大国だった。
それゆえに漢族はチベットの王に姫君を嫁がせ、宥和をえた。そのときの恐怖心が漢族のDNAに残り、ロシアがいまも「タタールのくびき」を畏怖するように、「チベットのくびき」という歴史上の感覚が残るのではないか。それは漢族としての外省人には、確認するまでもなく顕著である。

しかもチベットは現実に中国共産党の軍事的支配下にあり、そうではない台湾とは根本の感覚が異なる。


 ▲北京五輪ボイコットを政治利用できるか

 たしかに馬英九は「五輪ボイコット」を叫んだ。
 精密にかれの発言をトレースすると、馬は次のように発言している。
 「もし、チベットにおける情況がさらに悪化し、弾圧が拡大するとすれば、我々は北京五輪ボイコットも選択肢の一つとして考慮の対象にする可能性を残しておく」。
 北京五輪ボイコットの選択の可能性を、すでにフランスの外務大臣が述べたが、米国のブッシュ政権は慎重である。
日本政府は考慮にさえいれていない。
 
 馬英九の持つ近未来の危険性は中台統一が究極の目的でありながらも、じつは小生らの質問に答えた次の発言のなかにある。
「次の四年、希望的にはあと八年間で、わたしの政権ができることは限られている。長期的戦略的な基礎を提示できるような努力をわたしは任期中にするが、理想の実現は簡単ではない(つまり中台統一は自分の政権では難しい)。だから当面は(ビジネスがしやすいように)中国との『和平協商協定』の締結を急ぎたい」。
 
このようにふとした発言に含まれている中華ナショナリズム。なぜ李登輝氏のように「中国が民主化されたあとで、話し合いをすればいい」と言えないのか。つまり馬の価値観のなかでは「民主」の上位に「中華ナショナリズム」があること、それが馬英九にまだ強固に残存する危険性なのである。
   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~