安倍前首相が西蔵政治学者と会談
安倍前首相が西蔵政治学者と会談
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阿比留 瑠比
チベット(西蔵)のラサで起きた僧侶らによる大規模騒乱事件に
関して、18ひ午前、安倍前首相がチベット出身の政治学者で、
この事件を中国による「文化的虐殺だ」と非難している
ダライ・ラマ14世の信頼が厚いペマ・ギャルポ氏(桐蔭横浜大
国際交流センター長)と会談しました。
親中派の福田政権下で、政府・与党のだれもまともにこの問題
を論じないのを見て、日本の政治家として意思表示をし、
日本の姿勢を発信してみせようとしたのでしょうか。
日本の前首相の行動だけに、中国側はさぞや嫌なことでしょうね。
《ペマ氏:たぶん中国からの本当の弾圧はこれからです。活動に
参加した人とか、別件逮捕でこの際、全部一緒にぶち込むのと
いうのが中国の魂胆だと思うし、おそらく北京オリンピック前に
わざわざ今回挑発して、それでおそらく戒厳令か何かを敷いて、
なるべく外の人を入れないというのが本当の魂胆じゃないかと
思うんです。ただ世論が、特に外国からの声がありますので、
まあ、そういうことができるかどうか
安倍氏:今ペマさんは、なかなかチベットには行けないのですか
ペマ氏:行けないですね。昨年、申請したんですけども、3日
前になって、「ダライ・ラマに近いから」という理由で(当局は)
断ってきたんです。
今まで49年間、毎年私も毎年3月10日なると、国内外でデモ
とかあったんですが。今年は特に、1つはオリンピックを通して、
やはり中国はチベットを最終的に中国の問題にしようして、
聖火ランナーにチベットを通過させ、それからオリンピックの
マスコットの4匹のうち2匹にチベットの動物を使っている。
それから、あとは経済改革の名の下で、例えば鉄道が延び
ましたけども、この鉄道はチベット人にとってはむしろ非常に
マイナス要素が多くて、
軍事的には中国がいつでも入ってくるし、それから中国人の
定住者が増えて、経済的にほとんど中国が搾取するような
状況になってきていて、それでああいうふうに中国の店なんか
に危害を加えたと思うんです。
ただ、北京政府はダライ・ラマ法王が外から何かやっている
ようなことを言ってますが、計画的であれば、民衆は最初
から石とか武器を持っていたはず何ですけども、そうじゃなく
て本当は中国の方から最初に、発砲して、それから中国の
軍用トラックがつっこんできて、それに対して
民衆が衝動的に参加してしまったのが、本当のところだと
思います。
安倍氏:世界の目が、届くようにしていくことが大切です。
ですから、世界のプレスを、報道をチベットに受け入れるように、
中国側に働きかけていかないといけない
ペマ氏:今回、先生方がマスコミの前で会ってくださることだ
けでも、チベット人にとって、そしてダライ・ラマ法王が平和的
に解決しようとしていることに対して、大きな力になります。
残念だけど、日本は特に中国といろいろ関係があって、他の
先進国に比べたら、多少中国問題に対して表現できない部分
があったと思うんですけども、先生方がこうやって関心をしめ
してくださることだけでも、大きな力だと思います。法王も大変
喜ばれると思います。(マスコミここまで)》
…安倍氏が言っているのは、ダライ・ラマ14世が国際調査団
の派遣を求めているのに対し、中国外務省の報道官が
「中国はこの問題を解決する能力と自信がある」と強調し、
国際調査団の受け入れを事実上、拒否したことへの反論
でしょうね。
この件については、高村外相も今朝の記者会見で、北京
五輪をボイコットする考えは「ない」とした上で、「なるべく
オープンにして、『確かに中国側の言う通り、中国は乱暴な
ことはしていないな』と、国際社会が分かるようにした方が
いいのではないか」と述べています。まあ、中国が「乱暴な
こと」をしていないわけがないと思いますが。
安倍氏とペマ氏の会談は約30分間行われ、その後、ペマ氏は
記者団に次のように語りました。
《記者:安倍前総理とはどのような話をしたのか
ペマ氏:私の方からは、もちろんこれはチベット問題といっても、
アジアの問題であり、世界の問題であって、世界各国の首
脳あるいは外務大臣級の方々、それから国連も関心を示し
ていますし、そういうことの今の現状をご報告申し上げて、
安倍前首相から関心を示していただくようにお願いした次第で
あります。
記者:情報が限られており、何が起きているのか分からない
部分もあるが、ペマさんとしては今どこが問題だと思いますか
ペマ氏:基本的には、過去半世紀以上、中国が一方的に
抑圧的な政策をやっても、これがチベットの人たちの心を
つかんでないというところだと思います。ですから、最終的
には、中国自体が過去50年以上の政策を変えて、
ダライ・ラマ法王と何らかの形で話し合いをしない限り、こ
の問題は次の50年、100年も同じだろうと思っています。
記者:日本政府に何を期待しますか
ペマ氏:日本政府は中国との関係においては他の国よりも、
いろいろ事情があると思うんですけども、しかし、このチベット
問題、人権問題、民族自決権などについては世界全体の
普遍的な価値観であるはずなので、それに対してダブル
スタンダードになってはならないと思う。北朝鮮に言えること
が何で中国に対して言えないのかということを私は日本政府
に申し上げたいですね。
記者:もう少し毅然とした対応をしてほしいと
ペマ氏:もちろんそうですね。別に中国に対して私も含めて、
敢えて挑発する必要はないと思いますけれども、しかし、
今行っている悪事に対して無関心であることは、マハトマ・
ガンジーの言葉を借りると、それは荷担することになる。
ですから、やはり日本政府も、今、特に今日あたりからチベットの
一般大衆に対して中国側から、デモ参加者などの理由で、
さまざまな圧力がかかって、牢屋にぶち込まれる人が多くなる
と思うんです。
そういうものに対して、本当に人権が人類共通に値する価値
観だということであれば、やはり日本政府も強い談話をぜひ
とも発表していただきたいと思っています。
記者:北京オリンピックの対応についてはどうするべきだと
お考えか
ペマ氏:オリンピックは本来は平和と聖なる祭りだと思うん
ですね。それが中国のやり方次第では「血の祭り」になる
可能性もあると思います。
中国政府は残念ながら、北京オリンピックを政治の道具とし
て使っている。
例えば、わざわざチベットまで聖火ランナーが行ったり、チベット
の動物をオリンピックのマスコットに使っているということは、
中国のチベット支配を正当化するために、既成事実をつくる
ためにやっている。
やはりそういう意味で中国は一日も早く、オリンピックはあくま
でも正々堂々と人々が競う場であって、平和の祭りである。
それを政治のために使うことはやめてもらいたいと思う。
記者:日本をはじめとする先進国は、人権の意識があるなら、
北京オリンピックをボイコットすべきとお考えか。
ペマ氏:ボイコットするか、しないかということは、それぞれの
人の良識の問題だと思います。特に一生懸命がんばって
練習している人たちにとっては非常に気の毒なことだけど、
しかし、一人の名誉、名声とそして人類の多くの人たちの
生きる権利、どっちが重いかということを考えて判断して
もらえればいいことだと思います。》
ペマ氏の、抑制的ではあるけれど、しかし同時に中国政府
に対する強い怒りがにじみ出ているようなコメントでした。
中国政府によるチベット支配、漢民族の土地化をまるで礼賛
するかのような特集番組を制作してきた某公共放送には本当
に反省してもらいたいと、さきほど国会でこの公共放送の
予算案の審議がなされているのを横目で見ながら考えました。
さて、次は、安倍氏自身による記者ブリーフです。
《安倍氏:今、報道が規制されている中で、大変な人権の抑圧
がなされている。死者の数は実態はもっと多いのではないか、
と心配しているという話でした。やはり世界各国調査が入る
こと、あるいは世界のプレスが入ることが、そうした当局による
行きすぎをチェック、阻止することにつながるので日本も協力
してもらいたいという話でしたので、私もしかるべき話をして
おきましょうと。政府にね、また個人的にも協力しましょうと
いうことを申し上げました。
ペマさんは、日本の人たちにもよく理解をしてもらえるように、
議員として活動をしてもらいたいとのことだったので、稲田
朋美がやっている「伝統と創造の会」(保守系若手議員
有志の会)でも緊急の会合を開いてペマさんの話をうかがう
ということだった。
私の方からは、中国はオリンピックを開催することが決まって
いるので、オリンピック開催国に相応しい対応をしてもらいた
いと思っていると申し上げた。価値観外交を私も総理として
展開してきたので、自由と民主主義と基本的人権と法の
支配をしっかり構築する。
この世界の普遍的な価値をアジアの中で広げていくべく日本
もリーダーシップを発揮する外交を展開しているので、この
問題もその一環の中で、チベットに住む人たちの人権が確保
されるように努力していきたい、という話をしました。
記者:ペマさんからオリンピックをボイコットすべきだという話は
なかったか
安倍氏:その話はなかったですね。まあ、時間もあまり
なかったんで、現状についての説明でした。》
…安倍氏が掲げた「価値観外交」、また麻生元外相が提唱
した「自由と繁栄の弧」は福田政権になってすでに 投げ捨て
られ、福田首相は代わりに「共鳴(シナジー)外交」とやらを
打ち出しています。
他民族を侵略して無理矢理版図に組み入れ、自治区とは
名ばかりの中央支配と伝統・文化の破壊を繰り返してきた国と
の共鳴を目指してどうするのか、本当にわけがわかりません。
もしかしたら福田氏は、自由と民主主義を否定して新たな秩序
を打ち立てたいという大きな野望でも持っている…わけない
ですね。
そういえば17日、自民党の伊吹幹事長は記者会見で、各種
世論調査で福田内閣の支持率が下げ止まらないことについ
て、「不支持の大きな原因はたぶん、指導力がないという
ことではないか」と、はっきり認めてしまいました。
伊吹氏は続けて「参院で(与党議席が)過半数に達していない
ので、円滑な政権運営ができない。今のような参院の状況
では、誰がやってもそのように映る」と付け加えましたが、
正直な気分が言葉に出てしまったのかもしれません。
でも、最近の世論調査を見ても、下落傾向は続いているとは
言っても時事通信(7~10日調査)で30・9%、共同通信(15、
16日調査)で33・4%と、まだ何とか3割ぐらいは福田内閣を
支持している人がいるようです。
私にとって、この「とてつもなく高い支持率」は本当に謎に
思えます。
日本社会は実は得点主義のではなく減点主義の社会で、
「何もしない、何もできない」ということは、意外と評価を低く
することにはつながらないのかと、ふと、そんなことを考えま
した。産経政治部記者。
2008/03/18 15:09