「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年) 3月18日(火曜日)
通巻第2129号 増大号
台湾を第二のチベット化するのか、と謝長廷陣営
世界各地でチベット弾圧抗議、北京は外向的に孤立の恐れ
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ダライラマ法王の呼びかけた「世界の権威ある期間による真相調査」を北京政府は蹴飛ばした。
ワシントンが「人権抑圧国家リスト」から中国を外した翌日に、中国のチベット虐殺事件が起きた。いわゆる「チベット暴動」は真相が闇のまま、情報の封鎖が中国の公安、情報当局によって続けられている。
世界に波紋が広がり、チベット民衆への血の弾圧に抗議する集会やデモ、中国大使館への抗議行動はインド、ネパールはもとより、ワシントン、NY、イタリア、フランスへ拡大し、台湾では大集会。日本でも抗議行動が行われた(下欄参照)。
「皇太子殿下のオリンピック期間中の御訪中はやめていただくべきではないか」とする声も猛烈な勢いで聞かれるようになった。
「台湾は第二のチベットになる」という危機感は台湾の民進党陣営に急速に広がり、圧勝ムードだった馬英九陣営は突如の反中国旋風にとまどっている。
昨日行われた櫻井よし子、田久保忠衛氏らの「国家基本問題研究所」発足パーティでは、ゲストとして登壇した許世楷(駐日台北経済文化代表処代表=日本大使に相当)が、はっきりと「台湾のチベット化」の懼れを述べた。
なお、4月10日に中国に抗議し、胡錦濤主席来日に注文をつける緊急の国民集会が開かれる。
午後六時から豊島公会堂。入場無料。詳しくは四月初旬の小誌にも発表します。
((((((( 書評 ))))))
古賀俊昭、土屋たかゆき著、勝岡寛次監修
『日本人なら知っておきたい近現代史50の検証』(展転社)
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簡単に説明せよと迫られるとかえって説明に困る常識がある。それでいて国民の過半が知らない。覚えようともしない。
この本を通読して、これなら中学生高校生でも分かる、いや、ひょっとしていまの大学生の知的レベルには、この初歩的な目覚めの本がいい、と思った。
大東亜戦争を太平洋戦争とまだ呼称している人、平和憲法をほんものの憲法だと勘違いしている人をみると、嗚呼情けないという感情的レベルでの反応を超えて、なんと洗脳というのは恐ろしいことか、米国が日本に押しつけて史観の偏向教育、情報操作が、これほど日本人を駄目にすることに成功したのも、歴史開闢以来はじめてのことだろう。
マッカーサーは日本が、あそこまで列強にはめられ、陰謀によって立ち上がらざるを得なかった過去を知っているから「日本にとって(大東亜戦争は)自衛の戦争だった」と言い残した。
「占領憲法も鉄砲を押しつけられている間はまもるふりもしようが、鉄砲の強制がとれたらすぐに日本は自主憲法を作るだろう」とマッカーサーは米国議会で証言した。
しかしマッカーサーの予言は当たらず、日本人の馬鹿さ加減に「いい加減にしろよ、日本人!」トあの世から叫んでいるのではないのか。
あのバタ臭い日米斡旋屋の白州次郎でさえ、こう書き残している。
「かくのごとくして、この敗戦最露出の憲法は生マル、『今に見ていろ』といふ気持ちおさえきれずに密かに涙す」(昭和21年3月7日の手記)。
保守派があまりに常識的前提として認識しており、一般の戦後派を説得する場合に理論的欠陥とおぼしきものは基本の基本の説明を抜かすことであった。
しかし常識さえない人たちに、説得する技量どころが、基本の基本から教え込まなければならないほどに、洗脳された教師に洗脳された親に育って、GHQの洗脳の残滓を引きずるのがいまの子供たち、だ。
現場で戦ってきた都会議員ふたりが、現場での左翼との理論的対決の苦労と呻吟の中から、テーマが選ばれ、これほどのわかりやすさが如何に大事かを執筆意図に込めて本書を編纂している。
血と汗と民族の涙を感じる本である。
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(読者の声1) 慰安婦問題とアメリカ軍の非行
「史実を世界に発信する会」 茂木弘道
昨年7月アメリカ下院で435人の議員のうちたった10名ほどの出席で慰安婦対日非難決議が採択された。
日本軍が組織的に若い女性を強制連行して慰安婦とし、性奴隷として虐待した、などという全くありもしない架空の前提に立ったものである。
何しろ、アメリカの公式文書に「「慰安婦」は売春婦あるいは職業的なキャンプフォロワーに他ならない。
月平均1500円の総収入を上げ(債務者の)マスターに750円を返還する。」( United States Office of War Information, Psychological Warfare Team Attached to U.S. Army Forces, India-Burma Theater) とはっきり書かれているのである。
因みに当時日本軍の軍曹の月給は30円であった。軍曹の25倍ほど月々稼いでいたのである。公式文書を全く無視して強制連行とか、性奴隷などと決議案で堂々と述べ立て、それがほとんど異論なく通過してしまうとは全く以って、呆れた話しである。
不当極まりないだけではなく、アメリカ人の知性の程度を疑わせるものであった。
さらにひどいことにアメリカ人の大多数は、アメリカ軍は慰安婦などとは無縁の清らかな軍であり、慰安所を開設したこと自体が日本軍の劣悪さの証明である、と素朴に信じていることだ。
そのために、強制連行などなかった、性奴隷など無かったという説明をはなから聞こうとしない。困ったものである。
米軍が占領下の日本で米軍専用売春施設を作らせて大々的に活用したことなど余りにもよく知られた事実なのであるが、そんなことも知らないのが大多数のアメリカ人なのだから、始末に終えない。
また慰安婦問題を持ち出している当の韓国でも、韓国政府は国連軍(実質は米軍)専用の慰安所を開設していた。
別にそんなことは秘密でもなんでもなく、たとえば東亜日報1961年9月14日号にはこの慰安所のことが詳しく報じられている。
ベトナムでも米軍では現地の売春婦を個々の兵士が利用したことは周知のことであるが、それだけではなかった。米軍は軍のキャンプ内で売春宿を営業させたのである。
しかもこの売春宿の管理は旅団長の直接指揮下で行なわれていたことが、有名なスーザン・ブラウンミラーのベストセラー本『アゲインスト・アワ・ウィル: 男・女・強姦』(ランダムハウス出版グループ)にでてくる。
軍の売春宿は師団長の決定により軍のキャンプ内に設置された。そしてその管理は旅団長の直接の指揮の下で行なわれた。明らかにベトナムにおける軍の売春宿は統合参謀本部長のウェストもーランド、サイゴンのアメリカ大使館、ペンタゴンの了解の下で置かれていたものである。 (p.95)
軍管理の慰安所に他ならない。
こうした軍売春所においてひどい経験をした売春婦が数多くいたこともまた事実である。三、四十年前にアメリカ軍はこういうことをやっていながら、六十年以上も前の日本軍のことをどうのこうのとはあきれ果てた話である。
しかも事実を全く無視したデマ宣伝を鵜呑みにして、われわれの歴史事実を基にした抗議に耳を傾けることもせずに、決議したのである。
話はそこで終わるわけではない。
日本を軍事占領した1945年から1952年までの7年間において、米軍は数々の犯罪非行を行なった。
プレス・コードに基づく厳重な検閲のために、米兵の殺人、暴行、強姦を書くことが禁じられていた。
「大きい男の強姦」といった表現でかろうじてこれ等のものが部分的に報じられたのみであった。漠然とかなりの犯罪があったと想像されているが、実はかなり詳しい統計も存在しているので、ここに紹介する。
調達庁労働組合が昭和34年に都道府県、市町村、警察および報道機関の協力を得て行なったもので、『防衛施設庁史第2巻』に収録されているものである。
昭和20年から27年までの間に人身被害にあった人で、申告を行なったものに限られている。強姦は含まれていない。
総数でいうと、死亡:3738件、傷害:2071件、療養:3035件となっている。
申告されないものを含めると傷害、療養に相当する被害はこの倍近くに達したかもしれない。
強姦も、傷害、療養よりも少なかったとは考えられない。
すなわち万という数にのぼった可能性が高い。米軍専用慰安施設があっての、このありさまである。
もしこれがなかったとするとぞっとする話である。慰安所というものが決してそれ自体非人間的なものではなく、必要悪とでもう言うべきものであることがよくわかるであろう。
平和が回復した後にも4千人近くの殺人を行い万に近い傷害・暴行さらには強姦を日本で行なったのが米軍である、ということをアメリカ人はよくよく認識すべきである。
これは慰安婦決議のような事実に基づかない架空の話しではなく、明確な裏づけのある事実なのである。
このことを知っても、あの不当な慰安婦決議の取り消しを行なうべきであると考えないとしたら、アメリカ人の良心というものを疑わざるをえなくなるだろう。そんなアメリカ人ばかりではない、と私は強く確信しているのだが。
中国大使館、外務省前で抗議デモ
日本の良心代表し「チベット救え」を訴える
ブログ「台湾は日本の生命線!」より
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-323.html
※ブログでは写真も掲載されています。
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三月十七日、都内では中国大使館に対する、チベット人の平和デモへの鎮圧行動への抗議デモが、自由チベット協議会、チベット問題を考える会、主権回復を目指す会、NPO外国人犯罪追放運動、せと弘幸Blog『日本よ何処へ』などの呼びかけで行われ、私も参加した。
十一時三十分、六本木ヒルズ前に集合したデモ隊は、まずはそこで集会を約三十分間行い、弁士たちが代わる代わる中国政府の残虐なチベット支配の実態を語るとともに、チベット独立支持、北京オリンピックボイコットなどを訴えた。
また中国大使館(崔天凱大使)に突きつける抗議文も読み上げられた。
そこには「凶悪シナ人の弾圧に怯むことなく、死をもって民族の自尊心を求めるチベット国民に日本国民は最大限の敬意を表すると共に、民族自決(独立)を希求する戦いを断固支持する」「人も文化も自然も根底から破壊する併合・侵略はシナ人の民族的残忍さを示して余りある」「悪の帝国のやりたい放題を、日本国民と世界はもはや許すことはできない」などとあった。
平日であるにもかかわらず参加者の数は約七十名に及んだ。デモ初参加の人が大勢いたそうだ。またNHK、日本テレビ、TBSなどテレビ各局のカメラもずらりと並ぶなど(台湾のテレビ局も)、この行動への関心の高さがうかがえた。
そしてその後は数百メートル離れた中国大使館に向かってデモ行進を開始。「中共のチベット人虐殺を許すな」「中共はチベットから出て行け」と言ったシュプレヒコールを叫びながら前進した。
そして大使館の手前で待ち構えていたのが警官隊だった。ここでデモ隊との激しい衝突が発生。もっとも「衝突」とは言っても、「これから先に進むな」との指示にはもちろん従いようにないデモ隊を、警官隊が力づくで押し止めたと言う話なのだが、それほど警察側は緊張して大使館を警護しているのだった。
前へ進めないデモ隊の前を若い二人の中国人の女が、せせら笑いを見せながら通り過ぎて行った。チベット人を「同胞」「同じ中華民族」などと言いながら、その虐殺が現実に起こっていると言うのに、この民族には血も涙もないのか。
結局、代表者五名(そして報道関係者たち)だけが大使館前まで行くことが「許可」された。ところが日章旗とチベット国旗を携えてはならないと言うので、これにデモ隊は激怒した。要するに竿を二本も携えて行くことは許さない方針らしいが、デモ隊から見れば「これは中国を刺激するなと言うことか」「それでも日本の警察か」「そのような姿勢で中国人犯罪者を見逃しているのか」となるのである。ここまで言われて警官たちは誇りを傷つけられたのだろう。硬い表情で悔しそうに押し黙っていた。なかにはその通りだと頷いて見せる者もいた。現場責任者も「個人的にはわかっている(そのような規制はしたくない)」と言っていた。
代表者たちは抗議文を携えて行ったが、もちろん大使館員は姿を現さず、抗議文はポストに投函された。中国大使館に対して日本人に許されるのはこの程度のことなのだ。それもこれも警察のため、と言うより、それを動かす日本政府のためである。
その後、デモ隊は外務省前へ移動。中国をはっきりと非難することのできない高村外務大臣および同省を四十~五十分間にわたって糾弾した。
ここでも警官隊は正門前に向かおうとする約四十名のデモ隊を阻止し、やや離れた歩道の傍らに押し込めた。現地には台湾人など海外の記者などもおり、「このようにチベット人虐殺に抗議するデモを押さえつける光景が世界で報道されれば、日本の名誉が傷つく」などとも叫ばれた。
「外務省が黙っている間、今でもチベット人らは迫害を受けているのだ」「外務省報道官は平和デモを行うチベット人に自制を求めたが、外務省が行うべきは中国政府を非難し、その弾圧政策をやめさせることだ」との声も上がったが、しかしこの警官隊の配置こそ、外務省の「返答」なのである。
デモ隊はさらに衆参の外交委員長に中国を非難せよとの要請文を手渡すため、衆議院会館と参議院会館に向かった。そして二つの会館の前で中国に対して無為無策の国会議員たちを糾弾し、四時頃に解散した。
中国に阿りチベット人への同情心一つすら表明できない政府、議員に対し、我々は全国の心ある国民を代表する気持ちで本日のデモを行ったのだったが、それは間違いないはずだ。
チベット問題に関心を持ち、中国政府、そしてそれに媚び諂う日本の政府、議員に糾弾の声を上げて行こう。日本人は生まれ変わらなければ、中国覇権主義からチベット、そしてアジア全体を救うことなどできないのである。
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(お知らせ) 本日(3月18日)の桜チャンネル「報道ワイド」にチベット問題で宮崎が出演します。
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(サイト情報) 米下院の科学技術委員会の設立50周年を記念した公聴会で、ビル・ゲイツ氏が技術革新と米国の競争力を証言した。
(1)ゲイツ会長のあらかじめ準備された証言内容
Written Witness of William H. Gates, March 12, 2008 (PDF 20p.)
http://democrats.science.house.gov/Media/File/Commdocs/hearings/2008/Full/12mar/gates_testimony_12mar08.pdf
(2)質疑応答を含む公聴会記録、March 12, 2008
http://www.microsoft.com/Presspass/exec/billg/speeches/2008/congress.mspx
((( 宮崎正弘の新刊予告 )))
黄文雄氏との共著
『世界が仰天した中国の野蛮』(徳間書店、3月28日発売予定、予価1600円)
((( 宮崎正弘のロングセラーズ )))
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url?%5Fencoding=UTF8&search-type=ss&index=books-jp&field-author=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%20%E6%AD%A3%E5%BC%98
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 (KKベストセラーズ、1680円)
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=32009305
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』 (徳間書店、1680円)
http://www.business-i.jp/news/book-page/debut/200710130007o.nwc
(書評と申し込み方法 ↑)
『2008年 世界大動乱』 (改訂最新版、1680円。並木書房)
『世界“新”資源戦争』 (阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『中国から日本企業は撤退せよ!』 (阪急コミュニケーションズ刊)
『出身地でわかる中国人』 (PHP新書)
『三島由紀夫の現場』 (並木書房)
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