「自治体金融改革」を行わなかったことのツケが、今般、新東京銀行の件で図らずも露呈した | 日本のお姉さん

「自治体金融改革」を行わなかったことのツケが、今般、新東京銀行の件で図らずも露呈した

新東京銀行が大変なことになったことについて

この問題をどう考えればいいのか、分からなかったので

他人の意見を読んでみるというのは、勉強になった。以前、

中小企業にどこの銀行も出し渋って金を貸さないという話を

聞いた時に、「では、市町村が、そんな気の毒な中小企業を

助ける特別な銀行を作ったらどうか。」などとわたしも

考えたことがあるので、石原都知事が気の毒で仕方が無い。


東京都は、ちゃんとした銀行を作ったのだから、いずれ

日本政府が北朝鮮人専門の銀行を救ったように、

新東京銀行も救うことになるのだろうと思う。


ちゃんとした銀行なら、苦境に落ちいったら、

みんなの税金で立て直すのは当たり前のようだから、今度も

立て直してくれるだろう。北朝鮮人の銀行には日本政府は

3兆円もかけたが、結局、その金も北朝鮮は自分の国に

持っていったらしい。新東京銀行もなんとか、なるだろう。



土居丈朗  :慶應義塾大学経済学部准教授の

「自治体本体が関与する形で直接融資を行っているものも多く

あり、それらには決して問題なしとはいえないものも多々

あります。ちなみに、自治体の貸出残高は2006年度末で

約100兆円(日本銀行・資金循環統計)あります

(ただし、この融資先分類は不明です)。」

という部分は、恐いと感じた。

自治体は、ヤクザに貸しているのではないか?

日本人が貯めたお金は、そうやってヤクザが借りて、そのまま

ヤクザのポケットに消えていっているのではないか?

いろいろ想像して恐くなった。


土居丈朗  :慶應義塾大学経済学部准教授の

「やはり、国の政策金融機関が撤退するところへ、

自治体は侵入すべきではありません。そこは民間に

委ねるべきところです。」と言う意見が正しいのだろう。
早めに潰した方が、あとで、日本政府が立て直す時に

税金の投入額が少ないかもしれない。

でも、北朝鮮人の銀行に3兆円も国民の税金を

平気で出すような国なんだから、新東京銀行も平気で

立てなおせるだろう。何と言っても、日本人の銀行なんだから。

でも、マスコミに入り込んでいる在日韓国・朝鮮人が

石原氏を叩いて粉々にしてしまうかもね。

by日本のお姉さん

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村上龍、金融経済の専門家たちに聞く 

 ■Q:902

 新銀行東京が巨額の損失を出し、都が救済することになった

ようです。この問題をどう考えればいいのでしょうか。
※JMMで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見で

あり、各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
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 ■ 真壁昭夫  :信州大学経済学部教授

 新銀行東京は、石原都知事主導で2005年4月に設立された

新しい金融機関です。
設立の主な目的は、しっかりした担保を持たず、資金繰りに窮する

中小企業を支援することでした。1997年11月、わが国で金融

システム不安が発生し、既存の金融機関が、中小企業中心に

“貸し渋り”や“貸し剥がし”を行なったことに対する、救済策の

一つとしての意図が強かったと思います。しかも、与信審査の

手続きを簡素化することで、迅速に資金ニーズに対応することを、

主なセールスポイントの一つにしていました。

 実際に業務が始まってみると、当初の予想通りにはオペレー

ションが進まなかったようです。貸出金の焦げ付きは予想水準

を上回ったこともあり、新銀行東京の収益状況は悪化が

進んでいます。2007年11月の中間発表時点では、累積

赤字が936億円に上っています。設立当初の資本金は

1200億円(内、東京都の出資分は1000億円)ですから、

出資金の約8割を食いつぶしたことになります。今後、業務の
建て直しのために、東京都は400億円の追加出資をすることを

決めたようです。

 業績悪化の主な原因として、融資審査の甘さを指摘する

金融専門家が多いようです。
企業の財務体力が相対的に弱い中小企業に対して貸出しを

行なうわけですから、本来、企業を見る専門的知識と審査

能力が必要になるのですが、迅速に、中小企業の資金繰
りを支援することに注意が行き過ぎて、十分な審査手続きが

踏まれないことがあったといわれています。

また、組織内部に、十分な企業審査の人員やノウハウが

蓄積されていなかったとの指摘もあります。

 確かに現在のように動きが早い時代では、企業を評価する

ことの難易度は上昇していると思います。特に、中小企業は

身軽で高い機動力を有する一方、資本の蓄積が進んでいない

企業が多く、一般的に財務体力はそれほど強力でないことが

多いと思います。そうした企業に、迅速に資金を貸し付け、

それによって着実に収益を上げることは口で言うほど簡単な

ことではないはずです。また、わが国では、伝統的に金利

水準が低く抑えられていることも、同銀行の収益性に

マイナスの影響を及ぼしたと考えられます。

 もう一つ気になるのは、同行の貸出に占める中小企業比率

が徐々に低下する傾向があることです。設立当初、貸出し

総額に占める中小企業比率は6割を越えていたといわれて

いますが、2007年9月末時点では、当該比率は半分以下に

なっているとの見方があります。こうした傾向が続くようだと、

この銀行を新たに設立した意義は低下すると思います。

設立の目的であった、中小企業の資金繰りを支援するという

大命題がかすんでしまう可能性があるからです。

 新銀行東京の業績悪化に伴って、海外の格付け会社がつけ

る信用格付けは引き下げられており、金融マーケットの中でも、

その信用力は万全とはいえないかもしれません。東京都が

新銀行東京への支援の姿勢を変えない限り、同行が経営破

たんすると思う人は少ないでしょうが、そうした金融機関が

東京都の信用力によって事業を続けること自体、それほど大

きな合理性があるとは考えにくいと思います。むしろ、中小企
業金融も民間の金融機関に任せ、何か大きな支障や問題が

発生するケースに限定して、東京都が介入する方が合理性は

高いと考えます。

 さらに、今回、東京都が追加出資を行うことに関しても多くの

反対意見があるようです。新銀行東京のビジネスモデルを

考えると、組織内の与信審査などの能力を改善しない限り、

今後、着実に収益を上げることは難しいとの見方があります。

そうしたビジネスモデルが構築できる目処が立たなければ、

新銀行東京を早い段階でご破算にするのも一つの選択肢

だとの意見も出ているようです。わが国経済が低迷期にあった
とき、追加で融資をしないと破綻してしまう為、追加融資を

続けざるを得なかった状況と同じにはして欲しくないと思います。

信州大学経済学部教授:真壁昭夫

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 ■ 土居丈朗  :慶應義塾大学経済学部准教授

 新銀行東京は、自治体の中小企業金融への関与、第3

セクターへの出資、という従来からある地方行財政の手段を

当然のように用いて設立したのですが、それら2つに
まつわる既往の失敗を踏まえなかったために、運命づけら

れたかのように窮地に追い込まれた、と見ることができます。

 そもそも、我が国の地方行財政制度の中で、自治体が

中小企業への融資を行うことが公然と認められています。

しかし、新銀行東京の件を契機に、自治体の中小企業金
融への関与が果たして妥当なのかを根源的に見直さなけ

ればならないと考えます。新銀行東京は、銀行法に基づいて

営業をしているがゆえに(ずさんな融資があるといえども)

より厳格な経営を求められている中で、今般の問題が浮上

しました。しかし、
自治体本体が関与する形で直接融資を行っているものも

多くあり、それらには決して問題なしとはいえないものも多々

あります。ちなみに、自治体の貸出残高は2006年度末で

約100兆円(日本銀行・資金循環統計)あります

(ただし、この融資先分類は不明です)。

 2005年9月に刊行された、拙稿「公的金融改革の

方向性」(伊藤隆敏・H.パトリック・D.ワインシュタイン編

『ポスト平成不況の日本経済』日本経済新聞社刊所収)で、

新銀行東京について私は次のように言及しました。

その当時は、国の政策金融改革がちょうどこれから本格的に

議論され始める時期でした。

 我が国において、中小企業金融への公的関与は、国営の

公的金融機関だけでなく、都道府県や市町村も行っています

つまり、地方自治体が、制度融資として中小企業等に低利で

直接融資を行っています。そうした背景もあって、新設された

「新銀行東京」に東京都が出資しました。新銀行東京の

新設理由として、東京都下にある中小企業に対して、

民間金融機関が貸し渋ったり、国営の公的金融機関の融資が

不十分だったりすることを挙げました。しかし、それは本来的に

東京都がすべき仕事でしょうか。新設理由に挙げた状況は、

東京都だけに限ったことではなく、同じようなことは他の道府県

でも起きています。その観点からいえば、そうした中小企業

金融の状況に対して、もし公的に関与が必要であるなら、

それは地方自治体レベルで行うべきものではなく、

国家レベルで行うべきことである場合が多いと考えられます。

おまけに、
地方自治体の融資業務の能力が、国営の公的金融機関や

民間金融機関よりも特に優れているという明確な事実は

存在しません。このように、日本における中小企業金融の
公的関与は、国と地方自治体の役割分担が不明確なままに

本来誰が担うのが適切かを熟考することなく政治的要請に

導かれるままに行われているのが実情です。

 国営の公的金融機関は、政策金融改革によって、組織改

編や業務範囲の限定が行われました。しかし、地方自治体

の金融業務も、必要に応じて縮小・廃止することが求めら

れます。それでもなお公的な関与が必要ならば、原則として、

どの地域であっても同じように受けられる公的関与の便益が

あるものについては、自治体より国の機関が担うべきでしょう。

 2年半前に、私はそうした議論を提起しましたが、結局国の

政策金融改革が行われたまででとどまり、自治体関連の

「金融改革」は手付かずのまま今日に至りました。
「自治体金融改革」を行わなかったことのツケが、今般、

新東京銀行の件で図らずも露呈したといえるでしょう。

 自治体はどういう意義をもって中小企業金融に関与する

必要があるのでしょうか。
そもそも、国の政策金融機関は、「官から民へ」と範囲を限定

する方向で改革を進めました。せっかく国が官業の民間

開放を進めたのに、その矢先、自治体がこれまで国の

政策金融機関が営んでいたところへ乗り込んでいくのでは、

政策金融改革の趣旨に反します。やはり、国の政策金融

機関が撤退するところへ、自治体は侵入すべきでは

ありません。そこは民間に委ねるべきところです。

 自治体には、政策手段として、融資以外にも、補助金、

さらには地方税制を活用する方法(固定資産税の減免等)が

あります。地元経済活性化のために、中小企業に対
して特別な政策的配慮を講じる必要があるなら、融資という

有償資金で行う必然性はありません。有償資金となると、

償還確実性を担保すべく厳格な審査を要します。しかし、

自治体には金融機関ではないので民間並みの審査能力は

ありません。それでもなお、有償資金で関与する必要がある

ものがたくさんあるかは、疑問です。

 自治体が自らの審査能力がないとなると、新銀行東京の

ように、いわば外部委託する方法が浮上します。新銀行東京

への出資も、従来から認められている第3セクターへの出資と

同様に行われました。これまで、自治体は第3セクターに出資

する形で、金融分野以外でも色々と関与してきました。

新銀行東京の現状は、これまでの第3セクターでの失敗の同じ

轍を踏んだ状況といえるでしょう。自治体と民間がともに出資
し、人材も出し合う形で、うまくいけば官民の協働となるのですが、

悪い場合では自治体も民間も責任を押し付けあう無責任体制

になります。これは、各地の失敗した第3セクターの大半で

見られた現象ですが、新銀行東京も、どうやらそうした現状に
陥っているようです。そうした現状をみれば、新銀行東京は

これまでの第3セクターの失敗を踏まえていなかったと

言わざるを得ません。

 また、財政における「出資金」の政策意図について、政策

当局と納税者との間にある認識の齟齬も、今般の議論の

紛糾でみられます。政策当局にとっての「出資金」は、うまく

利益が上がれば配当(自治体への納付金)がもらえ、収支が均

衡していればいわば「(期限の定めのない)無利子貸付金」と

見ることができ、損失が出れば損失(減資)分は後付け解釈で

「補助金」のごとく渡し切りにする、というオプションがある政策

段、と認識できます。「出資金」は、うまくいってよし、悪く

なっても(渡し切りのお金として処理するから)よし、という

都合のよい政策手段なのです。
しかし、納税者は、ある政策判断で出資したとして、その出資

でうまくいかないならば、そもそもの政策判断の責任が問わ

れる、と見ます。ここに、出資をめぐる認識の齟齬があると

思います。

 最終的には、都議会にて多数決で決まるとはいえ、これを

契機に、「自治体金融改革」を本格的に行うことが望まれ

ます。自治体が本当に中小企業金融に関与するべきなのか、

中小企業への支援策として出資・融資以外の政策手段で

効率的・効果的なものは本当にないのか、厳しく精査すべき

と考えます。例えば、自治体が関与する形で行われている

融資の融資先も、金融再生法等で定められた基準に従って

債権状況を把握することが挙げられます。そうすることで、

自治体財政の健全化にも寄与するのです。
           慶應義塾大学経済学部准教授:土居丈朗
                  <
http://www.econ.keio.ac.jp/staff/tdoi/ >

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 ■ 金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務

「火事と喧嘩は江戸の華」と申しますが、2003年の都知事

選挙の公約として石原氏が新銀行設立の構想を掲げ、

銀行業界に喧嘩状を突き付けたことに対して喝采を送った

都民も当時少なくなかったのは事実でしょう。

 一方で、新銀行東京の巨額損失の発生という現実を前に

して、新銀行設立についての是非を問う声が現在強まって

いるのも当然と言えます。この新銀行設立についての意思

決定については、新銀行の存在意義とビジネスモデルの

成算についての当時の判断の妥当性が問われています。

 新銀行の存在意義としては、既存の銀行業務との重複の

少ない、中小企業向けの融資業務の中でも(1)事業歴が短く、

財務状況も弱く、既存の銀行から融資の提供を
受けられない小規模事業者などを対象とした、

(2)無担保・第三者保証不要といった既存の銀行では提供

しない条件での融資、といった分野に特化することで正当化さ
れていました。

 しかし、新銀行設立が都知事選挙の公約とされた2003年

当時は、民間の銀行による「貸し渋り」や「貸し剥がし」と

いった信用収縮を批判する論調が強かったことも事実です。

新銀行設立の建前とは別に、中小企業向けの融資の分野に

無担保・第三者保証不要といったスキームを持ち込み、

既存の銀行業務と積極的に競合することが暗に期待されて

いたというのは必ずしも穿ち過ぎの見方ともいえません。

 むしろ、ここで事実として重要なのは、銀行業界は新銀行に

対して「公的資金を裏付けとした民間金融機関に対する競合」

とする見方を変えず、石原氏の下で東京都は外形標準課税の

問題などを通して銀行業界に対する批判と対決姿勢を

強めていたこともあり、強硬な拒絶姿勢を取ったことです。

結局、銀行業界との関係は修復されることなく、新銀行は

2005年の開業時点で、全銀協非加盟、ATM未接続という

形で発足することになります。

 一方、ビジネスモデルの成算については、新銀行の当初の

ビジネスモデルに掲げられたスコアリングモデルによる融資

審査手法の採用について、見通しの甘さを指摘す
る意見が集まっています。しかし、この点については、

小口融資を中心に審査コストを抑え効率的な営業を目指す

方向性としては必ずしも誤りとは言えないと考えます。

 もともと、収益性は高いものの一件当たりの収益に比較して

業務負担の大きい中小企業向けなど小口金融の分野では、

融資審査の徹底したマニュアル化が必須とされています。

財務情報などの定量評価、調査員による定性面での評価に

よるスコアリングなどを通じて、信用情報を数値化してデータを

蓄積し活用することが、ビジネスを効率的に展開していく上でも、

金融機関全体としてのリスク量を把握する上でも重要と
なります。実際、大手都銀でも、中小企業向け融資の分野での

スコアリングモデルの実用化が進んでいるとされています。

 ただし、こうしたスコアリングモデルは信頼性の高いデータ・

ベースの蓄積が前提であり、本来であれば、既存のビジネス

からデータの蓄積を進め、それをもとにモデルを実用化し、

対象を比較的リスクの低い融資対象先から段階的にハイ

リスクな対象先へ拡大していくのが妥当な導入方法といえます。

新銀行としては、開業当初から融資実務経験者を採用し、

定性的な融資判断と合わせてスコアリングモデルの立ち上げ
と熟成を図る方針
とすることが、ビジネスの安定性を確保する

上では適切だったといえるでしょう。

 しかしながら、新銀行の発足に当たって銀行業界と対立を

生じたこともあり、既存の金融機関のノウハウや情報の蓄積へ

もアクセスがなく、融資実務経験者の確保も困難な事情から、

独自のスコアリングモデルに傾斜していたとも推察されます。

 このように、新銀行の設立を既存の金融機関との対立関係の

中でしか果たせなかったことは、新銀行のビジネスモデルの

成否についても大きな影響を与えていますし、
そこに石原氏の政治スタイルの限界があったと言えます。

 残念ながら結果としては「喧嘩」には負けた以上、負けを

認める必要があり、民間の金融機関の支援を前提に事態の

収拾を図るのが筋だと考えます。同時に、新銀行が
目指した中小企業向けの融資のビジネスモデル、事業者の

返済能力を客観的に評価し信用力に応じた金利で融資を

提供する、を既存の金融機関の機能の中で実現・強化し
ていくことの重要性が認識され、引き継がれることも期待

します。

 具体的には、中小企業の財務、融資・返済実績などの

データ・ベースを共同で整備する、(個別企業名などの属性は

除いて)データ・ベースを研究機関などに提供しスコアリング

モデルの開発を行わせる、などの取り組みが銀行の業界

団体を中心に行われることを期待します。将来的には、第三者

機関によって事業者毎にスコアが算出され、各事業者は

そのスコアによって自社の信用度に対する評価を把握できる

など、融資業務の分野での透明性(融資実行の可否判断や

適用金利の基準)が高まることが望ましいと考えます。

「勝者」となった既存の金融機関の度量が問われるところ

だと思います。

        外資系運用会社 企画・営業部門勤務:金井伸郎

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 ■ 津田栄   :経済評論家

 新銀行東京は、2期目の都知事選で東京都の石原知事は

資金繰りに苦しんでいる中小企業を救済するために新銀行を

創設するという公約を掲げて当選し、それを受けて2005年

設立されたものです。その当時の2003年春は、デフレ状況の

もとで大手銀行をはじめとする民間金融機関が不良債権処理

に集中していて中小企業の資金調達に応えられないばかりか、

貸し渋り、貸し剥がしを進めている時でした

 しかし、その結果として、今年になって回収不能になった

不良債権が285億円に達し、このままでいけば自己資本

比率が国内行の健全性基準である4%を下回り、今3月期末

で126億円の赤字、累積損失は1016億円になると予想

され、しかも昨年末時点で融資した中小企業の約3割、

4000社弱が債務超過に陥っており、今後そこへの貸付が

不良債権化して損失が拡大する恐れがあることなど、その経営

状況は惨憺たるものとなっています。これに対して、石原

都知事は400億円の追加出資の承認を議会に要請して

います。

 こうした一連の動きをみていると、行政のいろいろな問題が

見て取れます。まず、一旦決まったことは変えられないという

硬直的な行政の構造的な体質です。それは、2003年

当時石原都知事が憂慮したように中小企業は金融機関の

貸し渋りなどで資金繰りに苦慮する状況でしたが、新銀行

東京設立の決定から実際の設立までの間に、経済が回復に

向かい、民間金融機関の不良債権処理の峠を越えて、

貸し渋り、貸し剥がしが下火になり

中小企業の資金繰りに好転の兆しが見えて新銀行のニーズ

が低下したにもかかわらず、環境の変化を無視して設立に

突っ走ってしまったことに表れています。

そして、それは道路建設やダム建設など公共事業に起きる

問題と同じです。

 次に、官が民業に乗り出していくと失敗する問題です。

資金繰りで苦しんでいる中小企業を見て銀行を作って何とか

助けたいという石原都知事の純粋な発想は理解できますが、

それを実際行うとなると銀行経営の難しさからそう単純に

いきません。それを融資のノウハウもない行政が自らやろうと

すると、民間金融機関の協力も得て民間からの融資ノウハウ

やスキルを取り込み、慎重で長期にわたる経験を通じて

融資などに関するデータが蓄積されることが必要です。

しかも、中小企業へ無担保・無保証融資というある意味究極的

な融資を行うならば、経営者の経営能力や事業の将来性の見
極め能力が民間金融機関以上に必要なはずです。

 しかし、民間からの協力が得られず、融資ノウハウもない

なかで採用されたのは、財務データを入力することで信用

リスクを計算して融資判断をするスコアリングモデルという

手法です。しかも、中小企業の資金繰り優先から、経営者

面談を含めて決算書提出後3日以内で融資の可否決定を

するというスピード処理でした。その背景には、無担保・

無保証融資、3日間での審査を前提として、3年後の「融資・

保証残高9300億円」などのマスタープランが存在し、

民業にとって最も重要であるリスクと収益を度外視して

そうした融資をこなしていくことそのものが重要であった

からだといえます。その結果として、甘い融資審査となり、

民間でも貸すことを躊躇した危ない中小企業に貸し出すことに

なってしまいました。それは、業務経験がなくてもデータで

基準を満たせば自動的に判断して処理していくマニュアル

行政そのものであり、結局、民業をそうしたマニュアル行政で

行えば自ずと立ち行かなくなるのは当然といえます。

 三点目は、この新銀行東京がこのような状況になると、

もはや実態的には失敗ともいえましょう。

それでも立て直すとなると、相当の時間と労力とコストが

かかります。今後の環境変化では、追加出資400億円

でも、今の現状を改善させることができず、損失を膨らまし、

さらなる出資を必要とする可能性があります。そうした判断
は、行政にはできません。むしろ問題を先送りし、既得権益を

守るために、現状を維持しようとする体質が行政には染み

込んでいます。今回の400億円の追加出資は、そうした

行政の体質から、改善プランを作り上げて出された金額であり

その内容には依然として合理的な説明がありません。

 四点目は、行政の身内への甘い責任追及の体質です。

今回の新銀行東京に対する調査をみても、責任を旧経営陣に

向けるのみで、行政のマスタープラン作成責任、その
マスタープランによる融資姿勢、あるいはノルマなど、

行政がかかわった責任も大きいのですが、それについては

不問にされています。しかも、この新銀行の84%の株
式を保有している東京都は、所有者として、銀行を監督する

責任を持っているはずですが、それについても何も

述べていません。しかも、銀行をチェックすべき金融庁
も、民間であれば厳しい検査を、しかも素早い行動を起こすの

に比べて、これだけ経営的にも大きな問題が発覚しているの

にもかかわらず、同じ行政への気兼ねか、仲間意識か分かり

ませんが、追加出資決定まで検査に入りません。そ

うした行政の身内への甘さから、こうした問題は、やはり第三者

が調査、検査をすべきことを痛感します。

 このような行政の問題の背景には、行政が責任というものを

意識しない組織になってしまい、納税者の税金を何とも

思っていないところがあるのではないかと思います。そして、

この新銀行東京から見えるのは、これまで問題になってきた、

行政は何をしても問題がない、しかも行政に誤りはない

(無謬性)という行政の本質的な体質です。そういった意味で、

行政の構造的な問題は、国だけでなく、地方自治体に依然
として解決されないまま残っているということになります

しかも、今の混乱の状況は、それを改革すべき政治が依然

として機能せず、石原都知事が自らの政治的責任を自覚

することなく守りに入り、また議会も新銀行設立を容認した

自らの責任を明確にできず、現状の問題に対する責任追及

の調査に乗り出そうとしないために、生み出されているといえ

ましょう。この新銀行東京の救済問題は、政治、行政の問題

の根深さをあらためて浮かび上がらせたといえましょう。

経済評論家:津田栄

JMM [Japan Mail Media]        No.471 Monday Edition
【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】128,653部