中国人観光客は、チベット仏教をあざ笑うかのように、わざと寺の周囲を反対方向に回る
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成20年(2008年) 3月16日(日曜日)
通巻第2126号
チベット民衆を銃で水平撃ち、三十人を虐殺
世界で一斉に中国批判、北京五輪ボイコットの声があがる
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十日のチベット民衆蜂起49周年日にはなにかがおこるとして中国人民解放軍、人民武装警察、公安などが、特別の警戒態勢に入っていた。
ラサ市内中央にあるジョガン寺付近はもっとも緊張感に溢れ、暴動は一触即発で起きる。
中国人観光客は、チベット仏教をあざ笑うかのように、わざと寺の周囲を反対方向に回るからだ。
周辺には多くの名刹、小さな寺々が密集し、僧侶が多い町である。
“聖なる都”を象徴するポタラ宮殿前は集会禁止、クルマの乗り入れ禁止の措置がとられていた。
それでも民衆の怒りは爆発した。
武力侵略と苛烈なる支配に半世紀を耐えて、あまりに横暴な中国の遣り方に反発するチベット人は漢語でいう「西蔵自治区」ばかりか、となりの青蔵省、四川省北部に多くのチベット族が居住しており、一斉に抗議行動が行われた模様。
新華社は「ダライラマ一派、分裂主義者の策動」などと言って、死者十人とした。
ダライラマ政府(インド)は、死者30名を確認、ほかに100名の血の犠牲がでた懼れがあり、調査中とした。
世界では一斉に抗議行動がおきている。日本でも中国大使館前に多くのデモが押し寄せ、六本木駅、広尾駅などが警戒態勢に入っている。
私見をのべれば、台湾への影響である。
ひょっとして、このチベットへの血の弾圧を台湾の人がどう感じたか?それでも北京と仲良くしようという国民党へ票を入れるのか?
本日(16日)台湾では時計を逆に回って行進する100万人行動が行われる。
或いは李登輝氏が壇上に現れ、謝長廷支持を表明するという劇的場面もあるかもしれない。
(((((((( 書評 )))))))))
黄文雄『蒋介石神話の嘘』(明成社)
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でっち上げられた蒋介石神話を冷静に客観的に詳述して歴史の真実を照射
誰が蒋介石を神様に仕立てようとしたのか?
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台北からバスで二時間ほど。緑の山々の茂みをくぐると、大渓という別荘タウンがある。李登輝さんの別荘も、この周辺にあり、地下の書棚は図書館のようになっている。三年前、いちど、この別荘にお邪魔したことがある。
その近くに慈湖がある。慈湖は蒋介石が故郷の奉化県の風景に似ているので、気に入った場所。近くに蒋介石の仮の遺体安置所があって、ものものしい警備がつづいていた場所としても知られる。蒋介石神話が生きていたからである。
そして慈湖公園に奇妙なオブジェが二百体ほど、ずらっと並んでいて不気味である。
全国から集められた蒋介石の銅像だ。「粗大ゴミの集積場」と言えなくもないが、この独裁者の銅像は台湾中いたるところ、十万体もあった。
偶像も地に落ち、殆どが撤去されたが、なかに「傑作」「逸品」の彫刻があり、この公園に集められて、「蒋介石銅像公園」と別称される。(台北からバスで桃園へでて、大渓行きに乗り換え。或いは中!)からも慈湖行きのバスがある)。
彫刻の森美術館ならぬ粗大ゴミ展示場へ、一緒に見に行ったのは高山正之氏、藤井厳喜氏、そして花岡信昭氏だった。
高山さん曰く。
「これって台湾人のブラック・ユーモアですかね?」。
本書は蒋介石神話の嘘が次々と暴かれるのだが、まずは四人の女性の物語。
蒋介石には四人の夫人がいたが、第四の妻である宋美齢だけが歴史に残り、あとの三名は書物から消された。
蒋介石が最愛の妻は三番目に結婚した、陳潔如という。
強引に口説き落とし、しかも蒋介石にはそのとき、妻と妾がいた。いまなら重婚罪だが、1921年に二人は「正式に」結婚したのである。
僅か六年後、蒋介石が権力を得る手段のため宋美齢と結婚するときには、この結婚は「なかったことに」された。
蒋介石は陳潔如に、理由を偽って突如、米国を追いやり、五万元のカネを与えて沈黙を強要した。
米国へ向かう客船が中国を離れ、太平洋を航行中に陳潔如は初めて蒋介石が宋美齢と結婚することを知って飛び込み自殺を図ろうとしている。
結局、蒋介石の三番目の妻は1971年に香港で死去、92年になって回想録がでた。日本語にも翻訳されて評判になった。(『蒋介石に捨てられた女 陳潔如回想録』、草思社)。
http://opac.rikkyo.ac.jp/cgi-bin/exec_cgi/ibibdet.cgi?CGILANG=japanese&U_CHARSET=euc-jp&ID=BB21073063&HOLSERKEY
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黄河が決壊したのは1938年6月7日だった。
河南省の花園堤防が切れて満々たる水が黄河から溢れだし、河南省ばかりか安徽省から江蘇省の平原まで冠水した。
水死者だけで60万人とも百万人とも言われる。
これは蒋介石が命じて堤防を爆破したからで、被災は以後水没地域に干ばつ、飢餓などをもたらし、1943年には大飢饉に繋がる。
ところが、蒋介石の副官だった何応鈞は『八年抗戦之経過』(1938年)のなかで「日本軍が飛行機で爆撃した」と書いた。『中華年鏡』(1948年)のなかにも「日本軍の砲撃で破壊された」と嘘が書かれた。
さすがに歴史家で資料探しの名人でもある黄文雄氏、このあたりの資料を探し当てて、嘘が白日の下に曝された。
真実はこうだ。
日本軍に追われた蒋介石は水攻めの奇策を思いついた。
黄河花園堤防爆破が国民党の自作自演であったことは、1976年になったから関係者が暴露した。しかも爆破直後に「これを日本軍の仕業として宣伝する」ことまで事前に決められていた。
6月7日爆破。6月11日からラジオなどを使って『日本軍の暴挙をわめき続けた。
これに疑問をもった外国人記者がいた。パリの「共和報」という新聞が自作自演説を伝え、世界のマスコミが疑念を抱いた。
こういう真実が本書を通じて明るみに出る。
以徳報恩などと欺瞞的な放言が得意だった蒋介石神話を信じていた人にとって、真実とは驚くほどのことであった。
◎◎
(読者の声1)台湾総統選挙、国民党候補馬英九は、政治家として致命的に欠如しているものあり。中台共同市場案と大学卒業同格案の二つで、謝優位の芽が出て来た観あり。この案は、馬に本気でそのつもりがあるのなら、当選してから言い出せばいいものです。
続報を訪台出発前にも願います。
(SJ生)
(宮崎正弘のコメント)究極的には投票率が82%ほどになれば謝さん逆転の可能性があります。独立運動陣営の読みでは78%と言っておりますが、選挙観測筋はもっと高く踏んでいますね。
外務省筋では85%ないと、今度は国民党だろうと踏んでいるようです。
小生の直前予測記事は18日発売の『週刊朝日』に拙論が掲載されます。題して、「それでも国民党・馬英九が破れる現実味」(ただし、このタイトルは編集部がつけたものです。誤解なきよう)。
(読者の声2) 宮崎さんがお書きになっているように台湾の選挙は直前まで分かりません。
とりわけ一昨日から情勢が変わってきました。
「共同市場」の問題もありますが、最大は12日の国民党の殴りこみ事件です。
国民党側は挑発して1人ぐらいが怪我して「暴力集団、民進党」とやろうとしたのでしょう。救急車がすぐ来たのはその証拠ではないでしょうか。
しかし民進党のほうが上手だったかもしれません。「手を出すな!」と呼びかけて立法委員を「住居侵入犯」とすることに成功。民進党は翌日の自由時報に、ふてぶてしく笑顔で乗り込んできた立法委員の写真を大きく扱い「侵門踏戸」「無法無天」と大見出しの国民党非難の広告を掲載しました。これで阿扁(陳水扁)に嫌気して民進党に距離を置いていたグリーン支持者(民進党支持者)たちが再び、民進党支持に動き始めたようです。
16日のデモ(百万撃掌、逆転勝)は全台湾で100万人集まるかもしれません。そうなれば勢いがついて22日はまさに逆転勝ちが期待できるのではないかと思っています。まさに国民党の殴りこみは「天佑」です。
1週間後に希望が出てきました。
(KS生、台北)
(宮崎正弘のコメント)もう一つの天佑はチベットでしょう。逆転の可能性が本格的に出てきました。
(読者の声3)14日夜神谷町電視台(テレビ東京)の番組『世界職務衛星』で、食品表示問題を取り上げていました。
小谷某女の司会で続いているビジネスマン向けテイストのこの番組は、昨夜食品の表示について強力取材した特集を流しておりました。
さすが大手町経世済民瓦版屋(日本経済新聞)系列の電視台です。
表示の厳密化にはコストアップが伴い商品価格は少なくとも1割は高くなるという企業寄りの纏め方でした。
しかし現状を垣間見ますと、ある大手食品チェーンのPB(プライベート・ブランド)商品は大手食品メーカーのNB(ナショナル・ブランド)商品より安く販売しつつ、JAS法で決められている以上の詳しい表示を率先して実施しています。神谷町電視台の誘導的報道の在り方は如何なものでしょうか。
社会学的に分析すれば、日本の社会は、家に鍵を掛けないで済んでいた相互信頼社会から、知り合いでも泥棒や詐欺師と思うべしという相互不信社会へ移り行き、食品の表示についても厳格化を志向する民意が醸成されていると看て取れます。
昔日のような相互信頼が日本人の間にあれば、食品に使われているものが何かを詳しく表示してなくても問題なく流通し売買されたのでしょう。グローバル化と称する痾(やまい)が猖獗しこれに冒された日本社会の成れの果てと観ぜられます。
これを哀しいと観ずるか、仕方なからんと思うかは、それぞれの捉え方次第です。
しかし両者にはかなりの径庭があるでしょう
(HN生、横浜)
(宮崎正弘のコメント)済みません。同番組を見ていないのでコメントをパスします。
((( 宮崎正弘の新刊予告 )))
黄文雄氏との共著
『世界が仰天した中国の野蛮』(徳間書店、3月28日発売予定、予価1600円)
((( 宮崎正弘のロングセラーズ )))
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url?%5Fencoding=UTF8&search-type=ss&index=books-jp&field-author=%E5%AE%AE%E5%B4%8E%20%E6%AD%A3%E5%BC%98
四刷!
『崩壊する中国 逃げ遅れる日本』 (KKベストセラーズ、1680円)
http://www.7andy.jp/books/detail?accd=32009305
『中国は猛毒を撒きちらして自滅する』 (徳間書店、1680円)
http://www.business-i.jp/news/book-page/debut/200710130007o.nwc
(書評と申し込み方法 ↑)
『2008年 世界大動乱』 (改訂最新版、1680円。並木書房)
『世界“新”資源戦争』 (阪急コミュニケーションズ刊、1680円)。
『中国から日本企業は撤退せよ!』 (阪急コミュニケーションズ刊)
『出身地でわかる中国人』 (PHP新書)
『三島由紀夫の現場』 (並木書房)
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