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▼本当の悪魔は誰?(その1)(その2) (外交と安全保障をクロフネガ)
自民党の中川秀直氏ら成長重視派・増税反対派と対立する自民党の財政改革研究会(財革研)が、特別会計や独立行政法人の資産・積立金いわゆる”埋蔵金”の存在をあらためて否定する報告書を二月末に発表して以降、与謝野馨氏らが率いる増税派が大攻勢にでている。
*参考記事 埋蔵金「なし」? 自民財革研が報告書http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080227-00000963-san-pol
三月に入ると、財革研の「埋蔵金無し、まず増税ありき」の報告書を前提にして、自民党税制調査会(津島雄二会長)が「社会保障制度への不安が、日本経済を停滞させている。次の税財政で抜本的改革をしなければならない」と主張、平成21年度の税制改正で消費税増税を打ち出した。
*参考記事 21年度に消費増税、自民税調会長が示唆http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080304-00000950-san-bus_all
ここにきて、与謝野・津島両氏ら「国民への増税のみによる財政再建派」が大攻勢に打って出ている。人事庁問題もからめて、中川秀氏と渡辺喜美行政改革担当相の行政改革派・増税反対派と、与謝野・津島の両氏に伊吹文明幹事長を加えた官僚の利害を代弁する行政改革反対派・増税派との、政府与党内での対立の構図がだんだんとはっきりしてきたように見える。町村官房長官もいつのまにか後者に近い位置に立つようになってしまった。冬柴国交相もそうだが、こちらはストックホルム症候群?
*参考記事 「人事庁」に官、猛反発 公務員制度改革 政府・与党も混乱http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080310-00000047-san-pol
財政再建にしろ年金にしろ問題の根底には、官僚・公務員に対する国民の不信感がある。
ここまで財政が悪化したのは、バブル崩壊以後にとられた財務省の経済政策が失敗したからで、何百兆円ものケインズ主義的公共投資がほとんど効果なく、たんなる国債の山にかわってしまったからだ。外交・安全保障スキルはダメダメだったとしても、経済政策だけはマトモというのが戦後の官僚に対する評価だったはずだが、その最後の牙城さえも崩壊してしまったのかもしれない。年金問題にしても、なんで基礎年金の国負担部分を全額税方式にしようなんていう案が政府から出ているかと言えば、少子高齢化の影響があるにしても、国民から集めた年金を官僚が特別会計でプールして、そのカネでグリーンピアみたいな赤字を垂れ流すハコモノをつくり天下り官僚の温床にしてしまうとか、
(年金保険料2000億円を投じてつくられたグリーンピアは赤字を垂れ流した結果、たった50億円で投売りされた)
社会保険庁の公務員がチャランポランな仕事をして、国民がどれだけ年金保険料を納めたかの記録がどっかいってしまったおかげで、「官僚・公務員のおかげで私たち国民は将来ちゃんと年金を受け取れないかもしれない。だから年金保険料を払いたくない」という考え方の国民が増え、年金制度そのものが危機に瀕しているからであろう。このように問題の本質は、国民の官僚・公務員不信にあるのに、当の官僚側は、国民の不信を解消するため公務員改革・行財政改革をするのではなく、官僚・公務員の失敗を認めず責任をとって自らの血を流すことも無く、ぜんぶ国民への増税という形で問題解決を図ろうという姿勢に終始している。
そうした官僚・公務員の利害代弁者が、自民党の与謝野氏ら率いる増税派・行政改革反対派だと言える。
与謝野氏らが必死に存在を否定している”埋蔵金”にしても、特別会計や独立行政法人を運用・運営している官僚がどれくらいの積み立て金を「最低限必要」と決定するかでいくらでも変わってくるわけで、極端な話、官僚が「今ある積み立て金は1円たりとも取り崩せない必要不可欠なものです」と決定すれば、埋蔵金はゼロとなる。
(話が難しいと思った人は以下※印まで読み飛ばしてもOK)
たとえば外為特会の積み立て金は、外貨準備を外国の国債なんかを購入して運用する場合に、ドル資産を円に戻すときに為替差損が出たとか、日米金利差が逆転したときに支払う利払いとか、外国国債価格が下落したというときに備えるためのものだろうが、そんなものが必要なのだろうか?
日米で金利差が逆転するなんて近い将来あるとはちょっと思えないし、まずアメリカが許すだろうかという問題がある。そもそも日本政府にドル準備を売る覚悟があるのか?と疑いたくなる。
ドル準備を売るつもりがないなら為替差損なんて起こらないだろう。そのために外為特会で19兆円もの積み立て金をかかえている必要があるとは思えない。もし外国国債価格が下落したり為替差損が出たのなら、”有価証券評価損”で処理して、損を埋め合わせるために財源が必要なら、その時にはじめてFBでも発行すべきではないか?そして日米で金利差があるかぎり、およそ1兆ドルある日本の外貨準備から毎年2~3兆円の金利収入が得られるはずだ。19兆円の積み立て金もこうして積みあがったのであり、財務官僚のさじ加減ひとつで埋蔵金の額なんてどうとでもなることがわかる。
※与謝野会長率いる財革研の「埋蔵金無し、まず増税ありき」報告に呼応して、自民党税制調査会は21年度の消費税増税を打ち出したが、津島税調会長の「いかなる行政においても、角度を変えればムダは常にある。それを全部きれいにするまで改革を先送りすれば、国が危うい」という開き直りにはあきれ果てる。
私も財政再建のために本当に増税が必要だというなら支持しなくもないが、それにはまず、政府・官僚側が徹底的にムダな歳出を削減し、特別会計改革・独立行政法人改革などの行財政改革を徹底して「血を流して」から、国民に「財政再建のために増税にご理解ください」と頭を下げるのスジであろう。
ところが大蔵官僚出身の津島会長はあからさまに官僚側に立って、行政改革なんてどうせできないんだから増税だ、と悪びれもせず、まるで居直り強盗のようなことを言うわけで、これを聞いた国民が激怒するのは必至だろう。人事庁問題でも渡辺行革相を批判している、これまた大蔵官僚出身の伊吹幹事長が「公務員を主導できる立派な政治家が出てこない限り(公務員制度改革は)できない」と言っているが、
民主国家では、選挙の洗礼を受けずクビにもならない官僚・公務員が選挙で選ばれた政治家(大臣・長官)の指示に従うのは当然のことであって、民意を受けた”政”が公務員制度改革をやると決めたら、”官”にそれを拒否する権利は無い。
そんなことが許されるなら官による集団独裁国家である。
公務員を主導できる立派な政治家が出てこない限りうんぬんという伊吹幹事長の発想からして、「政治は官僚に任せておけば良いのであって、国民や国民が選んだ政治家などすっこんでいろ」という、明治いらいの官僚の悪しき伝統・超然主義が透けて見える。伊吹幹事長のいう”公務員を主導できる立派な政治家”というのは、官僚OBで現役官僚の利害を代弁する政治家のことではないか?
だったら、永久に行財政改革なんてできない。官僚が自分の痛みを伴う改革なんてするはずがない。(つづく)
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特別会計と言えば、今なおガソリン税暫定税率や道路特定財源の問題をめぐって与野党間で激しい綱引きが繰り広げられている。財政再建や年金問題ともからんでくる話なので、この問題にふれておきたいが、国交省による道路特定財源のとんでもないムダ使いがその後も続々と明らかになっていて、やはり特別会計にメスを入れるのに一刻の猶予も許されないと思う。
*参考記事 「丸抱え」職員旅行に2080万円=道路財源、主な収入-国交省所管財団http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080306-00000126-jij-pol
ガソリン税という名称をつけるから、道路建設以外の財源にしてはダメだという話になるわけで、暫定税率をそのままにして”環境負荷税”と名称を改めたらどうだろうか。今や日本の労働者の三分の一が非正社員であり、非正社員の75%以上が年収200万円以下といわれている。これらの層が自家用車を維持していくのは容易なことではないだろう。原油価格が1バレル=100ドルを突破するなか、高額な化石燃料を燃やして自動車を走らせるのは、富者によるぜいたく行為となりつつある。だから化石燃料を燃やして日本の環境・社会全体に負荷や迷惑をかけたことに対して税というペナルティを取るのである。これならば使い道をより柔軟にすることができる。
そこからまず既存の道路の維持・補修費用を差し引き、基礎年金の国負担部分として必要な額を差し引き、残りを緊急性が高い道路建設から順にまわしたらどうだろうか。少なくとも、モノを買うという本来賞賛されるべき行為に罰を与えて景気を冷やし内需を縮小させ、逆累進性のために格差拡大をひどくしかねない悪税である消費税を増税するより、よっぽど良いと思うが。国交省は10年で59兆円分の道路を造ると言っているわけだから、大変な財源だ。これをそのまま年金など社会保障の財源にまわせば、増税は避けられるのではないか。与謝野氏も「国交省は道路を49兆円つくっても良い」なんて言ってないで、特別会計にメスを入れるために官僚や自民党の道路族議員を説得して行財政改革を達成し、それでも増税が避けられない場合に国民にお願いする下地づくりのため、最低限の義務を果たすべきだろう。
与謝野氏は、自分に反対する人たちを「悪魔的手法を使うな」と非難するのが口グセだが、官の失敗を国民への増税だけで尻拭いさせようとするつもりなら、与謝野氏の方がよっぽど悪魔だろう。 福田政権発足以降、政府与党に与謝野・津島・伊吹・谷垣各氏のように、さも国益を守るようなフリをしながら、官僚の側にたち、大きな政府と国民への規制強化の立場からポジショントークを繰り返す人ばかりが要職をしめるようになった。
それ以来、外国人投資家は日本株を売りつづけ、株価は低迷。ゆるやかながらも長く好況が持続した、ここ数年の日本経済も踊り場に差しかかりつつあると言われ、内閣支持率も超低空飛行だ。国民もマーケットも、福田政権内の主流派による”大きな政府”政策を支持していないということだ。
自民党の増税派・大きな政府派は、「国民が年金不安をかかえているから消費がのびず、日本経済が停滞している。だから年金問題解決のために消費税増税を!」と言っているが、本末転倒もいいところだろう。首相に強いリーダーシップと経営者感覚があって、「これこれの新しい産業を興して、国民がまじめに働けば希望が持てる日本にします!私が率先して働くから国民の皆さんも協力して欲しい」といったような、正しいビジョンを持ち、明確なメッセージを国民に示して動き出せば、いくらでも日本という国・社会・経済は活性化する。06年の日本の経常収支を見ると、外国へモノを売った結果の貿易黒字が7兆3000億円、外国への直接投資・証券投資から得た利益の項目である所得収支が13兆7000億円の黒字、その他もろもろ差し引いた経常収支黒字が20兆円もあったのである。アメリカは言うに及ばず、これほどピッカピカの国際バランスシートを持っている国はそうはない。
*参考資料2006年の国際収支(速報)動向http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0703b.htm
にもかかわらず、経済が停滞していて社会に希望が見えないのだとすれば、福田政権を主導している官僚と官僚OBたちが無能だということに他ならない。今や、日本が海外に保有する約9兆円の株・債券や約5兆円の直接投資が生み出す利益が、海外へのモノを売った利益である貿易黒字の二倍にも達しているのである。もちろんモノづくりも大切だが、日本が持つ金融資産をいかにうまく運用して増やしていくかということが国家戦略上重要になってくるのであり、国は日本の金融業界に国際競争力をつけさせ、人材供給の流れや産業の転換をはかるような策を本来ならば打たなければいけないのである。ところが政府・官僚はやることなすこと、逆に足を引っ張っているとしか思えない。
だから国民の雇用も所得も伸びないのである。他人(国民)のカネをいつも当てにして、それを失っても自分のカネでないゆえに痛くもかゆくもない官僚が、身銭を切って勝負する経営者になれるとは到底思えない。与謝野氏は「日本の風土に合わない」という理由で小さな政府や市場原理を否定するかのような主張も行っている。
*参考記事 「成長で健全化」は幻想 与謝野氏が批判http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/120970/
もしそうであるならば、私は競争による市場原理が日本の風土に合わないとは思わない。(以前にも言ったが、だからといって私は「100%市場に任せるべき」という考えを支持するわけではないけれども)典型的なのが戦国時代である。
戦国時代は、幕府(中央政府)の権限が弱くなって日本が小さな国に分裂し、それぞれの国が存亡をかけて、激しく競争した時代である。生まれついての家柄・身分より実力がものを言う時代であった。それゆえに、織田信長・徳川家康をはじめ、武田信玄・上杉謙信・伊達正宗・毛利元就など、キラ星のごとく有能な指導者が出現した。彼らの多くは、家柄は良いが実力の劣る付近の大国・大名を食って下克上の世をのし上がっていった。
油売りから一国一城の主となった斎藤道三もそうだが、百姓のせがれから天下をとった豊臣秀吉が一番の出世頭だろう。各戦国大名は、楽市楽座のような規制緩和を含む商業・産業振興策で国を富ませ、軍事力を含む総合国力を増大させていった。堺や博多のような商人による自治都市も生まれている。
中世の日本に、経済・社会を飛躍的に発展させることとなった競争社会である、立派な封建時代があったからこそ明治の文明開化や昭和の奇跡的な高度成長が達成され、強い日本につながっていったわけである。与謝野氏のように「日本の風土に合わないから」と言って改革を拒否し、日本を自分の殻に閉じ込めるなら、アメリカ・EU・中国・ロシアなど世界との生存競争から取り残され、保護無しでは生きていかれない絶滅危惧種となるだろう。つまり日本のガラパゴス化だ。その行きつく先は亡国に他ならない。官界で、良心と危機感を失っていない人がいるならば、霞ヶ関の内側から日本を救うために動いて欲しいと思う。 最後に、民主党の「ガソリン税の暫定税率を撤廃し、特別会計を全廃しても地方の道路は全部造ります」とか、「年金を全額税負担にするけど、絶対増税しません」なんて主張は、具体的な財源の裏付けに欠けた空理空論で、政策論議というレベルですらないということは念押ししておく。<了>