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▼世界大恐慌へ向かってまっしぐら?米国の「バブル崩壊」は優良ローン証券の暴落に到達した。打つ手なしか?(時事放談)
筆者は2007年9月19日付けブログで、雑誌SAPIO9月26日号・小学館で掲載された大前研一の「サブプライムローンの焦げ付きが、プライムローンに引火する。米住宅バブル崩壊の恐怖と連鎖」を引用して、世界大恐慌の可能性について論じた。もう一度、同誌に掲載された大前研一の主張を整理(骨子)すると以下のとおりである。
「サブプライムローンの焦げ付き→住宅競売物件の激増→住宅市場全体の値崩れ→優良住宅の価値が目減りし担保価値が縮小→プライムローン(優良ローン)が不良債権化→住宅価格の一層の下落。サブプライム問題がプライム部分に飛び火したら、消費に回っていたカネがなくなり、恐怖の連鎖の始まりである。」当時、大前研一は「欧米日の中央銀行が資金供給に乗り出した」という理由で必ずしも大恐慌がくるとはいっていない。「経済危機を煽る」ことを避けていた。読者が「行間から読み解いて欲しい」という感じであった。現在、米国のバブル崩壊は、半年前、大前研一が予測した最悪のコースをたどっているように見える。そして、大前研一が指摘した「プライム部分に飛び火し、消費に回っていたカネがなくなり、恐怖の連鎖が始まった」のである。
3月9日付け日本経済新聞が報道した米国の金融危機に関連する記事は以下第1、第2のとおり。
第1.米優良ローン証券の急落
ヘッジファンドなどが、金融機関からの融資返済要求に応じるため資産の切り売りを始めたため、住宅ローン証券の流通市場では最も安全とされる「トリプルA」格付けを持つ証券価格が2月以降、史上最低の水準まで急落。市場関係者によると元本の40%超まで下落している。発端は英ヘッジファンド、プロトン・パートナーズが先月28日、投資していたRMBSを約20億ドル規模で売却し始めたことが分かった。銀行団から融資返済を迫られて資金繰りに窮し、資産を売って返さざるを得なくなった。
今月6日には、米投資ファンド、カーライル傘下のファンドが融資を返せず、銀行が担保にとっていたRMBSを処分、米不動産投資信託(REIT)ソーンバーグ・モーゲージも7日、債務不履行に陥り「事業継続が危うい」と表明した。背景には、巨額損失を出した大手銀行があらゆる住宅ローン関連資産の処分を急いでいることがある。証券価格が下落するほど、銀行がリスク回避を急ぎ、ファンドに融資返済を迫る悪循環が起きる。サブプライムローンの残高1兆ドルに対し、米住宅ローン市場全体の規模は約10兆ドル。ローン価値の劣化が、高リスク資産から優良資産に広がることの影響は甚大だ。政府系金融機関の保障が付いたRMBSなどは、世界中の投資家が運用資産に組み入れている。多額の借り入れを負っているヘッジファンドなどとは事情が異なるが、日本の金融投資家を含む幅広い投資家に損失が広がる恐れがある。
第2.米銀行の資産劣化と「貸し渋り」「貸しはがし」の急増
住宅が下がれば、不動産関連投融資は劣化し、資本が傷つく。米銀行の中核自己資本は4年ぶりに8%を割り込んだ。自己資本比率の低下を防ぐため、貸し出し抑制が始まりつつある。自動車ローンなどで貸し出しを絞る銀行が増え、貸出金利に上昇圧力がかかっている。日本のバブル崩壊過程と異なるのは、貸し渋りの対象がファンドなどに広がっている点だ。銀行から融資返済を求められ、清算を決めたファンドが出始めた。買収ファンドの資金繰り難が伝えられ、その株価が急落している。(米国発世界大恐慌のシナリオを読む)
1.米国の崩壊は緩慢か?急激か?
マンモスタンカーのような巨船は、5か所、10かに穴が開き浸水したとしても、即沈没することはない。船が傾き始めるまでには時間がかかる。それと同様、世界最大の国家経済が崩壊するのも時間がかかると考えてよい。だが、欧米巨大銀行が「我が身大事」と考え、プライムローン証券や自動車ローン等あらゆる証券を投売りしたらどうなるか。すべての金融機関が「生き残る」ために、出口に殺到したらどうなるか。「売りが売りを呼び、買い手不在という」最悪の事態が急激に起こるかもしれぬ。本来なら時間をかけて沈むべきマンモスタンカーが短時間で沈没することもあり得るのではないか。
2.商品価格の高騰と株価暴落
「米ドルの暴落」を予測した資金が、米ドルから他の通貨や商品に移動している。6ヶ月前の2007年9月19日のニューヨーク原油は1バーレルが80ドル、金が1オンス715ドルであった。3月7日現在、原油が1バーレル24ドル強。金が1オンス約260ドル高くなった「ペーパーマネーから商品へ」という動きが加速している。ペーパーマネーへの信頼が失墜している。ニューヨーク株式市場は、連邦準備理事会のバーナンキ議長が「相次ぐ利下げ」を発表して下支えした甲斐もなく、3月7日、ついに下値抵抗ラインであった12000ドルを割り込み11892ドルになった。東京株式市場も13000円を割り込んだ。各国の株式市場も急落している。世界の金融市場を席巻し買いあさっていた欧米系金融機関やファンドが、資金繰りに困り「投売り」をしている。「買い手」が少なく「売り手」が多いから、株価は暴落する以外にない。
3.円高を歓迎する。輸出企業偏重の政府・日銀の「円安政策」を監視しよう
今年になって対米ドルで10円ほど上昇し1ドル102円台になった。90円台も時間の問題となった。円高になれば、我が国民の購買力は高まる。輸入企業も潤う。万々歳である。国民が困ることは全くない。日銀がドルの独歩安を防ぐため「円売りドル買い介入を繰り返した」結果、円はユーロやポンド等他通貨に対し暴落した。円は米ドルの独歩安を防ぐ防波堤の役割を背負わされた。我が国民の資産である円を犠牲にして「米国に貢ぐ女」を演じさせられた。円が1ドル当たり10円上昇したからといっても、ユーロから見るとなお「格安水準」である。1ユーロは150円台であるが、数年前は1ユーロ100円未満であった。ユーロ圏に旅行する国民は円が安すぎるために「ランチも食べられない」有様だ。
対米1ドル当たり10円上昇しただけなのに、早くも「日本の輸出企業が採算割れになる」と宣伝し始めた。政府・日銀・輸出企業がメディアを使って、「円高脅威論」を煽っている。メディアは輸出企業の広告で食っているからやむを得ない。だが、国民全体の奉仕者たるべき政府・日銀が「輸出企業の代理人」に成り下がっているのは容認できない。円高になったから、「輸出企業の採算割れ」が自動的に発生する訳ではない。円高に合わせて輸出価格を値上げすればよいだけの話だ。ドイツ企業はユーロ高が進んでも「ユーロを下げろ」とはいわない。採算割れを防ぐため、輸出価格を引き上げているのではあるまいか。
我が国の輸出企業は政府・日銀に「円安政策」を取らせることで、莫大な利益をフトコロに入れる癖が身についている。例え、1ドル90円→70円に円が上昇しても、これに対応して輸出価格を引き上げればよい。高くても買ってもらえる技術力の向上と商品開発を心がけるべきだ。「価格を上げても売れる商品を開発する」ことで、円高を乗り切る強靭な体質に転換すべきだ。政府・日銀に陳情して「円安政策」をとらせ、安易に利益を出す「国家寄生型企業」であってはなるまい。
4.米国の金融危機から世界大恐慌へ
米国の金融危機はこれから本格化する。銀行は生き残りをかけて「貸し渋り」「貸しはがし」に専念する。体力のない銀行やファンドは倒産する。企業倒産と失業者が急増する。消費も大きく落ち込む。
米国の「借金まみれの」過大な消費によって、稼いできた国の経済が失速する。中国、東南アジアそして日本は、ダメージを受ける。統計上、我が国の米国依存度は年々低下しているが、中国・東南アジアほかに進出した日本企業が「対米輸出」で稼いでいるから、その分の影響も出る。輸出企業は「冬の時代」になる。欧米金融機関の「資産投売り」が続けば、中国・英国を初め世界の不動産バブルが崩壊する。米国についで中国も大不況に陥る。政府は「サブプライムローン問題は我が国の金融機関にとってそれほど重大な問題ではない」と大本営発表をしているが、本当にそうか。米国の住宅バブル崩壊が、プライムローン証券の暴落に飛び火している現在、我が国の巨大バンクだけが無傷という話は信じがたい。3月7日の東京株式市場で、東京三菱UFJ銀行が900円割れ、三井住友銀行が70万円割れ、みずほ銀行が40万円割れになった。株式市場が、メガバンクの「含み損が膨らむ」と予想したからではあるまいか。
5.世界大恐慌で、世界はどう変わるか
1929年の世界恐慌を経験していないから実感がわかないが、歴史書によると、銀行を含む企業倒産が相次ぎ、失業者が街にあふれ、「食事にありつけない民衆が暴動を起こした」という。おそらく街からモノが消え、カネが消えたのではあるまいか。寂れた田舎のシャッターを閉じた殺風景な商店街というイメージであろう。我が国にとって最大の懸念材料は、天然ガス、原油等のエネルギー資源や食料を輸入できるか?という問題であろう。エネルギー資源はほとんどを輸入に依存しているし、食料の自給率も低い。輸入がストップしたら「餓死者が続出する」はずだ。原油・天然ガスが輸入できないと、経済活動が停止する。電気をつくることもできない。国家的危機であるから、国民はイライラする。課題を解決できない保守・リベラルは消える。世界中、「民族主義政党」が台頭する。これに伴い、民族紛争が激化するかもしれぬ。我が国民も「国家社会主義的」又は「国家資本主義的」な政府を求めるようになるかもしれぬ。
「世界大恐慌」という激動の時代、人々は「自給自足生活」を求めて、田舎暮らしに魅力を感じるようになる。僻地山村の廃村が蘇生する。何事も「+と-」の両面があるから、「そう悲観なさるな。世の中、なるようにしかならぬ」ということかもしれぬ。「大恐慌」などといって世間を惑わすものではない。欲があるから苦も又生じる。「そう、ムキになって生き永らえずともよかろう」という声が天空の方角から聞こえてくる気配もする。強欲を持って生まれた人間というものは、将来の出来事を先取りして、あれやこれや悩むものだから、仏様も「ご苦労さん」と優しい眼差しで見ておられるのではあるまいか。
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▼中国人民解放軍は「台湾との戦争」をやりたいのか?若手軍人が軍規を犯して「血判状による集団直訴」を行った背景を読み解く(時事放談)
2ちゃんねる「ニュース速報・東アジアニュース速報+板」を眺めていたら、面白い記事が掲載されていた。以下は要旨である。
第1.北京・南京両軍区の若手軍人が「台湾とただちに開戦すべし」との実名による血判状を軍上層部に提出した。
第2.政府当局者によると、2月中旬、標記の行為が発生した。軍区を越える連携は固く禁じられており、これを飛び越すほどの有力者の暗躍を窺わせる。
(ジャーナスト富坂聡氏は以下のとおり分析する。)
第3.表面化していないが、海軍の潜水艦や空軍の戦闘機は台湾軍とニアミスを繰り返しており、実戦さながらの緊張状態にあった。現場は「今戦えば勝てる」という自信があるのだろう。
第4.兵器の近代化に伴う大規模なリストラの中、職にあぶれた退役軍人らが座り込みを行うまでになった。暴発はすでに起きた。公安省の統計によると、銀行強盗など凶悪犯罪で有罪となった退役軍人は年間8500人にも上った。
第5.党が最も恐れているのが軍人の不満が政治に向かうことで、胡錦濤政権は一歩も扱いを誤まれない難題を突きつけられている。
富坂聡氏がいうように、インフレの高進による生活苦が、一般庶民や若手軍人をいらだたせていることは間違いない。さらに「退役軍人が生活苦のため街頭デモや陳情を繰り返している」姿を見ると、若手軍人にとって「明日は我が身」と感じ、将来への危機感を抱くのも当然だ。だが、それだけか?中国共産党の軍といわれる中国人民解放軍(以下「軍」という)と「中国共産党官僚組織」の構造的矛盾と対立という視点で、今回の「集団直訴」の背景を読み解いてみたい。
1.中国の共産主義革命を主導した「軍」
中国共産党による武力革命は解放軍が行ったものである。当時、共産党幹部は即、軍幹部であったから「党と軍」は一体不可分で、矛盾と対立が生まれる余地はなかった。革命の元勲といわれる10大元帥はいずれも党幹部を兼任していた。革命により政権を担うようになると、党や政府の官僚組織が肥大化する。革命をなしとげた武装組織・軍の存在価値が小さくなり、政治・経済の専門家である党官僚が実権を握る。我が国でいえば、豊臣政権を樹立するのに貢献した加藤清正や福島正則よりも「石田光成ほかの事務官僚」が実権を掌握したことがこれに当たる。豊臣政権の崩壊は「軍人である加藤・福島らが冷や飯を食わされたことにハラを立て、石田光成を筆頭とする事務官僚と対立した」ことに起因する。
軍は「建国の功労者」と自己規定しているから、それなりの「地位と名誉と権限」を求める。平和な時代になれば「無用の長物に過ぎない」軍ではあるが、国家の主権者としての地位を要求する。中国共産党並びに政府官僚と軍の矛盾・対立は構造的である。建国から数十年はいろいろな戦争があったから、軍の存在価値はあった。
1951年から1953年・・・朝鮮戦争
1954年から1958年・・・台湾海峡危機。金門砲戦
1950年・・・チベット侵攻(併合)
1962年・・・中印戦争
1969年から1978年・・・ソ連との国境紛争(軍事衝突)
1974年・・・・ベトナムとの西沙諸島を巡る海戦
1979年・・・・中越戦争(ベトナムに侵攻)
中越戦争以来30年。中国軍は「戦争する機会」を失った。つまり、軍の存在価値が下落した。戦争を目的として軍事演習に励む軍にとって「平和な時代」は最悪なのだ。「ただ飯を食っている」という有害無益な存在となる。
我が自衛隊は「戦争を想定した軍隊ではない」から、自衛隊諸君も「本気で戦争をやる」とは思っていない。敵が我が領土を侵略した時は戦うべきとは思っているだろうが、世界最大・最強の米軍が庇護してくれているから、本気で戦争するとは思っていないはずだ。憲法第9条で「交戦権を否定している」から自衛隊諸君を責めることはできない。政治の怠慢だからだ。
だが、他国の軍隊は違う。ゲームではない実際の戦争を想定し軍事演習に励んでいるのだ。戦争をするのを「仕事と心得」、戦争をして死ぬことを当為とする軍隊なのだ。張子の虎ではない。中国における唯一の武装組織である軍(含む武装警察)は、その意思さえあればいつでも「軍事クーデター」を起こし成功させる能力がある。であるから、党・政府の官僚は「軍の管理」に知恵を絞らざるをえない。中国大陸を7大軍区に分け、相互の連携を禁止したというのも軍事クーデターを防ぐためであろう。結果、軍が全国で一斉に蜂起することは困難になった反面、故葉剣英元帥が築き上げた「広州軍区」のように半独立の軍も生まれた。
2.党官僚と軍の人的関係が疎遠になった。
毛沢東、周恩来、鄧小平は、軍幹部から党官僚のトップに上り詰めたから、軍と官が一体であったといってよい。1989年の天安門事件直後、党中央総書記。党軍事委員会主席となった江沢民は、軍歴がない。軍幹部を大量に昇格させ篭絡することで、軍人の人気取りを行ったといわれた。2004年党中央総書記、党軍事委員会主席となった胡錦濤の場合も、純粋の党官僚である。軍との関係は全くない。胡錦濤が党総書記、同軍事委員会主席となった2003年以降、軍と党・政府官僚の対立が表面化することが増えた。
(1)軍は、党中央・政府に相談なく勝手な行動をするようになった。
我が国領海への原子力潜水艦の無断侵入、衛星撃墜実権など。中国共産党中央・政府は「外国の報道機関」から通知され、事実調査に1週間も要した。
(2)中国政府・党中央が、米国と合意した内容を、軍が破棄させた。
横須賀を母港とする米空母キティーホークは「中国政府・党中央の了解」の下、香港への寄港を予定していた。乗組員家族は香港に赴いていたという。寄港直前、突然、空母寄港が拒否された。おそらく、軍が介入して、政府・党中央が米国と合意した事項を破棄させたのであろう。
さらに、空母キティーホークは、中国海軍の潜水艦・駆逐艦に進路を阻まれ、27時間にわたって対峙したといわれる。軍は、米空母の香港寄港を中止させただけでなく、米国に嫌がらせをして見せた。胡錦濤の面目を潰すための軍の策動であろう。
(3)2008年度の中国軍の予算は前年比17.6%増の6兆600億円となった。事実上の軍関係予算はこの数倍といわれるから、米国についで世界第2位の軍事予算である。「貧富の格差是正」とか社会福祉・教育・環境改善等に充当すべき予算を削って軍事予算を増やしている。軍予算の急増が「国家が負担できる限界を超えるのも時間の問題」といってよい。旧ソビエト連邦、北朝鮮そして中国と「先軍国家は自壊する」ほかはあるまい。
(4)軍がのさばり、党官僚の統制がきかなくなった。
1979年のベトナムへの侵攻作戦以来30年。平和な時代が続いた。党官僚陣営は軍が政治に関心を向けないよう、「台湾との戦争」を煽り喧伝してきた。台湾との戦争を想定したミサイルの配備や装備の近代化を進めた。軍事演習も「台湾との戦争を想定した」ものであった。
さらに、米中戦争の危機を煽った。対外戦争を煽り、喧伝したのも「軍を内政に関与させないための」方便であった。軍は党中央や政府が喧伝する「台湾との戦争」や「米中戦争」の幻影を、近い将来「現実化する」ものと信じた。一心不乱で「台湾との戦争」や「対米戦争」の準備に取組んできた。党官僚に騙されたとも考えず、一心不乱に「戦争準備」に励んだ訳である。だが、胡錦濤が国家主席、党軍事委員会主席、党中央総書記となってから「米中蜜月路線」を推進した。台湾との関係も「軍事侵攻」ではなく「平和的統一」を優先するようになった。
(5)軍は「党中央と政府」に不信感を抱き、独自の判断で行動するようになった
軍は、「党中央と政府に騙された」と考えるようになった。そして、党中央や政府の指示に従わなくなった。党中央や政府の政策が、軍にとって不都合と考える時は、これに介入して中止させることを躊躇しなくなった。(先述の米空母寄港問題など)
(6)「台湾とただちに開戦すべし」との若手軍人の血判上申書について
これまで何十年も騙されて「台湾との戦争に勝利するための準備を行ってきた」軍にとって「胡錦濤は信用できない。戦争をやる気がないのではないか」と疑い始めた。首都を警護する北京軍区と台湾と対峙する南京軍区の若手軍人(若手将校?)が連携して軍上層部に直訴したことは、重大な出来事である。「軍区を越えて連携してはならない」という軍規に違反していることに加え、下級将校が実名で、堂々と「開戦を主張する」というのは、中国の軍にとって前代未聞であろう。昭和初期の旧大日本帝国陸軍青年将校の雰囲気に近い。血判を押すという習俗も類似している。
3.「胡錦濤」は、青年将校の暴走を抑止できるか?
青年将校の怒りは「腰抜けで戦争ができない」政府・党中央に向けて発信されたことは疑いない。軍幹部の相当部分がこの行動を支持しているのではないか。だから堂々と実名の血判上申書が出せたのであろう。党官僚出身の胡錦濤は激怒しているはずだ。「党中央を脅迫するつもりなのか」と怒り狂っていると見てよい。日本で「桜見物している場合ではない」と感じて、日程変更を指示しているかもしれぬ。結論をいうと、胡錦濤は「軍を統制することができない」ことを知るだろう。そして自らの無力をかみ締める。中国においては「党総書記」「国家主席」「党軍事委員会主席」という肩書きは無力であることを認識させられる。
4、軍を「誰かが」動かしているのか?
中国の政変は「孔子批判」とか、「整風運動」とかの看板を掲げて登場することが多い。だから、今回も、軍の青年将校を動かして「胡錦濤・温家宝指導部」を追い落とす工作かと思える面もある。軍に影響力を持つ政治家といえば、曾慶紅前国家副主席である。彼の父母は共に「長征」に参加した軍の幹部であったという。その縁で、軍幹部と親密な関係を保持しているといわれた。江沢民と軍の仲を取り持ったともいわれた。もう一人。曾慶紅と同じく実父が軍幹部だった習近平国家副主席である。次期、「党総書記」が確実視されている。若い頃、党軍事委員会に勤務したこともある。
5.胡錦濤(共青団閥)追い落としの「仕上げ段階」なのか?
昨年秋の第17回中国共産党大会は、マスコミの当初の予想に反して「江沢民・曾慶紅一派の勝利を祝う大会」となった。国の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員の3分の2を占めただけではない。胡錦濤が「上海閥狩りの手先」として活用してきた党中央規律検査委員会も「江沢民一派」に奪われた。結果、上海閥に対する汚職摘発が消えた。胡錦濤の後継者も、曾慶紅系の習近平(党中央政治局常務委員、同中央書記処筆頭書記、国家副主席)に決定した。事実上の政権移譲が始まった。
中国製毒入りギョウザ事件で「日中提携・徹底究明」を志向する胡錦濤・温家宝と「証拠隠滅・事実隠蔽」を画策する江沢民一派が支配する公安部・質検総局が対立している。在日中国大使館からの直訴を受け実情を把握した胡錦濤は「激怒して」公安部や質検総局幹部を呼びつけたといわれる。だが、威令が徹底するとは思えない。
6.毒入りギョウザ事件の事後処理で、胡錦濤は主導権を握れるか?
当初、胡錦濤は昨年秋に訪日の予定であった。今回は「桜の咲く4月に訪日する」と固まっていた。ところが、毒入りギョウザ事件が発覚し、日本国民の「対中感情が悪化した」ほか、2月第1から第3週は中国産・中国製食品の輸入が対前年比で40%も減少した。海底油田の共同開発案件も進展していない。わざわざ「胡錦濤が来日しても、両国関係を進展させる材料が全くない」のだ。「何で来るのか?やめとけば」という声が上がる始末だ。毒入りギョウザ事件の捜査について「日中合同で綿密な捜査協力体制」を組むことができれば、胡錦濤が巻き返したということができる。だが、「事実隠蔽工作」が改善されない場合は、またしても「胡錦濤が敗北した」といってよい。
(おわりに)
中国における「軍と党官僚」の権力闘争、並びに「現・元党幹部間の派閥闘争」の推移が、近隣諸国に被害を与えないよう願いたいものだ。内部で喧嘩をする分は、勝手放題であっても他国が干渉できるものでもない。しかし、軍が独走して「台湾との戦争を始める」ならば、我が国にも甚大な影響があるから「火事場見物」を決め込むことはできない。それなりに対応策を検討しておくべきだろう。国会では、「総裁人事がどうの」とか「イージス艦がどうの」とかの議論で明け暮れているが、「国家安全保障は大丈夫か」と問わざるをえない状況になった。