日本の国土は狭い。だが、海洋まで展望すれば実に広い。
海洋基本計画 豊かな資源をどう生かすか(3月2日付・読売社説)http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080301-OYT1T00807.htm
日本が目指している「海洋立国」への道のりは険しい。
海洋基本法に基づく初の「海洋基本計画」は、その課題を列挙したものになりそうだ。
政府の総合海洋政策本部が作成し、今月半ばに閣議決定する見通しとなった基本計画案を見ると、取り組むべき施策は実に多彩だ。
海洋資源の開発・利用、海上交通の安全確保、環境保全、科学的な探査、国民の理解増進、人材育成まで、その内容は12項目にわたる。
日本の国土は狭い。だが、海洋まで展望すれば実に広い。管轄権の及ぶ領海と排他的経済水域(EEZ)、大陸棚を合わせた面積は世界で6番目だ。
しかも、海底地形は変化に富み、近海にも深海や熱水鉱床がある。豊かな生物資源にも恵まれている。
基本計画案は、施策を通じて、この広大な海を「知り」「利用し」「守る」ことを目標としている。今後5年間を見通した計画だが、これだけ課題が多くなることは当然と言える。
日本が「島国」にとどまらず、周辺の海を最大限生かせるよう、関係省庁が一丸となって取り組むことが肝要だ。産業界、国民にも、積極的に協力を呼びかけていかねばならない。
早急に対応が必要な施策は多い。
エネルギー・鉱物資源の開発は、その代表例だ。日本周辺の海でも、石油や天然ガスの開発が可能かもしれない。鉱物資源を得られるかもしれない。
基本計画案では、これら資源の開発計画を策定し、今後10年程度で商業化を目指すとしている。そのための技術開発と綿密な計画作りが求められる。
これまで関係省庁や研究機関が個別に保有していた海洋調査のデータについても、早急に一元化すべきだ。海洋の管理に欠かせないデータベースとなる。
法制度の整備も急ぎたい。領海に不審な外国船が停泊していても規制する法がないなど、これまで無防備にすぎた。
国際的な視点も重要だ。日本のEEZは中国や韓国など七つの国・地域に接している。権益の主張が重複する海域もある。中国が東シナ海で進めている天然ガス田開発では、これが顕在化した。
基本計画案にもある通り、国連海洋法条約などの国際ルールに基づいて粘り強く交渉を続け、日本の権益を
海洋探査や、環境保全の取り組みなどで得られた新たな知見を世界に発信する努力も、おろそかにはできない。海洋立国・日本の取り組みを世界に理解してもらうことが大切だ。