日本列島は3日午前、西日本を中心に、今年初めての黄砂が観測された。4日にかけて東日本、東北地方まで広がるおそれがあり、気象庁は視界が悪くなるとして、交通機関などに注意を呼び掛けている。
気象庁によると、3日午前9時までに黄砂を観測したのは九州と中国、東海地方の一部地域。黄砂の範囲は今後、東に広がり、西日本や沖縄・奄美で、見通しが利く距離(視程)が5キロ未満になるおそれがある。東日本のピークは同日の日中で4日も黄砂が予想されるが徐々に弱まり、同日夜には解消する見込み。
環境省は26日、黄砂の飛来状況を知らせるホームページ(http://soramame.taiki.go.jp/dss/kosa)を開設した。東京都新宿区や松江市など国内12地点と、モンゴルや韓国の4地点で観測したデータを基に、各地点の上空1キロまでの黄砂の平均濃度を「なし~ごくわずか」から「非常に多い」まで4段階で示す。5月末まで情報提供する。
データは1時間ごとに更新。黄砂はモンゴルからは2日あまり、韓国・ソウルからは約1日で日本に到達するため、予測の参考になるという。中国・北京の観測データも使う予定だったが、国家機密を理由に中国当局がデータ提供を停止している。
この時期、西日本を中心に、空が黄色くかすむことがあります。黄砂です。黄砂は、遠く中国の砂漠地帯から風に乗って、大量に飛んでくる細かい砂粒です。最近は、黄砂の被害がだんだんひどくなっており、中国では社会問題になっています。黄砂が増えたのは、草木の生えていた土地がどんどん砂漠になっているからだと言われています。【銅崎順子】
◇作物が枯れ病気も招く
黄砂が飛んでくると、日本では洗濯物が汚れたり、ひどい時には視界が悪くなって、飛行機が飛べなくなります。
日本より風上の韓国や中国ではもっと被害が大きいです。農作物が枯れ、ぜんそくや目の病気が起き、学校閉鎖になることもあります。経済への影響も大きく、中国全体で約七千六百億円の損害が出ているそうです。
黄砂は空を飛んでいる間に、大気汚染の元になる物質を含むのではないかと言われています。海に落ちてプランクトンにミネラル分を与え、海の生き物にも影響を与えているとみられますが、よく分かっていません。
◇砂漠から西風に乗って
黄砂のふるさとは、中国大陸のゴビ砂漠や黄土高原といった乾燥・半乾燥地域です。ここから、砂の細かい粒が高さ数千メートルにまで舞い上がり、上空で常に吹いている西風(偏西風)に乗って飛んで来るのです=図1。遠くアメリカにまで届くこともあります。
日本に飛んでくる黄砂は、増えています。全国九十八地点で黄砂が観測される延べ日数(*)は、一九八〇年代後半までは年三百日以下が大半でしたが、最近は三百日を超す年が増えています。
◇経済発展で進む砂漠化
黄砂が増えているのは、中国で緑の土地が減り、砂漠が増えているからだと言われます。
中国の役所によると、最近は一年間に平均一二八三平方キロメートルの土地が砂漠と化しています。東京都の半分以上の面積です。その結果、砂漠化した土地は中国全体の一八パーセントに上ります。農業ができなくなって、村人全員が出ていった村もあります。
なぜ、砂漠化が進むのでしょう。中国経済が盛んになり、増えた牧畜の 羊などが草を食べ尽くし、開発 で山林が減っていることなどが原因とみられます。
◇被害を減らすために
黄砂の被害を減らすため、日本なども協力して、国を挙げた植林活動が続いています。植えられる木は、乾いた土地にも強いポプラなどです。
日本の市民団体なども植林を手伝っています。例えば、兵庫県神戸市のNPO(非営利組織)は二〇〇二年から、甘粛省蘭州市で植林を続けています。これまでに、東京ドーム十二個分の土地に十三万本を植えたそうです。
被害が世界的に広がっているため、日本、中国、韓国、モンゴルの四か国と国際機関が協力して〇三年から、黄砂の研究も始まっています。
*例えば、きょう、福岡市と広島市で黄砂が観測されれば「二日」と数える。