『マサイマラ・レポート』 第4回
『マサイマラ・レポート』 第4回
■ 滝田明日香 :家畜獣医(ケニア在住)
■ 『マサイマラ・レポート』 第4回
2月1日から始めた、「マサイマラ基金」。政治問題によって
野生動物保護に支障が出るのなんて悲しすぎる、
この6年間のマラコンサーバンシーのやり遂げてきたことが
こんなに簡単に崩れてしまうのを黙って見ていられないと、
野生動物を日々守ってくれているだけではなく、私の大切な
友達でもあるマラコンサーバンシーのレンジャーたちを
サポートしたくて始めた募金。
過去4年間「アフリカ独り言」を毎日更新し続けている
ホームページ(www.asuka.com )、毎週日曜日に記事を書か
せていただけることになったJMMと毎日新聞(2月16日)
の記事(http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080216k0000e040041000c.html )
の読者さんたちのおかげで、2月末には募金の合計金額が
3、143、969円にもなりました! 先日この募金を
マラコンサーバンシーに渡して来たのですが、その時にお礼の
レターも頂きました。レターは「アフリカ独り言」の2月21日の
日記(http://ww.asukafrica.com/diary/archives/2008_02.php )
を参照ください(この時点では募金は19,000ドルです)。
また、2月28日の独り言には募金してくださった方のお名前も
書いてありますので、読んでいただけると、とても嬉しいで
す!
マラコンサーバンシーから「日本からの募金のおかげで、
3月のレンジャーの給料が払えるようになった」という連絡を
もらい、レンジャーたち自身からも「明日香の集めた募金で
来月は解雇されるレンジャーはいなくなったので、心配し
ないで頑張って働いてくれ!とボスから言われた」と教え
てくれました。
いろいろなレンジャーが、「オレたちの仕事を守ってくれて、
ありがとう!」とお礼を言ってくるのを見ていて、この彼らの
「アサンテ」(ありがとう)は、サポートしてくれた読者の人に
ちゃんと伝えてないといけないでしょう!と感じたので、この
記事を書いています。
私自身も募金リストを見ていて、ここまで多くの人たちが遠い
アフリカでの活動をサポートしてくれたことに改めて驚き、
そして、「日本の人から、頑張っているあなたたちへの
プレゼントだよ!」と、レンジャーたちに募金を渡した時、
「自国日本」がやたら誇り高く感じました(大げさ?)。
今回の集まった募金は、先ほど書いたように3月の
マラコンサーバンシーの野生動物保護資金(レンジャーの
給料、密猟対策パトロールやワイヤー罠回収の為の費用、
夜間襲撃(密猟者がいそうな場所に夜間レンジャーを待機
させるオペレーション)などに使われます。
本来だったら、すでに解雇させれているカジュアルスタッフ
(パーマネントスタッフ)以外にも、レンジャーを強制無給
休暇に出し始めなければ経営困難になっていた、3月の
マラコンサーバンシー。もうすでに「パトロールエリアを縮小
する」、「保護区の道路工事を延期する」、「夜間襲撃を
ストップ」、「家畜の損害賠償のストップ」(保護区から5キロ
までのエリアで肉食獣がマサイの家畜を殺した場合、
仕返しとしてライオンやヒョウなどを殺さないことを条件に
損害賠償をもらえる)、「タンザニア側と保護区の外のパト
ロールを中止する」など、多くのバジェットカットは始まって
います。その上さらにレンジャーたちの数を減らされると
なると、いったいどういう影響があるのだろうか?
マラコンサーバンシーが管理しているのは、「マラ・トライ
アングル」と呼ばれる、マサイマラ国立保護区の一部の面積
約510平方キロメートルのエリアです。
しかし、その自分たちのエリア以外にも、レンジャーたちは
保護活動を続けているのです。彼らのパトロールエリアは、
マラ・トライアングルと隣接したタンザニアのセレンゲティ国立
公園(セレンゲティのレンジャーたちと合同パトロール)と、
保護区の境界線から外のマサイランド(マサイが放牧スタイル
で家畜を飼っている土地)まであり、この二つのエリアはとても
大切なパトロールエリアです。
実際には、「大切」というより、「必要とされている」と言い替え
た方がいいかもしれません。
マラ・トライアングルに侵入する密猟者は、「ブッシュミート・
トレード」(野生動物の肉市場)の為に行われているものです。
そして、この密猟はほとんどがタンザニア人によって行われ
る為(ケニアの法律が厳しくない為か、ケニアの方が動物が
多いからなのかは不明)、隣接するセレンゲティは密猟者の
ゲートウェイになっているのです。
よって、国境地帯と「ノーマンランド」(国境と国境の間の
エリア)は、一番パトロールを厳しくしないといけないエリア。
さらに保護区の外などでは、日中走り回っている観光客の
車もレンジャーカーもいない為、密猟者は日中でも楽に動物を
殺せるオープンエリア。
セレンゲティでの密猟者捕獲、保護区の外のワイヤー罠回収、
そして、保護区内で密猟した肉を保護区の外の道を通って
肉市場に下ろされるのを防ぐ為のパトロールなど、「動物保護」
は保護区内だけでとどまる訳ではないのです。
経営困難による「パトロールエリアの縮小」によって、まずカット
されたのは、この二つのエリアでした。
3月末までは、レンジャーたちが活動出来ることは確かです。
そして、ケニア内もだんだん落ち着いてきて、先日はキバキ
大統領と野党リーダーのライラ氏が「パワーシェアリング」に
合意しました。しかし、確かではないのは、「すぐに観光客が
戻ってくれるのか?」。そして、「今後も暴動に発展する問題
が出てこないのか?」など。その答えは、今は誰も分からない
というのが事実。なんだかどよ~んとクリアーじゃないケニアの
行く末ですが、私の目を通して確かなのは「野生動物は
レンジャーたちの活動を必要としていること」。
そして、私が「マサイマラに惚れていること(動物、人、土地、す
べてに惚れています)」。なので、マサイマラが助けを必要と
している間は、この「マサイマラ基金」のキャンペーンは続けて
いこうと思っています。
滝田明日香(たきたあすか)
1975年神奈川県藤沢市生まれ。
大学卒業後、2000年、アフリカで獣医になりたい一心で
ナイロビ大学獣医学部に編入。2005年、めでたく獣医になる。
卒業後、マサイマラ国立保護区の回りに住むマサイを
対象にした「マサイマラ巡回家畜診療プロジェクト」を立ち上げ、
家畜診療以外にも野生動物へのジステンパー感染などを防ぐ
為、保護区の外のマサイの犬2700匹にワクチンなどを
投与している。
現在は愛犬6匹、愛猫4匹と一緒にマサイマラに住む。
なぜアフリカへ来たかの詳しいエピソードは、『晴れときどき、
サバンナ』『サバンナの宝箱』(滝田明日香・著/共に
幻冬舎)を!
<http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344409116/jmm05-22
>
<http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344012607/jmm05-22
>
●いろいろな方から集まった募金の合計金額や
マラコンサーバンシーからの感謝のレターなどを私のHPの
www.asukafrica.com
に添付しています。
●マサイマラ国立保護区を守る為のキャンペーンや資金集めに
協力してくださる団体 があったら、マラコンサーバンシーまで
連絡ください。(個人の寄付も受け付けています。)
Mara Conservancy
P O Box 63457
Muthaiga 00619
Nairobi, Kenya
Tel : +254 20 3749 632/6, 3749655/1/4/6/8
Fax : +254 20 3749636/3740754/3740721
Email: mara@triad.co.ke
Home Page
<http://www.maraconservancy.com/
>
●日本の口座が必要な場合は、以下の口座への寄付も
可能です。
必ず「Mara Conservancy」と記入して下さい。
(個人の寄付も受け付けています。Mara Conservancyと
記入してね。)
日本の寄付口座:
「マサイマラ巡回家畜診療プロジェクト」
三菱東京UFJ銀行
大森支店 普通預金
口座番号: 1299787
郵便振替口座:
「マサイマラ巡回家畜診療プロジェクト」
口座番号 00100-0-667889
JMM [Japan Mail Media] No.468 Extra-Edition
【発行】 有限会社 村上龍事務所
【編集】 村上龍
【発行部数】128,653部