政府・自民党は、空港運営会社への外資規制を導入する方針のようです。
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Q:851
少し前のニュースですが、政府・自民党は、国土交通省が
今国会への提出を検討している空港整備法改正案に関して、
空港運営会社への外資規制を導入する方針のようです。
ただし、政府・自民党内にも、外資規制への反対論もあると
いうことです。この問題をどう考えればいいのでしょうか。
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と、言う質問に答えて、以下の方々が意見をよせておられます。
※JMMで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、
各氏所属の団体・組織の意見・方針ではありません。
■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』
◆編集長から
【Q:851】
◇回答(寄稿順)
□真壁昭夫 :信州大学経済学部教授
□土居丈朗 :慶應義塾大学経済学部准教授
□菊地正俊 :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト
□山崎元 :経済評論家・楽天証券経済研究所
客員研究員
□杉岡秋美 :生命保険関連会社勤務
□津田栄 :経済評論家
□金井伸郎 :外資系運用会社 企画・営業部門勤務
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適当に話をカットして紹介させてもらいます。↓
●実際にロンドンのヒースロー空港の株式が、スペイン企業に
買占められたことによって、危惧されたサービスの低下などの
理由で、最終的に2006年に上場廃止に追い込まれた事実を
引き合いに出しているようです。
今回の改正案について、もう一つ頭に入れておくべきポイントが
あります。それは、空港運営会社や施設関連企業は、役人の
有力な天下り先であることです。現在のわが国のシステムでは、
これらの企業に莫大な利益が落ちることになります。つまり、
これらの企業には、極めて有効な既得権益が存在すると
いわれています。その既得権益に官僚OBなどが群がっている
という状況だと考えられます。
これらの既得権益層にとっては、空港運営会社や施設関連
会社に、海外から効率を旨とする経営手法が持ち込まれる
ことは好ましいことではないでしょう。専門家の間では、
「今回の空港法改正の本当の狙いは、既得権益層の利益を
守ることが重要な目的」との見方もあるようです。
わが国の伝統や、過去の事例を考えると、そうした指摘は、
“当たらずといえども遠からず”のような気がします。by真壁昭夫
●英国は人口でも欧州大陸からの移
民を多く受け入れていますので、今のままいけば、英国の
人口は2066年に日本を抜くと予想されています。
ロンドンヒースロー空港を運営しているBAAはスペインの
会社に買収されましたが、ロンドンヒースロー空港は使い
勝手が良い空港だと思います。
昨夏にオーストラリアのマッコーリー・グループが日本空港
ビルデングの株式の20%弱を保有したことから、空港への
外資規制論が高まりました。日本空港ビルデングは買収
防衛策を導入しているため、20%以上の株式取得は買収
防衛策が発動される可能性があります。
マッコーリーはハゲタカではなく、オーストラリアのエスタ
ブリッシュされた金融機関です。by菊地正俊
●「空港外資規制 安全保障上の歯止めが必要だ」と題す
る2月9日付の「読売新聞」の社説を読むと、
(1)「空港は日本の交通、物流の拠点であるだけでなく、
検疫や出入国の管理など、公益性の高い業務を担っている。
その空港が外資に支配されれば、国の安全が脅かされる
恐れがある。」と述べています。加えて、空港の経営に関して、
(2)「外資規制がない英国やデンマークでは国際空港が
買収されてしまった。経営権を握った外資は、短期間で
利益を上げようと必要な投資を削る動きに出た。
要員不足で搭乗手続きに長い行列ができ、清掃も行き届か
なくなるなど、サービス低下が問題になっている。
防疫やテロ対策までおざなりにされかねない、と懸念する
声も出てきた。空港への外資参入を無制限に認めれば、
日本でもこんな事態が起きかねない。」と述べています。
また、同社説は、国交省の空港運営会社への天下り問題に
対する懸念について「それは考え過ぎではないか。
民営化されれば、いつまでも天下りなど続けられるものでは
ない」と一蹴しています。しかし、安全保障に関しては、
滑走路と管制は国が運営し民営化の対象外ですし、
少なくとも出入国管理や検疫などは国の規制の下にあり、
万一外資がこれらを軽視することがあったとしても、国が
必要な規制を行いコントロールすることは可能でしょう。
空港運営会社の経営対象は主として空港ビルや駐車場など
の商業施設であり、これらのビジネスを行う会社が外資系で
あることには国防や安全の上での問題は無いはずです。
たとえばテロの警戒については、必要があれば警察等が
介入すべきでしょう
し、運営会社側の責任で行うべき努力があれば、法規の
下にこれを要求すればいいだけのことです。by山崎元
●東証のROEは平均で見ると10%弱の数字を示していま
す。デフレ時代は一桁の小さい数字であったことを考えると、
ずいぶんと改善したものだと感慨にふけりたくなります。
外人投資家も、ROEが一桁の小さいところからほぼ10%に
なる過程を評価して買ってきましたが、欧米の主要の市場
のROEは二桁であることを考えると、外国人投資家が
さらに投資をするためには、あともう一皮むけたレベルに
達することが必要です。
外国人投資家も国内の投資家も、日本企業がさらに
資本の効率性を高められるかどうかを固唾を呑んで見守って
いる最中ですが、その意味で今回の外資規制は、その
意図と能力に疑問を投げかけるものとなったでしょう。
東証の売買に占める外人のシェアが半分以上となった
グローバル経済の時代に、このような株主の資本の効率化
を求める動きを阻止し、また外国人投資家を差別するかの
ような動きは、日本株の魅力の何割かはそぎ落とす効果は
あったのだとおもいます。by杉岡秋美
●最初の問題点は、確かにイギリスのヒースロー空港会社
がスペインの会社に買収され、サービスの低下が見られた
り、あるいは今回と同じマッコーリー銀行の投資ファンドが
買収したシドニー空港でも空港施設利用料その他の
サービス料の引き上げ、あるいは新設で利用者への負担が
増大した事実があるようですが、公共性や独占的事業という
観点から政府が許可制あるいは認可制の採用やサービス
価格の上限設定を設ければよく、またこうしたことは外資
だけではなく国内ファンドでも起きることを考えると、
外資に特定して株式取得制限する根拠は乏しいといえます。
次の安全保障上の懸念については、最近の世界的な
テロ事件の多発から持ち出した理由といえましょう。
そもそも日本空港ビルデング(株)は、空港ビルの管理会社
であって、滑走路は国が所有し、航空管制、出入国管理や
検疫、そして警備などはすべて国が行っています。
その意味で、たとえ、この会社が完全に外資に買収され
ても、安全保障上の問題が起きる可能性はほとんどないと
いえます。しかも、そうした問題は何も外資だけではなく、
政府に敵対する個人や団体などの国内資本でも起こりえ
ます。外国人だから危ないというのは、公平ではありません。
今回は、経済のグローバル化の進展のなかで、外資の
導入と経済構造のあり方をめぐって、既得権益を維持しよ
うとする官僚の言い分を代弁する政府と自民党が復活し
てきたことを意味すると同時に、一昨年のライブドア事件、
村上ファンド事件における外資のような振る舞いへの疑問
から去年のスティール・パートナーズによるブルドックソース
買収事件以降見られる企業、行政、司法ともに外資への
敵対的で内向きの姿勢が明確になってきたことを反映して
いると思われます。そして、この法案は、政府・自民党での
対立に見られるように、今後、構造改革の継続か、
あるいは後退による既得権益層の復活か、その結果
日本経済が失速か、成長かどちらの道を歩むのかを選択する
象徴的な問題だといえましょう。
(こうした動きは、さしずめ150年ほど前の黒船来航で
攘夷派と尊皇派が争った江戸時代末期に似ているような
気がします。)
最後に、今回の問題で、外資規制の導入に向けた動き
から、海外では日本のインフラ事業への投資にはリスクが高く、
中国やインド、ベトナムなどのアジア諸国に比べても魅力が
乏しいと判断されているようです。その点で、規制は、外資
だからという差別をせず、内外を問わず公平で公正である
べきであり、また今回のように投資後に規制をかけようとする
など後出しじゃんけんになるような社会主義国的なもので
あってはならないといえましょう。by津田栄
●このような空港株式会社を株式公開し民営化したとしても、
民営化による経営の効率化について、どの程度の期待が
持てるものなのでしょうか。直接の競争が発生しない市場では、
利用者から見た利便性の向上や費用負担の軽減などの
メリットを実現するインセンティブは乏しいといえます。
経営効率の面では、特にグループ企業の枠を超えて業務の
効率化に取り組ませるためには、これらグループ企業の役員
を兼任する空港株式会社の経営陣を排除しない限り
難しいでしょう。
現経営陣に変わり空港株式会社の経営に当たるには、
各業務にリソースやノウハウを持つ民間企業の連合と同時に、
空港運営のノウハウを持つ外資系のインフラ関連企業や
ファンドなどの参加も重要な条件でしょう。
過剰な外資規制は、こうした経営への外資の参画への
意欲を低下させ、現経営陣への圧力を弱めることで、結果的に
経営改善の取り組みを後退させかねません。
また、規制を嫌う投資家の人気が離散することで株式価値の
評価も下がり、公共の資産売却による収入を目減りさせる
ことになり、国民にとっても不利益となります。
ちなみに2007年3月期の有価証券報告書を見ますと、
成田空港株式会社本体は従業員数750人、人件費78億円と
なっていますので、単純には一人当たり人件費約1千万円と
なります。一方、連結対象となる関係会社分は従業員数
1538人、人件費50億円ですので、単純には一人当たり
約327万円となります。これを見ますと、空港株式会社本体は
本社社員などを中心に給与水準が高く、関係会社は空港施設
の運営や商業部門に直接従事するため空港に派遣される
パートなどの比較的低賃金・非正規雇用の従業員が中心で
あることを反映しています。
一方で、役員退職慰労引当金について見ますと、
本社1億5百万円、
関係会社2億51百万円と逆転して関係会社で多額の
慰労金の準備がされています。
官庁出身者や旧公団からの役員は本社と関係会社を兼職し、
関係会社であるグループ企業を経由して多額の報酬を得る
仕組みが出来上がっているようです。
空港株式会社を上場させるだけでは、簡単に経営が
効率化する保証はないようです。by金井伸郎
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カットしすぎで、意味が分かりにくくなっているかも
しれませんが、JNNは、いろんな人の意見が読めて
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