欧州鳴動 今日が世界の分水嶺 (青皮の手帖) | 日本のお姉さん

欧州鳴動 今日が世界の分水嶺 (青皮の手帖)

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▼欧州鳴動 今日が世界の分水嶺 (青皮の手帖)

▼「コソボ共和国独立」には賛成すべきではあるが、しかし、世界は「民族自決の衝撃」に耐えることができるか?(じじ放談)
2月17日、セルビア共和国の自治州であったコソボが、セルビアの反対を押し切って「独立宣言」を行った。米英仏独や日本などがこれを歓迎、ロシアが「独立無効」と主張している。「国内に民族独立の火種を抱える」中国、スペイン、ギリシャ、ルーマニア、キプロスは「コソボ独立反対」の立場だ。(以上、18日付け日本経済新聞・夕刊)

人間の集団は、家族、氏族、部族、民族そして「文明の衝突」の著者ハンチントンがいうところの文明圏という階層で分別される。部族と民族の境界ははっきりしないが、あえて民族を規定すれば、「言語・文化・伝統を共有し、種族がほぼ同じとされる大規模人間集団」ということになろうか。部族連合体といってよいかもしれぬ。
2007世界地図資料によると、世界には193か国の独立国がある。だが、その規模は第1位の中国が13億1580万人、第2位のインドが11億340万人である一方、人口が100万人以下の国が39か国もある。バチカン市国の1000人は例外としても、数万人単位の国がゴロゴロしている。つまり、部族単位の国家も山ほど存在している。「民族の独立を願い独立運動中の民族」で最大なものは、イラク・トルコ・イラン・シリアなどに分散しているクルド人で、2500万人から3000万人だ。スペインのバスク人は約212万人といわれる。中国で海外に亡命政府を樹立して独立国家をめざしているウイグル人(新疆ウイグル自治区)が720万人、チベット人が460万人である。

コソボ共和国の独立について、英米独仏が後ろ盾になったのはなぜか?チベット・ウイグル・クルド・バスクほかの民族独立運動は支援しないのに、なぜ「コソボ」を支援することになったのか?コソボは人口が200から250万人。アルバニア系住民が88%、セルビア系住民が7%である。なお、同族のアルバニアは人口が約310万人で、同民族のためか、コソボの分離独立を一貫して支持してきた。アルバニアはイスラム教徒70%、アルバニア正教徒20%、カトリック教徒10%だ。(ウイキペディアより抜粋)

セルビアは人口940万人。南スラブ人で、ほとんどがセルビア正教会信者。人種的にも、宗教的にもロシアに近い。ロシアがセルビアを全面支援しているところを見ると、ハンチントンがいう「キリスト教文明と正教会文明」の断層線上の争いが顕現しているといえる。ハンチントンの戦略思想が現実になって、EUの東方拡大策が進んでいる。次は、カトリック系信者が多いといわれるウクライナ北半分の分離独立が課題になるかもしれぬ。ロシアも必死だ。コソボ共和国の独立宣言に対抗して、ロシアはグルジアのアブハジア及び南オセチアの各自治共和国の分離独立を進める意向である。(18日付け日本経済新聞・夕刊)
コソボ独立が契機となって、欧米とロシア双方の支援を受けた各民族の分離独立運動が激化する可能性が出てきた。

今回の「コソボ共和国独立宣言」は欧米が後方支援した結果であると考えれば、今後も「類似のケース」が出てくると予想しなければならない。かって、我が大日本帝国は「欧米列強の植民地からの解放」という大義名分を掲げて植民地であったインド・インドネシア・ビルマなどの青年を教育訓練して「民族独立義勇軍」を結成させた。帝国の本性として「民族自立を支援する」ことも、縄張り拡大の一環であるから、事は単純ではない。欧米もロシアも、その姿勢は同じだ。少数民族の独立も「ダシ」に使われる可能性が高いから「万々歳」という訳にはいかぬ。

エマニュエル・トッド風にいうと「手頃な国家が狙われる」からややこしい。できれば、クルド・バスク・チベット・ウイグル等の民族独立運動に対しても、相応の支援を行うべきではなかろうか。中国やスペインの反撃に脅えて腰砕けになっているようでは、「民族自決権擁護」という普遍的原則の旗を掲げるべきではない。というものの、EUが汗をかいて東欧に押し広げた縄張りに、我が国企業が楽々と進出して稼がせてもらっているのも事実だ。「お前も日本人だろう。ドイツやフランスの御蔭で飯を食っていて、偉そうな事をいうな」という声が飛んでくるかもしれぬ。
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▼欧州鳴動 今日が世界の分水嶺 (青皮の手帖)
今日(2008年2月17日)、セルビア共和国内のコソヴォ自治州が独立を宣言する。日本国内のメディアでは、「ユーゴスラビア解体の最終章」などと報じているが、そんな構図で思考しているのは日本のイエロー・ジャーナリズム群ぐらいであろう。
 
コソヴォの独立宣言は、即ちバルカン半島における地政学上の流動化を意味している。加えて、周辺諸国や裏に戦略的思惑を持っている大国群をも巻き込んでの“波乱要素”に発展する可能性を秘めており、その予断を許さない。
 
2008年2月3日に行われたセルビア大統領選の決選投票は、親露強硬派のニコリッチ氏と親欧米路線のタジッチ氏による大激戦の末、親欧米路線のタジッチ氏に軍配が上がった。今回のコソヴォ独立はこれを受けてのモノであろう。
 
「だったら、セルビアもコソヴォも親欧米化してバンザイじゃん!」なぁ~んて考えは大間違いだ。というのも、ロシア・モスクワ筋がEU加盟を目論むセルビアを使って、EU分断の工作に出てくる可能性が高くなるからである。ここで言うEU分断とは、EU域内の不協和音増長や仏独離反などを主に想定している。
 
水面下では、サブプライム・ショックで瀕死の経済情勢にある米国や英国が、比較優位化した通貨ユーロ経済圏への打撃をも深謀遠慮してのコソヴォ情勢であるという側面を持っている。しかも、通貨ユーロ経済圏への打撃という点においては、ロシア・モスクワ筋とも思惑が一致しており、その相関関係はグチャグチャだ。このように半島国家の地政学とは、如何にして周辺諸国や思惑を持った大国群を巻き込んで利を得るかという路線にある。これってどこか別の半島国家にも共通していますね。即ち、半島国家の外交官とは如何にマッチポンプを大きくするかが使命であり、手腕の発揮しどころでもある。
 
そういう視点で見れば、今日のコソヴォ独立宣言などは通過儀礼に過ぎないのかもしれない。本当の大混乱とその危険性がもたらす恐怖はこれからが本番だ。遠く離れた日本国においても、これらの事象を戦略的に活用できるかどうかを議論すべきである。少なくともそういう知性を備えておいても良いだろう。
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EUが入国管理を強化、指紋採取へ:背景にある、国際金融資本からG8への世界支配者交代(国際情報の分析と予測)
田中宇氏は2月12日の記事「米大統領選の焦点はテロ戦争の継続可否」で、ヒラリー候補=米英一極主義者、オバマ候補=多極主義者という明解な分析を提示している。911以後の米国国内での闘争が民主党大統領候補者選を舞台に繰り広げられているという内容である。ヒラリー候補の外交政策はクリントン政権時代の延長線上にあるという想定はもっともなものだ。 私は、米国の次期大統領はオバマ氏に内定しているのではないかと想像している。根拠は、オバマ氏の外交顧問にキッシンジャーと並ぶ国際政治専門家であるズビグニュー・ブレジンスキー氏が就任していることである。ブレジンスキー氏が負け馬に乗るとは思えないのだ。対抗馬のヒラリーが健闘しているのは、大統領選を盛り上げるという役割、あるいはヒラリーを支援する米英一極主義者のあぶり出しなどの理由が考えられるだろう。 田中宇氏はオバマはケネディの再来ではないかと主張している。しかし、私はオバマはカーター政権の再来ではないかと想像している。カーター政権の前任は不人気な共和党のニクソン・フォード政権であり、その外交政策はキッシンジャーが主導していた。ニクソンはベトナム戦争での敗北、ドルと金の交換停止を通じて米国の国力を大きく低下させ世界を多極化させた人物である。現在のブッシュ政権がイラク戦争での敗北やドルの下落を通じて米国の国力を大きく低下させていること、ブッシュ政権の外交政策にキッシンジャーが深く関与していること、ブッシュ政権の不人気を考えると、ブッシュ大統領はニクソン政権の再来という性格を持つ。それならば、次の政権はブレジンスキーが外交顧問に就任しているオバマになるのが自然だと思われる。 カーター大統領は元州知事で中央政界にはほとんど縁のない人物であった。オバマ氏も上院議員に当選して日が浅く、目立った政治的業績を残していない点で類似している。クリントン政権時代から現在まで一貫して中央政界に関与してきたヒラリーとは対照的である。 なお、ブッシュ政権の不人気、ブッシュ政権が8年間続いたことから考えて、共和党候補が次期大統領に選ばれる可能性は低いのではないかと想像する。