『マサイマラ・レポート』 第1回 | 日本のお姉さん

『マサイマラ・レポート』 第1回

『マサイマラ・レポート』 第1回
■ 滝田明日香 :家畜獣医(ケニア在住)
■ 『マサイマラ・レポート』第1回
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 アフリカ野生動物に憧れて、ケニアに足を踏み入れてから、

早10年。野生動物や広大な土地と、そこに住む陽気な人

たちに救われながら、なんとか今日の日までやってきたと

言っても過言ではない。好きでこの土地に移り住んだとは言え、

時には過酷で辛いこともあるし、悩み込んでしまうこともある。

そんな時、自分を勇気付けてくれて頑張る気力をくれたのも、

またアフリカの大地であり、そこに住むアフリカ人たちでも

あった。

 植民地時代からの問題や汚職まみれの政府の制度などに

苦しみながらも、その辛い生活の中でも冗談を言い交わし

ながら強く生きるアフリカ人の姿には、自分がぐだぐだ悩む

ことがバカバカしくなり、「私も強くならないとな!」と無条件に

勇気をくれたものだった。

そんな大好きなケニアが、悲しい道を歩み始めてしまったの

である。

 陸続きの隣国が暴動や内戦、さらは大量虐殺などを経験

してきたなか、各国からの難民を受け入れてきたアフリカの

優等生であったケニア。しかし、2007年12月27日の

大統領選挙の後、他のアフリカ各国が犯してきたような過ちの

穴にドップリ入り込んでしまった。選挙詐欺疑惑で始まった

暴動は、すぐにキクユ族(大統領の部族)対ルオー族

(野党のリーダーの部族)の戦いに発展。元々キクユとルオー

は仲違いがあった部族だったが、ここまでひどい殺し合いに

なるとは誰も予想していなかっただろう。ルオーランドでは

キクユがターゲット。そして、キクユランドではルオーが

ターゲットなった殺し合いが勃発し始めた。そして、気がつけ

ばキクユ対ルオーだけではなく、他の部族間でも戦いの火は

広がりだした。

 確かに最初は政治家による選挙詐欺のいざこざで始まった

争いであることは、間違いないだろう。しかし、アラジンの

ランプから解き放たれたジニー(魔神)はご主人様の言うこと

を聞かなくなり、政治家は暴れる民衆をコントロールする力を

完全に失ってしまった。植民地時代から続いていた、土地

略奪問題や貧困。今までみんながずっと我慢していた、解決

されないまま山積みされた問題に対する不満が爆発して

しまったのである。

 さらには暴れる群衆に対して発砲する警察の姿や、パンガ

(山刀)や斧で人を斬りつける映像がインターナショナル

メディアになんかに流れてしまったから、もう大変である。

昨年は、紅茶、野菜、切り花などの農作物産業を久々に抜い

ケニア経済のナンバーワンになった観光業は、たった1ヶ月

の間に壊滅してしまった。そして、マサイマラ国立保護区など

では、今まで観光客からの入園料でブッシュミート(野生動
物の肉)密猟対策のコントロールをしていたレンジャーや、

肉食獣と家畜との摩擦問題の解決法となっていた家畜の

損害賠償などの支払いが出来なくなってしまったのである。

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滝田明日香(たきたあすか)
 1975年神奈川県藤沢市生まれ。6歳のころから海外暮らし

を続けるワールド遊牧民。シンガポール、フィリピンで日本人

学校を卒業。13歳で英語も分からないのにシカゴの現地校に

編入。その後、ニューヨークに移り高校を卒業後、スキッドモア
・カレッジで動物学専攻。在学中にアフリカに魅せられ、ケニア

の野生動物マネージメントの学校に留学。その後、休学して

マサイ・マラ国立保護区のロッジ(ムパタ・サファリ・クラブ)に

短期就職。一度はニューヨークに戻るが、アフリカにはまって
しまい、半年後ボツワナのカラハリ砂漠保護の学校に留学。
 大学卒業後、バックパック一つでボツワナ、レソト、南ア、

ジンバブエ、サンビアなどで就職活動で訪れる、というより

放浪。ザンビアの国立公園に職を見つけるがビザ問題で

就職がなくなり、泣く泣くアメリカに戻る。日本とハワイでの

就職の間にアフリカに戻る道を探し、2000年、アフリカで

獣医になりたい一心でナイロビ大学獣医学部に編入。

2005年、めでたく獣医になる。
 卒業後、マサイマラ国立保護区の回りに住むマサイを

対象にした「マサイマラ巡回家畜診療プロジェクト」を立ち上げ、

家畜診療以外にも野生動物へのジステンパー感染などを

防ぐ為、保護区の外のマサイの犬2700匹にワクチンなどを

投与している。
現在は愛犬6匹、愛猫4匹と一緒にマサイマラに住む。
 なぜアフリカへ来たかの詳しいエピソードは、『晴れときどき、

サバンナ』『サバンナの宝箱』(滝田明日香・著/

共に幻冬舎)を!
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●マサイマラ国立保護区を守る為のキャンペーンや資金集めに

協力してくださる団体 があったら、マラコンサーバンシーまで

連絡ください。

Mara Conservancy
P O Box 63457
Muthaiga 00619
Nairobi, Kenya
Tel : +254 20 3749 632/6, 3749655/1/4/6/8
Fax : +254 20 3749636/3740754/3740721
Email:
mara@triad.co.ke

Home Page
<
http://www.maraconservancy.com/ >

●日本の口座が必要な場合は、以下の口座への寄付も可能です。
 必ず「Mara Conservancy」と記入して下さい。

日本の寄付口座:
「マサイマラ巡回家畜診療プロジェクト」
三菱東京UFJ銀行 
大森支店 普通預金
口座番号: 1299787

郵便振替口座:
「マサイマラ巡回家畜診療プロジェクト」
口座番号 00100-0-667889

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JMM [Japan Mail Media] No.465 Extra-Edition2
【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍【発行部数】128,653部