ヤルタ秘密協定は北方領土領有の根拠となり得ない  | 日本のお姉さん

ヤルタ秘密協定は北方領土領有の根拠となり得ない 

≪ WEB 熱線 第978号 ≫

▼▽ 帝国電網省 ▽▼               by 竹下義朗さん

☆ ヤルタ秘密協定は北方領土領有の根拠となり得ない 

―― 2008/02/08

昭和26(1951)年9月8日、日本は『サンフランシスコ平和条約』に調印し、国際社会への復帰を果たしました。そして同条約に基づき、日本は、千島列島ここでは「北千島」を指す。以下「北千島」と表記)・南樺太=北緯50度以南の樺太)及び、朝鮮半島・台湾・新南諸島(南沙諸島)・西沙諸島・南洋群島(サイパンやパラオ等の太平洋島嶼群)の領有権を全て放棄しました。

このうち、北方領土を含む千島列島・南樺太を含む樺太全島は、現在、ロシア(旧ソ連)が占有しています。しかし『サンフランシスコ平和条約』には、日本による「領有権の放棄」は明記されているものの、旧ソ連=現ロシア以下略)への「領有権の移譲」については、ただのひと言も明記されていないのです。

つまり、新たな「所有者」は決められていない事になります。

そして、旧ソ連が北方領土領有の根拠としているものに、『ヤルタ秘密協定』があります。ーーーそこで今回は、旧ソ連の主張について、その問題点を明らかにし、いかに旧ソ連が主張する「領有の根拠」が不当なものであるかについて書いてみたいと思います。

時は大航海時代。

日の出の勢いで領土を拡大していたイスパニア=スペイン)・ポルトガル両国は、領有権争い解決の為、明応2(1493)年、ローマ教皇アレクサンデル6世に仲介を求めました。この時、教皇は『大教書(インテル・ケテラ)』を発布し、両国の「分界線(リネア-デ-デマルカシオン)」を確定しました。

しかしその後も、相次ぐ新領土の「発見」や、ドル箱だった香辛料の原産地、モルッカ(香料)諸島への思惑も絡み合い、幾度となく両国の「分界線」は変更され、享禄2(1529)年、財政難にあったイスパニアが、モルッカ諸島に対する領有権をポルトガルに売却、新たな分界線を定めた『バリャドリード条約』が締結されました。

そして、同条約による分界線が、当時「黄金の国・ジパング」としてヨーロッパに紹介されていた日本の一部を通過していた為、日本に対する「領有権」=帰属)を巡って、再び両国に争いが起こりました。つまり、
ジパングは、イスパニア:ポルトガルどちらの「領土」か?

という訳です。

その後、両国は互いに宣教師の派遣を通して、戦国日本を舞台に熾烈な勢力争いを演じることとなったのです。それにしても、なぜ「北方領土」問題でこのような話を持ち出したのか? みなさんの中には怪訝に思われる方もおありでしょう。

その理由はもう少し後で明らかにすることとして、話を『ヤルタ秘密協定』に戻したいと思います。

ヤルタ会談:ヤルタに集う米英ソ三国首脳
http://www004.upp.so-net.ne.jp/teikoku-denmo/graphics/photo/yalta.jpg

左からチャーチル英国首相、ローズヴェルト米国大統領、スターリンソ連首相

『ヤルタ秘密協定』(以下単に『秘密協定』と略)

米英ソ三国で取り交わされたこの『秘密協定』には、旧ソ連が対日参戦する見返りとして、南樺太と千島列島を引き渡す旨の条項が明記されていました。

そして旧ソ連は、この『秘密協定』に則って、終戦直前の昭和20(1945)年8月8日、『日ソ中立条約』を一方的に破棄し日本に宣戦布告、翌9日から対日戦を開始したのです。

では、旧ソ連が「北方領土」領有の根拠としている『秘密協定』に正当性があるのでしょうか?ーーー結論からいえば『秘密協定』はあくまでも「秘密」協定であって、国際法に照らせば何らの正当性もありません。

なぜなら、仲間内=米英ソ)の勝手な談合=ヤルタ会談)で取り決めた「内輪の約束」だからです。また、もう一方の「当事者」である日本が、なんら与り
知らぬ『秘密協定』に拘束される謂われも全くありません。

さて、ここで、前述のイスパニア・ポルトガル両国間に締結された『バリャドリード条約』に戻します。同条約による両国の「分界線」が日本の一部を通過
することで、両国が日本の帰属を巡って争ったと書きました。

ではその後、両国は日本に対し「日本の領有権」を主張してきたでしょうか?

答えはノーです。

イスパニア・ポルトガル両国共に「バリャドリード条約により、日本は我が国に帰属する」などとは一度たりとも主張してきてはいません。まあそれは当然でしょう。当時の日本がそのような条約によって、自国の領有権が他国に争われていたことなど露ほども知らなかった訳ですから。

この『バリャドリード条約』を『秘密協定』に置き換えてみると、皆さんにも
理解頂けると思います。それでもまだ納得がいかない方もおありでしょう。そこで話を更に身近な例に置き換えてみることにしましょう。

故郷[ふるさと]の実家を離れ、一家で転勤していた家族が、ご主人の定年を機に10年ぶりに故郷へと帰りました。そこでご主人は我が目を疑いました!?

なんと、実家とともに持っていた畑[土地]が、ご主人に無断で近所の家に使われていたのです。当然ながらご主人はその家に行って「あそこはうちの土地だから返せ!」と言いました。

すると先方は、「あそこはもう10年近くうちで耕作している。今更返せと言われても困る。それに、この事は町内会でも承知している」と返答してきたのです・・・。

如何でしょう?

あなたが実際にこの当事者だったらどうするでしょうか?当然ながら意地でも「返せ!」と言う筈です。なぜなら、自分の土地なのですから。それに、自がいない間に勝手に町内会が決めたことに従えますか?自分の土地ですよ。

この「自分」を日本に、「町内会」を『秘密協定』の当事者である米英ソに、そして「自分の土地」を「北方領土」に置き換えてみれば・・・これならどんな方でも理解頂ける筈です。

もし民事でこのようなことが起きたとしたら、相手の主張は、まず100%通りません。それが当然です。その、本来なら「通らない」筈の主張を根拠にしているのが、旧ソ連、ひいては現・ロシアなのです。

戦後、日本が領有権を放棄した南樺太と北千島についても書いてみます。

『サンフランシスコ平和条約』によって日本は南樺太と北千島に対する領有権を放棄しました。それに対して戦後、同地域を領有した旧ソ連にはどのような「領有の根拠」があるのでしょうか?

厳密にいうと、同地域に対する「領有権」を旧ソ連は持っていません。

例えば、旧ソ連は『サンフランシスコ平和条約』には調印していません。つまり旧ソ連は、同条約の「当事国」でないと同時に、同条約に明記されている、「日本の南樺太・北千島に対する領有権放棄」についても、承認してはいないということになるのです。

----ということは逆説的に考えれば、南樺太・千島全島は今でも日本に帰属する事になる。

また同条約には、日本が南樺太・北千島に対する領有権を放棄する事は明記されていますが、日本によって領有権が放棄された同地域が旧ソ連に譲渡編入されるなどということは一言も書かれてはいません。
繰り返しますが、あくまでも「領有権の放棄」しか書かれてはいません。
つまり、国際法的には旧ソ連が同地域を領有する根拠は何一つないということになり、それは同時に、「北方領土」はもとより、南樺太・北千島をも不当に占拠しているということになる訳です。


                        = この稿つづく=
 コメントボードに頂きました感想。
└─┘┌──────────「沙者さん」

ロシアに7年間住んだ後、中国にやってきて3年目になる者です。私も日本人ですから、皆さんの気持も痛いほど分かる。ただ、領土返還交渉は、ロシア連邦とうい相手がいる。

現状では、日本が何を言っても、どんな強行な態度とろうと、経済援助をちらつかせようと、ロシアは4島の返還をしないだろう。ロシアが受け入れられるのは、2島返還し、平和条約を結び、それで最終決着とすることだけなのだ。

前エリツィン政権時代、ロシアのマスコミは北方領土の故郷を思う日本人達の思いをインタビューしたドキュメンタリー番組などを放送していたので、ロシア世論は日本に同情的だった。ロシア政府の方針であった2島返還に反対するロシアの民族主義者を迎える必要もあったのだろう。

しかし、日本が4島一括返還を求めると、ロシアのマスコミは一転して日本批判に転じた。“国後、択捉には、すでに定住しているロシア人が多数いる。旧ソ連崩壊後、外国に取り残されたロシア人が2等市民扱いされていることを忘れるな”

しかし、この報道も政治宣伝の色彩が濃く、別のロシア地方紙の記事によれば日本が北方領土にいるロシア人に高い生活水準を保証するのであれば、そのほうがよいという世論調査まで掲載されていた。

プーチン政権が誕生すると、ロシアはエネルギーを武器にして、空前の経済成長を遂げる。GDPは旧ソ連の超大国時代の規模を回復、北方領土にも政府は贅沢な開発投資を行うようになった。露政府は、極東や北方領土で反返還運動を計画し、官製デモが多発するようになる。

プーチン政権発足当時、大統領はロシアをEUに加盟させることを夢見て、記者会見でロシアは西側に一員であり、ヨーロッパであると、さかんに力説していた。しかしEUは門前払いした上“ロシアはヨーロッパではない”“未来にもヨーロッパにはなりえない”と声明を出す。

その後、大統領は、ロシアはヨーロッパではない、ロシアは独自路線を追求すると宣言し、NATO拡大問題、ユーゴ問題、チェチェン問題、旧ソ連諸国の民主革命運動、ユコス問題、ロシア国内の不正選挙問題などで欧米とことごとく対立し、強行路線をとるようになる。

ロシアにとって日本とは、ロシアと敵対する欧米の勢力圏なのだ。特に、米国が東欧と日本で進める戦略ミサイル防衛計画は、ロシアにとって受け入れがたい暴挙とみなしている。

ロシアが本気で4島返還の領土交渉をするとすれば、対米緊張緩和・EU加盟・EU内での特殊な地位の承認などを得て、西側の一員となった後だろう。ただ、ロシアに長年住んで分かったのだが、ロシアに西欧民主主義を根付かせるのは不可能だろう。当然、西側の一員にもなれそうもない。そうでなければ、日本が日米安保条約を破棄し、ロシアの準同盟国にでもならなければ、まともに返還交渉に応じない。

それ以外にも北方領土を取り戻す方法があるとしたら、自衛隊による武力制圧などだろうが、ロシアは核大国なので、そんなことをしたら核攻撃で日本は消滅してしまう。

では、どうしたらよいか。

日本は、ロシア経済の生命線である原油と天然ガスの国際価格が暴落する政策を、西側や中東諸国、中国、インドと協力して推進する必要があるだろう。しかし、これを実現するには、中東イスラムとアメリカの和解や、中国やインドの省エネ技術促進が前提になる。

資源の国際価格が暴落すれば、ロシアの経済も大打撃を受け、政情も不安定になる。さらに日本は、ロシア連邦内のチェチェンやコーカサスや非ロシア人地域の反ロシア独立派を経済・軍事援助するのである。この独立派に対する経済・軍事援助停止の条件として、北方領土4島の返還を打診するのである。

独立派の夢見る、そしてロシア民族主義者達にとっての悪夢であるロシア連邦崩壊が起ころうものなら、群雄割拠したロシアをさらに分断し、軍事的に北方領土を制圧、返還を実現するべきかもしれない。ーーー日本国憲法上の個別的自衛権、もしくは自衛隊の国内移動と解釈すればよい。

しかし、ロシアが混乱したり弱体化すれば、中国が“失地”回復を目指してロシアや周辺諸国に介入することが考えられる。

中央アジア諸国や北朝鮮、モンゴル、イランでは中露が覇権を争い、影響力を競い合い、ある意味で抑止力が効いている。

中国国内の中国と中国人は依然として反日であり、強大化すれば日本最大の脅威でもある。一方、国民の大多数が親日で反中のロシアは、中国に対する抑止力でもある。日本は、ロシアと対決する意志がないのであれば、ロシアの抑止力を十分利用して、対中カードとするのがよいだろう。考えられる策は、日本はこの両国と国際社会に宣伝工作を行い、中露の対立を煽るのである。
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┌──────────「大原敬一さん」
私は北海道生まれの北海道育ちですが、ロシアの態度行動には、ほんとにハラが立ちます。帝政時代のロシア人のほうが、人間性が高かったのではないでしょうか。現在のプーチン政権を蛇蝎の如く嫌います。
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┌──────────「Jan さん」
ロシアとの交渉は、今後とも話し合いでは解決しないでしょう。というのは、ロシア人というのは、一度手にしたものは暴力で打ちのめされる以外では決して手放さないからです。これは歴史が証明しています。
共産主義といっても彼らのは独裁主義であり、常に武力で人々を支配してきたからです。だからといって、今後日本とロシア間で武力の衝突はありえないでしょう。というのは、たとえあったとしても、大多数の日本人は昔と違ってみんなブタになっていますから、武力衝突すると必ず日本が負けるだけです。そんな戦争はやるべきではない、というよりも、情けないことにそんな気概もないので、北方領土を取り返すことは先ず不可能だと思います。最近、少し気概のある首相が出てきましたが、程度の低いマスコミと第3国人に洗脳されたような国賊的な人々にボコボコにたたかれ、極め付きは大臣に抜擢したアホなお友達に引きずり下ろされてしまい、最後にはとうとう投げ出してしまったではありませんか。多分、最後の瞬間彼は、あまりの仕打ちに高邁な理想も忘れてしまって、狂乱状態になり、こんなバカどもに付き合っておられるか!という気分ではなかったかと思います。本当に惜しいことをしました。
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┌──────────「まいさちさん」
南樺太は、日露戦争で賠償金を諦めた代わりに得たものであるからして、現在の状況をみると、一体あの戦争で我が国が流した血や、犠牲にされた国民生活は一体何だったのか、と思ってしまいます。
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┏━━━━━━━━━━「竹下義朗さん」
メルマガ掲載の北方領土に関する私の記事は、プーチン政権成立以前に執筆したものですので、時間的にも世界情勢からしても陳腐化している部分がある事は確かです。エリツィン時代だったら通用した経済援助カードも、現在では全く通用しませんし、天然資源を武器に復活した大国ロシアに対して、斜陽を呈している現在の日本では、明らかに分が悪い。とはいえ、私は「プーチン帝国」のロシアがいつまでも繁栄できるとはまったく思っていません。その点については、いずれ小論を発表する積もりですので今ここで明らかにする訳にはいきませんが、

ロシアにとって極めて深刻、且つ重大な問題が近未来、いや早ければ数年以内に起こるものと見ています。おそらく、それは、ロシアが日本に尊大な態度を取っていられない程の問題となるでしょう。その機を逃さず、日本がロシアの足元をみて攻勢に出れば、領土返還交渉が一
気に進展するかもしれません。ーーーとはいえ、いざその時になってみなければ実際のところは分かりませんが・・・・
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お便りで頂きましたご意見。
┌──────────「hideおじさん」
北方領土は、日本の領土であるのは間違いありません。しかし、今までの返還に対する日本の対応というのは、稚拙というのは言い過ぎかもしれませんが、お粗末という謗[そし]りは免れないないでしょう。

特に、サンフランシスコ講和条約の批准国会の際に「放棄する千島列島には国後・択捉も含まれる」などという見解を出した政府要人がいたのですから何をかいわんやです。

後にその発言は取り消されましたが、みすみす相手に日本は一枚岩ではないことを知らしめてしまったのは大エラーだと思います。
日ソ平和条約の交渉において2島(歯舞・色丹)返還が上げられましたが、アメリカから「勝手に進めると沖縄は返さないぞ」と脅され、流産した経緯もあります。

冷戦時代であれば、北方領土はアメリカの国益にも利するものですから、上手くアメリカを利用できたとは思うのですが、それも「過ぎたるは及ばざるが如し」で残念です。

私が北海道にいた頃は、共産党が頑張って「千島列島全て返還せよ!」とやってましたが、最近はどうなっているのでしょう?中国とソ連が対立していたころは、日本共産党も鼻息が荒かったのですが、仲良くなったらトーンダウン。

中国も、北方領土は日本の領土と言ってくれていた時期もあったのに...2015年には、国後・択捉を含む千島のインフラを整備するとロシアはぶち上げていますが、何とかそれまでに、筋道だけはつけておかないと、未来永劫返還されないのではないでしょうか。

いっそのこと、北方領土近海に海上自衛隊を派遣して示威行動をする!
世界の注目を引き付けたところでロシアの不法占領をあらためて訴えていく。ーーーなんて、やっぱり夢でしょうか。
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┌──────────「(^^) OJIN です(^^)」
西安地図出版社編:袖珍世界地図冊 定価8.5元。文庫本サイズの地図帳。~~ふ~~~ん、、どんなふうに描かれてるもんかいなぁ・・・
パラパラパラ........、アルゼンチン沖合いに、いつかイギリスとドンパチやらかしたフォークランド諸島があります。ーーー憶えておりますか?――「阿根・英争議」と注釈がつけられていました。阿根=アルゼンチン・英=イギリス・争議はそういう意味)

では中印国境紛争の係争地、カシミール地方はいかに?

これはもう中国が既に占領している「アクサイチン」(Aksai Chin)地区は当然中国領として表記されていましたが、その他のカシミール地方全体の色はインド本国と同じ色で塗りつぶされている!

一応、停戦ラインの点線は描かれていましたが、全体はインド本国と同じ色。~~ふ~~ん~~さてでは、我が北方領土なんてぇモノは如何様に表記されてるもんだべか?・・・どうだったと思いますか?!!なんと!!

日本とロシアの国境線は、択捉島とウルップ島の中間に引かれていました!但し、北方四島の各島には「俄占」(俄=ロシア、占=占領)と注釈がつけられていました。
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