人民元VSユーロでは人民元は皮肉にも元のレート(05年7月と同じ為替レート)
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成19年(2007年) 11月28日(水曜日)
通巻第2012号
北京、EU首脳にも通貨の切り上げ要求を拒否
サルコジ(仏大統領)、EU首脳らが訪中し、貿易不均衡への不満を述べたが。。
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EUの通貨「ユーロ」は独歩高、米ドルは下落、日本円は相対的に強いが、「ユーロ」の強靱さに比べるとものの数ではない。
EU首脳は北京を訪問し、人民元の切り上げを要請した。
貿易の不均衡(EU全体の対中赤字は1700億ユーロ)に照らし、人民元の操作による被害はEU全体で20億ユーロに達している、とした。
「人工的に為替レートを安く操作している」とEU高官は公言し、さらなる人民元切り上げを要請したが、中国の首脳はこれを拒否、「EU向けの中国からの輸出の半分以上は外国企業によるもの」と批判をかわした(ヘラルドトリビューン、28日付け一面トップ)。
人民元は2005年7月から徐々に切り上げており、現在までに9%近い切り上げは対米ドルに対してなされた。
ところが、ユーロは対米ドルで圧倒的に強くなっているため、逆に人民元VSユーロでは人民元は皮肉にも元のレート(05年7月と同じ為替レート)なのである。
EUの対中国への不満は通貨から噴き出した。
○◎み◎や◎ざ◎き◎○ま◎さ○ひ◎ろ○◎
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(読者の声1) このところ、貴誌がまったく届きません。なにかインターネット上での事故でしょうか? 技術的問題なのか、政治的妨害なのか?
(YI生、II生、SU生ほか)
(宮崎正弘のコメント) 原因不明です。しかし、一日に数名からメルマガ不着を告げられると、これは生半可な事態ではないことを認識しています。技術者と相談して、パソコンを買い換えるなどの措置をとりたいと考えております。
当面の対策ですが、HPのバックナンバーはいつでも閲覧可能ですので、そちらからお読み頂くしか、いまのところ手だてがありません。
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(読者の声2) 貴誌2011号に転載された衆議院議員の西村真悟先生の訪米報告と米国の北朝鮮戦略の分析は大変ためになりました。
米国の外交混迷に対して日本側の政治指導は二院の分裂と自民党の実質崩壊で大混乱に陥っており、国民はパニックになりつつあります。そこでこの際西村先生に愛国的な新党を立ち上げていただくわけには行かないでしょうか。
国土の侵犯、国民の拉致と日本を巡る状態は急を告げています。不安な国民は圧倒的に支持すると思います。
(MC生)
(宮崎正弘のコメント) 西村先生は父上の地盤があって、しかし、同区からは左翼の候補者も強く、ややこしい選挙区事情があります。全国区なら当選は疑いのないところで、新党という事になりますが、さて。現場の事情に疎い小生としては、これ以上のことは分かりかねます。
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(読者の声3) 「台湾を悪者にする日経」
WTOの略称で知られる世界貿易機関で、最高裁定機関への中国人判事任命を巡り、台湾が抵抗していることをご存知だろうか。
香港英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』は、まず11月20日付紙面のロイター電で、前日、ジュネーブで開催された定例会において、台湾が中国から初となる判事の任命に異議を唱えたことを速報し、さらに21日付紙面の自社記事では、中国政府を代表する判事の任命により、公正性が損なわれることへの台湾政府の懸念を、台北発で詳しく伝えている。
また、英国発の国際的な経済紙である『フィナンシャル・タイムス』は、11月20日付紙面で、やはり公正性維持への深い憂慮から、台湾が中国人判事の任命を遮ったと、自社記事により簡潔に報じている。
この経緯については、『日本経済新聞』もアジア地区国際版では11月21日付紙面で取り上げたが、その際の見出しは「台湾反対で議題すべて棚上げ」であり、8行の記事中およそ6行を費やして、台湾の反対により全ての議題が棚上げになったこと、その中には日本人判事の任命案件が含まれることを記し、中国人判事の任命について触れたのは最後の2行であり、しかも「異議を唱えたとみられている。」と、推測の形を取っている。
これでは読者に、台湾が闇雲に国際機関の秩序を乱す存在であるとの印象を与えるのみで、なぜ台湾が異議を唱えたか、問題点を全く示していない。
特に前2紙と比較する時、日経新聞の記事には台湾への悪意が感じられ、さらには、国連への加盟などとんでもない、との印象を読者に与える狙いがあると疑うのは、飛躍し過ぎているだろうか。
(YY生、在香港)
(宮崎正弘のコメント) そうですよね。日経が「いけいけドンドン」路線を突っ走って、あろうことか、危険の存在を軽視して、さかんに中国投資を奨励したのです。
その朝日より悪性な報道姿勢は、じつに問題です。
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(読者の声4) 貴誌先日のコメント欄で紹介のあった、宮崎さんが昭和60年(1985年)に上梓された『戦国武将の情報学』(現代書林)を手に取りました。
信州上田出身の小生は、まず第三章 「武田信玄の情報学」の第三節 「真田幸隆からも諜報・謀略を学ぶ」のページを開き、つぎに第五章「謀将三代・真田家の謀略戦略」に飛びました。
幸隆は有名な真田幸村のお祖父さんで、同書で智将と位置づけられ、その子昌幸(幸村の父)は謀将とされています。
そして「幸村はまさにその情報学の伝統を踏まえながらも天才的軍師であった。最後まで策士策におぼれる、の轍を踏まず、武士の名誉を選択し、壮絶な死を遂げた」
と同郷の武将に躍り上がりたくなるような賛辞が呈されています。
幸村の兄が信之で、昌幸は真田家の存続を懸けて、信之を徳川に附け、自らと幸村は豊臣方に附きます。 信之の名は元は信幸の文字でしたが、幸の字を厭っているだろう家康・秀忠(昌幸・幸村親子は二度に渡り上田城を攻めた徳川軍を退け、二度目は関が原に向かう秀忠軍を十日間も上田の地に止め、天下分け目の戦いに参戦させない成果を挙げ、秀忠に失態を演じさせました)に遠慮して信之と称したのです。
真田家は、江戸時代に入りすぐ松代へ移封され、すでに四百年経っている現在も、上田市民に慕われているのは、善政を敷いていた証左でしょう。
真田家の前に上田に威勢を及ぼし、武田勢を何度も打ち負かした強将村上義清の武勇の逸話や伝説が、地元に伝わらないのは、そこで生活していた人々と気持が通じていなかったからでしょう。
真田家は、不思議な霊界に対する支配をも兼ねる滋野氏の流れを引いて、「畏れ」られたとの説が引用されています。
たしかに猿飛佐助・霧隠才蔵・三好青海入道などの忍者・間諜を含む異能者集団を率いていたとの虚実の入り混じった伝説は、そうした背景から生まれたのでしょう。そして真田十勇士伝説の流布には、大阪の陣で武勇伝を振り撒き散って逝った真田幸村への、大阪人の判官贔屓の面も与ったと思います。
同書のタイトルにある情報学の切り口で述べられている事々には、これが二十年以
上前の書なのかと驚いてしまいます。
(引用開始)
「ジョウホー、ジョーホー」と言って情報入手の戦術ばかりを重視し、テクニック
に秀でても、これらを統括するリーダーの質こそ、情報戦の精髄なのである。
孫子がいみじくも言っている。
「聖者に非ざれば、間を用いること能わず、仁義に非ざれば間を使うこと能わず、
微妙に非ざれば間の実を得ること能わず」と。
すぐれて英知に富み、人間の喜怒哀楽を理解し、人情と義理を尊び、即ち人間の管
理、人材のマネジメントという、情報のもっとも大切なソフトウエアを持ったリー
ダーでない限り、どのようなスパイのテクニックを行使しようとも結果は水泡に帰
そう。 (引用止め)
上の中で著者が誰を論っているかは、本メルマガの読者には明察できると思います。
早すぎた卓見はなかなか世に容れられず、埋もれてしまうものですが、『戦国武将の情報学』は埋もれさせたくない、一著です。
明快で歯切れのよいリズムある文体が、要領よく配された図版と相俟って、戦国武将の情報戦略ぶりを、巧みに炙り出しています。
中国では「情報」の熟語はスパイを意味するとか、捕虜が生き返って敵中に進入すると位が上がる日本将棋(「歩」は敵中に入ると「成金」となる)に毛沢東が仰天したとのエピソードを挟んでいるところなど、今日中国情報の分野で大活躍の宮崎さんの萌芽が見られます。
宮崎ファンならずとも、「読まずに死ねるか!」の卓見の一書 です。
(しなの六文銭)
(宮崎正弘のコメント) 二十年以上まえの著作を持ち出して来られて、当方のほうが面食らいますね。しかし本質はなにも変わっていません。
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