消費者が中国産の梅に慣れてしまい、本当の梅の味を忘れてしまっては困る
中国産食品の安全性が問題視され、国産食品が見直されるなか、日本一の梅の産地として知られる和歌山県で、特産の「紀州南高(なんこう)梅」が、これまで押されっ放しだった安価な中国産を抑えて売れ行きを伸ばしている。ところが、消費者が中国産の値段に慣れてしまったためか、売れているのは南高梅の中でも“すそもの”と呼ばれる比較的安い低級品ばかり。「『これが紀州の梅』と思われても困る」と、手放しでは喜べないジレンマに悩まされている。
地元農協によると、南高梅は傷や斑点の有無などによって最上級の「A」から「B」「C」「その他」の4等級に分類。価格もAが高く等級が下がるにつれて安くなる。有力産地の田辺市では、今年の生産量は2万2000トンと例年並みで、半分が「A」。例年約3万トンを収穫するみなべ町でも品質は高かった。 ところが、実際に売れゆきが伸びているのは「C」や「その他」に分類される低級品。特に「その他」は、果肉が堅かったり、皮が破れたりしたもので、農家がJAなどに出荷する価格は10キロあたり1500円前後といい、梅干しではなく、果肉を利用する加工用に主に使われていた。 安価な梅しか売れない背景にはここ数年、中国産農産物が大量に輸入されてきたことがある。健康食品の代表格とされる梅でも、国産より安価な輸入ものが幅を利かせており、特に弁当などに入れられる業務用の梅干しの大半は中国産とされてきた。 和歌山では価格では勝負できないため、品質を重視して南高梅の販売に力を注いできたが、JA関係者は「消費者が中国産の梅に慣れてしまい、本当の梅の味を忘れてしまっては困る」。 中国産は2年連続の不作に加え、食に対する安全意識の高まりもあり、国産品の需要は高まっているものの、C級以下は、最上級のA級2Lサイズ(出荷価格10キロ約7000円)の4分の1以下で、「いくら売れてもほとんど利益が出ない」と関係者は嘆く。 また本来は加工用でしかない梅が「紀州産」の名で梅干しになって全国に出回ることに、地元の生産者や加工業者の心境は複雑。最近は、百貨店でもC級以下をお買い得品として販売しているケースもあり、高級品種の購買層にも影響を与える事態という。 地元JAなどは低級品の出回りを防止しようと、農家から買い取る作戦を展開しているが、梅干し業者がより高い価格で買い占めてしまうという。JAみなべいなみの担当者は「C級以下の梅を紀州南高梅と思われては…」と懸念している。 11月25日21時32分配信 産経新聞 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071125-00000935-san-soci |