台湾の声 ー 光明か暗黒か中国の選択
【論説】光明か暗黒か中国の選択
時局心話會代表 山本善心
今、中国共産党に対する国民の不平と不満が深刻な事態を招きかねない状況にある。中国の経済発展と拝金主義の反動として、自然の破壊が全土に浸透、中国社会が環境危機に直面しつつあるようだ。毎年長野県の面積に近い森林が伐採され、15億人が捨てるゴミによって70%近い海や川が汚染されつつあり、魚の住めない環境破壊が進行している。つまり、経済発展による環境汚染で、人間が住むどころではないのだ。
中国の経済発展は外国企業の資金や技術、経営のノウハウなどの提供と日本の援助資金で成り立ってきた。日本企業も5000社以上が進出しており、現在、上海に2万5千人、北京では2万人近い日本人が滞在中だ。昔は日本人居留民の安全を守るため日本軍が駐留したが、現在は日中経済の発展と共存のため日本企業が進出している。
環境改善は教育から
まもなく北京オリンピックが開催されようとしている。これは中国発展の姿を見てもらいたい、という強い思いによるものだ。しかし世界の眼は、中国の環境悪化や犯罪、食品偽造など相次ぐ事故に、ためらいと不信の念を禁じ得ない。
中国の海には不可思議な巨大クラゲやヘドロが堆積し、日本の近海にまで及んでいる。しかし中国政府は何らの具体的な対策も講じていない。環境に対する美意識と改善の意識が薄く、汚物との共存に不自由を感じないのが、歴史の中で備わった中国人の生活習慣である。それゆえ海外環境に悪影響を及ぼすことで注意や改善を促しても聞く耳を持たず、すべてが絶望的な状況にあるといえよう。
今後、中国の環境改善に関してはまず行き着くところまで行かざるを得ず、その上で中国人がどう判断するかを待つより仕方がない。大人たちが永年の生活習慣を変える前に、まず環境問題に対する子供教育を徹底することが先決だ。
今、中国では反日教育が集中的に行われているが、それよりも自然や環境を良くする環境教育に力を入れることが重要課題ではなかろうか。これは中国が世界と共存するために必要不可欠な緊急案件に他ならない。この問題が解決されない限り、今後の中国経済は急激な衰退の道を歩まざるを得まい。
中国は文盲大国
中国の人口15億人のうち文字の読めない、書けない人民が1億人以上もいるという現実がある。中国教育部の高級幹部である高学貴氏によると、中国では文盲一掃に力を入れているが、その数は2006年には1億人近くに達するという。文盲の数は年々増加しており、インドに次ぐ世界第2の文盲大国となった。今のところ、人口密度の低い西部地区には4000万人、人口密度の高い中東部地区には6000万人の文盲人口がいると見られている。
中国では至るところで社会制度と仕組みが綻び始めている。しかもすでに述べたとおり環境汚染が深刻化し、生物に悪影響を及ぼすとみられる水と食品の問題が急浮上するなど末期症状だ。経済成長10%が続く限り、全世界に環境汚染を振りまくしかない。
中国本土の環境悪化
中国の飲料水は飲める状態になく、基準を超えた大腸菌に汚染されたままの水道水や炭酸飲料がペットボトルで売られているという。抵抗力のない日本人が飲めばすぐ下痢になるというものだ。また8月6日付北京日報では、国で発売されている117種類の炭酸飲料のうち21%が品質基準に満たず、大腸菌も含有基準を超えていると報じた。
最近になってようやく、食品偽造問題などが日本のマスメディアに大々的に報じられるようになった。毎年2000名以上の日本人ビジネスマンが腹痛や下痢症状を起こし、そのうち100名以上にのぼる原因不明の死亡者が確認されているという。
こうした汚染による深刻な問題が他の生物の生存にも影響を与えているようだ。日中米英の研究者らの調査チームによると、揚子江の淡水イルカが環境汚染の影響で絶滅した可能性が高い。1999年の13匹、2002年の1匹を最後にイルカの存在は確認されていない。
中国改革に向けて
こうした現状について中国政府も、従来の自画自賛式ではなく、深刻な現実を直視した危機感に訴えざるを得なくなった。全人代常務委員会・全国政治協商会議など、党組織をあげて党改革に取り組む姿勢が見られる。今こそ環境改善に危機意識を持って議論してもらいたいものだ。
中国を改善する法治体現にとって、古い考え方が最も頑固な障害になっている。新しい時代に適応した新体制づくりを行えば、既存の古い体制に安住する権力層を敵とせねばならない。共産主義による独裁国家とはいえ、古い体質からの脱却は至難であり、言葉だけが一人歩きしている。国家のさらなる腐敗・堕落は予見できても、現体制を変えることとは別の問題だ。
たとえば安倍政権は発足以来、憲法改正手続、教育改革、国家公務員法などの法案を成立させた。これは歴代政権では考えられない画期的な法案改正であった。しかし日本の一部報道や官僚をはじめ、日本の支配層を敵に回した結果、安倍政権は参院選で集中砲火を浴びる結果を招いたものだ。
今回の参院選では、安倍内閣の閣僚に対して計画的かつ周到に、政治とカネ、スキャンダルなどが争点とされた。政治の理念や政策という本質にあえて触れようとしない意図が見え隠れする。
光明か暗黒か中国の選択
胡錦涛氏も安倍政権に見習い大改革を断行したいところであるが、胡錦濤政権が「人民のための奉仕」を体現し古い体制を改革するには、やはり現体制を敵に回すしかない。しかし最近はスローガンも「栄光ある偉大な中国」という自画自賛式から「光明か滅亡かの中国」へと訂正されてきたのは、中国の前進だと評価したい。
筆者は中国政府の苦悩が手に取るように分かる。最近の胡錦涛氏の講話の文言は危機感に溢れたものへと様変わりしつつある。7月1日に行われた「中国共産党結成記念日」では、胡氏自らが中央の腐敗構造を断ち切れるか否かに触れた。また今まで17年間にわたって反腐敗運動を展開してきたが、どれほどの効果があったか疑問だとしている。
また胡氏は次のようにも述べている。「今日、党はすでに危険な時を迎えている。もし我々が問題を放置すれば大きな過ちを犯すことになり、全党、全人民に災難をもたらし、歴史の罪人となるに違いない。党は生気を失い、沈滞している。我が党はすでに、光明か暗黒か、希望か滅亡かを選択する時期に来ている」
香港誌開放元編集長の来日
本年8月1日、香港の「開放」編集長である金鐘氏が来日した。東京では数人による「金鐘氏を囲む会」が開催されたが、筆者は先約のため参加できず、代理として「時局コメンタリー」の山本新太郎編集主幹が出席。金氏は文化大革命直後から文学評論を始めた中国人ジャーナリストで、1987年に香港の「開放」編集長に就任して以来、中国国内の政治的、歴史的な問題に関して鋭く指摘し、中国共産党の体制批判を続けてきた。
最近、金氏の新著『人間・周恩来-紅朝宰相の真実』(原書房)が出版された。「『囲む会』で金氏は中国の国内事情に警告を発している。周知の通り「中国人民解放軍」は中華人民共和国という国家の軍隊ではなく、中国共産党という政党が保有する軍隊だった。最近の中国世論で「軍隊の国有化」が求められているが、軍は国の指揮下になく、党の指揮下でしか動けないのが現状である。
最近、胡錦涛氏は「調和のとれた社会」論をしきりに唱えている。つまり中国の格差社会を是正したいというものだ。しかし中国が一党独裁を続ける限り、永遠に格差社会は変わらないであろう。しかし西側の資本主義、自由経済を受け入れる限り、今後世界の常識や法治、人権、民主化を受け入れなければ、世界経済との関係摩擦で、やがて深刻な事態に直面するしかない、と金氏は考えている。
今では中国政府内からも呉邦国氏のような大幹部から、「政治制度や機構の運営が法治を体現できない」「規律検査委員会の幹部や担当の腐敗が深刻」などといった発言が政府の会議や各種委員会で公然と語られるようになった。金鐘氏の狙いは中国民主化運動であるが、筆者や弊会はその主張に共鳴し、協力を惜しまないものである。
『台湾の声』 http://www.emaga.com/info/3407.html
時局心話會代表 山本善心
今、中国共産党に対する国民の不平と不満が深刻な事態を招きかねない状況にある。中国の経済発展と拝金主義の反動として、自然の破壊が全土に浸透、中国社会が環境危機に直面しつつあるようだ。毎年長野県の面積に近い森林が伐採され、15億人が捨てるゴミによって70%近い海や川が汚染されつつあり、魚の住めない環境破壊が進行している。つまり、経済発展による環境汚染で、人間が住むどころではないのだ。
中国の経済発展は外国企業の資金や技術、経営のノウハウなどの提供と日本の援助資金で成り立ってきた。日本企業も5000社以上が進出しており、現在、上海に2万5千人、北京では2万人近い日本人が滞在中だ。昔は日本人居留民の安全を守るため日本軍が駐留したが、現在は日中経済の発展と共存のため日本企業が進出している。
環境改善は教育から
まもなく北京オリンピックが開催されようとしている。これは中国発展の姿を見てもらいたい、という強い思いによるものだ。しかし世界の眼は、中国の環境悪化や犯罪、食品偽造など相次ぐ事故に、ためらいと不信の念を禁じ得ない。
中国の海には不可思議な巨大クラゲやヘドロが堆積し、日本の近海にまで及んでいる。しかし中国政府は何らの具体的な対策も講じていない。環境に対する美意識と改善の意識が薄く、汚物との共存に不自由を感じないのが、歴史の中で備わった中国人の生活習慣である。それゆえ海外環境に悪影響を及ぼすことで注意や改善を促しても聞く耳を持たず、すべてが絶望的な状況にあるといえよう。
今後、中国の環境改善に関してはまず行き着くところまで行かざるを得ず、その上で中国人がどう判断するかを待つより仕方がない。大人たちが永年の生活習慣を変える前に、まず環境問題に対する子供教育を徹底することが先決だ。
今、中国では反日教育が集中的に行われているが、それよりも自然や環境を良くする環境教育に力を入れることが重要課題ではなかろうか。これは中国が世界と共存するために必要不可欠な緊急案件に他ならない。この問題が解決されない限り、今後の中国経済は急激な衰退の道を歩まざるを得まい。
中国は文盲大国
中国の人口15億人のうち文字の読めない、書けない人民が1億人以上もいるという現実がある。中国教育部の高級幹部である高学貴氏によると、中国では文盲一掃に力を入れているが、その数は2006年には1億人近くに達するという。文盲の数は年々増加しており、インドに次ぐ世界第2の文盲大国となった。今のところ、人口密度の低い西部地区には4000万人、人口密度の高い中東部地区には6000万人の文盲人口がいると見られている。
中国では至るところで社会制度と仕組みが綻び始めている。しかもすでに述べたとおり環境汚染が深刻化し、生物に悪影響を及ぼすとみられる水と食品の問題が急浮上するなど末期症状だ。経済成長10%が続く限り、全世界に環境汚染を振りまくしかない。
中国本土の環境悪化
中国の飲料水は飲める状態になく、基準を超えた大腸菌に汚染されたままの水道水や炭酸飲料がペットボトルで売られているという。抵抗力のない日本人が飲めばすぐ下痢になるというものだ。また8月6日付北京日報では、国で発売されている117種類の炭酸飲料のうち21%が品質基準に満たず、大腸菌も含有基準を超えていると報じた。
最近になってようやく、食品偽造問題などが日本のマスメディアに大々的に報じられるようになった。毎年2000名以上の日本人ビジネスマンが腹痛や下痢症状を起こし、そのうち100名以上にのぼる原因不明の死亡者が確認されているという。
こうした汚染による深刻な問題が他の生物の生存にも影響を与えているようだ。日中米英の研究者らの調査チームによると、揚子江の淡水イルカが環境汚染の影響で絶滅した可能性が高い。1999年の13匹、2002年の1匹を最後にイルカの存在は確認されていない。
中国改革に向けて
こうした現状について中国政府も、従来の自画自賛式ではなく、深刻な現実を直視した危機感に訴えざるを得なくなった。全人代常務委員会・全国政治協商会議など、党組織をあげて党改革に取り組む姿勢が見られる。今こそ環境改善に危機意識を持って議論してもらいたいものだ。
中国を改善する法治体現にとって、古い考え方が最も頑固な障害になっている。新しい時代に適応した新体制づくりを行えば、既存の古い体制に安住する権力層を敵とせねばならない。共産主義による独裁国家とはいえ、古い体質からの脱却は至難であり、言葉だけが一人歩きしている。国家のさらなる腐敗・堕落は予見できても、現体制を変えることとは別の問題だ。
たとえば安倍政権は発足以来、憲法改正手続、教育改革、国家公務員法などの法案を成立させた。これは歴代政権では考えられない画期的な法案改正であった。しかし日本の一部報道や官僚をはじめ、日本の支配層を敵に回した結果、安倍政権は参院選で集中砲火を浴びる結果を招いたものだ。
今回の参院選では、安倍内閣の閣僚に対して計画的かつ周到に、政治とカネ、スキャンダルなどが争点とされた。政治の理念や政策という本質にあえて触れようとしない意図が見え隠れする。
光明か暗黒か中国の選択
胡錦涛氏も安倍政権に見習い大改革を断行したいところであるが、胡錦濤政権が「人民のための奉仕」を体現し古い体制を改革するには、やはり現体制を敵に回すしかない。しかし最近はスローガンも「栄光ある偉大な中国」という自画自賛式から「光明か滅亡かの中国」へと訂正されてきたのは、中国の前進だと評価したい。
筆者は中国政府の苦悩が手に取るように分かる。最近の胡錦涛氏の講話の文言は危機感に溢れたものへと様変わりしつつある。7月1日に行われた「中国共産党結成記念日」では、胡氏自らが中央の腐敗構造を断ち切れるか否かに触れた。また今まで17年間にわたって反腐敗運動を展開してきたが、どれほどの効果があったか疑問だとしている。
また胡氏は次のようにも述べている。「今日、党はすでに危険な時を迎えている。もし我々が問題を放置すれば大きな過ちを犯すことになり、全党、全人民に災難をもたらし、歴史の罪人となるに違いない。党は生気を失い、沈滞している。我が党はすでに、光明か暗黒か、希望か滅亡かを選択する時期に来ている」
香港誌開放元編集長の来日
本年8月1日、香港の「開放」編集長である金鐘氏が来日した。東京では数人による「金鐘氏を囲む会」が開催されたが、筆者は先約のため参加できず、代理として「時局コメンタリー」の山本新太郎編集主幹が出席。金氏は文化大革命直後から文学評論を始めた中国人ジャーナリストで、1987年に香港の「開放」編集長に就任して以来、中国国内の政治的、歴史的な問題に関して鋭く指摘し、中国共産党の体制批判を続けてきた。
最近、金氏の新著『人間・周恩来-紅朝宰相の真実』(原書房)が出版された。「『囲む会』で金氏は中国の国内事情に警告を発している。周知の通り「中国人民解放軍」は中華人民共和国という国家の軍隊ではなく、中国共産党という政党が保有する軍隊だった。最近の中国世論で「軍隊の国有化」が求められているが、軍は国の指揮下になく、党の指揮下でしか動けないのが現状である。
最近、胡錦涛氏は「調和のとれた社会」論をしきりに唱えている。つまり中国の格差社会を是正したいというものだ。しかし中国が一党独裁を続ける限り、永遠に格差社会は変わらないであろう。しかし西側の資本主義、自由経済を受け入れる限り、今後世界の常識や法治、人権、民主化を受け入れなければ、世界経済との関係摩擦で、やがて深刻な事態に直面するしかない、と金氏は考えている。
今では中国政府内からも呉邦国氏のような大幹部から、「政治制度や機構の運営が法治を体現できない」「規律検査委員会の幹部や担当の腐敗が深刻」などといった発言が政府の会議や各種委員会で公然と語られるようになった。金鐘氏の狙いは中国民主化運動であるが、筆者や弊会はその主張に共鳴し、協力を惜しまないものである。
『台湾の声』 http://