テロについての5つの誤解 | 日本のお姉さん

テロについての5つの誤解

渡部亮次郎のメイル・マガジン 頂門の一針  第935号
平成19(2007)年09月17日(月)第935号

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長きをもって尊しとせず
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          古澤 襄

3日ほど前の夜に入院中の安倍首相の容態が急変したという情報があっ
て暗澹たる思いに駆られた。翌日になって根拠のない永田町情報と分か
ってホッとしたのだが、安倍首相は参院選の最中も点滴を受けながら頑
張っていたのは本当らしい。

安倍首相は理念型の政治家といわれる。発足当初から長期政権を目指す
よりも、短い期間であっても戦後レジームからの脱皮の指標ともいうべ
き法案の成立に全力投球した。

これまでの歴代内閣が実現できなかった!)改正教育基本法!)防衛庁の省
昇格関連法!)改正テロ対策特別措置法!)地方分権改革推進法!)改正貸金
業規制法!)改正官製談合防止法(議員立法)!)憲法改正の手続きを定め
る国民投票法などを次々と成立させている。

閣僚の不祥事が出て内閣支持率が急低下し、心身ともに疲労して不本意
な退陣となったが、残した業績はいずれ評価されるであろう。小泉内閣
で冷え切った日中関係も好転している。”政権は長きをもって尊しとせ
ず”である。

ジョージタウン大学東アジア言語文化学部長のケビン・ドーク教授は知
日派だが、安倍首相を高く評価している。日本では、まだ安倍政権を評
価する声がでていないが、米国から最初に評価する見解が生まれている。

【ワシントン=古森義久】日本の民主主義やナショナリズムの研究を専
門とする米国ジョージタウン大学東アジア言語文化学部長のケビン・ド
ーク教授は14日の産経新聞とのインタビューで、安倍晋三首相の辞任表
明に関連して、安倍氏が米国では日本の歴代首相のうちでも「明確なビ
ジョン」を持った指導者としての認知度がきわめて高く、米国の対テロ
闘争への堅固な協力誓約で知られていた、とする評価を述べた。

ドーク教授はまず安倍首相の約1年に及ぶ在任の総括として「安倍氏は
比較的、短い在任期間に日本の他の多くの首相よりもずっと多くの業績
を残したが、その点がほとんど評価されないのは公正を欠く」と述べ、
その業績として(1)教育基本法の改正(2)改憲をにらんでの国民投
票法成立(3)防衛庁の省への昇格-の3点をあげた。

同教授は米国の安倍氏への見方について「米国では安倍首相への認知が
肯定、否定の両方を含めてきわめて高かった。たとえば、森喜朗氏、鈴
木善幸氏ら日本の他の首相の多くとは比較にならないほど強い印象を米
側に残した。

慰安婦問題で当初、強く反発したこともその一因だが、日本の今後のあ
り方について明確なビジョンを示したダイナミックな指導者として歴史
に残るだろう。安倍氏が米国の対国際テロ闘争に対し堅固な協力を誓約
したことへの米国民の認識も高い」と語った。

ドーク教授は安倍氏の閣僚任命のミスなど管理責任の失態を指摘しなが
らも、「戦後生まれの初の首相として日本の国民主義と呼べる新しい戦
後ナショナリズムを主唱して、国民主権の重要性を強調し、対外的には
国際関与を深める道を選んだ。

安倍氏が『美しい国へ』という著書で日本の長期の展望を明示したこと
は、今後消えない軌跡となるだろう」とも述べた。

同教授はさらに「逆説的ではあるが、安倍氏の辞任表明の時期や方法も、
それ自体が業績となりうると思う。健康上の理由、政治上の理由、さら
には唐突な辞任表明での責任の問題もあるだろう。

だが安倍氏が国民投票法など本来、まずしたいと思ったことを達成し、
さっと辞任するという動き自体が今後の政治指導者の模範例となりうる」
と語った。

同教授はまた「現在の日本での安倍氏への評価は戦後の旧来の産業社会
の文化や規範を基準としており、情報社会の文化基準を適用していない
ために、『戦後レジームからの脱却』などがあまりよく理解されず、支
持されないのだろう」と説明した。



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三段論法の2人だが
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         渡部亮次郎

三段論法(さんだんろんぽう ギリシア語 syllogismos)は、「大前提」
「小前提」「結論」の三つの命題から成る推論規則である。アリストテ
レスによって整備された。

「大前提」に法則的に導き出される一般的な原理を置き、「小前提」に
目前の具体的な事実を置き、「結論」を導き出す。

以下に三段論法の例を示す。

大前提:すべての人間は死すべきものである。

小前提:ソクラテスは人間である。

結論: ゆえにソクラテスは死すべきものである。(出典: フリー百科事
典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

田中角栄と話していると、彼は「一段論法者」だった。「余は正義也」。
己の信ずるところがすべて正しいのである。それを通すためにあらゆる
小技を使ったが、小技を全く使わずに一段論法を通そうとするのが娘真
紀子である。

ついでに言えば真紀子の子供たちは三段論法の信奉者らしいので、みん
な真紀子の言う事は聞かない。田中ファミリーはアリストテレスによっ
てバラバラになった。

三段論法。これこそは西欧である。明治の元勲はそろって三段論法を学
ぼうとした。それこそが「先進国」の哲学と信じたからである。

東京大学はそれを教える場所として作られたものであり、そこで育成さ
れた官僚は国に起きるすべての事象を三段論法で処理した。

麻生太郎は学習院大学後ロンドン大学大学院(中退)、福田康夫は早稲
田大学政治経済学部経済学科卒の経済学士だが、教えられた事は三段論
法がベースになっていた。

人生観や世界観には大学卒業後の環境や生活が影響するだろう。2人と
も「アカ」には染まっていない。

しかし麻生は祖父吉田茂首相の築いた「戦後レジュームからの脱却」に
積極的な姿勢を見せているのに対して、福田は戦後平和主義に閉じこも
り、外交的にはアジア重視と称して中国、韓国、北朝鮮と協調する姿勢
を見せている。

麻生は学習院大学卒業後、ロンドン大学に留学、福田は留学はしなかっ
たが、英語に堪能、サラリーマンとしてアメリカ暮らしを何年か経験し
た。麻生はロンドンから帰って炭坑会社をセメント会社に切り替えるな
ど、経営者として苦労を重ねた。福田に無い経験である。

2人の討論を聞いていると、麻生こそは三段論法に立脚し、心情や政策
を論理的に展開する事に腐心、自己主張を遂げようとするが、福田は
「総裁候補になって3日しか経っていないから」と司会者の追及をかわ
そうとする。政治家になって何十年になるんだ、といいたい。

福田は性格的には頑固だから相手が丸見えになるまでは自己を曝さない。
それは良く言えば慎重といえるが、別の言い方をすれば狡猾という事で
ある。官僚もそうである。仲間や派閥はできない。今回は各派閥が束に
なって利用にかかったという図だ。

その昔、父親の福田赳夫を担当した頃、赳夫が「うちの康夫はなんであ
んなに官僚的なんだろう」と嘆いた事がある。東大出の赳夫が私大出の
息子を官僚的だというので心底、嗤ってしまった。

同時期に福田番をした先輩、古澤襄(のぼる)元共同通信社常務理事が
ブログでか韓国紙の福田歓迎論を紹介している。
http://blog.kajika.net/

<韓国の中央日報が福田康夫氏について詳しく報道している。安倍首相
の退陣によって後継首相は福田氏とする一方で「韓中との関係を重視す
るハト派」の登場と歓迎している>

韓国側としては「御しやすい」から歓迎なのだ。中華人民共和国とて同
じだ。と言う事はとりもなおさず日本はこれから中韓と「協調」という
名の追従が始まるという事だ。危うし竹島。絶望か尖閣列島。

16日に行われた総裁選挙の立会演説会で、お開きになったとき、麻生は
国旗に会釈した。福田はまったく頓着せず。福田は小中高で日教組の影
響を強く受けたのであろう。文中敬称略。2007・09・16



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テロについての5つの誤解
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            平井 修一

ワシントンポスト紙は9月11日、「テロについての5つの誤解」と題する
論評を掲載した。掲載から6日間を経たが読者の関心は高く、アクセスラ
ンキングでトップを維持している。著者はアラン B.クルーガー・プリ
ンストン大学教授で、「テロリストを生む社会」の著作がある。以下は
抄訳である。
・・・・

9/11の同時多発テロから6年たったが、多くのアメリカ人は、テロリス
トがなぜテロを実行するのか、あるいは実行しないのか、それについて
漠然とした考えしかもっていない。このため、多くの政治家が、テロは
テロリストが目的を実現するために起こすと不安を指摘するものの、い
まひとつピンと来ないでいる。テロについて5つの間違った誤解があるた
めだ。

誤解の1. 「テロは我々の生活様式を憎む不合理な人々によって行われ
る場当たり的な行為だ」

もしそうなら単純だが、実際のところテロリストは、衝動的な憎悪では
なく地政学的な不平・不満・苦情が動機になっている。個々のテロリス
トグループの狙いはいろいろだが、彼らの戦術的なゴールはだいたい同
じで、すなわち国に方針や方法を変えさせるために故意に一般人を対象
に恐怖と混乱を植え付けることである。

政治的な計算がなされている。たとえば、他国を占領する国の住民は、
テロリストの攻撃対象とされやすい。そのうえ、全体主義体制の国家よ
り、裕福な民主主義国家はテロリストの攻撃対象になりやすい。一般人
の圧力に影響されやすい国をテロリストは故意に攻撃することを示唆し
ている。

テロ攻撃を「場当たり的」とみなさないもう1つの理由はこうだ。

彼らは最大の影響を与える時期、例えば重要な選挙の直前などにテロを
実行するよう計画する。

たとえばイスラエルでは、(パレスチナとの共存を模索する)左翼政権
のとき、(イスラエルの存在を認めることになる)和平会談を妨害する
ためパレスチナ過激派のテロ攻撃は選挙の前に頻発する。(パレスチナ
との対決を辞さない)タカ派的な方向にイスラエルの有権者を誘導する
ことを狙ったものだ。

(訳注:パレスチナ過激派はイスラエルの滅亡を目標にしており、和平
や共存共栄はまったく考えていない
。屈辱的な平和より名誉ある戦争を
求めている)

テロリストは冷めた論理で、攻撃時刻まで選択するのだから決して「場
当たり的」ではない
。全国テロ対策センターのデータによると、テロリ
ストは一日の報道が始まるが朝に攻撃する傾向がある。

誤解の2. 「テロリストは普通の犯罪者と少しも変わらない」

間違っている。普通の犯罪者は、おおむね貧しく無教育な傾向がある。
しかし、テロリストは平均以上の家庭出身で、しばしば学歴が高い。

たとえば1980年代と1990年代初期に戦死した過激なシーア派のグループ、
ヒズボラ陣営のメンバーは、彼らのレバノンの同国人より高学歴で比較
的裕福だった。テロ集団に加わる人々はおおむね合法的で給料がいい仕
事についており、普通の犯罪者とは違っている。

誤解の3. 「テロリストは主にメキシコ経由で米国に潜入する」

これは、出入国管理を強化し、フェンスをメキシコとの境界に建設した
がっている一部の活動家と政治家の好む論だ。しかし、歴史の記録とは
違っている。過去は将来を占うものではないが、テロリストはメキシコ
からはほとんど入ってこない。

373人のイスラム教徒テロリストについての最近のニクソンセンターの研
究では、「我々はテロリストの存在をメキシコには見なかったし、メキ
シコから米国に潜入したテロリストもいない」と結論している。

むしろカナダにかなりの数のテロリストが潜み、米国に潜入している。
1999年12月にロサンゼルス国際空港を爆破しようとしたアルジェリア人
のテロリスト、アーメド・レッサムはワシントン州へカナダ国境から潜
入した。

誤解の4. 「テロは主にイスラム教徒によって引き起こされる」

間違っている。テロの独占的卸もとのような宗教はない。あらゆる大き
な宗教にテロリズム支持者はいる。たとえばスリランカは、主にヒンズ
ー教徒からなる少数派タミル族のために祖国をつくるとして自爆攻撃を
創始した分離主義者グループ「タミルイーラム解放の虎」と何十年も闘っ
てきた。

急進的なイスラムテロリストが9/11とイラク戦争のため目下の心配事で
はあるが、データを見る限り、国の支配的な宗教がなんであれ、その国
民がテロリズムに関与するかどうかは別物である。

結局、ティモシー・マクヴェイ(オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事
件)と、(18年もの間、全米を震憾しつづけてきた爆弾魔の)いわゆる
ユナボマーのような地元の札付きのワルが最も悪名高いテロリストであ
ったことは最近の事例で判る。

それは次の意味を示している。大多数のテロ事件はローカル(地元密着
型)であり、ローカルに根ざした懸念によって動機づけられ、その土地
の人によって実行される。

国際的なテロさえローカル化する傾向がある。偶然彼らの国にいる外国
人を対象とするテロは地元のテロリストによってしばしば実行される。
その土地のテロリストによる攻撃の可能性は、外国人による9/11スタイ
ルのテロよりはるかに大きいことを示唆している。


誤解の5. 「テロは決して成功しない」

テロが有効でなければ、将来テロは減るだろう。しかし、テロリストは
時々彼らのゴールを達成する。だから他のテロリストもこの戦術をため
し続けるのだ。

もちろん、テロリストの目的が何であるか判断することは必ずしも容易
ではない。しかし、時には彼らのゴールはかなり明白だ。2005年3月にマ
ドリードで実行された壊滅的な通勤列車爆破を考えてみよう。

スペインの議会選挙の3日前である。伝えられるところでは、テロを実行
したイスラム過激派はスペイン政権転覆を望み、それは成功した。

ホセ・ガルシア・マタルボ(バルセロナのUniversitat Pompeu Fabraの
経済学者)による新しい研究では、ある行政区の爆破前の不在投票と、
爆破後の投票を比較したところ、爆破のショックがイラク戦争を支持し
た保守政権に終止符を打ち社会党政権を誕生させたことを示している。
社会党は政権に就くや即座にイラクからスペイン軍を撤退させたのであ
る。



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反     響
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 1)ご健筆にいつも頭が下がります。

三十路となったばっかりで昔の総裁候補たちを存じ上げませんが、ここ10
年ほどの総裁候補の中で、麻生さんほど細かい数字を挙げながら多方面
の分野にわたって政策を語った人がいたでしょうか。

政策の良し悪しは色々とあるのかもしれませんが、福田さんと比べれば、
歴然の差ではありませんか。福田さんは、具体的な政策を語りましたか。

それにもかかわらず、自民党員はおろか、最新の世論でさえ圧倒的に福
田さん支持とは、暗澹たる思いです。

丁度5年前の小泉訪朝の際、福田当時官房長官は、家族会に対して非礼極
まりない言動を発したと記憶しております。

また、李登輝前台湾総統の来日の際も、強硬に前総統の訪日に反対した
と聞いてます。こんな人が、日本の顔となって世界に向き合っていくん
ですね。

民主党が厭で自民党に投票してきましたけど、これからはどこへ投票す
ればいいんでしょう。虚しくなってきました。(門)


2)毎日のメルマガ編集と発行、お疲れ様です。

昨日の自民党総裁選挙(事実上の首相候補選出選挙)を聞いていて、や
はりというべきか、国家や国民にとって必要と思われる政見を披瀝して
いたのは麻生太郎氏の方でした。

でも、恐らくは福田康夫氏が自民党総裁に当選するのではなかろうか。
下馬評を覆して麻生太郎氏が当選したら自民党の将来、ひいては日本国
の将来に旭光を見出すことができるかも知れないが、まず無理だと思う。
(異邦人)


 3)いつも勉強させていただいてをります、渡邉晃と申します。安倍
前首相辞任、福田氏浮上に関する一連の記事を拝読するにつけ、政治評
論の質の高さにあらためて感銘致しました。

つきましては、渡部亮次郎氏の福田圧勝の悲劇と古澤襄氏の奇想天外の
政界劇の二記事を、拙ブログの安倍前首相辞任について考察する記事中
にてバックナンバーをリンクさせていただきたいのですが、宜しいでせ
うか?宜しくお願ひ致します。

http://tropicalia.weblogs.jp/tropicalia/

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身 辺 雑 記
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公園を強く吹きぬけるのはまともな南風。だが遥か上空を流れて行くち
ぎれ雲は南西から北東方向へである。どちらも風なのだが、今の日本の
政情を表しているかのようだ。世論とマスコミ或いは自民党派閥論理の
乖離。

昨夜は久しぶりに浅草の釜飯屋。ちょっと血糖値が上がった。釜飯を食
べ過ぎたのである。卑しいから、と秋田弁では言う。食い意地の張った
奴を軽蔑するのに「卑しい」という。

それを東京で使うと誤解を招く。離婚に至ることもある。

ご投稿、ご感想、ご意見を待っています。読者:3029
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大阪では、「口卑しい」(くちいやしい)って言うなあ。

by日本のお姉さん