吉林省の辺境「長白山」にも飛行場 朝鮮半島の危機に備えた軍民併用空港か?
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成19年(2007年) 9月11日(火曜日)
通巻 第1921号
吉林省の辺境「長白山」にも飛行場
朝鮮半島の危機に備えた軍民併用空港か?
****************************
美しいところらしい。中国語では長白山。朝鮮の呼称は「白頭山」。朝鮮族のみならず世界から観光客が群がり始めた。
吉林省の通化といえば、嘗て満州帝国崩壊の末期、関東軍が参謀本部を移転し、ここには飛行場もあった、一時は皇帝溥儀ものがれた。
戦後、通化に集まった日本人は武装解除されて、引き上げを待ったが、その間に、共産党の国民党残党狩り陰謀に巻き込まれ、機関銃で三千人が虐殺された。川は鮮血で真っ赤に染まった(通化事件探訪記は拙著『中国よ、反日ありがとう』(清流出版刊)の第二章「ならば中国は何をしたか」を参照)。
これを「通化事件」と言う。
その通化から汽車で六時間とちょっと。超白山の麓にある白河という駅にたどり着ける。ほかに延吉や吉林、長春からもバスがあるが、なかなか遠いため、日本人で行った人は極めて少ない。
じつは筆者もまだ、ここには行ったことがない。
さて、通化からバスで辺境めがけて二時間。北朝鮮との国境の町「集安」に辿り着く。
この辺境が突然人口が膨らみ始め、町中でクレーンが稼働し、建設ブームは留まるところがない。
やってくるのは韓国からの投資、観光客。多くは近くにあるピラミッド遺跡を見に行く。高句麗王陵と好太王碑である。これらは大変な観光資源で世界遺産に申請されたが、中国は、嘗てこの地にあった朝鮮族の王朝は中華王朝に支流だと言い放った。
さてさて長白山の観光開発事業は、中国国家観光局が「5A級風景区」に認定し、その近くには長白山空港の建設が始まった。
空港は観光用と説明されており、地域コミューター航路を中心として北京、青島、大連、長春などと来夏には、フライトが繋がるという。
だが、どう考えても採算の合わない辺境の空港を中国が急ぐ理由は、軍事的緊張の際に軍用に転用させるためであろう。
満州里は中国とロシアの国境だが、南西へ二時間のハイラル空港だけでは物足りなく、莫河というツンドラ地帯の山奥の奥にも空港を作った。愛軍条約で有名な黒河にも、小さな飛行場がある。これらはいずれも満州時代に陸軍航空隊の簡易飛行場があった。
北朝鮮を睨んで、鉱区と港湾の争奪に忙しかった中国。こうして北朝鮮との辺境への飛行場建設も、将来の政治的布石。いずれ何かが動くだろう。
○◎み○や○ざ◎き◎○ま◎さ◎ひ◎ろ○◎
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(読者の声1) 今年初めでしたか、『アトランティック・マンスリー』の常連ライターの韓国取材記事で、かつての日本による中国&朝鮮支配、そして中韓ともに北朝鮮を現状に凍結しておきたいという過去と現在双方の共通項から中韓が提携を強め、日本を孤立させる形で、韓国が米側からますます離脱していくという趣旨の記事が出ていました。
確かキャプランという有名な書き手だったと思います。
アメリカ側のひがみと日本が自国に近づかざるをえないことへの願望充足がないまぜになった面白い記事でした。
(MO生、相模原)
(宮崎正弘のコメント) じつは、そうした動きが米国外交の水面下で包括的に動きだしたという気配がしないでもありません。
米国はなぜ、日本の利害を無視するかのように、しかも日本に知らせずに北朝鮮と話し合いをはじめまたのでしょうか。
同盟国を裏切るかのように米国は、この点では韓国ともまったく情報を共有していない。先日のシドニーでの米韓トップ会談も、韓国の奇妙な大統領の物言いに呆れて、ブッシュは早々に米韓会談をうち切りました。
一方で、米国の対北朝鮮政策は、微妙に、しかも鮮烈に変化している。
テロ支援国家とは話し合いはしない、とブッシュ政権は鮮明にしていたわけですから、二国協議を開始したのも日本に対しての一種の裏切り。
中国は北朝鮮制裁を口だけで言い募りながら、実際はさっさと石炭、鉄鉱石、レアメタルの鉱山開発権利を金正日にカネを払って確保し、ロジン、ソンボンの港湾改修工事も中国企業がやっている。
日本海の出口を確保、まるで北朝鮮は中国の経済植民地です。
米国は偵察衛星、資源探査衛星をつかって北朝鮮の核開発を監視していましたが、その過程で北朝鮮のウラン資源埋蔵が予想以上のものであることを確認したようです。
日本が拉致問題で強硬な立場を貫いている間に、プラグマティストたちは、次の現実に向かって突っ走り始めた、という側面を見逃すわけにはいかないでしょう。
◎◎◎◎◎
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四月に刊行された拙著『2008年 世界大動乱の予兆』を大幅に改訂増補。新データを満載。
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『世界“新”資源戦争』(阪急コミュニケーションズ刊)。
『中国から日本企業は撤退せよ!』(阪急コミュニケーションズ刊)
『中国人を黙らせる50の方法』(徳間書店刊)
『出身地でわかる中国人』(PHP新書)
『拉致』(徳間文庫)
『三島由紀夫の現場』(並木書房)
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(C)有限会社・宮崎正弘事務所 2007 ◎転送自由。ただし転載は出典明示のこと。
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吉林省の辺境「長白山」にも飛行場
朝鮮半島の危機に備えた軍民併用空港か?
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美しいところらしい。中国語では長白山。朝鮮の呼称は「白頭山」。朝鮮族のみならず世界から観光客が群がり始めた。
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戦後、通化に集まった日本人は武装解除されて、引き上げを待ったが、その間に、共産党の国民党残党狩り陰謀に巻き込まれ、機関銃で三千人が虐殺された。川は鮮血で真っ赤に染まった(通化事件探訪記は拙著『中国よ、反日ありがとう』(清流出版刊)の第二章「ならば中国は何をしたか」を参照)。
これを「通化事件」と言う。
その通化から汽車で六時間とちょっと。超白山の麓にある白河という駅にたどり着ける。ほかに延吉や吉林、長春からもバスがあるが、なかなか遠いため、日本人で行った人は極めて少ない。
じつは筆者もまだ、ここには行ったことがない。
さて、通化からバスで辺境めがけて二時間。北朝鮮との国境の町「集安」に辿り着く。
この辺境が突然人口が膨らみ始め、町中でクレーンが稼働し、建設ブームは留まるところがない。
やってくるのは韓国からの投資、観光客。多くは近くにあるピラミッド遺跡を見に行く。高句麗王陵と好太王碑である。これらは大変な観光資源で世界遺産に申請されたが、中国は、嘗てこの地にあった朝鮮族の王朝は中華王朝に支流だと言い放った。
さてさて長白山の観光開発事業は、中国国家観光局が「5A級風景区」に認定し、その近くには長白山空港の建設が始まった。
空港は観光用と説明されており、地域コミューター航路を中心として北京、青島、大連、長春などと来夏には、フライトが繋がるという。
だが、どう考えても採算の合わない辺境の空港を中国が急ぐ理由は、軍事的緊張の際に軍用に転用させるためであろう。
満州里は中国とロシアの国境だが、南西へ二時間のハイラル空港だけでは物足りなく、莫河というツンドラ地帯の山奥の奥にも空港を作った。愛軍条約で有名な黒河にも、小さな飛行場がある。これらはいずれも満州時代に陸軍航空隊の簡易飛行場があった。
北朝鮮を睨んで、鉱区と港湾の争奪に忙しかった中国。こうして北朝鮮との辺境への飛行場建設も、将来の政治的布石。いずれ何かが動くだろう。
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毒入り食品からオモチャの鉛、段ボール入り「肉まん」に至るまで、[MADE IN CHINA]は、いかにして世界で嫌われ、忌避されるにいたったのか、その原因は奈辺にあり、今後、解決される見通しはあるのか?
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