三原淳雄『金持ちいじめは国を滅ぼす』(講談社α文庫)は、おもしろそう、、、。
宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成19年(2007年) 9月10日(月曜日) 貳
通巻 第1920号
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三原淳雄『金持ちいじめは国を滅ぼす』(講談社α文庫)
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三原淳雄氏と言えば「経済評論家」の範疇に入る言論人だけれども、世間一般でいうエコノミストはいわゆる「市場」なるものを語り、「規制緩和」をプラス方向で述べ、金融、金利を意図的に難しく説き、株価の動きを論評する人達である。
株価は乱高下し変動するものである以上、短期的見通しだけを分析するのは、木を見て森を見ざる類いだが、日本では後者の近視眼が大手をふって「株式評論家」なる生業をたてて法螺を吹き返している手合いが多い。
著者の三原氏は証券会社出身でスイス、ロスなど支店長経験もあるが、根底に経済を語っても、常にその立脚点は「国益」であり、長期的な、戦略的な経済見通しを語っても、五分後、二時間後の相場見通りは語らない。
だから異色の経済評論家なのだ。
本書も、題名から感じるイメージは儲かりそうな相場を語り、大金持ちを擁護し、バフェットなどの投資指南を分析したハウツー本に違いないとする先入観で読むと、まったく見当違い。
これは日本という国家の戦略論を経済の視座から論じた書物だ。
三原氏は「サイクル」と「トレンド」とを明確に峻別し、短期的サイクルより、地下水脈のごとき、大きな流れに炯々と注視し、判断材料を仕分けしていく。
そして国際化はげしい日本経済はまったく新しい地平に立っている現実を説き、それなのに国内のみを論ずる国会もテレビも、まったくどうしようもない俗物と切って捨てる。
日本は政策ミスによってバブル経済を破綻させ、いままた景気浮揚のチャンスをみすみす政策のミスマッチによって逃してしまったが、「そろそろ発想を大きく変えてみては」と薦める。
「大借金の政府にはもはや無い袖は振れないのだから、政府などを頼りにするのを止めて、自らの力で新しい日本をつくることを考えて」みるのが良い。
さいわいにして日本には「カネはふんだんにあった優秀な労働力もある。また世界に冠たる技術の集積国でもあるのだから、要は組み合わせがうまくいっていないだけ」だと歯切れ良いフレーズから次々と飛び出してくる。
細々(こまごま)とした政策を根ほり葉ほり語るのが、最近のエコノミストの論議・論戦だが、そうした動きに超然として、しかし日々マーケットを観察している。
実は評者(宮崎)もテレビで時折、三原氏とご一緒するので、氏が旧満州生まれであることは知っていたが、先日、楽屋で話し込んだおり、父親の転勤で満州里、チチハル、瀋陽から金山、大連。血の滲むような内地への引き上げは胡蘆島からだったと伺った。
なるほど骨太で戦略を重視する経済史論の発想は、この満州体験からなのか、と思った。
そう思いつつ読み進んでいくと、満州で子供時代、満族のお菓子屋へ行くと毎日値上がりしていて、満州商人に騙されていると立腹していた。が、満州国の通貨はいずれ紙くずに化けて、満州国は解散し、せっかくの預金も紙くずとなった。
満州族は、大本営発表を信じなかった。独自の情報ネットワークがあったのだ。
この原体験から、円の問題に移り、いまや円安より円高のほうが国益に叶うと解説されるのである。
もう一回、「実は」を使って小生の体験を述べると三十年前まで評者(宮崎)も「円安」こそ、国益に叶うと考えていた。輸出が振興し、日本に外貨が蓄積され、国富となる。その輸出が対米貿易で摩擦を起こし、ニクソン・ショック、スミソニアン・レート、プラザ合意を経て、日本円は躍進するように高くなった。
これは輸出を収縮させ、国益に反すると考えた。
そのころ、小生は輸出商社を経営していたから、為替で相当の損出を出したが、それもこれも、円高を敵視したあげくの先入観で、為替の先読みが出来なかったからだった。
だがクリントン政権下で、一ドルが未曾有の90円を更新しても、日本のハイテク産業は、むしろ輸出を伸ばした。
「円高」に耐えきれない産業は国外へ移転した。日本の産業構造が劇的に、しかも円高によって強制的に国際化され、まさに三原氏が指摘されるように「新しい地平」に立った。
円高が長期的な日本の国益から言えば経済をさらに躍動させ、国家のためになるというのが、小生のここ十年ほどの所論であり、その視点からも本書の情勢分析には納得できるところが多かった。
○◎み○や○ざ◎き◎○ま◎さ◎ひ◎ろ○◎
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明治維新の時は、日本に、大きな会社をたくさん作って、金持ちを増やさ
ないと国が発展しないと言って、政治家が個人に金を貸して、
大きな会社を作ることを積極的に勧めたのだ。
日本に金持ちがたくさんいるのは、いいことなのだ。
でも、携帯電話の会社や証券会社ばかり儲かったり、
するのは、どうかな、、。by日本のお姉さん