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JMM [Japan Mail Media]    No.442 Thursday Edition
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■ 『大陸の風-現地メディアに見る中国社会』 第105回
  「グッドラック、北京!」

  □ ふるまいよしこ :北京在住・フリーランスライター

 ■ 『大陸の風-現地メディアに見る中国社会』    第105回
「グッドラック、北京!」

 前回のレポートで、ちらりと、「好運北京」と銘打って北京で

交通規制が行われると書いたが、覚えておられるだろうか。

北京市政府が、8月17日金曜日から20日月曜日までの4日間、

警察、消防、救急、緊急工事などの特殊車両、さらに公共交通
用バス、トロリーバス、大型バス、タクシー、大使館車両などをのぞく

車両を、すべてナンバープレートの下一桁によって、奇数ナンバー車は

奇数日のみ、偶数ナンバー車は偶数日のみの通行規制実験を行う、

というお話だった。
 
 北京の路上は一般に、月曜日と金曜日が異常に混雑する。

それは週末を挟んで市外から流入する車が激増するためとも、

週末休業の商品卸業者の車両が商品の前倒し配達や補填にフル

回転するためともいわれる。確かに、月曜日の午前、あるいは金曜日
の夕方に幹線道路に乗ろうものなら、まったく動けないほどの渋滞に

巻き込まれることがよくあって、人々にとってそのロス時間を先読み

して出かけるのはもう常識だ。
つまり、今回の実験はそんな「魔」の月、金曜日、そして休日マイカー

族が出現する土日をうまく組み込んで行われた。
 
 1日のアクセス数が2万人を超える、超人気ブロガーの王小峰は、

早々と今月初めから「好運北京 Goodluck Beijing」(すらすら北京)を

もじって「好暈北京(Goodluckness Beijing)」(くらくら北京……?)と

揶揄り、ブログでもその豊かな想像力を使ってこう書いている。
 
「……奇数日に生まれた市民は奇数日に、偶数日に生まれた市民は

偶数日にしか街に出かけられないようにしたら、北京の人口は半分

近くに『減る』。すると、公共交通のプレッシャーも緩和されるし、

ショッピングアーケード、レストラン、公園など公共の場の人間の数も

減る。エネルギー節約のために、奇数日には奇数階だけ、偶数日
は偶数階だけ電気を送る。奇数日生まれの市民は奇数日だけ、

偶数日生まれの市民は偶数日だけインターネットができるようにすると、

ネットワークの混雑が避けられる。奇数日生まれの市民が奇数日だけ、

偶数日生まれの市民が偶数日だけ豚肉を食べることができるように

すれば、豚肉は今後も値上がりを続けるだろうか? 

奇数日生まれの市民は奇数日だけ、偶数日生まれの市民は偶数日

だけ出勤すると……」
(「奇数と偶数」王小峰ブログ・8月18日)
 
 確かにこの4日間、「ん? 今日は偶数日だっけ、それとも奇数日?」

と、車を持っていないわたしですらも毎日一度は考えたほど、この

「奇数偶数」規制はなにかと心にひっかかった。土

曜の夜、郊外に暮らし、おんぼろながら車を持っている友人に
会ったら、「オレの車は偶数ナンバーだから、今日は出てこれた」と

言いながら、
「オリンピックなんて面倒くせぇ。オレは絶対、オリンピック中は旅に

出る」と口を尖らせた。
 
 4日間の成果は実際どうだったのか。政府系の(といっても、中国

メディアは多かれ少なかれ政府の意向を受けているが、そのうちでも

特に政府機関の中枢に近い)メディアは予想どおり、「市街地内の

自動車排気ガスと直接関係している汚染物が交通規制の前日に

比べて15%から20%軽減され、アメリカの衛星データの分析によっ
てもその効果が検証された」という市の環境保護局の発表をもとに、

もう手放しの褒めようであった。

「好運北京実験の期間中、半数以上の人がこのキャンペーンが仕事に

影響を与えなかったと答えている。

出勤、退勤の際にピーク時間を避けた人は約6.6%おり、
2.8%の回答者は金曜日と月曜日は家で仕事をし、外出や休暇、

あるいは家で休みをとった人が12.2%いた…(中略)

…来年のオリンピック期間中における奇数偶
数ナンバー別規制を支持する人は65.7%、比較的支持するとした人は

23.2%と、総体的な支持率は88.9%であった」(「9割の回答者が

北京の奇数偶数ナンバー車両規制を支持」労働報・8月23日)
 
 しかし、約305万台といわれる北京の全車両所有台数のうち、1日

あたり約130万台が「運休」したそうだが、それが仕事に影響を与え

なかった――というのであれば、「北京には実際にそれほどクルマは

必要ない」ということだ。また、仕事を家に持ち帰ることができたり、

休暇を取って家にこもって過ごせる人はどう考えても幸せな部類だろう。

なのに、9割近くもの人が半月続く北京オリンピックの際のナンバ
ー規制を支持するなんて、どう考えてもアンバランスなデータである。

一方で、中国青年報社会調査センターと新浪ネットが行った

アンケート調査では以下のような結果が紹介されていた。
 
「2968人の北京市民に対して行った調査によると、『奇数偶数規制

を常態とすべきか』という質問に対して、車を持っているかいないかで、

態度が大きく分かれた。
車を持っていない人のうち78.2%が長期的に続けるべきだと答え、

車を持っている人は61.9%が明らかに反対を唱えたのである。


調査では、車を持っているかどうかに関わらず、9割を超える人たちが

『奇数偶数規制期間、交通がスムーズだった』と答えている。

しかし、『スムーズだ』は必ずしも『便利だ』ではない。調査で
は、86.8%の車を持っていない市民が『便利だ』と考えているのに

関わらず、車を持っている人の56.7%が奇数偶数制が自分に

不便をもたらしたと答えている」
(「規制常態化に対して無車族有車族の態度に違い」北方網・

8月27日)
 
 前回のレポートで、わたしは「『好運北京』後に明らかになるのは、

たぶん北京の公共交通インフラの欠点ではないか」と書いたが、

実際にそうなった。この北方網の記事でもこう続いている。

「今回の調査において、公共交通改革、市街地の駐車スペース数の

引下げ、駐車料金の引き上げ、地下鉄駅付近の駐輪場など、

北京市政府がそれより以前に公布した措置が特に人々の注目を

引いた。『奇数偶数規制は交通渋滞解決の妙薬などではなく、

そこで引き起こされた問題は解決された問題よりもさらに多くなった。

たとえば、公共交通の発展に力を入れ、公共交通の効率と質を引き

上げるなど、その他の解決方法を考えることもまた有効なはずだ。

関係当局がきちんとした条件を作りあげることで、無理やり車を運転させ

ないようにするのではなく、有車族も自発的に車を運転しなく
なるようにすべきだ』との声もあった」(同上)
 
 北京の公共交通について前回も簡単に触れたが、多くのこの街の

公共設備と同じく、ため息が出るものばかりである。たとえば、その

大代表ともいえるバスを例に取ると、バス停は冬は零下の寒風に

吹きっさらし、猛暑の夏は日よけもないし、バスのスケジュールは

まったく分からず、ただひたすら待つのみ。夜は8~10時発が最終
便という路線がほとんどだ。そして、いざ乗ると車内は砂ぼこりだらけ

だし、いつもほぼ満員でぎゅうぎゅう詰め、さらに床はでこぼことした

造りで押し合いへし合いする中で立ち位置に困る。


手すりは壊れ、椅子はゆらゆら。切符売りはものすごい北京なまりの

早口で、乗り換えのための停留所を尋ねても、分からなければ

知らん顔。

同じ名前のバス停が路線ごとにいくつもあって、地図を見ただけで

はわからないことも多い。はっきり言って、それは中国の最低限の

レベルに合わせた設備やサービスで運営されている。
 
 一方で、急速に発展する消費社会の象徴ともいえる住宅は郊外へ

郊外へと拡大しており、もともと最低条件のレベルで運営されている

公共バスはもちろん、そのスピードには追いつけておらず、ネット

ワーク作りは後手後手となっている。さらにそこで暮らす人々は

当然のように次には車を購入し、またそんな郊外団地自体が

自家用車持ちを前提にして造られている。

日頃は乗用車を乗り回す彼らが、そんな公共バスに乗
りたいと思うわけがない。だからこそ、上記の調査のように、奇数偶数

制を常軌化させるかどうかで大きく意見が分かれるのである。
 
 そんな状況において強行された、今回の「好運北京」交通規制では

利用者の波がどうさばかれたのか。

「10万人の公共交通関係者が酷暑の中で担当を守り、市民の順調な

外出を保証した」り、「地下鉄出口のバス停に大型のサービス地図、

飲水器、乗客用のクッションを準備」し、「乗客のために椅子、扇子、

地図、発車時刻表を準備した」り、「バス停には日よけ用の傘20本を

備え」、「500人あまりの管理職がみな休み返上で、運営、

サービスに努め」、「各始発所に緑豆スープ、梅のスープを準備し、

また途中のバス停では冷たいミネラルウォーターがバス乗務員に

手渡された」と、「北京晨報」は公共交通関係職員の苦労をねぎ

らっている(「北京交通公共の1日輸送量が過去最高を記録」・

8月19日)。

 また、同じ記事には、市内6000人あまりの交通警官全員が休みを

返上して路上整理に当たったと書かれ、彼らの努力によって

「好運北京」交通規制がどんなにうまくいったかを持ち上げていた。
 
 ……これはまったくの異常事態である。つまり、「好運北京」交通

規制はその実験の目的が大気汚染整備策決定データ取得であれ、

交通渋滞緩和策検討であれ、関係者総出で「休日を返上」し

(そして一部の利用者たちはわざわざ休暇を取って出勤を取りやめ)、

日頃やらない(やれない)サービスをわざわざ持ち込んで、乗客たち

の不便さを緩和し、情緒をなだめすかし、やっとのことで「混乱なく」

達成されたということだ。

そんな日常化させるための体制も整っていない状況をそのまま

「成功例」と見なし、常態化しようという考え方は、それが半月間の

オリンピック開催中のみであっても、異常と呼ばざるを得ない。
 
 さらにわたしが期間中乗ったタクシーの運転手の言葉をそのまま

引用しようか。

「確かに路上を走ってると車は減ったな、と感じるよ。でも、いつも渋

滞するところではやっぱり渋滞している。

道路の設計自体が理不尽なんだ。

バスだって本数は確かに増えている。でも、よく見てごらん、

一番外側の車線にバスが数珠つなぎになってる。

そして乗客の数といえば、がらがらだ。

数珠つなぎになった車線から大型バスが焦って次々にほかの車線に

割り込もうとして他の車の往来を停めてしまうから、バス停付近は

相変わらず大混雑。オリンピックになれば、もっと街に出る人の数は

増えるだろう。特別許可を取って通行する車も増えるはずだ。


こんな交通規制が役に立つと思うかい?」

 政府はこの4日間の試みの効果を持ち上げているが、

確かにその後、今後の自動車購入規制策すら口にしていない。

逆に、オリンピック期間中にはオリンピック競技関係者車両の走行

確保、そして「ひとかけのハムでお腹をこわしたとなれば、検査車両
がすぐに現場に駆けつけ、残った食物に分析を行い、10分間でその

原因を解析する……」などというオリンピック食品安全措置まで発表さ

れている。ということは、奇数偶数走行規制が行われたとしても、

「オリンピックの安全開催確保」のために確実に「特別許可」が多発

されることは想像にかたくない。この国において、特殊待遇は
いつも特殊ではなく存在する。
 
「かつて広州市の指導者が『都市交通の経常的な渋滞は、急速な

発展期の真っ最中にあるということを説明するものだ』と言ったことが

ある。すっきりしない言葉だが、ある程度道理にかなっているとも

いえる。都市が発展して初めて民生や環境を改善する実力を持つ

ことができるのならば、環境整備は長期的、総合的な工事であり、

単純なナンバー規制走行という措置に頼るものであってはならない

はずだ。上に政策あり、下に対策あり。


『奇数偶数規制が行われればどうする?』とある友人に尋ねた
ら、彼は軽くこう答えた。『もう1台買えばいい』。


つまり、この一言は、自動車は減るどころか、ますます増えていく、

そんな奇数偶数規制の『恐ろしい』点をみごとに表している

「奇数偶数規制の成功を持ち上げるのは待ってくれ」

南方都市報・8月27日)
 
 あっぱれ、中国人民。


ふるまいよしこ
フリーランスライター。北九州大学外国語学部中国学科卒。

1987年から香港在住。
近年は香港と北京を往復しつつ、文化、芸術、庶民生活などの角度か

ら浮かび上がる中国社会の側面をリポートしている。

著書に『香港玉手箱』(石風社)。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4883440397/jmm05-22
個人サイト:http://members.goo.ne.jp/home/wanzee
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【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】128,653部
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まじめな無料メルマガです。専門家がひとつのテーマに

関してまじめに意見を書いている。

でも、わたしは、ふるまい よしこさんの記事とデンマークに

住んでいる日本人女性の記事しか読まない。

上の記事では、ペキンが住みにくい場所だということと、

チュウゴクのメディアは、あてにならなくて、

常に政府のすることをベタ褒めしていて、

うっとおしい国なんだなということが分かる。

自画自賛していても、実際には、ちっとも根本からの対策を

していないので、自動車は増え続けるだろう。車を持てない

市民は2年前とおなじような床がベコベコしたバスで通勤する。

または、政府が用意した貸し自転車で通勤するのだろうな。

オリンピックでは、道路は混雑しないように、住民を締め出さないと

いけないだろう。ペキンと周辺の工場は止めて、車も使わせないで

いたら、空気はマシになるだろう。ペキンオリンピックでは、

選手は、無農薬のエサを与えられた、特別なブタを食べるそうだ。

一般のチュウゴク人は、成長促進剤や抗生物質漬けになったブタか、

病死したブタを食べる。一般人は大事にされていない国なんだなあ。

by日本のお姉さん