近い将来、「中国系ファンド、○○企業の株式を大量買付け」といった見出しが、メディアに踊る日が
中国株、人民元、不動産……中国のお金の流れ 第35回-阿部享士(日本事業通信網 代表取締役社長)
(前回からの続き) 日本の政府は相変わらず税金をいかに取るかを考えるばかりで、“お金でお金を稼ぐ”という発想がありませんから、株式市場などは支援の枠組みの外に置かれているようです。 しかし、「ならば日本株に投資妙味はないのか」と問われれば、「そうでもないかも」というのがわたしの感触です。 なぜか? それはお隣の国、中国から新たなリスクマネーが流入してくる可能性があるからです。 今、中国は膨大な貿易黒字や外貨準備高を背景に溜まりに溜まったお金の処理にやっきになっています。 具体的には国内では銀行の金利の引き上げなどを行い、余剰金を市中から吸い上げる一方、溜まった人民元をふたたび外貨に換えて海外投資などに振り向ける、というもので、最近、中国政府が30億米ドル(約3600億円)を世界最大のアメリカ投資ファンド「ブラックストーン・グループ」へ出資するとの発表がありましたが、これなどはその典型例です。 今年5月に実施が決定したQDII(適格国内機関投資家)の緩和策もこの流れに沿うものです。今回の取り決めにより、商業銀行が保有する投資枠(約1100億元=約1兆6500億円)の50%までを本土以外の海外市場に振り向けることが可能となりました。市場の観測によるとこの緩和策は今後、投資ファンドや証券会社、保険会社などにも適応されるほか、QDIIそのものの枠組みもさらに拡大するとされます。 気になるのはこのチャイナマネーが香港を一巡した後、どこへ向かうかです。2006年末時点における中国国民の預貯金総額は約22兆元(約330兆円)で、これが昨今のA株高騰の原動力となったのですが、経済成長に乗って今後も中国人の富が増え続けていくのならば、その資金の受け皿は香港だけでは不十分。早晩、他の市場への投資も解禁となるでしょう。 そして、その際、チャイナマネーの矛先が向かうのが日本のマーケットではないかと思うのです。 東京市場の株価水準は上海や深セン、香港などに比べて低い。そして、なにより日本の企業には中国企業にないブランド力と技術力があるからです。 スティール・パートナーズに敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けられたブルドッグソースのように、現在、日本の上場企業は米系ファンドの動向に戦々恐々としていますが、近い将来、「中国系ファンド、○○企業の株式を大量買付け」といった見出しが、メディアに踊る日がくるかもしれません。(執筆者:阿部享士) 8月20日10時38分配信 サーチナ・中国情報局 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070820-00000005-scn-cn |