<防衛次官人事問題(続々)>
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<防衛次官人事問題(続々)>太田述正コラム#2004(2007.8.17)
1 始めに
防衛次官人事問題に関する朝日・讀売・日経3紙の社説が出そろったので
比較してみました。
2 3紙の社説
(1)朝日新聞
「・・8月16日付の朝日新聞社説は、「これほどおおっぴらにやり合うのは前代
未聞のこと」として、次のように、閣僚失格の烙印を押した。
「次官を交代させたいなら、手順を尽くして本人にきちんと説明すればいいこ
とだ。小池氏は手続きの途中で人事がもれたと説明しているが、この混乱
ぶりを 見れば進め方に問題があったのは明らかだ。部下を掌握できず、
説得もできない 。閣僚としての資質、力量に欠けると言われても仕方ある
まい」( http://
。8月16日アクセス)
社説の全体像が分からないけれど、この箇所だけでもちょっとひど過ぎます。
(それにしても、社説くらい自社の電子版に全文掲載して欲しいものです。)
執筆した論説委員の常識が疑われてしまいます。
例えば、小池氏が「手順を尽くして」守屋氏「本人にきちんと説明」なんてこ
とをしていたとすれば、守屋氏に根回しを先にやられ、山崎自民党安全保障
会長 あたりが塩崎官房長官とともに安倍首相に強談判に及び、小池案は
公表前につぶされていた可能性が高いことなど、小学生でも分かりますよね。
(2)讀賣新聞
私の見解(コラム#2000)とほぼ同じであり、合格点には達しているのが8月16
日付の讀賣新聞社説です。
なぜ「ほぼ」同じで合格点に「は」達しているかと言うと、「小池防衛相が自
らの人事案を円滑に実現させようとするなら、より慎重で入念な運びが必要だっ
たのではないか。」(
http://
・8月17日アクセス)という、なくもがなの一センテンスが入っているからです 。
(3)日本経済新聞
日本経済新聞の8月15日付の社説には本日気付きましたが、完全に私の
見解と 合致しており、素晴らしい内容のものです。
「・・次官人事をめぐって小池百合子防衛相に守屋武昌次官が抵抗する
光景は 、防衛省が自衛隊という実力部隊を抱える組織であ<るとともに、
緊急事態に対処しなければならない組織であるという>・・事実を考えると、
問題が多い。
・・小池氏の行動には、手続き面で問題があった。が、中央省庁の人事
権は原則的に大臣に属するのも事実である。
守屋氏の抵抗は防衛省に特有の問題を想起させる。
事務当局の最高首脳が政治家に抵抗するのを見た自衛官たちは、
政治家による軍の統制・・のあり方に疑問を持ちかねない。大臣・次官と
いう序列の軽視は、 上官命令を内容によっては無視できるとする空気を
自衛隊内部に醸成しかねない 。
守屋氏の抵抗の背景に政治家の存在が・・仮にあるとすれば、自衛官たち
に一 部の政治家と結んで要求を実現する道もあると教える。
戦前の軍部がとった危険 な手法に近い。
沿う 決定である。
抵抗の中身が自身の退任ではなく後任の人選をめぐる内容であれば、
一定の正当性はある。・・警察庁出身の西川氏を起用する・・<こと>に
どの程度の説得 力があるかも明確ではないが、後任人事に問題があると
すれば、後任を育てなか った<守屋氏>自身にこそ、一義的な責任がある。
<いずれにせよ、>・・各省大臣が官僚の言うがままにならないように
制度化 された・・人事検討・・会議が結果的に官僚の抵抗の手段に使わ
れるとすれば、 制度設計者が考えなかった皮肉である。」(
http://
。8月17日アクセス)
3 私のコメント
小池氏が、沖縄県や名護市から守屋氏更迭の「陳情」を受けていたことは
確かなようです(注)。
(注)「小池防衛相は16日、沖縄県名護市で、「かりゆしウエアを世界に広め
る会」の記者会見に臨<んだが、>・・記者会見には、米海兵隊普天間
飛行場の 移設先となる名護市の島袋吉和市長が飛び入り参加し、
小池氏と握手した。島袋 氏は記者会見直後は記者団に、沖縄側が退任を
働きかけたとする見方を、「事実 無根だ」と否定した。ただ、その後、名護
市役所では、「普通に考えたら、次官 5年は長すぎる。このまま行けば
(普天間問題で県や名護市と)考えがぶつかる 」と述べ、退任が妥当だと
する考えを示した。
http://
8月17日アクセス
また、先般の訪米時の小池氏に対する熱烈歓迎ぶり(コラム#1991)から
見ても 、守屋氏の退任や、そのことによる日本政府と沖縄県サイドとの
関係改善は、ブ ッシュ政権の意向にも沿っていると考えられます。
朝日がそんな小池氏を非難したということは、守屋氏の肩を持ったという
こと であり、吉田ドクトリンの墨守という従来からのスタンスに加えて、
朝日は、反 米かつ反沖縄、
しかも、軍事官庁における下克上容認、政治家と軍事官僚の癒着
容認、という「勇気」あるスタンスを新たに社説で打ち出した、
ということなのでしょうか。
朝日の系列のTV朝日の本日昼の報道番組スクランブルで、朝日の大物
軍事記者の田岡俊次氏が、守屋氏の人物・識見を絶賛していていましたが、
重ね重ねの朝 日の「勇気」には瞠目するほかありません。
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太田述正コラム#2005(2007.8.17)
<防衛次官人事問題(続x3)>
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1 始めに
防衛次官人事問題に急遽決着がつきました。
2 決着内容
本日(8月17日)の正副官房長官らによる人事検討会議で、守屋氏(東北大
法卒、1971年採用、62歳)の退任と、その後任に防衛省生え抜きの増田好平
防衛省 人事教育局長(東大法卒、1975年採用。56歳。比較的最近、内閣
官房勤務経験あ り)を充てる人事が了承され、27日の内閣改造後の28日の
閣議でこの人事が了解される運びとなりました。
3 コメント
私は、本件の可及的速やかな決着の必要性を訴えてきましたが、とにかく
早期 に決着してよかったと思います。
山崎運用企画局長が選ばれなかったことも、結構なことです。
お目当ての警察出身の西川官房長が選ばれなかったのは小池氏にとって
は残念 なことかも知れませんが、増田氏であれば悪くありません。
ただ、安倍首相が塩崎官房長官の顔を立てて西川氏をはずしたことは、
改めて 安倍氏の優柔不断ぶりを示しました。
増田氏が次官に就任すれば、現在の全省庁の次官の中で最年少になる
と報じら れていますが、年次的にはダントツの最年少ではないでしょうか。
(増田氏は2年ほど年次より年を食っていますが、司法試験をパスしてい
ます。)
それもこれも、守屋氏が長く次官をやりすぎたためですが、増田氏の次官
就任に伴い、彼と同年次以上のキャリアは、西川、山崎両氏を含め、早晩
辞めさせなければならず、防衛省の幹部は総入れ替えになります。
増田氏は、他省庁勤務経験があり、ITに強く、クリーンであり、防衛省
キャリ アの中ではまともな方です。
天下り先を確保する必要がない彼が、防衛省における政官業の癒着
構造に切り 込んでくれることにひとまずは期待することにし、とりあえず
エールを送ってお きましょう。
(以上、
http://
http://
(どちらも6月17日アクセス)による。)
が直ちに重要となる」と指摘した。在任4年を超えた守屋氏の退任はそれに