一物二価の中国株の不思議 | 日本のお姉さん

一物二価の中国株の不思議

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一物二価の中国株の不思議(日経)
▼同じ企業なのに株価差が2倍以上-
中国企業が世界の資本市場で存在感を見せつつある。本土市場(上海、深セン)だけでなく、香港、ニューヨーク、シンガポール各市場への上場が活発で、最近では東京にも上場し始めている。しかし、同じ国ながら制度が違う(一国二制度と呼ばれる)香港に上場する企業にとっては事情がやや異なる。 もともとは、中国が資本開放を始めた際の尖兵として1993年に青島ビールなど9社が“実験的に”上場したのだが、当初はもの珍しさもあって一時的に注目を集めたが、その後は長らく雌伏の期間が続いてきた。
1997年の香港返還時にも中国株に関心を寄せる海外の投資家が増えたが、当時は中国企業であっても国籍や拠点を海外に移して中国色を薄めたレッドチップと呼ばれる外資系中国企業が人気を集めた。今や世界最大の携帯電話会社として知られるチャイナモバイルもこの年の10月にレッドチップとして香港で株式を公開したのだ。 レッドチップとは優良株を表すブルーチップを真似て中国のカラーからつけられた俗称で、要は外資に化けた中国企業であるわけだが、その役割は開かれた外国企業として、より高い株価評価を受けて株式公開で多額の外貨を調達することにあった

H株に見る二重価格の不思議
ところが、中国経済が高い経済を謳歌しだした2000年代に入ると、より中国度の濃い企業が注目され、中国本土に拠点がある企業で株券だけ香港に上場したH株(Hは香港の頭文字)が俄然、人気を集めた。2005~06年に中国の4大銀行のうち3行が香港に上場したがすべてH株として売り出された

H株は中国企業の中でも有力な企業が選別されて上場の権利を得ること、しかもその順番は政策の優先順位に応じて決められることが人気の秘密でもある。ところが、昨年後半からそうした状況にさらに変化が見られるようになった。中国国内投資家の台頭であり、それに伴う国内市場の空前の活況である国内投資家は今年5月までは海外株に投資ができず、もっぱら国内株だけを対象としてきた。5月からはQDII(適格国内機関投資家)制度が適用され、銀行などの機関投資家(のファンド)経由で海外投資が可能となった。それでも現状は、ほとんどの国内投資家にとって株式投資といえば、本土上場企業への投資であり、そのためにA株と呼ばれる人民元建ての国内向け銘柄は異常なほどの値上がりを見せている。
深セン、上海の本土2市場のうち人気の高い上海市場では、A株指数が昨年は130%の値上がり、今年も7月12日までに46%上昇している。現在、1つの企業がA株とH株を同時に発行し上場しているケースが40社あるが、こうした結果、その多くのA株がH株の2倍以上高いといういびつな株価を形成している。 表記の銘柄(売買停止などの異常値を除いた32銘柄)の単純平均による株価差は1.8倍だ。まさに、一物二価であり、本土と香港との境界線、具体的には為替規制による流動性の制限がなければ同等であるはずだ。もっとも、この株価差の原因は為替規制だけではなさそうなことが、最近の出来事で明らかとなった。投資家の違いである。

ダータン国際急騰のナゾ
電力大手のダータン国際のケース。同社のA株は6月4日から6月20日までの2週間の間に20.3元から44.08元に117%値上がりしたのだ。原因はこの日、月末に株主総会を開催すると発表したことにある。同社は決算発表時に1:1の株式分割(中国語では紅股、ボーナス株の意味)を行うと発表、その実施要綱は株主総会で決めると宣言していた。つまり、株主総会の開催はこの株式分割が実施される、と投資家に映ったわけだ。実際、7月16日付の株主に対して実施されることになった。

問題は、かつて無償増資と言われたこの分割が、本土の投資家にまさにボーナスに思えたことだ。日本でも無償増資は株高につながった。ただ、基本的には既存株主にとって分割があろうとなかろうと持ち株の価値は変わらないわけで、本来、株価にはあまり影響はないはずだ。 もっとも、分割の背景にあるのは、例えば実質増配(分割度ほど減配はしない)を予定している、低い株価で株主を集めようとしていること、などが期待材料となる場合がある。これを経営陣からのメッセージ効果と呼んで株価上昇を理論づけようとする見方もあるが、それにしても、これほどA株が値上がりするのは異常だろう。現地では分割の意味をよく理解しない個人投資家が買いに集まったとの報道もある。

H株の方は同じ期間に10.12香港ドルから12.7香港ドルに26%の値上がりにとどまっている。6月20日の段階で、この中国第2位の有力電力会社の株価差は、3.4倍に開いてしまった。 となると、割安なH株を黙って買うべきだったか。よくしたものでその後はA株の方が下がってH株に近づいている。本土の投資家もその辺の事情は理解するようになっているようだ。もっとも直近でも同社のH株はA株の半値である。株価の一物二価があるのは世界でも中国だけで、やはりおかしい。