外交と安全保障をクロフネが考えてみた。より
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アグリツーリズモと地方格差
さて、戦後に行われた地方活性化策というのは、ほとんどが国の予算をばら撒いてコンクリと鉄をたっぷり使ったハード(いわゆるハコもの)の整備に終始したのではないだろうか。
その中には確かに役にたったものもあったと思うが、明らかなムダも多かった。
そもそも人も車も少ない過疎地帯に、農水省所管の農道が走っているすぐ横を、建設省(現・国土交通省)の予算でつくった道路が同じ方向に走っている、みたいな話は良く聞くし、農道に関しては、緑資源機構という独立行政法人がからんでいるものもあって、非常にうさんくさいイメージがある。
そのうさんくさい農道の最たるものが”農道空港”だった。
これは農道を拡張して、飛行機が離着陸できるようにし、農産物を都会に空輸して農村振興につなげ、ゆくゆくは人も輸送してしまおうというプロジェクトであった。
農水省が道路行政をつかさどる建設省に対抗するだけではあきたらず、運輸省(現・国土交通省)の航空行政までしゃしゃり出て、予算拡大を狙った面があったことは否めないのではないか。
だが、プロジェクトは完全な失敗。
野菜は高速道路を使ってトラックが運び、人間は普通に空港を利用するという状況で、人間を運ぶどころか野菜を空輸するだけでも大赤字を覚悟しなければならなくなった。
北は北海道から南は大分まで建設された農道空港に投じた予算は100億円以上。 いまでは敬老の日にお年寄りを遊覧飛行に招待する程度しか利用されていないようである。
お役人がどうやって採算がとれると計算したのか知らないが、予算ばら撒きありきの、あまりにも非現実的なプロジェクトであった。
こんなことをいくらやっても地方の活性化にはならないし、国力がムダに浪費されるばかりか、左翼ニューディーラーまがいの官僚に、国が滅ぼされかねない。
予算ばら撒きに頼らず、なるべく自助努力と既存の資産を生かして、どうやって地方を活性化させるかがポイントとなるだろう。
突然だが、管理人は休日によくサイクリングに行く。
片道15kmぐらいのお気に入りのコースがいくつかあるが、田んぼのド真ん中を軽快に飛ばすと本当に気持ちが良い。
ド田舎なので、たまに前方を野ウサギやキジが横切ったり、イタチや狸に遭遇することもある。
春には、小川の土手でヨモギをとって、家に持ちかえって自家製草餅をつくったり、この季節だと、人里に近づくと鎮守様の祭礼だろうか、太鼓や笛の音が聞こえ、お神輿を囲んで集落の人が集まっているところに出くわしたりする。
「ツーイ」という鳴き声で、ふと川の方を見ると、コバルトブルーとオレンジの翡翠(カワセミ)が飛んでいたりしていて、どこにでもありそうな、私の大好きな日本の田舎の風景がそこにあるのである。
これは立派な資産ではないだろうか。
ところが、ちょっと離れたところを都会へ向かう国道が通っているが、そこを忙しそうに往来するドライバーたちにとって、こうした風景はまったく眼中に無い。
たぶん、ほとんどの人がイメージ的に「日本の田舎なんてダサくて、たいした価値も無いでしょ」と思っているのではないか。
休日に、ウオン高で買い物旅行のうまみも無く、反日感情で、下手をするとわざわざ高い金を払って不愉快な思いをして帰ってくるだけになるかもしれない韓国へ行ったり、大気汚染でのどをやられ、汚染食物で安心して食事さえ出来ない中国へ行って、健康を害して帰ってくるよりは、安心でやすらげる日本の自然の中で健康的に休暇を過ごす方が、どれほど良いかと思うのだが。
そこでだが、日本でも”アグリツーリズモ”を取り入れることができないものだろうか。
アグリツーリズモの発祥はイタリアで、語学に強い人はもうピンときたのではないかと思うが、アグリ(農業)+ツーリズモ(旅行)で、農村滞在型の観光と言ったらよいだろうか。
アルファロメオ”GTV”はグラン・ツーリズモ・ヴェローチェの略。忘れてください。
イタリアのアグリツーリズモは、観光客が農家のゲストルームなどに泊まり、収穫などの農作業を体験しながら、地場の農産物(野菜・果物・肉・乳製品・ワイン)を使った食事を楽しむほか、そこを拠点に観光地をまわったり、スポーツを楽しんだりするものである。
5年くらい前から、エコライフとバカンスが結びついて、欧州では人気があり、遠く北欧からイタリアの田舎へわざわざやって来る観光客も増えているという話を聞いたことがある。
アグリツーリズモも、やはりイタリアの農村振興策として始まったらしい。
イタリアに限らず、フランスやドイツなどの欧州先進国は、ベンツやエアバス・アルファロメオに代表されるように工業のイメージがあるが、実は農産物も非常に豊かで、農政もかなり進んでいると思う。
食物自給率の高さでは、日本はまったく勝負にならない。
日本にアグリツーリズモをもってくるとしても、そのまま農家に観光客が宿泊というわけにはいかないだろうから、農村にある旅館・民宿など既存の施設を生かしてそこへ泊まってもらう。
どっかの特殊法人がつくって不良債権化した保養施設があるならそれを再利用しても良いだろう。
そこを拠点にアグリツーリズモにタイアップしている農家へ行って、収穫など農業体験をしてもらう。
子供さんの間では今、昆虫ブームだと聞くから、子供たち向けに虫取りや川遊び教室を開いても良い。
そして地場の農産物(野菜・果物・肉・乳製品・地酒)を使った食事を親子で楽しんでもらう。
土曜の朝、都市部の自宅を出発して自家用車で高速を飛ばして数時間程度の田舎へ行き、日曜の夕に帰ってくるのも良いし、新幹線や飛行機を組み合わせて北海道や沖縄へ行く2~3泊のパックツアーにしても良いかもしれない。
これによって、都市から地方へお金を落としてもらうことで、格差の是正をはかるとともに、農村の自立も促す。
アグリツーリズモを成功させる上でもっとも重要なのは、「日本の田舎はダサい。観光地ではない」という都市住民の固定観念を打破することではないだろうか。
それには、「エコロジーでスローライフでロハスなアグリツーリズモは、オシャレで賢い休日の過ごし方」というイメージづくりが大切だと思う。
まず、安部首相ご夫妻で休暇をアグリツーリズモで過ごして頂いて、メディアを利用しながら首相自ら広告塔となり、アグリツーリズモの認知度とイメージのアップをはかりつつ、「安部政権は地方を決して見捨てていない」ということをアピールする。
小泉政権が”クール・ビズ”で有権者へのアピールをしたように、安部政権は”アグリツーリズモ”で、有権者へのアピールとともに地方格差の是正という実益もとったらどうだろうか。
アグリツーリズモの実現には、ハードよりもソフトの方が大切。
農家・旅館民宿・農協・地方自治体同士の協力が欠かせないし、それには地方の青年層が動く必要があると思う。
残念ながらお年寄りでは「アグリツーリズモ」といっても何が何やらサッパリだろう。
麻生外相や小泉前首相・塩崎官房長官は、青年会議所のご出身だから、各地方の青年会議所が中心となって地方振興策として、アグリツーリズモを各地方へ働きかけたらどうだろうか。
それによって自民党への支持が増えればなお良い。
と、ここまで書いてきて、アグリツーリズモはグリーンツーリズムと名を変えて、すでに日本に入っていることがわかった。
でもPR不足のせいか、ほとんど話題になっていないようだ。
やはり安部首相がご夫妻で、マスコミを引きつれて、アグリツーリズモの休暇を体験なさることで話題づくりをし、地方振興と格差是正を(そして有権者へのサプライズも)はかったらどうかと思うのだがどうだろうか。
農政は門外漢だが、農村振興と地方間格差の是正の一助となればと思い、管理人の欧州方面へ伸ばしたアンテナに引っかかってきたアグリツーリズモを紹介してみた。