世界連鎖株安が発する教訓ー読みにくいよ。ー
ようちゃん、おすすめ記事。↓
読みにくい記事なので、文字を大きくして
おきました。by日本のお姉さん
世界連鎖株安が発する教訓
▼米住宅ローン証券化が助長した無責任体質(日経BP)
世界の金融・資本市場が波乱含みの展開をしている。7月末の米株式相場の連日の下落で、世界連鎖株安への不安が高まった。日本は参院選の影響もあり、不透明感が一層広がっている。米株安は、「サブプライム」と呼ばれる信用力の低い人を対象にした高金利型住宅ローンの焦げつき問題に端を発している。ここへきて世界中で住宅がらみの損失の話題が続いたからだ。まず、米国内で証券大手ベアー・スターンズ傘下のヘッジファンド2社が巨額損失を出した。ベアー・スターンズがファンドに実施する融資額は最大で32億ドル(約3800億円)。これは1998年に米ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の破綻に際して米金融界が行った融資額約36億ドルに次ぐ規模だ。 豪州や欧州のファンドでも損失が相次いで発覚。「世界のどこにリスクが潜んでいるか見えにくい。サブプライム問題は、不透明感を空間的に広めている」(三菱東京UFJ銀行の鈴木敏之シニアエコノミスト)。今回の連鎖株安で浮き彫りになったのは、米住宅ブームの背後で金融システムの規律が緩んでいたことだ。サブプライム問題では、米住宅ローンの借り手の中に明らかに返済能力に問題がある人がいたにもかかわらず、それを排除する力が働かなかった。世界的な過剰流動性で行き場を失ったマネーが米住宅へ注がれる過程で、モラルが緩んでいたのである。
ブローカー任せの融資に甘さ
先頃、それを象徴する金融機関の動きがあった。連鎖株安が始まった7月26日、米銀大手のウェルズ・ファーゴが住宅ローンブローカーを介するサブプライムの業務から実質的に手を引く方針を打ち出した。ウェルズ・ファーゴはトリプルAの格付けを持ち、住宅融資でも比較的厳格な審査を貫く銀行として知られる。その同行ですら、ブローカーに依存した住宅融資を続けていたことが明るみに出た。米国には住宅ローンの借り入れノウハウを提供し、本人に代わって金融機関と交渉するブローカーが存在する。報酬は成約ごとに金融機関から支払われるが、どんなにリスクの高い住宅ローンを組んでも、原則として焦げつきに対する責任は負わない。その結果、信用度の低い層にも無理な住宅ローンを勧める行為が横行していた。ブローカーの存在が第1のモラルハザード(倫理の欠如)だとすれば、第2のモラルハザードは貸し手である金融機関の意識の中にあったと言える。米住宅ブームを後押ししてきたのは、銀行がローン債権を証券化して投資家に売却する仕組みだ。MBS(不動産ローン担保証券)は、米国では国債と並ぶ大きな市場。サブプライムを含む各種債務で構成されたCDO(債務担保証券)は高利回りで信用格付けも高く、ヘッジファンドや保険会社に人気がある。市場規模はサブプライムが8000億ドル余り。MBSは6兆ドル、CDOは1兆ドルと見られている。 過剰流動性が続く世界の金融市場では、証券化の買い手が容易につく。その結果、「信用度の低い層に融資してもリスクを自ら負う必要がない」という慢心が金融機関に芽生え、過度な住宅ローンの融資合戦につながった。
格付け機関への批判高まる
さらに、ここへきてサブプライムの責任の一端を問われ始めたのが格付け機関だ。ムーディーズ・インベスターズ・サービスやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は7月から、サブプライム絡みの証券の大量格下げに走っているが、市場関係者からは「対応が遅過ぎる」との批判が出ている。「構造の複雑な商品が相次いで登場し、格付け機関は参考にするデータも人材も不足する中で、審査しているのが実態」と三井住友銀行の森谷亨ニューヨーク駐在エコノミストは指摘する。証券化は本来、リスクを小口・加工することで管理を容易にし、世界中の投資家がシェアできるところに利点がある。証券化の普及が金融市場のリスク吸収力を高め、世界同時株高の理論的裏づけにもなっていた。しかし、現実にはリスクを広く薄く分配する仕組みが、かえって関係者の当事者意識を希薄にしてしまい、モラルハザードを助長していた点は注視すべきだ。そこにサブプライム問題の本質がある。この不透明感は当面、解消しそうにない。米国でサブプライム向けの融資が最も盛んに行われたのは2005年から2006年にかけて。通常、その融資内容は契約から2~3年後に大幅な金利改定を迎えるものが多い。米抵当銀行協会(MBA)によると、サブプライムの延滞率は13.77%と4年半ぶりの高水準となったが、2008年までは延滞率が改善するとは考えにくい。
サブプライムの次は「オルトA」
最近、関係者の間では、「サブプライムの次は、『オルトA(Alt-A)ローン』が問題になる」とささやかれている。「オルトA」とは、住宅ローンのうち、信用度がサブプライム層より高く、プライム層より劣る層に貸し付けられたものを指す。このオルトAの延滞率が現在、じわじわと上昇している。市場関係者は、サブプライム問題がほかのリスク債権市場に波及することも懸念している。「サブプライムで損が出た分をほかの含み益を使って埋め合わせようとする投資家が増えることも予想される」(みずほ総合研究所の矢野和彦ニューヨーク事務所長)からだ。米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長は先頃、サブプライム関連の損失が1000億ドルに達する可能性を示した。専門家は、「大手金融機関を揺るがす規模ではない」と見ているが、これはあくまでもサブプライムに限定した数字だ。信用リスクへの懸念がサブプライムの枠を超えて広がれば、その数字は意味を持たなくなる。
実体経済への影響懸念も
米国のサブプライムローンの焦げつきを巡る問題は、日米の株価下落や、為替市場でのドル下落圧力の原因とされる。だが、市場関係者が最も懸念しているのはサブプライムの問題そのものよりも、その余波が実体経済に影を落とす事態だ。国内の地方銀行向けに利回りの高い金融商品を販売する業者の営業担当者は「サブプライムがらみの金融商品の運用成績が低下しても、投資全体のごく一部なので、それほど影響はない。ただ、米国の景気減速が起きれば厳しい事態になる」と指摘する。サブプライムが危ないという認識が広がって、こうした金融商品の買い手がいなくなると、価格は実態以上に暴落しやすい。
2005年8月からサブプライム関連商品を手がけてきた野村ホールディングスは、米国で住宅ローン会社からローン債権を買い取って投資商品に組み替えて販売してきた。2007年第1四半期決算(4~6月期)の税引き後利益が前年同期比3.8倍となった一方、今年1~6月のサブプライムがらみで726億円の損失を発表した。「野村は損失を早く確定させただけ。同様の住宅債権を持っている日本の大手金融機関はほかにもある」(大手都市銀行のニューヨーク駐在員)との声もある。とりわけヘッジファンドは、少ない元手で高いリターンを上げるため、調達資金をまず債券に投資し、その債券を担保に資金を借りて別の投資に充てていたりする。投資対象に組み入れたサブプライム関連商品が暴落すると、資金手当てのため売りが膨らみやすい。それが金融市場の信用不安に火をつけるような事態になれば、日本経済への影響も無視できなくなる。
実際に米国では、リスクの高い投資への警戒感が高まり、市場への資金流入が停滞。米投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメントはダイムラークライスラーの北米クライスラー部門を買収する資金の調達を延期せざるを得なくなった。市場関係者の間には「従来のファンドへの資金流入が異常で、健全化の流れにある」という見方もある。とはいえサブプライムの直接的な影響は限定的であっても、資金の流れの変調が広がれば、実体経済に悪影響を及ぼす恐れは否定できない。こうした懸念を払拭するには、まだしばらく時間がかかると見られている。
世界の金融・資本市場が波乱含みの展開をしている。7月末の米株式相場の連日の下落で、世界連鎖株安への不安が高まった。日本は参院選の影響もあり、不透明感が一層広がっている。米株安は、「サブプライム」と呼ばれる信用力の低い人を対象にした高金利型住宅ローンの焦げつき問題に端を発している。ここへきて世界中で住宅がらみの損失の話題が続いたからだ。まず、米国内で証券大手ベアー・スターンズ傘下のヘッジファンド2社が巨額損失を出した。ベアー・スターンズがファンドに実施する融資額は最大で32億ドル(約3800億円)。これは1998年に米ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の破綻に際して米金融界が行った融資額約36億ドルに次ぐ規模だ。 豪州や欧州のファンドでも損失が相次いで発覚。「世界のどこにリスクが潜んでいるか見えにくい。サブプライム問題は、不透明感を空間的に広めている」(三菱東京UFJ銀行の鈴木敏之シニアエコノミスト)。今回の連鎖株安で浮き彫りになったのは、米住宅ブームの背後で金融システムの規律が緩んでいたことだ。サブプライム問題では、米住宅ローンの借り手の中に明らかに返済能力に問題がある人がいたにもかかわらず、それを排除する力が働かなかった。世界的な過剰流動性で行き場を失ったマネーが米住宅へ注がれる過程で、モラルが緩んでいたのである。
ブローカー任せの融資に甘さ
先頃、それを象徴する金融機関の動きがあった。連鎖株安が始まった7月26日、米銀大手のウェルズ・ファーゴが住宅ローンブローカーを介するサブプライムの業務から実質的に手を引く方針を打ち出した。ウェルズ・ファーゴはトリプルAの格付けを持ち、住宅融資でも比較的厳格な審査を貫く銀行として知られる。その同行ですら、ブローカーに依存した住宅融資を続けていたことが明るみに出た。米国には住宅ローンの借り入れノウハウを提供し、本人に代わって金融機関と交渉するブローカーが存在する。報酬は成約ごとに金融機関から支払われるが、どんなにリスクの高い住宅ローンを組んでも、原則として焦げつきに対する責任は負わない。その結果、信用度の低い層にも無理な住宅ローンを勧める行為が横行していた。ブローカーの存在が第1のモラルハザード(倫理の欠如)だとすれば、第2のモラルハザードは貸し手である金融機関の意識の中にあったと言える。米住宅ブームを後押ししてきたのは、銀行がローン債権を証券化して投資家に売却する仕組みだ。MBS(不動産ローン担保証券)は、米国では国債と並ぶ大きな市場。サブプライムを含む各種債務で構成されたCDO(債務担保証券)は高利回りで信用格付けも高く、ヘッジファンドや保険会社に人気がある。市場規模はサブプライムが8000億ドル余り。MBSは6兆ドル、CDOは1兆ドルと見られている。 過剰流動性が続く世界の金融市場では、証券化の買い手が容易につく。その結果、「信用度の低い層に融資してもリスクを自ら負う必要がない」という慢心が金融機関に芽生え、過度な住宅ローンの融資合戦につながった。
格付け機関への批判高まる
さらに、ここへきてサブプライムの責任の一端を問われ始めたのが格付け機関だ。ムーディーズ・インベスターズ・サービスやスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は7月から、サブプライム絡みの証券の大量格下げに走っているが、市場関係者からは「対応が遅過ぎる」との批判が出ている。「構造の複雑な商品が相次いで登場し、格付け機関は参考にするデータも人材も不足する中で、審査しているのが実態」と三井住友銀行の森谷亨ニューヨーク駐在エコノミストは指摘する。証券化は本来、リスクを小口・加工することで管理を容易にし、世界中の投資家がシェアできるところに利点がある。証券化の普及が金融市場のリスク吸収力を高め、世界同時株高の理論的裏づけにもなっていた。しかし、現実にはリスクを広く薄く分配する仕組みが、かえって関係者の当事者意識を希薄にしてしまい、モラルハザードを助長していた点は注視すべきだ。そこにサブプライム問題の本質がある。この不透明感は当面、解消しそうにない。米国でサブプライム向けの融資が最も盛んに行われたのは2005年から2006年にかけて。通常、その融資内容は契約から2~3年後に大幅な金利改定を迎えるものが多い。米抵当銀行協会(MBA)によると、サブプライムの延滞率は13.77%と4年半ぶりの高水準となったが、2008年までは延滞率が改善するとは考えにくい。
サブプライムの次は「オルトA」
最近、関係者の間では、「サブプライムの次は、『オルトA(Alt-A)ローン』が問題になる」とささやかれている。「オルトA」とは、住宅ローンのうち、信用度がサブプライム層より高く、プライム層より劣る層に貸し付けられたものを指す。このオルトAの延滞率が現在、じわじわと上昇している。市場関係者は、サブプライム問題がほかのリスク債権市場に波及することも懸念している。「サブプライムで損が出た分をほかの含み益を使って埋め合わせようとする投資家が増えることも予想される」(みずほ総合研究所の矢野和彦ニューヨーク事務所長)からだ。米連邦準備理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長は先頃、サブプライム関連の損失が1000億ドルに達する可能性を示した。専門家は、「大手金融機関を揺るがす規模ではない」と見ているが、これはあくまでもサブプライムに限定した数字だ。信用リスクへの懸念がサブプライムの枠を超えて広がれば、その数字は意味を持たなくなる。
実体経済への影響懸念も
米国のサブプライムローンの焦げつきを巡る問題は、日米の株価下落や、為替市場でのドル下落圧力の原因とされる。だが、市場関係者が最も懸念しているのはサブプライムの問題そのものよりも、その余波が実体経済に影を落とす事態だ。国内の地方銀行向けに利回りの高い金融商品を販売する業者の営業担当者は「サブプライムがらみの金融商品の運用成績が低下しても、投資全体のごく一部なので、それほど影響はない。ただ、米国の景気減速が起きれば厳しい事態になる」と指摘する。サブプライムが危ないという認識が広がって、こうした金融商品の買い手がいなくなると、価格は実態以上に暴落しやすい。
2005年8月からサブプライム関連商品を手がけてきた野村ホールディングスは、米国で住宅ローン会社からローン債権を買い取って投資商品に組み替えて販売してきた。2007年第1四半期決算(4~6月期)の税引き後利益が前年同期比3.8倍となった一方、今年1~6月のサブプライムがらみで726億円の損失を発表した。「野村は損失を早く確定させただけ。同様の住宅債権を持っている日本の大手金融機関はほかにもある」(大手都市銀行のニューヨーク駐在員)との声もある。とりわけヘッジファンドは、少ない元手で高いリターンを上げるため、調達資金をまず債券に投資し、その債券を担保に資金を借りて別の投資に充てていたりする。投資対象に組み入れたサブプライム関連商品が暴落すると、資金手当てのため売りが膨らみやすい。それが金融市場の信用不安に火をつけるような事態になれば、日本経済への影響も無視できなくなる。
実際に米国では、リスクの高い投資への警戒感が高まり、市場への資金流入が停滞。米投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメントはダイムラークライスラーの北米クライスラー部門を買収する資金の調達を延期せざるを得なくなった。市場関係者の間には「従来のファンドへの資金流入が異常で、健全化の流れにある」という見方もある。とはいえサブプライムの直接的な影響は限定的であっても、資金の流れの変調が広がれば、実体経済に悪影響を及ぼす恐れは否定できない。こうした懸念を払拭するには、まだしばらく時間がかかると見られている。