党大会の、ためならば。(1)メディア規制と刀狩り
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▼党大会の、ためならば。(1)メディア規制と刀狩り。(チナオチ)
あと1年ほどで北京五輪なんですが、現地にそういうムードが流れているものかどうか。東京にいる私にはわかりませんが、二者択一で当ててみな、ということであれば「五輪ムードは希薄」を選びます。中共政権は今秋、5年に1度の党大会を控えているからです。世代交代や大型人事の行われる一大政治イベント。今後5年間の大方針を設定する場でもあります。中共にとって北京五輪と党大会のどちらが大事かといえば、もちろん後者。
オリンピックは国際的イメージの向上や存在感の誇示、また国家の代表選手同士の競争ということで国民の求心力強化につながる催しです。五輪で中国のイメージが良くなるかどうかは疑問ですが(笑)、これはこれで大切。でも「中国人」より「中共人」であることを優先する連中にとっては権益を保障してくれる政権維持が至上課題ですから、そのために不可欠な党大会の方が絶対大事、という価値観になります。要するに北京五輪がなくても党大会があれば中共政権はその独裁体制に気合いを入れ直すことができますし、人事・政策面などで次世代への道をつけることができます。党大会がなくて北京五輪だけがあっても独裁体制の維持にある程度貢献するかも知れませんけど、党大会ほどの大きな効果は望めません。
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やや脱線していえば、人民解放軍がその実現を「神聖なる使命」と位置づけている台湾統一、これは中共政権にとっては国是であり、中共政権が維持されるという前提の下ならば最優先課題といえます。仮にいま台湾が「正常な国家」たるべく具体的なアクションを重ねてその実現が有望視されかねない状況になった場合、北京五輪と台湾統一の二者択一となれば、中共政権は何の迷いもなく台湾統一を選ぶことでしょう。
そのために五輪が中止され軍事的衝突が発生し外資が逃げ出したり経済制裁を喰らったりすることになっても、中共政権はまず動揺しません。それによって対外依存度の高い中国経済が失血死状態となり生活苦や貧困が国民を襲うことになっても、人民解放軍及び武装警察に内乱を鎮圧できるだけの武力さえあれば、「昔はもっとひどかった。そのうちまた復興できる」の一言で済ませてしまうに違いありません。この中共独特の価値観というものを頭に入れておかないと、1989年当時の私のように、軍隊が首都で学生・市民に銃弾を浴びせるという事態(天安門事件)に直面して愕然とすることになります。軌道修正。
中共政権にとってオリンピックよりも大事な党大会がこの秋に控えているということで、そのための環境整備を行う時期に中国は入りつつあります。屋外に大がかりなセットをこしらえるためにローラーをかけて地ならしするようなものです。地面をしっかりと固めた上で、立派な建物めいたものをそこにこしらえることになります。
という訳で「党大会の、ためならば」シリーズということになります。これは続き物ではなく何事かあったとき「あっこれは党大会のための地ならしだ」と思ったら書くという不期遭遇戦のようなものですから、「上中下」ではなく番号をふることにしました。何度書くことになるかはわかりませんけど、ともあれ今回はその第1回。タイトルにあるように、「メディア規制と刀狩り」が党大会のための地ならしとして実施されつつあるのです。
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●央視が変節、「品質レポート」放送中止に(東方日報 2007/07/23)
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香港紙の報道です。全国ネットのテレビ局である中央電視台(CCTV)の人気番組だった「毎週質量報告」(ウィークリー品質レポート)という番組、これは偽物商品や粗悪品、悪質商品を暴露する人気番組でしたが、先週(7月21日)から突如内容が変更され、番組名も「全民健康教室」へとスイッチ。視聴者をガッカリさせているそうです。これを報じた『東方日報』は米国との食品の安全に関する折衝が間もなく開かれること、また例の「あれはヤラセ」との当局発表が行われた「段ボール入り肉まん」事件の余波でもあると指摘しています。
直接の原因はその通りで、「ヤラセ」を受けて中央宣伝部などがメディアへの監視強化を打ち出す(新法制定の可能性も)とともに、「党と政府の代弁者」という中国におけるメディアのポジショニングをメディア自身に再確認させるような動きがみられます。ただし、これはたまたま恰好な素材がタイミングよく飛び出したために「事件」扱いして、それに対応するという姿勢を示しているだけ。「安定・団結」が最優先される党大会を控えたメディア規制はヤラセ事件が起きていなくても、そろそろ着手されるタイミングだったものと私はみています。一種の縁起物とでも考えて下さい。賑々しくも格の高い党大会の雰囲気を、変な報道で乱してもらっては困る、縁起が悪いということです。あれは2003年でしたか、毎年3月に開かれる大型政治会議・全人代(全国人民代表大会=立法機関)の時期ということで「縁起」が重んじられ、中国肺炎(SARS)が北京で流行していることを、ある老医師が海外メディアで告発するまで、中共政権はひた隠しにしました。告発されて国際面を飾るネタになってしまった途端に担当部門である衛生部の部長(大臣)が更迭されましたが、あれはたまたま当時の衛生部長が江沢民系の政治家ということで、胡錦涛&温家宝が絶好のチャンスとばかりに詰め腹を切らせたのです。
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縁起を担ぐ時期ではありませんでしたが、全国を騒然とさせた山西省の闇レンガ工場事件(子供を誘拐したり出稼ぎ農民を騙して強制労働させていた)は本来責任者として断罪されても仕方のない省長の于幼軍が胡錦涛直系の「団派」(共青団人脈)であるためにクビが飛ぶこともなく、「事件後の処置は適切なものだった」と自画自賛までしています。さらには、「今後違法炭坑で事故が起きたら死者1人ごとに罰金100万元」という新措置まで打ち出す精励ぶり。「わかった。わかったからもういいよ、そのくらいにしておけ」と言いたいところです。ええ、于幼軍とその後ろ盾である胡錦涛に。
●大甘判決が浮き彫りにしたもの。(2007/07/18)
●『東方日報』(2007/07/25)http://
●「新浪網」(2007/07/25/12:44)http://
例え話からまた脱線してしまいましたが、中共政権が党大会を控えてメディア規制にとりかかったという件。
ヤラセ事件でマスコミに対する監督強化が叫ばれたのと相前後して、ブログや掲示板への実名制導入論議やネットゲーム利用規制、闇ネットカフェ摘発運動などインターネットへの締め付けも行われています。「個人のメディア」に対しても投網を、という訳です。株式投資指南のカリスマブロガーが詐欺めいた罪状で最近お縄になりましたが、これも違法行為が存在していた?のと同時に、見せしめ効果も狙ったものだろうと私は考えています。掲示板で流言を放ったという容疑での逮捕者も出ています。これらもまた党大会のための「地ならし」なのです。
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一方「刀狩り」は何かといえば、もう字面通りそのまんまなのです。公安部が7月23日、銃器・弾薬・爆薬・刀剣類などの不法所持摘発に全力で取り組むと発表。「30日以内に自首して危険物を差し出せば罪を軽くする」とのことで、密告電話番号も公表されています。「010-58186722」だそうです。イタ電する際はかけ間違いに御注意下さい(笑)。密告メルアドは、「gabzbjq@sina.com」とのことですから皆さんどうぞお好きなように。(・∀・)
●「新浪網」(2007/07/23/10:30)http://
●「新浪網」(2007/07/23/10:38)http://
ここで挙げられている「危険物」が実に興味深いです。銃器、弾薬、刀剣類に始まって、爆薬、劇毒性化学物質、黒色火薬、雷管、導火線、手榴弾、地雷、麻酔銃、軍用銃、射撃競技用銃、猟銃、空気銃など実に多岐に渡っています。それだけ闇ルートでの流通が広範に行われているということです。でも地雷とか軍用の銃器類に手榴弾というのは闇にしても軍需企業あるいは軍内部にネットワークがなければ出回りにくいものでしょう。そういう現実があるということです。これも「地ならし」。テロ防止の目的もあるでしょうけど、それは北京五輪ではなく党大会をより強く意識しているのだと思います。武装農民たちが蹶起して農村暴動を起こすなど、社会的混乱を招きかねない要素を排除しておこうというものです。
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最後に、もうひとつ別種の「地ならし」が進行中のようです。汚職嫌疑で昨年、上海市のトップの座を追われ拘束されている「上海閥」のプリンスだった陳良宇・前上海市党書記が人民代表の資格を剥奪されました。この情報、数日前から流れていたのですが香港における親中紙の筆頭格である『香港文匯報』が今日それを報じたことで「事実」とみていいでしょう。
●『香港文匯報』(2007/07/26) http://
「陳良宇の人民代表資格を剥奪したのは、腐敗撲滅という中央の決意の強さを示すものだ」
という上海市筋によるコメントが記事の末尾に付されています。党大会を控えて司法面での陳良宇断罪作業がスタートしたことを示唆すると同時に、胡錦涛政権に対する抵抗勢力(既得権益層)である「諸侯」たち、つまり各地方勢力への見せしめでもあるでしょう。
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【※追記】いま前日の記事漁りをしていて知りました。陳良宇は党籍も剥奪されましたね。士分から庶人に墜とされたということになります。待っているのは切腹ではなく斬首。(2007/07/27/01:35)
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【抜粋】人民解放軍がその実現を「神聖なる使命」と位置づけている台湾統一、これは中共政権にとっては国是であり、中共政権が維持されるという前提の下ならば最優先課題といえます。仮にいま台湾が「正常な国家」たるべく具体的なアクションを重ねてその実現が有望視されかねない状況になった場合、北京五輪と台湾統一の二者択一となれば、中共政権は何の迷いもなく台湾統一を選ぶことでしょう。
ようちゃんの意見。↓
★この視点は重要。人民解放軍内部には色々な地域的派閥や世代間対立(国軍化を目指す勢力)などがあるが、その全てが容認できないという態度で意識を統一できるのが「台湾独立」!
そのために五輪が中止され軍事的衝突が発生し外資が逃げ出したり経済制裁を喰らったりすることになっても、中共政権はまず動揺しません。それによって対外依存度の高い中国経済が失血死状態となり生活苦や貧困が国民を襲うことになっても、人民解放軍及び武装警察に内乱を鎮圧できるだけの武力さえあれば、「昔はもっとひどかった。そのうちまた復興できる」の一言で済ませてしまうに違いありません。
★このことをアメリカの国務省を中心とするリベラル官僚やウオール街の投資銀行などは全く理解できていない。経済が自由化し、国民が豊かになれば、国民が自由を求めるようになるので徐々に民主化の方向に進むだろうと本気で考えている。(日本の場合は中共の独裁体制が続いてくれていた方が利権の交渉窓口が一本化できるし、下手に民主化して中華民国成立時のような政治的混乱が起きたら大変だ!だから民主化なんてとんでもないなどと考えている奴の方が多い)
そして、お金が第一の価値観であるアメリカ人からしてみれば、たかだかあんな小さな島のために経済的発展と利益を犠牲にして戦争をするという発想が理解できない。だからあそこまで中共への投資にのめり込めるのだ。人民解放軍の将軍たちが聞いたら「臍が茶を沸かすアル!おなかが痛くて死にそうアル!」と笑い転げるのは必定だが、我の知っている日本に住んでいる某外資系投資銀行の行員は、中共は我々が引き上げたら生きていけない、我々は中共の生殺与奪の権を握っているなどとのたまったものである。これがいかにバカな話かはサプライムローンの問題を見れば明らかだろう。いざというときに即時現金化して引き上げることができる投資など存在しない。みんなが一斉に売却しようとすれば、そんな投資の価値など存在しなくなってしまう。我の知人の華僑はいみじくも「中日関係が悪化しても、日本が中国に建てた工場は持って帰ることができないアル。日本人はバブルの時にロックフェラーセンターを買ったアルが、どうなったアルか?ロックフェラーセンターを東京に持って帰ることができるアルか?」といったものである。
この中共独特の価値観というものを頭に入れておかないと、1989年当時の私のように、軍隊が首都で学生・市民に銃弾を浴びせるという事態(天安門事件)に直面して愕然とすることになります。【以下略】
ようちゃんのコメント。↓
★人間に学習能力がないというのは、昔、参議院議員選挙で土井旋風で社会党を大勝させたことがまたもや再現されようとしていることを見れば、明らか。第三次天安門事件や台湾海峡戦争でも同じことが起こるでしょう。