民以何食為天 食の安全学 | 日本のお姉さん

民以何食為天 食の安全学

ようちゃん、お勧めブログ記事。↓

▼民以何食為天 食の安全学(11)北京にかぎらず、中国では、少し生活に余裕のある人は、水道水を飲まない(北京趣聞博客)
■北京にかぎらず、中国では、少し生活に余裕のある人は、水道水を飲まない。なぜなら、まずいから。安全ではないからだ。このブログでも以前紹介したが、水道水から寄生虫やボーフラが一緒にでてくるような国である。上海の水道水はうっすら黄緑色をしているし、無錫の水道水は歯をみがくだけでえずくほどの悪臭がする。地下水をつかった水道水は、重金属汚染が深刻な地域も。


■で、都市部の豊かな人たちは飲料水はもっぱら買う。プラスチック容器(桶)にはいった水を給水器に設置する。ブランドにもよるが1桶10~16元。この水は、きちんと水販売店業者が新聞みたいに宅配してくれるし、チケットを買えば割安になったりするので、水を買うことはそんなに不便ではない。私は一人暮らしで、料理もしないから、一ヶ月に1桶19㍑もあれば十分。


■ところが、最近、この飲料水にニセモノが結構多いことが、判明した。すでに新聞でも報道済み「ニセブランド飲料水」事件である。市場に出回る商品の半分がニセモノというのは、当局や業界団体からも異論がでているが、それでもかなりの数のニセモノがあるはずだ。というのも、わたし自身も、今思えばニセブランド水と思われるものを買った気がするのだ。というわけで、食の安全学⑪は、飲料水がテーマ。水は食か?といわれれば、こまるのだが、口に入るものの基本ということで。


■あなたの飲んでいる飲料水はほんものか!?
ブランド・ミネラルウォーター、実は水道水
雑菌基準値30倍の天然水も!



■5年前、北京に赴任して最初に買ったものは給水器だった。一般に桶水とよばれる容器入り飲料水を利用するには給水器が必要なのだ。で百貨店の家電店で、ハイーアール製の給水器をかったところ飲料水2個(38㍑相当)を無料プレゼントしてくれるという。家電店から飲料水販売店の電話番号をもらった。この「飲料水無料プレゼント」が実は罠だったりするわけだが、まだ北京のきたばかりで、このときは、中国のペテン文化に対する警戒心が今ほどなかった。そう、おろかにも「ラッキー」なんて思っていたのだ。


■その電話番号にかけると水販売業者がすぐに容器入り飲料水2個をもってきてくれた。で、100元くれ、という。なんで?無料プレゼントでしょ?と問い返すと、水はただだが、プラスチック容器は1つ50元、2つで100元という。引き続き同じ業者から水をかうなら、空容器をひきとるかわりに、容器代はただ、水代だけ払えばいい。この業者と契約をうちきるとき、空容器と引き替えに100元が返金される。こういうしくみだ、といって「容器保証金100元」の控えをもらった。これをまんま信じるこのころの私はまだまだ甘かった。


■で、タダでもらった水をしばらく使っていたのだが、どうもまずい。なんというか、カルキくさい?もともと、私は水をそのまま飲むことはほとんどない。お茶やコーヒーにして飲む。最初はお茶っぱかコーヒー豆の質がわるいのか、と思っていたのだが、ある日、給水器からそのまま水をのんだら、すごくまずかった。

■で、タダでもらった水はやっぱりダメだ、と思い、2個使い切ったあとで、ネスレ(スイス系食品ブランド)のブランドミネラルウォーターに切り替えることにした。このとき業者を変えればよかったのだが、ネスレに変えたい、と業者にいうと、うちもネスレを取り扱っている、という。ちなみに、なぜは、ネスレかというと、中国総局で買っている水がネスレだったから。1個14元とちょっと高め。

■で、ネスレの水にしたのだが、家にほどんといることのない私は、しばらく水の味がへんだときづかなかった。夜寝る前などに飲む水は、冷蔵庫にいれているエビアンやペリエの小瓶。で、ある日、ひさしぶりに家で給水器から水をのむと、これがまず~い。アーイ(お手伝い)さんに、ネスレの水ってこんな味なのか?と飲ませてみたところ、「きっと古いんでしょう。早く飲まないから」という。一桶19㍑の水を消費するのに、私は2カ月くらいかけているから、たしかに古くなっているのかも、と思い、じゃあしかたないか、とそのときは諦めた。

■しかし1年たって、やはり水がへんだと思い、業者を変えることにした。で、電話で業者を呼んで空容器と引き替えに100元返すように、と要求すると、なんとその業者、「電話番号は、おなじだけれど、この控えを発行した業者とうちは違う」と言い出して100元を返すことを拒否。

■確かに、控えの業者の名前が、最初に契約していたときと違っていた。なぜこんなことが?相手が答えて説明するには、前の業者は経営難でつぶれた。そのあとの事務所を、自分たちが、受け継いだ。電話番号も受け継いだ。なら、顧客に対する責任も受け継げよ、と文句をいったが、私は一従業員で、よくわからな~い、とかわされた。


■たかが、100元、されど100元。腹たちまぎれに、控えに書かれた水販売店の住所に突入。責任者にねじ込むつもりだった。ところが突き止めた住所は、小さな社区(住宅街)のアパートの地下の一室。はだか電球ひとつ、木の古びたテーブルひとつ、ふるぼけた電話がひとつ。こきぶりがはいずる部屋には、山のように空のプラスチック容器と、水の入ったプラスチック容器がつまれていた。外には自転車リアカーが1台。これって、本当に水販売店??

■結局、その業者の事務所には3回くらい通ったが、ぜったい100元は返してくれなかった。消費者組合に訴えるぞ、裁判おこすぞ、と脅しても、相手もたかが100元のために、費用も時間もかかる裁判なんて起こさないとタカをくくっている。実際、100元取り戻すために、炎天下の道を何度も通い、不毛な交渉なんて、続けてられなかった。それでなくとも糞忙しい記者稼業。しかも、新聞記事に書き立てるには、あまりにもショボイ話。自分の根性無しをうらみつつ、この件については、私は敗北を喫したのだった。


■このときは、容器料金100元を騙しとられたことにばかり腹をたてていたが、改めて考えると、あのまずい水は、まちがいなくニセネスレ・ミネラルウォーター。蓋にはちゃんとセロハンのシールがはってあり、中の水が入れ替わっているなんて考えもしなかった。単に、さすが中国製だから質悪い、くらいにしか思っていなかった。きっと消費者から水容器代を騙しとり、ニセ飲料水をうりつけ、ばれそうになったら店をつぶしたことにして、店の名前と経営者の名前を変えるのが手口なのだろう。

■さて、最近のニセブランド飲料水報道によれば、こんなニセ飲料水が出回りはじめたのは2002年前後、そう私の赴任時期とかさなっていた。私はかなり初期に騙されたクチか。

■ニセ水といっても、実はレベルがいろいろある。まず、中味が水道水。水道水は、地域によってずいぶん味が違う。同じ北京市でも郊外の地下水利用の水道水は結構おいしいし(重金属汚染はひどいらしいが)、高級ホテルやマンションの水はかなり高度な処理がしてあり、実際飲んでも、ちょっと味がする程度。一方、普通の住宅、アパートの水はのめたもんじゃないし、朝陽区のある地域では虫が出てくるレベル。でも水道代はかわらないのだ。だから、いい水のでてくる地区からとった水道水なら、けっこう騙せるし、さほど危険でもない。もっとも、今年5月に行われた162ブランド飲料水抜き打ち検査では雑菌が基準値の30倍の「天然飲料水」とか、塩素が基準値を超える「ミネラルウォーター」とかがみつかっているし、敏感な人ならおなか壊すかもしれないな。


■また、雑牌水といって、ブランド名無しの飲料水、それに水道水をまぜたものなど、そのまま水道水をつめるよりは、ちょびっとマシなニセ飲料水もある。いや、むしろこチラの方が主流か。はっきりいって、よっぽど鋭敏な舌をもっていないと、お茶やコーヒー、料理につかっている水の味なんて、わからない。きっと、私のように、やっぱり中国のミネラルウォーターって質わるいよな~と思いながら、信じて飲んでいる人は多いのではないか。きくところによると、わが同朋会社のフジテレビ北京支局の飲料水もニセモノだったとか。いつもアンテナをはってニュースを探し回っている記者だが、自分自身のことはいがいと鈍感なのよね~。



■私の記憶では、ニセ飲料水事件を最初に本格的に報道したのは北京の大衆紙、京華時報(7月9日付)。この記事を参考にしつつ、まず事件の概要を説明しよう。


■7月4日、有名ブランド飲料水の北京区販売責任者が、目下北京市場に流通する桶(大型プラスチック容器)入り飲料水の半分はニセモノだと、同紙に告発した。その根拠として、業界の統計では、2006年に北京の飲料水は200ブランド以上、販売数が1億桶。うちワハハ、ROBUST、ネスレ、燕京の四大ブランドが2500万~3000万桶。

■しかし、北京の水販売店は約2万店あり、その販売店数から割り出した市場流通量は、2億桶。つまり1億桶分はニセモノ。飲料水1桶の価格を最低10元とすると10億元分を消費者から詐取したことになる。このデータについては、同紙記者が他の水ブランド企業に確認したところ、同意したという。


■北京で、桶入り飲料水市場が形成されはじめたのは、1997年。当時はニセ水などなかったらしい。このころ、飲料水を買ってのむのは、豊かな家庭にかぎられていたからだ。しかし、飲料水市場はあっという間に拡大、(それほど北京の水質は悪かった)、それにともない2002年ごろからニセ飲料水が登場しはじめた。ニセ飲料水は主に先にあげた4大ブランドだった。ただこのころ、ニセ飲料水が市場に占める割合は20%前後だったという。その後、5年、ニセ飲料水業者が瞬く間に、市場の半分?を締めるようになったのだという。

■北京でなぜこれほどニセ飲料水が出回るようになったのか。これには北京の飲料水販売方式が関係する。北京では独立経営の水販売店が市場を圧倒しており、その販売店が、各ブランド飲料水メーカー企業から水を買う。そして消費者に売り、宅配する。ちなみに、広東省などでは違い、広東市場大手の華潤集団怡宝食品飲料(深セン)は、自社専売店を通じて消費者に商品を届ける。新聞の宅配システムみたいなもんだな。ちなみに怡宝は、昨年広東省だけで2000万桶の飲料水を販売し、2006年9月、今度は北京市場に乗り込もうとした。

■怡宝食品飲料の責任者は、最初は北京の販売方式にしたがって、独立系水販売店と契約しようとおもったのだそうだ。ところが、その商談のさいに、北京の水販売店がニセ飲料水の作り方を話しはじめたというのだ。この広東人、一応まじめな商売人だったらしく、その時点で怒って席をたった。結局、わずか30店舗の自前の専売店で北京市場進出を果たしたが、2万店の水販売店対30店の専売店では勝ち目はない。「北京の消費者は、なぜみんなニセ飲料水をかいたがるんだ?」とこの怡宝の責任人者は嘆いているそうだ。

■ニセ飲料水は、ニセブランドの容器にはいっているのだが、この点についても、同紙記者は、ニセブランド容器製造工場に潜入取材している。こういう覆面取材とか潜入取材とか、中国人はうまい。日本人記者には、「取材相手を騙す」という行為が記者倫理に抵触するようで、なかなかできない。

■その潜入取材によると、そのニセブランド容器製造工場長は「北京の9割以上のニセブランド飲料水容器はオレがつくっている。一個0・5元」といい、覆面記者は数万個分のニセブランド容器を契約したという。そのあと、自分が記者であることをばらし、あらためて取材要請した。(たぶん、これって取材協力しないとお前の名前さらすぞ~、という脅しのやり方だな。あこぎだな~)。

■で、そのニセブランド容器工場長の紹介で、ニセブランド飲料水製造工場の潜入取材に成功している。最初、その工場長は「うちは間違ったことはぜったいしない」とかいってニセブランド飲料水を造っていることを否定。でも、最後に、普通のニセ飲料水なら1・5元、ワハハブランドの容器にいれ封をして、合格証を添付で1・8元でニセ飲料水を造っていることをみとめた。この工場では年10万桶のニセブランド飲料水を造っているのだという。ちなみに、この取材協力したニセブランド容器工場長は、数日後公安に逮捕された。(記者がたれこんだ?やはり日本人記者にはここまであこぎな取材はできん。)

1・8元で買えるニセ飲料水を、十数元のブランド飲料水として売る。運搬人などの人権費をのぞいても、一個につき7~8元の純利益だ。濡れ手に粟の商売である。しかも、元手は500元くらいで足りるのだそうだ(リヤカーと電話さえあればいのだから)。だから水販売店の経営者には、地方からの出稼ぎ者が多い。私がだまされた水販売店は、河北省の男がやっていた。京華時報記者が取材した水販売店は河南省出身だった。街でリヤカーで桶水を運んでいる男達をみれば、この水販売店関係者のほとんどが、農村からの出稼ぎ者であることはみてとれる。私は、北京のニセ飲料水問題の本質のひとつが、ここにも求められるのではないか、と感じている。


■中国はものすごい水不足である。全国で3・2億人の農民が安全な飲用水を確保できない。私の友人は、北京郊外の農村部に住んでいるが、そこは1日おきに断水がおきる地域。水は、水道水がでる間に大がめにためて、大事につかう。例えば、手を洗ったり口をゆすいだ水をとっておいて、トイレに流すとか、皿を洗った水でお鍋を洗い、最後には畑にまくとか、常識のようにこまめにやっている。


しかし、北京市中心部に暮らすものは、実は水不足を肌で実感するこことはほとんどない。金持ちたちは、バスタブの2つあるマンションの暮らしがあたりまえで、朝晩風呂に入るのも習慣化している人が増えている。いたるところで噴水池があり、百貨店の中まで人工の小川がながれている。来年の五輪が終わるまで、北京の中心部で水不足を実感させられるような状況はないはずだ。なぜなら、華北全体の水が今、北京に集められているからだ。五輪の舞台であり、世界各国からお客様が集まる中国の表玄関がひからびているなんてことは、中国のメンツにかけても許されないのだ。


■河北省や山西省には、小規模ダムがけっこうあるが、それら水はぜんぶ優先的に北京に送られる。目の前の畑が日照りでひからびても、ダムの水は北京におくられる。で、結局農業でくっていけなるので、農民たちは近くの大都市、北京に出稼ぎにでる。きっと、北京の水のぜいたくなつかいっぷりに度肝を抜かれることだろう。

■河南省の淮河は中国の河川の中で最も汚染のひどいもののひとつ。流域にはがん発生率が異様に高い俗称〝がん村〟が点在する。まずしい農民はプラスチック容器入りの水を贅沢に飲む習慣などない。汚染された井戸水、川水をつかったにがい水道水を飲んでいるのだ。中にはその汚染水さえ、十分にない地域もあるのだ。


■北京の水販売店で働いている人たちの多くが、そういう水不足の苦しみを経験してきた出稼ぎ農民だと考えてみよう。少々うがった見方だが、自らの飲料水の安全が守られていない彼らに、北京市民たちにおいしい水を届けよう、なんて気持ちがもてるわけないだろう。彼らにとっては、北京の水道水だって、自分たちの故郷から取りあげられた貴重な水。だましたところで、髪の毛ひと筋の罪悪感などない。しかも、北京の水道水なんて、故郷の汚染水とくらべるとずっとずっと安全だ。


■京華時報は、ニセ水問題の解決の指針として、①飲料水メーカーが、こういった出稼ぎ農民のやっているような水販売店をたよらず、独自の水販売網を構築すること②工商当局がきちんと水販売店の営業を許可証などを通じてコントロールすること③市民がもっとニセ水に対して警戒心を持つこと、などをあげているが、個人的意見として、ここに、④全国の水道網整備、水質整備など水問題について根本的解決をはかり、今の中国の深刻な問題である「水格差」を是正する、ことを加えたい。


■中国では、7月1日から全国の都市部で水道水を直接のめるようにレベルアップするプロジェクトが始まっている。今までヒ素、水銀、カドミウム、鉛など15項目だった化学汚染物質チェック項目をに、農薬成分、モリブデンなど重金属類を追加し74項目に拡大。このほかのチェック項目をふくめるとぜんぶで35項目から106項目に増やす。遅くとも2012年までにこのプロジェクトは完了し、少なくとも都市部の水道水は安心してのめるようにする、としている。

■そのあかつきに、ニセ水問題が完全になくなるとは思わないけれど、少なくとも職業倫理とかコンプライアンス(法令遵守)とか責任とか、そういう高等な意識は、その産業に従事する人のくらし、安全が保証されていないと育たないのではないだろうか。まず、最低限の水の安全問題を解決すること、ニセ水問題の本質はここにある気がする。


■ところで、2012年までに水道水を直接飲めるようにするという、高い目標はわかったが、技術的にどうやって水質をよくするつもりなんだろうか。中国当局はそこのところ、まったく説明していない。最近、日本の知人に聞いたのだが、日本の東京の水道水って、今はすごくおいしいくなったんだって?清華大学環境学部環境管理策研究所の常杪所長は以前、中国各地の上下水網整備プロジェクトなどは日本を含む海外技術に期待したい、と語っていたし、ひょっとすると、日本の関連企業の出番かもしれない、よ。

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また日本がODAをチャイナにしぼりとられるのかな。

by日本のお姉さん