中国の“食欲”を世界は満たせるのか | 日本のお姉さん

中国の“食欲”を世界は満たせるのか

ようちゃん、お勧め。↓
▼中国の“食欲”を世界は満たせるのか(日経BP)
前半基礎エネルギー部門
・週3基のペースで大型石炭火力発電所が増えた2006年
中国では今、ものすごい勢いで発電設備が新設されている。
特に2006年末には、石炭火力発電所が対前年比で
9000万kW分増えた。60万kW級の大型石炭火力発電所が、
毎週3基増えた計算になる。
今後は原子力発電所の建設にも力を入れていく予定で、
2020年まで、100万kW級の原子力発電所を毎年2基ずつ
作る計画だ。2050年までに、現在の世界の原子力発電所
の総数に匹敵する300基が新設されるという予測もある。

中国は今、経済発展を最優先の国家目標として掲げて
おり、2000年からの20年間でGDP(国内総生産)を4倍にす
ることを目指している。
このため化石燃料の消費が大幅に増え、国内の資源だけ
では足りず、石油を中心に輸入が急増している。
環境汚染も深刻化している。
硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)による大気汚染に
加え、最近ではCO2排出量が急増。
今年中に、米国を抜いて世界最大の排出国になると予測さ
れている。エネルギー不足や環境汚染があまりに深刻に
なっているため、中国政府は2006年からの第11次5カ年
計画で初めて「経済と環境の調和」を目標に掲げ、本格的
に省エネに取り組む姿勢を見せている。
具体的には、「GDP当たりのエネルギー消費量(原単位)」
を毎年4%削減し、5年間で20%改善する。
省や市ごとに目標を決めたり、最大の排出部門である産業
界に対して、業界ごとに省エネ目標値を設定するなど、
かなり本気で取り組みを進める姿勢を見せている。
2006年は、GDPが10%以上増加するなか、エネルギー消費
量は前年比で9.3%増となり、GDP当たりのエネルギー消費
量は1.23%減った。
ただし、若干の効率改善は見られたものの、目標に対して
十分な成果が挙がっているわけではない。

■21世紀に入り、産業需要が急速に増加し始めた
中国のエネルギー消費で一番の問題は、石炭の比率が
高いことだ。一次エネルギー全体に占める石炭の割合は
2004年で71%と、最大のエネルギー供給源となっている。
発電燃料の中心も石炭だ。
発電設備の容量は2006年で6.2億kWと日本の約3倍。
このうち石炭火力が4.8億kWと、約8割を占める。
しかも、 2006年には前年比9000万kWも急増しており、今後
も増加傾向は続くと見られる。
発電設備容量は2020年には11億kWになると予測され
、このうち石炭火力が7億kW前後になる見通しだ。
石炭火力発電所が猛烈な勢いで増殖する一方で、環境
対策は非常に遅れている。

最近になって、ようやく脱硫装置を付け始めたが、まだ設
備全体の14%に過ぎない。
中国全体で発生するSOxの半分は石炭火力発電所から
排出されており、日本に酸性雨を降らせる原因としても大き
な問題となっている。NOxについては、まったくと言っていい
ほど対策を取っておらず、酸性雨や光化学スモッグを引き
起こしている。石炭の大量消費に伴う環境汚染は相当に
深刻で、中央政府は石炭火力発電をクリーンに行うための
「上大圧小」政策を採用し、本気で対策を始めている。

2010年までに、規模が小さく効率の悪い発電所
(10万kW以下)5000万kW分を閉鎖し、中規模設備(10万~
50万kW)は改修して効率を高め、環境対策を行う予定だ。
同時に過度の石炭エネルギー依存から脱却するために、
原子力発電所も加速度的に増設していく方針だ。
現在稼働中の原子力発電所は9基で、設備容量は
計 700万kWにとどまるが、今年末までには新たに2基が稼
働を始める。
2020年までには500億ドルを投じて、最低でも32基を新設
する予定だ。1基の発電容量が 100万kWとすると、設備
容量は、2020年には4000万kW近くまで増える計算になる。
日本の原子力発電による設備容量は現在、約5000万kW。
日本が何十年もかけて開発・導入したのに匹敵する規模
をわずか10数年で実現しようとしているわけだ。
最近の予測によれば、中国では2020年以降も原子力発電
所の導入は拡大しそうだ。
マサチューセッツ工科大学は2050年までに200基、精華
大学は300基の増設を予測している。
加速度的な導入により、安全性の確保と放射性廃棄物の
処理・処分の問題が懸念される。
再生可能エネルギーにも力を入れようとしている。
特に風力は、すでに約200万kW導入されており、2020年に
は全発電設備容量の3~4%に当たる3000万~4000万kW
に増やす計画だ。
こうして中国は今、あらゆるエネルギー供給源の確保に
走っている。

■温室効果ガスを大量排出する石炭火力発電に約8割を
依存
高い経済成長が続いていくと、当然、国内の資源だけでは
足りなくなる。そこで中国は、この10年ほど、海外の資源
確保に国を挙げて取り組んできた。
今後のエネルギー供給構造としては、2030年ごろまでは
石炭・石油が中心になると考えられている。
ただ、石炭は絶対量は増えるものの、比率としては下がっ
ていくと見られる。一方で、石油は絶対量も比率も増えて
いきそうだ。すでに石油の45%は輸入しているが、今後は
6~7割を輸入に頼ることになり、かなり石油に依存したエ
ネルギー供給構造になるのが確実視されている。
中国は現在、石油をイラン、サウジなどの中東諸国や
スーダン、アンゴラなどのアフリカ諸国を中心に、ロシア、
カザフスタン、ベネズエラなど世界中から輸入している。
天然ガスの利用はあまり進んでいないが、今後は増やして
いく予定で、LNG(液化天然ガス)の輸入を増やしたり、
ロシアからパイプラインを伸ばすなどの計画を進めている。
特徴的なのは、三つの国営石油公社と国が一体化して
海外の資源確保に奔走していることだ。

よく指摘されるのは「産油国の資源ナショナリズム」だが、
最近は「消費国の資源ナショナリズム」が問題になってい
る。中国はその際たるもので、市場取引を介さず、国家が
前面に出て国家戦略として資源の囲い込みを行っている。
中国のなりふりかまわない資源確保策には、国際的な
批判も高まっている。

典型的な例は、内紛が続くスーダンからの石油輸入だ。
スーダンでは、何十万人というアラブ系住民が虐殺され、
200万人以上が難民化している。しかし、中国はそういった
ことには一切おかまいなしに輸入を続け、国連安保理の
スーダンに対する経済制裁決議にも反対している。
中国は資源確保と引き換えに、道路や港湾を作ったり、
武器を売却したりするなど、産油国の独裁的な政権が
欲するものをパッケージにして提供しており、重商主義的な
手法との批判も高まっている。
結果として、国際的な資源開発に対するルールをゆがめ、
資源保有国の資源ナショナリズムを煽る結果となるだけ
でなく、こうした姿勢が、資源確保のために人権・民主
主義を無視する独裁政権を助長していると、国際的に厳し
く批判されている。
米議会では、中国非難の法案も可決されている。
国際的な批判を受け、中国も最近ではスーダンに特使を
送って国際社会の要求に応えるよう求めたりしているが、
まだまだ取り組み方は不十分だ。
資源確保に当たっての情報の透明性も低い。
開発に当たっては中国人受刑者などを大量に動員し、開発
現場で労働させる。
これでは地元に雇用が生まれないため、地域住民からの
反発も強く、トラブルが起きている。
最近ではエチオピアで石油を開発していた中国企業の社員
数人が現地の反政府勢力に殺害される事件も起こった。
このやり方は「新植民地主義的」との批判も出ており、今後
の姿勢が問われる。

■中国の石油需給ギャップは今後も拡大する

続く