定点観測・東京新聞の内閣支持率に関する記事 & 朝日新聞の倒閣キャンペーンの異様さ。
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▼定点観測・東京新聞の内閣支持率に関する記事(国を憂い、われとわが身を甘やかすの記
参院選公示を明日に控え、原稿書きやら雑用やらでとても忙しく、なんと3日間もブログ更新をさぼってしまいました。それなのに、きょうも午後5時半の時点で1万以上のアクセスがあり、大勢の方が訪問されています。大変申し訳ない気持ちです。すいません。さて、本日は、新聞記事のある種の「作為」について書こうと思います。新聞は、全くの捏造記事こそあまり書きませんが、多角形である事実のある側面だけにスポットライトを当てたり、強調したりします。また、ある出来事を一切書かないという形で、まるでなかったかのように扱うこともあります。ある事実について、「ウソ」は書いていないというわけです。何も書いていないのだからそりゃそうです。
10年以上前の話ですが、「新しい歴史教科書をつくる会」の結成記者会見を取材したときのことです。質疑応答は白熱し、数十分間にわたってさまざまなやりとりがあったにもかかわらず、翌朝の朝刊を見ると、ほとんどの新聞はベタ記事扱いでした。各社はこの運動をニュース価値がないと判断したのかと不思議に思っていると、しばらくして朝日新聞がいきなり社会面トップで、つくる会の批判記事を大きく掲載しました。記者会見でつくる会側が述べた主張はまともに紹介せず、つくる会の勉強合宿の打ち上げで軍歌を歌った人がいたことをもって、つくる会と軍国主義を結びつけたような記事でした。当時、印象操作をしているなあと感じたのを覚えています。話が横にそれました。きょうはこの3日間の東京新聞の安倍内閣の支持率に関する報道について、ちょっと疑問を書いてみます。まあ、編集権は自由でしょうから、何をどう書こうが余計なお世話だとなるのは仕方ありませんが、おもしろいなあ、と思ったもので。
まず、9日付朝刊の2面には、過去の参院選と内閣支持率の関係を分析した「低支持率なら議席大幅減 苦境の首相に厳しい法則」という大きな記事が載っていました。この記事は、次のように指摘しています。
《安倍内閣の場合、昨年9月の発足時に65%だった支持率は、直近で33.5%まで急降下。3年前の小泉内閣を下回り、橋本内閣と同水準で、29日投票の参院選での苦戦は必至だ》なるほど。実は私は、9年前の橋本内閣での参院選の投開票日(7月12日)に政治部に着任し、自民党の獲得議席が過半数割れの44議席にとどまり、橋本首相が退陣に追い込まれる場面から、政治部生活が始まりました。開票が進むにつれ、予想以上の自民の劣勢に、政治部のブースが緊張感とどよめきに包まれていくのを新鮮な気持ちで見ていた記憶があります。東京新聞は、安倍氏と橋本氏を重ねて描いてみせたわけですね。
まあ、それ自体はただ、前例ではこうですね、というだけの話なので、どうということはありません。記者は、どうやって紙面を埋めようか、興味をひく記事を書こうかと常に考えているものですから、いろんな分析記事が出てくるのは当然でしょうね。
それでは、翌10日の東京新聞の1面トップはというと、「比例、選挙区とも民主優位」「内閣不支持5割超す」「参院選本紙世論調査」とありました。ふんふん、そうですか。やはり安倍内閣は危機に直面しているという分析ですね。調査は、6日から8日までの3日間行われたと記されていますから、赤城農水相の事務所費問題などが響いたのか。有効回答者は2400人だそうですから、けっこう本格的な調査だな。さて内閣支持率はどうかな。見出しには出ていないので記事をよく読むと…。《安倍内閣の支持率は「支持していない」「どちらかといえば支持していない」の合計が53.4%で、「支持」の44.2%を10ポイント近く上回った》
9日の記事にあった直近の支持率33.5%より、10ポイント以上、上昇しているではないですか!これを見出しにまったく取らないというのは、この時期に、支持率が10ポイント上がっても、東京新聞にとってはどうでもいいことなのでしょうか。この10日の記事には、前回の東京新聞調査では支持率は何%であったかなど、一切触れてありません。私もこれまでに世論調査の記事は何回も書いていますが、ここを比較しないことはふつう、考えにくいのですが。しかも、前の日に、支持率と選挙結果を結びつけた記事を書いているのだから、なおのことです。
この日は2面にも世論調査のサイド記事があり、「自民支持層からも逆風」「年金対応5割不満」などの見出しが躍っていましたが、やはり内閣支持率に関する分析はありませんでした。試しに同僚記者に、「東京に内閣支持率が44.2%と出ていたのに気付いたか」と聞いてみましたが、「えっ、そうでしたっけ」とやはり気付いていませんでした。まあ、1面の記事の最後には「調査の詳報は11日朝刊に掲載します」とあったので、それではそれを待つことにするか…。
で、その11日朝刊では、10面と11面の見開きで、世論調査結果に関する詳細な分析が特集されていました。これは「『小泉票』半分が流出」「2割が民主へ移動」「年金・社会保障に関心」など、世論調査をさまざまな角度から分析・検討したもので、それはそれで別に何の不満も文句もありません。でも、やはり内閣支持率に関する言及はありませでした(「質問と回答」という1問1答を記した表の中には当然ありましたが)。
内閣支持率に特に言及しなかったのには、ひょっとすると、もしかすると、あるいは他意はなかったのかもしれません。それよりも、どの党に一票を投じるかの投票行動について直接聞いているので、そっちを重視するというのも分からないではありません。ただ、正直、じゃあ9日の記事はナンだったの?という気もします。産経だって、世論調査の結果で、より強調したい部分を前面に出したり、あまり触れたくない部分は小さくしたり、ということが全くないとは言いません。でも、弊紙はそれほど露骨なことは少ないと経験上、考えています。今回は東京新聞を取り上げましたが、朝日も安倍内閣の支持率が下落したときは大見出しで報じ、逆に上がったときは見出しに取らず、記事の中に目立たないようなもぐりこませる傾向があるようです。繰り返して言いますが、弊紙にも私自身にも反省点は多々あります。ただ、安倍内閣になってからのマスコミ報道は、いろいろと常軌を逸していると思うのです。果たして有権者の審判は、朝日や東京が予想したように下されるのかそうではないのか。最近、私は何だか楽観的になってきたので、楽しみでもあります。
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▼朝日新聞の倒閣キャンペーンの異様さ(古森義久氏)
朝日新聞の安倍政権に対する激しい攻撃は周知の事実ですが、今回の参議院選挙での報道や評論の記事、そして世論調査や写真まで総動員したキャンペーンは常軌を逸した観さえあります。
全国紙がここまで特定の政治家や政権に非難を浴びせ、その打倒を図るという政治的キャンペーンは、日本のジャーナリズムの歴史にも異様な一章として特記されるかもしれません。その極端な党派性は「客観報道」を隠れミノにしているともいえましょう。
7月2日の朝日新聞の社説「さあ参院選へ」のなかに次の一節がありました。「この9カ月の安倍政治をよしとするのか。待ったをかけて小沢民主党など野党に期待を託すのか。有権者に問われるものは重い」参議院は当然ながら衆議院からは独立し、しかも衆議院より権限の弱い立法府の第二院です。しかし朝日新聞はこの参議院の選挙を安倍政権への事実上の信任投票として特徴づけることに必死です。いうまでもなく安倍首相が長となる自民党は衆議院で3分の2の議席を占め、国民の自民党への支持の大きさがつい最近の総選挙で明示されたばかりです。
参議院の選挙結果で首相が交替せねばならないという拘束的な因果関係はどこにもありません。ですが朝日新聞は参院選を安倍政権打倒の手段としています。選挙にからむ政治報道をみても、朝日新聞は安倍政権が取り組む憲法改正や公務員制度改革(天下り規制)さらには一連の外交活動(中国や韓国との関係改善、インドやオーストラリア、NATOなどへの新たな接近など)はいずれも、ほとんど無視しています。
そのかわりにはばなしく扇情的な報道や論評を続ける対象は、松岡農水相自殺、久間防衛相辞任、赤城新農水相の事務所問題など、醜聞ふうなテーマです。さらには朝日は「年金」と「格差」を安倍政権の責任追及という形で大きくプレーアップしています。
朝日新聞7月5日朝刊の記事の見出しを以下に書きます。
「年金選挙 信任争い」「政権側に不利な構図」
7月6日朝刊には以下の見出しが躍りました。
「首相、参院選へ躍起」「年金幕引き図る」「完全解決メドなし」「業者織り込み済み」
要するに、年金問題の混乱も安倍政権のせいだという構図を描くわけです。しかし現実には年金問題が一朝にして生じたわけではないことは明白であり、その責任の多くが民主党ときずなの深い自治労にあることも周知となりました。朝日新聞はそのへんは追及しないのです。日本社会の所得などの「格差」を誇張して伝え、安倍政権の責任に帰そうとする朝日新聞の態度も、顕著です。この部分のキャンペ-ンはゆがめ報道の典型例として、日本ジャーナリズム史に残るでしょう。その極端さは倒閣のためのプロパガンダという言葉を思わせます。具体例として、いくつかの参院選がらみの記事の見出しを紹介しましょう。
「格差 立ちすくむ政治」「参院選迷走の行方」「構造改革 危うい両輪」(7月2日)
「07参院選 広がる格差 埋める策は」(7月7日)
どこの社会にも、いつの時代にも、人間多数の間の格差は存在します。日本社会の所得の格差がたとえ広がっていても、安倍政権になっての9カ月間にそれが急に起きたとは、朝日でもさすがに証明はできないでしょう。
私が朝日新聞のこの部分をひどいプロパガンダだと感じたのは7月8日朝刊2面の大きなグラビア記事でした。
「格差の6年」という大きな見出しは小泉政権以来の年月を指すのでしょうが、そのホコ先は明らかに安倍政権に向けられています。そして4枚の写真、「アルバイト」という題の写真は東京の山谷の2畳半の部屋で暮らす若者の淋しい姿、「進む高齢化」という題の写真は能登半島の地震で自宅を失った高齢者の、これまた淋しい姿、「タクシー業」とか「産科医不足」という題の写真も同様に日本社会の抱えるトラブルを画像で、情緒的に訴え、安倍政権のせい扱いにしていました。これでは、カラスの黒いのも、電信柱が高いのも、みんな安倍晋三が悪いから、なんてなっちゃいそうですね。
さらに偏向が明白なのは、朝日新聞自身が毎週、実施している世論調査結果の記事の見出しです。
「民主26% 自民22%」(7月9日)という見出しの記事の本文を読むと、安倍内閣の支持率が前回の28%から31%へ、3ポイントも上がったことが記されています。その「支持率上昇」は見出しにはまったく反映されません。「自民、04年より逆風」「『年金選挙』1カ月前」「本社連続調査」(7月5日)という見出しの世論調査記事を読み、調査の数字をみると、なんと民主党への今回の支持率は毎週、どんどん下がっているのです。そんな部分は見出しからまったく連想できません。「自民離れ 4人に1人」「05年郵政選挙→参院選」(7月8日)という一面トップ記事は、朝日新聞と東京大学の共同の世論調査結果を報じた記事でした。
これまた小泉政権下のいろいろな意味で異例の、自民党が歴史的大勝を果たした衆議院選挙と、その2年後の参議院選挙とを並列において、「歴史的大勝」の際の自民党支持者よりも今回、自民党支持を表明した人の数が少ないからと、その部分をオニの首でも取ったように大報道する姿勢は子供じみていると感じました。そこには、とにかく安倍首相の人気が落ちていると報じたい、切ないまでの政治的願望があらわでした。