毎月20万円がもらえるようになった中国残留孤児の感想は? | 日本のお姉さん

毎月20万円がもらえるようになった中国残留孤児の感想は?

 中国残留孤児訴訟で、与党のプロジェクトチームが9日、新たな支援策を取りまとめたことを受け、各地の原告団は記者会見し、歓迎や評価の意思を示す一方、不安も口にした。

 全国15地裁で起こされた訴訟のうち、唯一、1審で勝訴した兵庫訴訟。原告団長の初田三雄さん(64)は「兵庫が勝たなければこの支援策はなかったと他の原告は感謝してくれる。ただ、経済的問題は解決できても、尊厳の問題はまだ解決できない。私たちは帰国後、国の不十分な支援で20年間耐えた。政府は責任をちゃんと認めてほしい」と複雑な思いを語った。原告の宮島満子さん(71)は「老後は中国で死んだ親兄弟の分まで幸せに生きたい。でも、お金の問題で終わりにするのは許せない」と語気を強めた。

 大阪訴訟の原告団は「誰もが喜んでいる」と支援策を高く評価した。移民政策で旧満州へ渡り、敗戦後の混乱で孤児となった千野正雄さん(69)は「喜ばしいこと。これで老後は最高の生活を送れる」と話した。

 肉親と別れてからも中国で日本語の辞書を使い勉強したという戸田光雄さん(74)も、「日本に帰ってきてよかったと実感した。(支援策が)もっと早くできれば、若いうちに十分、日本語を勉強できただろうが、この結果は多くの孤児の喜びだ」と述べた。

 高知訴訟の藤原充子弁護団長は「政策決定の確保と、法廷における3年余りの訴訟が終結に向かうことになったことは評価できる」と安堵(あんど)の表情を見せる一方で、「支援策からは温かい気持ちが伝わってこないし、おわびもない」と批判した。

7月10日8時0分配信 産経新聞

中国残留孤児訴訟の原告側弁護団は8日、東京都内
で全国連絡会を開き、与党プロジェクトチーム
(PT、座長・野田毅元自治相)が9日に正式決定する
新たな支援策を受け入れることを決めた。
原告側は今後、賠償は求めずに和解か訴えの取り
下げによって訴訟を終結させる方針。
帰国した孤児の約9割が「尊厳の回復」を求めて起こし
た訴訟は全面解決に向かう。
 PTの支援策は
(1)基礎年金を満額の6万6000円支給
(2)生活保護に代わる特別給付金制度を創設し最高
8万円を支給
(3)住宅・医療費などの扶助――が主な柱。
ただ、生活保護と同様に、その他の収入の有無を調べる
「収入認定」が前提で、孤児側は「生活を監視され尊厳
を持てない」と認定の撤廃を主張。
PT側は認定から外す金額を増やし増収を図ることで
対応、孤児の約6割に上る生活保護世帯の月収は
8万円から14万6000円に増える計算だ。

 また、弁護団によると、PT側から6日に新たな支援策
案が示された。この中で
(1)収入認定に関して厚生年金などの取り扱いで、さら
に一定の配慮をする
(2)訴訟終結の際、係争中は猶予されていた収入印紙
代約2億5000万円を孤児側は負担せずに済む
(3)国の従来の施策が不十分だったことや、支援策を
実行する際に孤児の尊厳を傷つけないよう配慮する
などとした「見解」を示す――としている。
 これを受けて各地の原告・弁護団の意見を集約した
ところ、孤児側が撤廃を求め焦点になっていた
収入認定制度はるものの
「孤児の尊厳回復や老後の生活保障など訴訟の目的
は達成される」と判断し、最終的に受け入れを決めた。
 孤児への支援策を巡っては、安倍晋三首相が今年
1月、厚生労働省に夏までの立案を指示し、与党PTが
間に入って孤児側と調整を続けていた。【高倉友彰】
 ▽中国残留孤児訴訟 帰国した孤児約2200人
「早期帰国の実現や、帰国後に自立支援する義務を
怠った」として国に1人3300万円の賠償を求めた
訴訟。
02年12月の東京地裁を皮切りに15地裁に提訴した。
これまで8地裁で判決があり、神戸地裁は06年12月
に国に賠償を命じた。
残り7地裁はいずれも孤児側敗訴だが、多くの判決は
国の法的義務や政治的責務は認めた。
現在は10地裁(仙台、山形、東京、長野、名古屋、
京都、大阪、岡山、福岡、鹿児島)と6高裁(札幌、東京、
名古屋、大阪、広島、高松)で係争中。
 ◇「老後の安定」へ新制度作り出す
 新たな支援策の取りまとめが難航した背景には、
支援を弱者救済の社会保障ととらえる政府と、
戦中戦後になめた辛苦への賠償を求める孤児側の
立場の違いがあった。
与党PTの支援策は社会保障の枠組みを残しつつ、
多くの例外規定を設けて給付額を大きく上積みする
という、両者の主張の中間を取った産物と言える。
 支援策が、基礎年金の増額と生活保護に代わる
特別給付金の「2階建て」になることに、厚生労働省
も孤児側も異論はなかった。
問題は、給付の額と算定方法。
政府にすれば、残留孤児だけに厚い措置を取れば、
他の戦争被害者や生活保護受給者とのバランスが
保てない。
孤児側にすれば、給付額や方式が従来と同じなら、
孤児の置かれた特殊な環境を無視した「名を代えた
生活保護」に過ぎないからだ。
 この対立の解消を託された与党PTは、従来の
社会保障とも損害賠償とも違う「老後の生活安定」
をキーワードに、残留孤児だけに適用される新たな
制度をひねり出した。
収入認定を残した枠組みは厚労省の意向に近い一方、
住宅・医療費なども含め1人世帯で月20万円前後
になる実質収入の高さは孤児側の主張に沿った
形だ。
 戦後の日本の高齢者福祉は、経済成長に伴う個人の
蓄えがあることを前提に、年金や医療費負担の軽減で
収入が減った分を補完してきた。
長く日本に帰れなかった残留孤児は、高度成長の恩恵
を受けず、蓄えもない。しかし、厚労省は孤児を
「貧困者」の枠に押し込んで生活保護で対応してきた。
神戸地裁が「帰国後の支援は極めて貧弱」と指弾した
ように、同省の不作為は責められるべきだろう。
【清水健二】 7月8日21時13分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070708-00000065-mai-soci