これでいいのか大学経営 | 日本のお姉さん

これでいいのか大学経営

ようちゃん、お勧め記事。↓

不安との訣別/再生のカルテ
                      編集長 猪瀬直樹
 21世紀大学経営協会副理事長 關 昭太郎

●これでよいのか大学経営

 わが国がグローバル化が求められる世界のなかで、その存在感

を示すためには、教育界と産業界をどのようにイノベートしていくかだ。

産業界は、1991年 以来さまざまな改革が行われ今日に至っている。

それにひきかえ教育界ではど うか。構造改革が求められている。


わが国の大学はいまや構造不況業種であり、
個々の大学は経営感覚がゼロに近い状態である。

大学人といわれる人も、文科 省も、緊張感もなければ危機感もない

状態である。

 このままでは国公私立大学七百数十校のなかから数十校は

地方自治体と同じような姿になるのでは。

大学はこのように、戦後半世紀にわたり改革・改善が

行われていない。これが現実的姿である。

 大学での教育、研究目的を定める際に、「全体的に」とか「

共に」などとい う発想は、もはや通用しない。

それぞれの学部、研究科にそれに対応できる企 画力と実行力が

ともなっているかどうか問われなければならない。

したがって これからの大学は、学生の側に立って大学行政が行わ

れなければならない。文科省も、大学経営はイノベーションによる

考え方をベースに許可をしていく姿を示すことが大事なのではない

のか。

 イノベートを示すことのできない大学はダメで、現実の姿を見ると

ダメの積 分をやっているようなものだ。これでよいのか。

 これからの大学界はセルサイドからバイサイドに、「学生重視」へと

変わっ ていかなければならない。

学生のニーズを重視しない大学は、大学間競争に生 き残っていく

ことができない。自ずから変わることを嫌う発想を変えなければ
ならない。

 発想の転換とは「終身雇用」「年功序列」であり同時に「

Ethnocentrism」 のエゴである。これらのことに決別することが

改革の第一歩である。

 大学はこれでいいのかと問われたとき、大学活性化の為には、

すべてにわた り「組織改革」以外に道がないのだ。

●厳しくなる大学経営

 大学の経営はそんなに難しいものではない。受験生が定員を十分

に満たして いる間は経営はOKだ。

逆に満たすことができなくなると閉校ということにつ ながる道だ。

これは当然の定理である。大学が乱立し、経営者不在(経営的視
点・ガバナンス欠落)でマネジメント能力のない者が経営に当り、

責任をとる人がいない。権力だけは大手をふるう。

自分が責任者であるというTOPがい ない。

 さらにつけ加えるならば厳しくなることを先見し、分析し、対応を

考えるこ とのできる人が不在なのが現実的な姿だ。

どうしてなのだろうか。この原因は 40%が文科省の責任だ。

文科省は大学全体の見取り図を画くことができない集 団である。

そしてたえず甘い水を大学に与えるからだ。45%は学校法人で、最
終的にリザルトチェックが全く働かない組織。

15%はこの姿を、見て見ぬふり をしている社会・卒業生・父母・学校

の教職員を含むステークホルダーである。
もの言わぬステークホルダーはだめなのです。

 大学を取りまくステークホルダーの方々はすべてに対し関心を

持っていただきたい。18歳人口が減少していく社会は、学校の経営

が難しくなりたいへん、 と同時に社会が衰退し革新的でなくなる

世の中になる。このような時代背景の なかで、大学教育・経営が

社会から目を向けられず、イレラバント(Irrelevant) なものになって

いる。

 これから起る大きな変化の入り口に立たされている学校産業は、

この一両年 中に、いま、私どもが考えている常識では理解できない

厳しさを求められる経 営が待っているのだ。

それは何か、オンリー・ワンの学校を目指さなければ生
き残れないからだ。ここで蓄積された知的富を最大化させ、学生一人

ひとりに 対し質の高い付加価値を与えることによって、生き残れる

強い大学造りができ るのである。

●これからの大学の姿

 競争優位を確立する為、今後の流れを推察すると、大学の

二極分化が出る。

1 ダメな大学、これはつぶれる大学である。

2 生き残れる大学、これに属する大学は、国際的スタンダードの

  なかで評価 される。

 学問にも相場がある。日本は低く評価されている。なぜか。

 古典、文化芸術、宗教、スポーツ等の総合的哲学、いわゆる

 リベラルアーツの不足である。東洋、 西洋の深い哲学を学生に

 教えていないからである。日本の教育の不味いところは哲学の 

 貧困である。

 哲学とは、人間の物の考え方の基本をいうのであって、基本は

 宗教にいきつ く。日本の大学ではもっと人間のものの考え方を

 教えないとだめだ。この基本 をなすものがリベラルアーツだ。

 日本の大学教育のレベルは、圧倒的に教養不 足の状態を露呈 

 している。要は外国のインテリにバカにされない人間を作るこ
 とが大学の責任になる。

 欧・米ではネコも杓子も大学にいかない。教養を身につけられない

 教育はダ メなのです。 

 このシステムを展開できない大学には受験者の倍率など増加する
 はずがない。したがって受験料の依存は不可。 

 教育に関わるポートフォリオの 内容をイノベートすることによって

 収入も変わってくる。質の経営展開である。

 米国にはさまざまな大学が存在する。 

 州立、私立、リベラルアーツ、総合大学、州立2年制大学、利益追

 求型の大学だ。わが国の大学はそれに比べて横並 び、画一的で

  ある。大学の経営収支を考えると、収入の増加には限界がきてい
  る、反面固定費(人件費)負担の増加は大きな問題である。

 又、教育研究者の 増大と、委託費(一部人件費が加わっている)の

 増加である。これから学生サ ーヴィスを拡大していかなければなら

 ない環境下で、Pay as you go の精神で 効率を高めないと経営を

 していくことができない。

 いま、グローバル化が求められる大学では、学生は国際的資源で

 ある。学生 が国際的に活動できるような経営を実践しなければな

 らない。このシステムを 構築することで、安定的経営体系を確立

 することが可能になる。それは教育の エンジニアリングシステムで

 ある。学校のシステムを動かす主役は学生である。

 大学経営は、このような側面から見ることが必要なのではないだろ

 うか。す べては現実に基礎をおいた、現場主義の考え方に立つ

 べきである。

 理事長・学長・総長という人達は、経営面、教学面においてどの

 ような責任 を持って経営に当っているのかわかっているのだろうか。

 名誉職では務まらな いのだ。そこで生き残るために経営感覚の

 導入が必要になってくる。

≪経営感覚を持つための具体策として≫

1 財の独立である。将来にかけて財務基礎はしっかりしているか。
2 収入源の三本柱。学費・補助金・寄付(浄財)
3 資産運用の果実。外部資金の導入・生涯学習の充実・眠っている

  施設、資産の活用
4 教学面においては魅力があるのかどうか。その基礎は教授陣の

  質、教育の質がよいか。
5 理事長・学長・総長と幹部といわれる人々は優れているか。

  どんな魅力の  持ち主なのか   
6 入学志願者の状況は。
7 キャッシュバランス。経常収支と長期の経営について、パース

  ペクティーブはできているか。
 
 結論は単年度で基礎的収支「入を計って出ずるを制す」の方針の

 徹底である。
いま、大学が行わなくてはならぬことは、イノベーションとは学校社会を変え
ていくことなのだ。

●新しい大学へのキーワード 

 戦後60年強、日本の大学は何を考え今日に至ったのか。

60年強つづいてきた日本の社会、政治、経済構造、わけても重要な

経営・教育については、金属疲 労を起こし上手く機能しなかった。

そんななかで精神的豊かさの追求については、この60年強にわたって

おろそかになった、という反省の声が聞こえてくる。
そうだと思う。
 
 60年強つづいて来た知識と技術のツメ込み主義に主眼を置いた

理念なき教育 の産物だったからである。

過去から現在、歴史の観点から時系列的にこの流れ
を縦軸にとらえ横軸にはグローバル化、ファッション化を考えると、

大学は正 にこのクロスポイントの上に立たされたといえる。

このような時代環境下で大 学はどんな「価値」を求めていくのか。

 社会とのハーモナイズでありこれを築き上げるのが教育である。

そして普遍 的なものでなければならない。そのなかに「質」を厳しく

深く追求することに より、世界水準の教育と経営に突き当たる

のではないだろうか。
    
 21世紀に生き残るための大学への次の5のキーワードの実践にある。

1.ガバナンス
○教学ガバナンスと経営ガバナンスの確立
○理事長・学長への権限の集中と執行能力の強化
○アドバイザリーボードの創設(監視機能)
○説明責任と責任所在の明確化

2.財の独立
○財務資産の強化
・大学基金の創設と拡大
・資金調達の多様化
○大学資産の有効活用
・大学の知財
・産学協同

3.透明性
○ディスクロージャー
・各ステークホルダーとの共生
・教学と経営の情報公開
・財務の適時開示
○ウェブの活用(ホームページによる情報公開)

4.社会の一員
○各ステークホルダーとの共生
・特に学生・父母・OB・寄付者
・市民(補助金は税金)
○大学の社会的責任(USR Universal Social Reponsibility)
・「コミュニティー」思想
・社会的責任報告書

5.新しい大学の構成論(組織論)
○学長・理事・教員・職員・学生の新しい構成のあり方
・大学経営システムと管理システム
・教員と職員の効率化
○学生から選別される大学
・教員の質の向上
・学生が大学に求めるもの(学生満足度の向上)
・ファッション性のあるカリキュラム
○教授と組合のあり方
・教授・教授会の役割
・組合の役割
・社旗常識からの検証
○学外からの人材登用
・産業界の効率性導入
・学外からの英知の導入

 大学が積極的にイノベートすれば国も変わるのです。
 
■著者略歴■
關昭太郎(せき・しょうたろう) 早稲田大学第一商学部卒。1953年、

山種証券 (現・SMBCフレンド証券)入社。92年に山種証券代表

締役社長に就任し
リストラに手腕を発揮。94年以降、早稲田大学理事、副総長
、06年
まで大学再建に携わる。21世紀大学経営協会(NPO特定非営利活

動法人)副 理事長。東洋大学理事。主著に『早稲田再生―財の

独立なくして学の独立なし ―』(ダイヤモンド社・2005年)。