米国の独断専行を許すな 伊東 乾 | 日本のお姉さん

米国の独断専行を許すな 伊東 乾

ようちゃん、お勧め!↓

CSR解体新書(2)米国の独断専行を許すな(ノルウェーが発案した

心憎い戦略とは)伊東 乾

日経】■■■■■■■■■■■■
伊東 乾(いとう・けん)昭和40年生まれ。東京大学理学部物理学科、

同大学院修了。

東京大学准教授(大学院情報学環)東京藝術大学非常勤講師。

作曲家、指揮者として内外で高い評価を受けつつ、

東大助教授として大学ITサバイバルの戦略立案、学術外交の

先端で辣腕を振ってきたのは知る人ぞ知る。

著書に「知識構造化ミッション」(共編著・日経BP)「動け!日本」(

タスクフォースメンバーとして共著・日経BP)ほか多数。

「さよなら、サイレントネイビー」で2006年、開高健ノンフィクション賞

受賞。
北極を中心に地球儀を眺めると、何が見えると思いますか?

「グローバリゼーション」のグローブglobeは地球の「球」に由来する

わけですが、実際、地球儀を別の角度から眺めると、面白いことに

気がつきます。

高校で地理を履修しなかった私などは、以前は北極というとロシア、

シベリアと思いがちでした。

実は、極点近くに一番島嶼が広がっているのはカナダ、それから巨大

なグリーンランドがデンマーク領であるのが目を引きます。

米国はアラスカを領有していますが、ロシアやカナダに比べればはるか

に控えめ。

そして、これらの国が面している北極海の大半は、永久流氷に閉ざ

されています。
これに対して、メキシコ暖流が注ぐ北大西洋海流側は北緯80度過ぎ

まで海が凍結していません。

「暖かい北極海」のど真ん中には、スヴァールバル諸島の存在が目を

引きます。

また、よく見ると「暖かい北極海」海岸のすべてが、ほとんど2つ

の国で占められているのが分かります。

さて、それはどことどこでしょうか?

答えは、ノルウェーとロシア。

上記、スヴァールバル諸島もノルウェー領。

あとは北極圏より南に英国、グレートブリテン島やアイルランド、アイス

ランドなどの姿も見えます。

今、「北極海を中心」に、「地球環境と国際通貨の問題」を考えてみると、

ある種のポイントが非常に見えやすくなります。

乱暴な筋立てですから、おのおのの専門家には怒られそうですが、

ここでの狙いはCSR(企業の社会的責任)です。

その目的に沿って、思い切って簡略化したあらすじでお話ししてみたい

と思います。1つの本質は抉り出されると思います。


世界第3位の産油国がEU加盟を拒否

今、仮に「暖かい北極海」がそのまま巨大な油田だと思いましょう。

この油田の恩恵に預かっている国はどこかと考えながら、地図を細か

く見てみると、スカンジナビア半島の海岸部はすべてノルウェー領で

あることがひときわ目を引きます。

スウェーデンもフィンランドも北極海に面していない。ノルウェーは直接、

海岸線でロシアと国境を接しています。

冷戦体制が崩壊の予兆を見せた1980年代初頭から、ノルウェーが

イニシアティブを取って地球環境問題が国際政治の表舞台に

登場した経緯を前回お話しました。

*ブルントラント・ノルウェー元首相が委員長を務めた地球環境問題

委員会が、「サステナビリティー」のコンセプトを一種のブランドとして

立ち上げたのが87年。

既に冷戦崩壊は秒読み状態で、89年「ベルリンの壁」が壊れてから、

91年12月のソ連崩壊まではつるべ落としでした。

この「ベルリンの壁」から「ソ連崩壊」までの間に第1次湾岸戦争が勃

発しています。そのあおりを食った石油価格上昇で、日本では決定的

にバブルがひっくり返っていた。


そのタイミングで、欧州ではマーストリヒト条約が調印されて、

EU(欧州連合)が発足しています。

そして、EUやEC(欧州共同体)の歴史をひもとくと、決まって

その要所要所に「ノルウェー、国民投票で非加盟を決定」と

出ていることに気がつきます。


冷戦末期の「次世代シナリオ」では「米ソ」対「欧州」という表現で

お話をしましたが、ソ連が壊れてしまうと、今度は欧州域内での

利害がいきなり表面化します。

*なぜノルウェーはEUに加盟しないのか。

複雑な理由があると思いますが、大きな一因として、ノルウェーが

「OPEC(石油輸出国機構)非加盟の、世界第3位の産油国」

あるという事実を挙げることができるでしょう。


こうやって、改めて考えてみると、ノルウェーは本当に賢明です。


「米ソ」対「欧州」という図式がかろうじて成立しているうちに、欧州共

通の利害を追い風に、北海油田で事実上の独り勝ちを続けている

大産油国、ノルウェーが次世代世界秩序のためのイニシアティブを

取ってコンセプト・メイキングをしていたことが分かります。


ローマは1日にして成らず。ノルウェーの戦略は巧妙なうえに多面的

です。普通に考えれば、CO2(二酸化炭素)排出量の削減、といった

エコロジカルな話題は、燃料前提の産油国としては歓迎せざるところ

です。

*ところがノルウェーは、フィヨルド地形を利用した水力発電や

潮位差発電など、代替エネルギー源に関しても圧倒的な

優位に立ち、人類すべてに共通する絶対的なテーマ

「地球環境維持」と、「最強のブランドであるサステイナビリティー」

のディファクトスタンダード(defacto standard =実質的な世界標準)を、

冷戦崩壊以前に奪取してしまっているわけです。


ノルウェーはこれにほぼ1世紀先立って、世界的な学術の最も権威

ある格付け機関、ノーベル賞委員会の平和部門の胴元にもなって

います。

ノーベル平和賞設立当初、ノルウェーにとって切実だったのは、ドイツ

帝国と帝政ロシアのパワーバランスなどだったと想像されますが、

ここで重要なのは、第1次世界大戦や国際連盟、国際連合などの

創設にはるかに先立って、ノルウェーが「平和」という絶対的な全世界

共通の社会価値について、その格付け機関から押さえることで、

国際的なトップブランドを確立していることでしょう


こうしたブランド性は同時に、ノルウェーの決定的な基幹競争力

core competence(コアコンピタンス)の防波堤にもなっていることを、

ここでは押さえておきたいと思います。

「デファクトスタンダード」「価値尺」「社会貢献性」「CSR」をブランドマネ

ジメントの観点から考える際、ノルウェーの国家政策に注意を払う

ことは大変有益だと思います

CSRを考えるうえで、初期には「欧米のCSR」対「日本のCSR」

あるいは「欧州の戦略」とまとめて考えることも有効ですが、長期的

な戦略性を持って、それを確実に「勝ち」に結び付けてきた、

ノルウェーのようなケースを見落としてしまうのはもったいないこと

です。


もし中東産油国がユーロ決済を言い出したら…

(さて、話を再度、冷戦崩壊直後に戻しましょう。)
92年のマーストリヒト条約、ノルウェーはいち早く、国民投票でEU

不参加を決めてしまいました。

かつて9世紀にカール大帝が治めた古代の西ローマ帝国よろしく、

独仏伊にベネルクス3カ国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)を

加えた欧州がECを設立した当初から、欧州共同体の重要な将来

構想には通貨統合が織り込まれていました。

通貨統合とは何か? 

最初はごく簡単に、地域内では為替の差益などが発生しなくなる

ことだと考えることにしましょう。例

えて言うなら、従来なら「ドイツ」と「フランス」、外国同士だったものが

「大阪」と「兵庫」のような関係になったわけです。

通貨が統一された地域内では、為替差益などで儲けることはでき

ません。


でも、そういう利ざやを捨てても惜しくない事情が、たくさんあった

わけです。その中で最大の動機を考えるなら、ドルに代わる機軸

通貨としてのユーロの確立があるでしょう。



冷戦中期、ブレトンウッズ=IMF(国際通貨基金)体制で西側機軸

通貨としてのドルの国際信用は、71年の「ニクソン・ショック」ドル・

金兌換の停止で破綻します。


米国はこの難局を乗り切るために、最大の産油国サウジアラビアを

中心とする石油をドル建てで決済する体制を築き上げます。

そしてまさにこの直後、73年に、産油国である英国とデンマークが

EFTA(欧州自由貿易連合)を脱退してEC加盟しています。

石油を後ろ盾とするドル機軸に対抗する、将来的なグローバル通貨

を念頭に置くと、欧州圏の思惑が透けて見えるようです。



また、まさにこの渦中の72年、石油王として知られたオリベッティ副

社長、アウレリオ・ベッチェイが設立したシンクタンク「ローマクラブ」

による地球環境や人類の未来予測「成長の限界」が、しきりと

メディアで世界中に喧伝されました。 地


球規模の災害が全人類を危機に陥れるという、環境問題を考える

うえではエポックメーキングな報告書が、ニクソン・ショックと

石油ショックの間に出されているわけです。


ちなみにベッチェイ博士は油田視察中に謎のヘリコプター墜落事故で

亡くなり、マフィアによる暗殺も噂されました。 冷戦後期、石油を

信用の背景としてドルの基軸通貨幻想を維持しようとする米国には、

米ソ対立という政治状況がありました。


それは、軍需を含む米国産業の振興力ともなり、また軍事費支出と

いうストッパーにもなっていたわけです。

この冷戦構造が壊れてしまうと、唯一の超大国となった米国が

軍事的、政治的覇権と、基軸通貨の発行元としての経済的覇権の

双方を押さえることになります。


これだけでも、ノルウェーも含め、欧州としては「欧州に有利な方向」

での次世代基軸通貨を考えるのは当然のことでしょう。


地球環境問題は山ほどあるはずなのに、なぜ「温室効果ガス」に

もっぱら焦点を当てるかというシナリオ選択も、石油を念頭に考える

とより明確化します。


それはもっぱら、化石資源を燃やすことで地球環境が破壊されてい

る、という「石油」全体に対するストッパーとして、機軸通貨ドルを

擁する米国とともに、その信用を裏打ちしているOPEC体制全体

にも、牽制球を投げることになるわけです。


実際このシナリオの延長で、排出権取引といった具体的な駆け

引きが展開可能になるわけです。

こんな具合で、欧州の通貨統合、将来的な機軸通貨候補としての

ユーロの観点からドル対策、ドル信用の源泉たる石油パワーへの

対抗策として、欧州発の地球環境問題を考えると、かなり違った

絵図が見えてきます。


もし中東産油国が、石油の決済をドル建てではなくユーロ建てにする、

と宣言したら、いったい何が起きるでしょう?

米国にとってはなかなか手ごわい交渉になるはずですね。

イラクがユーロ決済を米国に通告しようとすれば、どういう行動で

牽制することになるでしょうか?


現在も泥沼状態で尾を引いている中東西部の戦争状況の背景として、

こうした話が常に語られてきました。

もちろん、複雑な中東情勢には他に多様な背景があるわけですが、

CSR、環境問題と中東情勢は、石油燃料というキーワードを1つ

真ん中に置くことで、1本の対角線で結ぶことができます。


「サステナビリティーとかけて ユーロと解く、そのココロは、

どちらもグローバルスタンダードを狙います」

お笑いのようですが、実は全くバカにできないお話です。

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ようちゃんの意見。↓
★ドル,基軸通貨 とユーロ基軸通貨, は中東産油国の決済

関係で決する !>と言う図式だけでは無い! 

今までと違うノルウエー産油国それに付随する地球環境を考慮した

代替エネルギー利用のサステナビリティ,  ロシア産油国, 

アフリカ,南米産油国, ブルネイ・インドネシア産油国 などが

どう組み合わさるのか,

次号が楽しみな伊藤氏の論説は目から鱗が落ちますねー

代替エネルギーから海底エンエルギー利用とバイオエネルギーと

エネルギー利用も様様です.

(★日本は小アメリカになるな)をロシア経済ジャーナルの北野氏が

述べています, それを読んでください