ロシアは資源を政治的武器として使う
【モスクワ=遠藤良介】世界最大級のロシア国営天然ガス独占企業体ガスプロムがロシア国内外で膨張を続けている。国内では外資が開発してきたガス田権益を次々と奪取し、国外では各国ガス供給会社の資産獲得などに手を広げている。23日には、親露的なイタリアの石油大手との間で、黒海を経てブルガリアに至る欧州向け新パイプラインを建設する覚書に調印、その動きには諸外国から懸念が強まっている。
新パイプライン構想は、ウクライナやベラルーシなどロシア離れを強める旧ソ連圏諸国を回避して欧州への輸出経路を確保する狙いが指摘されている。ガスプロムはすでに、同様の思惑から北欧バルト海底を経由するパイプライン計画も打ち出しており、東西欧州を分断する構想として東欧やバルト三国から反発を買っている。 ほかにも、ガスプロムは欧州諸国でガス供給会社やパイプライン事業体の買収・資本参加を進めており、こうした拡張主義は「資源を政治的武器として使う思惑が見え隠れする」(欧州の専門家)と疑念を呼んでいる。その大きな理由は、ガスプロムがいわばエネルギー供給の“下流”にばかり投資し、自国内では肝心の新規ガス田の探査や開発への投資を怠っているからだ。 実際、ガスプロムの産出量は頭打ちで増大する消費に追いつきそうもない。その穴を埋めるべく、国内では外資の開発案件を「横取り」(業界関係者)しての産出確保に走っている。 22日には、東シベリアにあるコビクタ・ガス田の権益約63%を英BP社から6億~9億ドル(743億~1115億円)で譲り受けると発表。コビクタは、BPが4億5000万ドルを投じて開発したロシア最大級の有望田で、将来性を考えればガスプロムにとって破格の買値だ。同ガス田は、ガスプロムが輸出パイプライン敷設を認めないために“塩漬け状態”を余儀なくされていた経緯があり、BPはライセンス剥奪(はくだつ)まで突きつけたロシア側の圧力に屈した形だ。 昨年には、日本企業の出資する開発事業「サハリン2」の経営権が「環境問題」を口実にガスプロムに奪われており、今後も同様の手法による外資排除が進む可能性は高い。 6月24日8時0分配信 産経新聞 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070624-00000004-san-int |