【汚い中国】繁栄の足元流れる汚濁水 | 日本のお姉さん

【汚い中国】繁栄の足元流れる汚濁水

【汚い中国】繁栄の足元流れる汚濁水
前田徹 
産経新聞 2007年6月12日


 時事速報の中の「中国政策トレンド」というコラムで、富士通総研上席

研究員の柯隆氏が次のように書いている。

 「集合住宅に住む友人の家を訪ねると、階段や廊下などの共有部分の照明はほとんど壊され、床も掃除されておらず汚かった。しかし、一歩家の中に踏み込むとぴかぴかに輝いている」

 柯隆氏は「自分さえ良ければ」という中国人のマナーの悪さをこう嘆くのだが、こうした公共心の無さがいまや上海の生命線をも断ちかねない状況になっていることを最近になって知った。

 上海の黄浦江といえば、言わずと知れた上海の「母なる川」である。租界時代の西洋風建造物が並ぶ「外灘(バンド)」は黄浦江沿いにあり、年間600万人もの観光客が訪れる。

 その黄浦江の最新の水質検査の結果を目にしてゾッとしたのである。

 専門家に分析してもらうと、まず恐ろしいのは自然の川に存在してはならないヒ素やセレンといった重金属が含まれていたことだ。さらに洗濯排水など生活排水が大量に川に垂れ流されたことを示すABS数値が異常に高いうえ、屎尿(しにょう)投棄を示す大腸菌の数が1リットルあたり12000個もあった。

 顔をしかめたくなる数値はまだまだあるのだが、さらにもうひとつあげるとすれば総窒素含有量が1リットル当たり4・8ミリグラムもあったことだろう。

 黄浦江の上流にあたる太湖で5月下旬、水質汚染が進みアオコが大量発生して太湖を水源とする無錫市の水道水が臭くて飲めなくなったことがあった。その時の総窒素含有量が4ミリグラム。これでも日本の富栄養化の目安である限界値の20倍なのだが、黄浦江はそれよりさらに0・8ミリグラムも多かったのである。

 これほど汚れきった黄浦江を、上海市は水源とし外灘近くには取水口もある。もちろん市当局も黄浦江が水道用水に向かないことには気づいており、比較的ましな長江(揚子江)からの取水を始めているが、それでも上海市の水道水の7割近くはまだ黄浦江の水を使っている。

 一方、上海の表玄関、浦東空港でも最近、夜になるとひどい悪臭が漂い始めたという新聞記事に目がとまった。

 上海の地元紙「新聞晨報」(5月30日付)によると、浦東空港南の海岸沿いにある「上海老港生活ゴミ処理場」から午後9時になると南風に乗って動物の死体が腐ったようなにおいが空港に漂ってくるそうだ。

 処理場には上海中の生ゴミが船やトラックで運ばれてくるので、特に夏場の悪臭がひどいそうだが、問題は中国では生ゴミは焼却処理などせずそのまま地中に埋められることだ。その結果、とんでもない悪臭が周辺を襲うわけで、ゴミの山は地下水汚染につながる立派な公害源にもなっている。

 国家環境保護総局によると、中華人民共和国が1949年に成立して以来、人口は6億から13億にも増えたが、逆に600万平方キロメートルあった居住可能面積は砂漠化などの環境悪化で半減した。酸性雨は国土の3分の1を覆い、中国全土の河川湖の7割は汚染し、都市部の河川は9割が深刻な汚染に悩まされている。さらに3億の農民は安全な水が飲めず、4億の都市住民は大気汚染で呼吸器疾患を患っている。

 上海は高層ビル4000棟以上、ビルに飾られた派手なネオンは黄浦江の水辺に見事に映える。だが、その繁栄の足元ではヒ素を含んだ川が流れ、生ゴミの山は地下水さえも汚染しているのである。
台湾の声:http://www.emaga.com/info/3407.html