日本の国防 | 日本のお姉さん

日本の国防

【論説】日本の国防

          時局心話會代表 山本善心



 日本歴代政権の首相は、就任後まず訪米するのが慣わしであった。米国
大統領が新しい日本のリーダーを迎えて、今後の密接な関係を確認し継続
することが定例行事の一つだった。今回、安倍首相が訪米前に訪中したの
は、日米間で協議・調整して決められたものである
。4月27日の安倍首相
の訪米では、両首脳の個人的な意見交換と今後の日米関係の構築に主眼
が置かれた。

 安倍首相は今話題になっている従軍慰安婦問題を持ち出し、これまでの
経過を説明した。ブッシュ大統領が北朝鮮による拉致問題について「私に
任せてもらいたい。アベを困らせることはしない」と述べたのは周知のこと
である。

 ブッシュ政権内部でもいろいろな意見があるが、日米関係が悪化するこ
とは極力避けるべきだとの意見が強い。ブッシュ大統領は最大のパートナ
ーである日本の首相に配慮して「今後のことはあなたと私が決めればよい」
と語った。


中国がアジアの覇権を確立


 米国ワシントン郊外のキャンプ・デービッドで行われた安倍首相とブッシュ
大統領による二人だけの会談では、北朝鮮問題に大方の時間が割かれた。
核放棄の約束が守られなければ更なる制裁と圧力を加えることで一致した。
しかし北朝鮮問題は、日米が共同歩調を取っても、実際に北朝鮮の首根っ
こを押さえているのは中国だ、との意見がブッシュ政権内では強い。

 もう一つ、安倍首相が訪中の際に靖国参拝問題を事実上棚上げしたこと
に米国側は懸念を抱いた。
米国はこの訪中が成功裏に終わることを期待し
たものである。しかし日本の精神的支柱である靖国神社の参拝問題を先送
りしたことで、日本の外交が中国を越えられないと認識する見方が大勢を
占めた。

 つまり靖国参拝問題の先送りは、中国外交に屈したからだとの見方だ

これで米国政府は、今後のアジア問題は中国側との交渉を重視せざるを

得まい、との見方に帰結する。

つまり今の日本政府の外交や軍事環境では全く頼りにならないという

わけだ。


戦争の火種を先送り


 米国のライス国務長官は昨年11月のテレビ出演で、「中国は米国が外交
責任を分担する平等のパートナーである」と述べた。
これはブッシュ政権の
意向、政府の方針を内外に宣言したものである。つまり中国との直接交渉
は米国に国益をもたらし、アジアの安定にも一挙両得だ。しかも中国は米
国の市場経済にどっぷり浸っている。

 とはいうものの、日米同盟は対中抑止力として万一に備える軍事体制で
ある。
米国としては日本に1日も早く集団的自衛権の法的整備と憲法改正
を求めたいところだ。有事の際には日米共同で中国に対処すべき問題が
ある。安倍政権が米国の要請に応えられるか否か、今後の日米関係の真
価が問われるところだ。

 外交問題は“力と力による対決”で雌雄を決するものだ。その延長線上に
武力行使という威嚇があり、その先に戦争がある。つまり対決の問題を棚
上げすれば、戦争の火種を先送りしたと言われても仕方があるまい。


日本は誰が守るのか


 安倍首相は「日米両国が揺るぎない同盟関係に発展しつつある」と力説。
日本政府は既に有識者会議の設置を取り決め、集団的自衛権の行使を検
討するとブッシュ大統領に伝えた。しかし有識者会議のメンバーには、最
初から憲法見直しに同調する論客ばかりが集められたとの国内批判もある。

 自衛隊は、武器は保有しても行使できないとされている。集団的自衛権に
関する解釈をめぐっても、国内で議論のあるところだ。「日米同盟」はかけ声
ばかりで、日本側の対応が足かせとなって実際は機能できない、という米
側からの指摘もある。

 有識者会議では、日米同盟で自衛隊の活動範囲をどこまで広げられるか
が検討課題である。我が国では、集団的自衛権の行使は違憲・タブーとさ
れてきた。それゆえ戦渦に巻き込まれずに来た、との無責任な議論に帰結
する。しかし現実には冷戦構造終結後、日米安保は事実上解消したとみて
よい。それでは誰が日本を守ってくれるのか、答えを出せないまま今日を
迎えたのは、政治の責任と、無知な国民の無関心さによるとしか思えない。


日本の国防を整備せよ


 戦後日本は国防と安全保障の全てをアメリカ頼みにしてきた。米国と国連
が日本を守ってくれると勘違いしたからである


自国すら守れない日本が、国連の常任理事国入りしたいとか国連待機

部隊の創設とか、およそ非現実的な議論や提案を行ってきたのは滑稽な

ことだ。これでは政治家が日本の国防を政治の場で弄んできたとしか

思えない。

 全ての外交交渉は軍事力を背景にしたものだ。後ろ盾である軍事力を持
たない外務大臣が偉そうなことを言っても馬鹿にされるだけである
。昨年11
月、中川昭一政調会長による核保有発言が与野党から非難を浴びた。自
民党の二階俊博国対委員長は11月5日に「誤解を招きかねない発言であ
り、重要な立場の人間は発言を慎むべきだ」と反論した。「軍事力の行使も
できず中国を刺激するようなことは言うべきではない
、日本が一日も早く法
整備を行ってから言うことを言え」というのが二階氏の考えだ。しかし言うべ
きことを言わないなら日本に政治や外交は不要だ、との意見が大勢だ。


靖国にみる日本の敗北


 国際社会は力の誇示によってのみ成り立つ社会であることを忘れてはな
らない。
日中関係も、軍事的均衡の上に真の友好が促進されよう。外交とは
国益の上に成り立つものであり、一方的な押し付けや強制であってはならな
い。日本の先人たちの労苦を尊重し「美しい日本人」であり続けるためには、
国際社会では軍事力の強化が常識である。

 一方、この日本人の精神的支柱である靖国神社の「存在と参拝」を否定す
るのは世界で中韓だけ
だ。彼らは靖国を政争の具にしているが、日本国内に
も中韓と同調してけしかけたりする勢力がいて、問題を複雑にしている。

 小泉前首相は国内外の反対勢力に反発して、毎年靖国参拝を強行した。
安倍首相が国の尊厳をかけたこの問題を棚上げ・先送りすれば、日中の勝
負はついたと受け取られかねない。
事実、今回の安倍訪米でそれが懸念さ
れている。


米国は日本を守らない


 以前の号で「米国は台湾を守らない」と述べたが、中国の軍拡と脅威は深
刻な問題だ。今後アジア問題を考えるには、中国抜きでは何も解決できない
との声が激しさを増すばかりである。しかし米国の政治・外交姿勢が中国寄り
になると、台湾と同じく日本にも対米不信が募ってくる。

 最近では「沖縄の海兵隊8000人がグアム島に移る」との話題で持ちきり
だ。既にグアム島では受け入れ準備のため、兵士の住宅が急ピッチで工事
中だった
。台湾の台湾化を進める陳水扁総統は、米軍が台湾を守らず中国
寄りになることを想定して軍備態勢を整えつつある。米軍の撤退に合わせて、
今中国では「沖縄は中国固有の領土だ」とのキャンペーンを展開中だ。台
湾が落ちれば、次の標的は沖縄である。

 しかしながら、最近の米中関係は最悪になりつつあるのではないか。中国
の理不尽で独善的な行動に対する嫌悪感がピークを迎えつつある。ブッシ
ュ政権や国防省による対中批判が急速に高まっているのは、2008年の台
湾侵攻への警戒感だ。これらの動きにも、安倍政権は次なる手を打ってい
る。


日米豪の安保トライアングル


 4月13日、安倍首相はオーストラリアのハワード首相と、安全保障協力
に関する日豪共同宣言に署名した。日米安保条約と並ぶ「日米豪」の三角
体制、安保トライアングルの新態勢は、中国にとって最大の脅威だ。安倍
首相は「将来的にインドを参画させたい」と述べている。

 これは海洋国家を目指す中国をけん制する包囲網だ。中国の軍拡に対
抗するために各国の安全保障体制があらゆる方向で検討されている
。今
後は中国も強い反発を示すとみられるが、外交とは力と力の衝突であり、
ぎりぎりの国益を生み出す攻防に他ならない。

 日本人の背骨を正す改革が教育基本法であり、日本人の平和と安全を守
るのが憲法改正である。改憲は世界との軍事的均衡を保持し、日本人の精
神と社会を支えてきた倫理・道徳・伝統を復活させ、国民が誇りと自信を取
り戻すきっかけとなろう。

 今や時代は大きく変化しているが、日本が変わるには、国家の意思と国民
の意識が変わらなくてはならない。

日本を取り巻く国際環境は、心地良い一国平和主義時代の一昔前とは

様変わりしているのだ。 

『台湾の声』  http://www.emaga.com/info/3407.html
『日本之声』 http://groups.yahoo.com/group/nihonnokoe (Big5漢文)