【主張】露外相3島訪問 サミットで正式に抗議を | 日本のお姉さん

【主張】露外相3島訪問 サミットで正式に抗議を

産経新聞の主張です。↓

 ロシアのラブロフ外相が日本固有の領土である北方四島のうち国後島、色丹島、歯舞諸島の3島を初めて訪問した。プーチン政権がドイツの主要国首脳会議(サミット)で行われる安倍晋三首相との首脳会談を目前に、「領土問題で妥協の余地はない」との強硬なメッセージを発信したとみてよいだろう。

 1993年10月、故エリツィン前大統領が来日して調印した「東京宣言」は4島の名前を明記し、「法と正義」の原則を基礎として解決への交渉継続をうたっている。北方領土が係争中である現実を日露双方が認めていながら、一方の外交責任者が領土を訪問するのは、明らかに同宣言違反だ。自由と民主主義、法治主義の価値を共有すべきサミット自体の精神にも背く。

 しかも外相は、日本の漁船が昨夏、その沖合でロシア国境警備艇に銃撃され乗組員1人が死亡した歯舞にまで足を延ばした。挑発行為というほかない。モスクワの日本大使館はロシア側から事前に知らされていたとの情報もあるが、厳重抗議した形跡はない。

 ラブロフ外相は4島の63%と最大の択捉島は訪れなかった。在京外交筋は「択捉はロシアのもので係争地でさえないが、他の3島は交渉の対象にはしてもよい-とのシグナルとも受け取れる」と指摘する。そうだとすると、クレムリンが日本側に昨年来、顕著に浮上している「3島返還論」の支持勢力に呼応して、日本の世論の新たな分断工作を仕掛けてきたともいえる。

 ロシア側は一島たりとも返還の意思はないのに、分断で時間稼ぎをして結局は問題をうやむやにしてしまう作戦だ。日本への迎合といえば、同外相は色丹島の日本語を学ぶ生徒から日本の歌「さくら」を披露されたという。

 安倍首相はロシア外相の北方領土訪問をサミットの場で正式に抗議すべきである。係争中である以上、機会均等の立場から、麻生太郎外相の北方領土訪問も要求できるはずだ。

 これとは別に、先週末にはカムチャツカ半島沖のベーリング海で17人が乗り組んだ富山県の漁船「第88豊進丸」がロシア国境警備隊に拿捕(だほ)される事件が起きた。「漁獲量超過」の疑いで臨検後、港へ曳航(えいこう)中という。漁船銃撃事件で被弾した船体の返還もまだだ。後手外交のツケがたまってゆく。