中国、人権弾圧諸国との取引を拡大 米議員ら指摘、政府の管理一段と
産経新聞 2007年5月30日
【ワシントン=古森義久】米国議会の超党派政策諮問機関
「米中経済安保調査委員会」がこのほど開いた「中国経済に対する政府の
管理の度合い」と題する公聴会で米側の議員や専門家たちから中国経済の
中国当局の介入による異様な特徴の諸点が指摘された。
こうした諸点は米国にとって対中経済関係で不公正な競争を生み出して
いるとする批判が多かった。
米中経済安保調査委員会(キャロリン・バーソロミュー委員長)は24、25
の両日、同公聴会を開き、合計13人の証人から証言を聞いた。
委員会側からは委員のマイケル・ウェッセル氏が「中国も世界貿易機関
(WTO)に加盟した以上、国際貿易に対し自由市場的アプローチをとって
いくと思われがちだが、中国の現実はそうではない」と問題提起をして、
中国では中央政府が経済の大きな部分を管理し、国有企業に補助金
その他の特別な支援を与えながら、グローバル市場へ進出しようとして
いる、と述べた。
議会を代表してキャロリン・キルパトリック下院議員(民主党)が
(1)中国は自動車の製造と輸出に着手したが、自動車産業は優遇税制、
補助金付与、人民元の不当レートなど政府の特別な支援を受けており、
国際市場での競争では不正に有利となる
(2)米国の輸出の50%を占める知的所有権がらみの製品の産業界は
中国の偽造・模造品により年間4500億ドルの損失をこうむるが、
中国当局は座視している
(3)中国当局は人権弾圧の激しいスーダン、アンゴラ、ジンバブエ、
イラン、ミャンマーなどの諸国との経済取引を拡大している-ことなどを
指摘した。
ウォルター・ジョーンズ下院議員(共和党)も米国の年間2320億ドルという
対中貿易赤字も中国政府の特定産業への巨額な国家補助金のためだと
して、中国製品の対米輸出を規制する法案の必要性を強調した。
国際産業競争性センターのジョージ・ハーリー所長は「中国が市場経済に
向かっているとみるのは誤りで、現実には中国は政治支配層が余剰の所得
をすべて占有する『儒教経済』なのだ。
中級以下には存続に必要な最小限の富を与えるだけで、あとは上部が
収奪する」と証言した。
カリフォルニア大学サンディエゴ校のバリー・ノートン教授は
(1)中国の国有企業は不透明で、中級の国有企業はとくに傘下の小企業と
結びついているが、その連関があいまいで、いずれも情報公開など
まったく実施していない
(2)中国では政府が特定産業を集中的に支援する「産業政策」が強化され
ている-などと指摘した。
ワシントンの大手法律事務所「デューイ・バランタイン」のトーマス・ハウ
エル弁護士は「中国の国有企業は全体に不調であり、経済全体には負担
となっており、やがては大規模な閉鎖、あるいは民営化を迫れるだろう」と
いう意見をも述べた。
こうした証言は全体として中国の経済構造のあり方への批判であり、
中国経済の異質性が米中経済関係の競争を不公正にしているという
米側の認識を集約したといえる。