予防接種による副作用を大問題にしたのはメディアだ。
全国で、10代、20代の若者を中心にはしかが広がっている。感染を防ぐため、休校する高校や大学も増えている。
小児医療機関などからの国立感染症研究所への報告によると、患者は600人を超えている。全医療機関ではなく一部の特定病院からの定点報告なので、実際の患者は、これよりはるかに多い。
患者は都市部に多い。ここ数年では最多の発生で、例年、患者数がピークとなる初夏にかけて、事態はさらに深刻化する恐れもあるという。
予防対策はワクチン接種しかない。過去にはしかにかかった人以外は、医療機関で検査して、結果によっては、接種を受けるようにしたい。東京都のように、10代を対象に、接種費用の一部助成を緊急対策に盛り込んだ自治体もある。
はしかは、ウイルスが原因だ。重い肺炎などを併発することも多い。脳炎を発症して死亡する例さえある。本来は子供に多いが、若者でも、重症化することがあり、あなどれない。
10日前後の潜伏期間があり、感染者は発病までに、セキなどで周囲に感染を広げる。感染力も強い。患者が発生した学校の休校措置は、当然だろう。
東京学芸大学のように、教育実習をする学生に、はしかの予防接種を義務づけた大学もある。感染症は、予防と早期の封じ込めが肝要だ。
米国など欧米先進国では、患者は毎年数十人どまりだ。小学校入学の条件に予防接種を課すなど、強力な対策を取っている。これに対して、日本は、予防接種による副作用禍が過去に社会問題となりワクチン利用に及び腰だ。
2001年には、国内の患者数が定点報告で約3万人、推計で計30万人近くに達する大流行もあった。米国は、日本人旅行者が悪質なはしかウイルスを持ち込むのではないかと恐れ、「日本ははしかの輸出国」と批判した。
この事態に、小児科医師たちが呼びかけを強め、1歳時のワクチン接種は増えた。だが、1回接種では、十分免疫ができなかったり、後に免疫が弱まったりする。欧米では、2回接種が普通だ。日本も昨春から、1歳時と小学校入学前の2回、公費接種の制度が始まっている。
今の若者は1回接種が圧倒的に多いことが、流行を繰り返す原因にもなる。2回接種を徹底する必要がある。
ワクチンへの消極対応は、おたふくかぜなどの感染症でも見られる。はしか流行の教訓に学び、対策を見直したい。