宮崎正弘の国際ニュース・早読み
米国議会は「反日決議」より中国のダルフール虐殺支援批判決議が優先
マイク・ホンダらの思惑に狂い。
「中国の代理人」と言われている、マイク・ホンダ議員が持ち歩いていた陰謀、日本への「慰安婦問題に関する対日非難決議案」は、6月以降に採決が先送りされる見通しとなった。
決議案を率先していたホンダ議員(民主党)は早急な採決を目指していたが、ラントス委員長(民主党)は安倍首相訪米により、「日本との関係に配慮した」(議会関係者)という。
また下院議長のペロシ女史は人権問題に敏感で、過去のことより、現在進行形の人権抑圧を問題視している。
米国連邦下院議会は同時に、虐殺のつづくダルフール紛争に関して、スーダン独裁政権に肩入れする中国に「虐殺防止のためのスーダンへの影響力行使を求める決議案」を提出している。こちらのほうが優先される。
蛇足ながら、先の安倍首相の訪米、ワシントンの新聞記事にならなかった。
驚くなかれ、ニューヨークタイムズにも訪米の記事がない。
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(読者の声1) 『週刊新潮』(5月24日号)の高山正之氏のコラムによりますと、「南京虐殺記念館はただいま「改修のため休館」でしばらく休館を続けて、70周年を形だけの行事をおこない、それで済ます」と書いてあります。バージョンアップのための改修ではなく、休館の口実ための改修であるようなニュアンスです。もう中国は反日をやめたいらしいんですが、ほんとうなんでしょうか?
(NY生、品川)
(宮崎正弘のコメント)これは高山さんの感性と言語上の比喩でしょう。中国においては政治ゲームのコマとしても、「反日」は止まないでしょうし、記念館の規模は三倍になります。
問題は反日激昂絶頂時の三倍予算化と反日暴動が納まった頃のタイムラグがあり、そのために「休館」しており、政治戦術としての休館は、これからも屡々起きうる、ということでしょうね。
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(読者の声2)「ノンフィクションにフィクションを書いてはいけないと思っているんですが読者に楽しんでいただこうと思うと、つい書いてしまうんですよ」
これは或る保守系言論誌6月号の中で、インタビューに応えての鳥居民氏のコメントです。
私は5月14日付け貴誌第1796号(読者の声4)の中で『近衛文麿「黙」して死す』をとり上げて次のように書きました。
「・・はずである」、「・・は間違いない」、「おそらく・・のであろう」が随所にみられ、それらを前提に論がすすめられ「・・である」、「だった」の結論に至ります。スリリングな展開はサスペンス的です。サスペンス調歴史談といったところでしょうか。
書綴の埃が立ち上がる中から書き起こされた同書や『昭和二十年』には、限界を感じます。資料からだけ得た情報の限界です。偏頗なものに傾きがちです。事件の現場を踏み、関係者を巡り、他の研究者・専門家と論議をし、それらを積み重ねて片翼とすることも必要なのではないでしょうか。
自身の揣摩臆測を洞察力と勘違いし、事柄を繋いで、更に「フィクション」まで混ぜ込んでしまうのであれば、それは紛ことなき、「歴史談義」です。
鳥居氏は資料の渉猟、読み込みを一所懸命しています。
高松宮日記・岩佐凱実の回想録・寺崎太郎を繋げて、田中清玄が語っていた貞明皇后と玄峰和尚の遣り取りの裏取りが出来た歓びをインタビューの中で語っています。 が、しかし推測だけでなく「フィクション」まで入れ込むのは、如何なものでしょう。同氏の書き物を愛読している私は、事実として書き込まれている部分や引用文だけ頭に入れるようにしています。
全体をそのまま受け容れるか、ある部分に止めるかは、それぞれの読者に委ねられています。
(有楽生)
(宮崎正弘のコメント) お話に出た田中清玄氏のこと。かれも東大新人会で、マルクス・ボーイで、火炎瓶を投げていた。小生も生前、三回ほど会っておりますが、本人が回想する体験談はともかく、ご先祖をかたる際の、氏の伝記には伝聞箇所が多く、歴史的事実としての誤認が二十数カ所におよびます。
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一人っ子政策違反者に法外な罰金を科してきた地方政府
妊婦が強制堕胎手術で死亡、広西省で大規模な抗議行動から暴動へ発展
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広西省の博白県で、地元政府当局が「計画出産政策を強行」(貧乏家庭で子沢山に65ドルの罰金を科した)したため、強制的堕胎手術で妊婦が死亡する事件があった。
これに抗議する農民、応援に駆けつけた民衆が政府関連施設に投石を始め、導入された警官隊との間で暴力的な衝突が起きた。
数千人の農民が参加した、と香港の『明報』が21日に伝えた。
AP電(22日)によれば、広西省博白県で農民らは政府ビル(鎮政府庁舎)を取り囲み、庁舎に放火、バイクや車などもひっくり返して焼き払ったという。
とくにシャポ村(音訳不明)では、連日衝突が繰りかえされており、五人の死亡がでている模様。
広西省博白県政府は、これまでに一人っ子に違反した家庭から最高額1300ドル(年収が130ドルあるか、ないかの貧乏地域)を徴収していた。
しかも第一子を産んだ女性でふたたび妊娠した女性に中絶手術を強制し、出産経験のある女性に不妊手術を強制した。
住民らは、この実態を写真におさめ、とくに米国のメディアに流し始めた。米国の人権擁護リベラル派のマスコミに訴える戦術に、中国の当局は為す術がなく、暴動の広がりを警戒している。
博白県のほかに広西省全域で政府庁舎を包囲する暴動が頻発している。
抗議する住民たちは携帯電話で各地の住民たちと緊密に連絡を取り合い、応援態勢が整い始めた模様で、暴動は更に大規模にある可能性がある。
◎みや○◎○ざき◎◎○◎○◎○まさ◎◎○◎○ひろ◎
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(読者の声1) 文芸春秋社から出た『盗聴 二・ニ六事件』(田中整一著)を手に取りました。
当時の電話機の写真が表紙に使われており、懐かしく感じてページを繰り出したらもう止まりません。
出動部隊の拠点のひとつ、赤坂の料亭幸楽の跡地が元ホテル・ニュー・ジャパンで今のプルデンシャルビル、参謀本部が社民党本部、駐日ドイツ大使館が国会図書館、戒厳司令本部が置かれた陸軍の社交場の軍人会館が九段会館、盗聴と録音はその中で行われました。
その担当者が陸軍中野学校の講師となります。
内容は随分前(1979年と88年)に渋谷放送でドキュメント番組として放映されているので(著者はこの番組のディレクター)、目新しい発見ではありません。
著者は番組制作の取材で膨大な時間と労力と費用を費やします。
かつての渋谷放送にはこういう良質な製作者がいて、視聴料も生きた使われ方をしていたのです。 それも今は昔。
渋谷放送の資料庫の管理責任者が、そこにあった古びた紙函の中の録音盤がニ・ニ六事件の貴重な記録であることに気付いて、明治大研究室の協力を得て苦心惨憺して再生します。
著者が再生された事件関係者の肉声を海中に投じた長縄のようにして、これを伝って降りて1930年代の日本を大震撼させた事変の深層海流に潜り込んでいく、そのスリリングさは堪りません。
深海に潜り込んだ著者の叙述は、海底に沈んだ事件の全容をよく俯瞰していて、関係者の動きがくっきりと眺め渡せます。
埃を被った録音盤が収められていた資料庫は、捕らえられそこで処刑された29名他が収監された陸軍東京衛戍刑務所の跡地にありました。録音盤の再生作業中、刑務所内で処刑された事件の亡霊たちが立ち現れたと騒ぎになったのは不思議ではありません。
お上に裏切られたと成仏できずにいるのですから。
当時最高の俊英が雲霞の如く集まっていた陸軍、その内部の凄まじい暗闘、武闘、奇略、策略、詐術、謀略が昭和11年2月26日から29日までの四日間皇居上空に竜巻のように渦巻き、それは翌年の八月に西田税や北一輝という部外者を主犯に仕立て、陸軍中枢部にいた真犯人を庇い通して終息します。
片倉衷少佐らにより事変の二年も前に「政治的非常事変勃発に処する対策要綱」という構想が密かに立てられ、皇道派の決起を梃子にこれを逆利用しようとする ”カウンター・クーデター”計画がたてられたときから竜巻は渦巻き始めていたのです。
この要綱は政治、外交、治安警備、経済、社会政策、教育、世論工作など多岐にわたっていて統制派の緻密さが窺えます。
ほぼこれに則った対処が出動部隊になされます。
出動部隊の呼称が「行動部隊」→「決起部隊」→「騒擾部隊」→「反乱軍」と変転ゆくさまは凄まじく哀しいものがあります。
事件の暗部となっている「陸軍大臣告示」の中の”諸子の行動”と”諸子の真意”の字句が入れ替わった謎とその発令時間と発令先の解明はなかなかのものです。
北一輝が安藤輝三大尉に電話でしゃべったという「マル、マル、カネはいらんかね・・・」は憲兵隊員が北に成済まして安藤大尉に掛けたもので、これが戒厳司令部で傍聴され、録音もされていて後世真相が露になったとは何という皮肉でしょう。
近衛師団長橋本虎之助中将のメモの改竄、香椎浩平戒厳司令官、山下奉文二人の怪しい行動etc。
ソ連のスパイだったドイツ人記者のゾルゲが駐日ドイツ大使とスターリンの信任を獲たのはこの事変を詳細に分析・リポートしてからでした。
この五年後ゾルゲは尾崎秀実と共に特高に逮捕され、三年後に処刑されます。
占拠された陸軍省建物の道向かいのドイツ大使館に、陸軍は密かに人員を送り込み、反乱軍を監視しました。
日独同盟の交渉がナチと日本陸軍の間で前年10月からスタートしていた関係がこれを可能にしたのです。
匂坂春平という事件の首謀者を裁く陸軍軍事法廷の検察官の執念と緻密さと潔さには感心させられます。
五.一五事件では軍人は軍法会議で軽い罪に、民間人は刑事法廷で厳罰に処せられたことを反省したのか、ニ.ニ六事件では緊急勅令を出して遡及的に軍法会議法を改正して軍人と民間人を一括して軍事法廷で裁きました。
しかし北一輝らに責任を押し付けるシナリオで進められ、陸軍大臣である寺内寿一が指揮権を発動して訴訟を誘導し、翌昭和12年7月のシナ事変勃発を契機に即時終結の方針のもと審議を慌しく終了し、同年8月磯部浅一、北一輝らは処刑されてゆきました。
一方、真崎甚三郎は不起訴になります。
北一輝は法廷で、そうですか、”それじゃあそうしましょう、どんな罪でも裁判官の言われるとおり、私は認めますから”という恭順な態度を貫き、刑架に座らされて、縛られても、”ああ、いい気持ちじゃ”と言っていました。 当時54歳の北一輝の態度は実に堂々としていて感心させられます。罪をおっ被せられることを最初から観念して従容として潔く静かに銃殺に処せられて行きます。
(HN生、神奈川)
(宮崎正弘のコメント)精密な書評でした。ありがとうございます。
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『中国よ、反日ありがとう』(清流出版)
『朝鮮半島、台湾海峡のいま、三年後、五年後、十年後』(並木書房)
『拉致』(徳間文庫)
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成19年(2007年) 5月24日(木曜日) と、23日(水曜日)
通巻第1806号と、1805号
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