「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 通巻第1777号 | 日本のお姉さん

「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 通巻第1777号

 アラブ湾岸諸国が一斉に核技術入手へ動き出した
  ペルシア帝国の核武装を恐れ“スンニ派の核弾頭を”と


 日本でも核武装論議が本格化しつつあるが、アラブ諸国でもまた。

しかしアラブ湾岸諸国の核論議は“本物”である。

 イランの核開発が日程にのぼり、早ければ二年以内、遅くとも十年でイランは核弾頭をもつだろう。
対して米国はタリーズなど核施設への先制攻撃を控え、イスラエルにも自重を促し、さるにても空爆を逡巡する、この頼りなき米国を目撃してサウジアラビアなどは、どうするか。
 当然ながら核兵器保有を目指すであろう。

 げんにエジプト、トルコ、サウジアラビアなどはウィーンのIAEA本部に対して核プログラムのデータを求めた。サウジはとくに執拗に求めている。

あくまでも「平和利用」「原子力発電」が表向きの理由だが、ホンネは、復活する「ペルシア帝国」(イラン)への軍事的脅威に対抗するため、“スンニ派の核弾頭”を得ることが目的である。イランはアラブ民族とことなってペルシア人。しかも宗教はシーア派。
サウジアラビアは世俗主義のスンニ派のパキスタンと密かなコンタクトがあり、なにしろイスラマバードに聳える世界最大のモスクは、サウジが全額寄付した。
ましてパキスタンはカーン博士がリビア、北朝鮮へ核技術を提供していた“実績”がある。

 二週間ほど前、テレビ討論番海で黄文雄氏がじつに印象的なことを言われた。
「台湾だって核保有を目指したことがあり、韓国もほしがっている。世界中で核兵器を欲しがらないのは日本だけで、不思議な国ですね」と。

 アラブ沿岸諸国では「もし、米国がイランの核施設を先制攻撃するとしても、誰も反対はしないばかりか、いやいやながら支持するだろう」(NYタイムズ、4月16日付け。IHIは一面トップ記事)。


 ▼ヨルダンなど穏健国家でも原発開発の声

 (イラン核保有秒読みで)「状況もルールも変わった。誰もが核保有にむかって走り出した」(アブドラ二世、ヨルダン国王)。
 湾岸諸国は殆どがスンニ派であり、石油リッチなのに、なぜ原発が必要かと問われると、「将来への投資であり、主権国家として当然の権利である」という回答が返ってくる。三月のアラブサミットでは加盟21カ国の代表が、「イランの核武装への動きは中東の安全保障に対して破壊的であり、地域が墓場化する始まりである」とする共通認識を示した。

 現在、「原発」建設に関心を示すアラブ湾岸諸国とは、バーレン、エジプト、ヨルダン、クエート、オマン、カタール、サウジアラビア、シリア、トルコ、イェーメン、アラブ首長国連邦(アブダビ、ドバイなど7カ国)、

 なかでも石油リッチのサウジアラビアの原発への関心と開発意欲は本物である。二月のプーチン訪問時にはロシア製原発導入で話し合いがもたれている。

 また米国でも原発をビジネスとして、あくまで平和利用と勘案すれば、湾岸全体の原発建設は一兆ドルにせまる世紀の商談ともなりえる。
 とくにサウジ、バーレン、クエート、オマン、カタール、UAE諸国は米国の“同盟国”であり、同時に原発を監視することは核武装を監視することでもあり、ブッシュ大統領は「スンニ派の核弾頭」を恐れているが、それゆえにこそ原発建設には米国は協力すべきだとする意見もワシントンの一部に存在している。
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平成19年(2007年) 4月17日(火曜日)  
   (4月16日発行) 
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