知り合いのアーティストの絵を見にお出かけ
肝臓が弱っている15歳の猫ちゃんを病院に連れて行き、点滴を打って
もらってから、久しぶりにお出かけをした。
知り合いのアーティストの絵の個展に行くことにした。個展の会場には、
アーティストの子供もいた。ずっと前、会ったのを覚えているのか、親しげに
話しかけてきてくれた。その子と一緒に小さいスケッチブックに絵を描いたり
色を塗ったりして遊んであげていたけど、ぼちぼち帰ろうかなと思って、
「さっ!」と言って立ち上がったら、
3歳ぐらいの小さいその女の子が「さって、なあに?」と聞くのだ。
「ぼちぼち、帰ろうかなと思って。」と答えたら、「ふうん。早く帰ってほしいわ。」
なんて言う。本当は、早く帰ってほしくなかったくせに、、、。
「早く帰ってほしいやろ?わたしは、あなたのママの絵を見にきたお客さん
だから、帰らないといけないんや。」と言うと、「分かった。じゃあ、その色鉛筆を
置いていってくれる?」と言う。
「それは無理。」と言うと「どうして?」と、聞いてくる。
「これはね。友達がくれた色鉛筆だから、ずっとカバンに入れておかないと
いけないの。」と、答えた。
ドイツの水彩色鉛筆だから、高いヤツなんだよね。
絵を描きたくなったら、描いてといってもらった色鉛筆だから、もちあるいて
いないといけないんだ。
「じゃあ、バイバイ。」と、その子に言うと、下を見ながら「バイバイ!」と元気に
挨拶をしてくれた。帰るときに、ドアを少し開いて、見送ってくれたから、わたし
のことがちょっと好きだったのかもしれない。
家に帰る途中で、画材屋さんに寄って、女の子が持っていたのと同じような
赤い表紙の小さいスケッチブックを買った。
カバンの中にスケッチブックと色鉛筆を入れておけば、いつでも絵が描ける。
アーティストの絵を見たので、絵が描きたい気分になった。
女の子に頼まれて、お花や葉っぱや、どんぐりやイルカの絵を描いた。
久しぶりに絵を描いたな。落書きみたいな絵だったけど、それでも何かを自分
の手で描いて、自分で色を塗るのは楽しかった。小さい女の子が、一生懸命
わたしが描いたお花の絵に色を塗っている様子も可愛いと思った。
アーティストの子供だけあって、色のつけ方や、自分で付け加えた線がすごく
上手い。才能にあふれた小さい分身がいるアーティストが、ちょっとだけ
うらやましかった。また会いたいな。遊んであげたんじゃなくて、わたしが遊んで
もらったのかもしれないな。