台湾国家正常化路線を進む以外に「台湾にある政府」が生き延びる道は無いということ。 | 日本のお姉さん

台湾国家正常化路線を進む以外に「台湾にある政府」が生き延びる道は無いということ。

【光華寮裁判】「台湾」いまだ敗訴せず


                 人 文 (法科大学院在籍)


 3月27日、20年ぶりに光華寮訴訟の判決がなされ、さっそく各界から反応が

出ております。

新聞の見出しには、「台湾の訴訟資格消滅」「台湾事実上の敗訴」などという

文字が躍っております。
 これを見て、おそらく多くの人が、中国寄りの判決、台湾を窮地に追い込む

判決、と思ったのではないか。

実際、新聞や識者の論調はそうなっています。

 しかし、それは全く違うと思います。大いに誤解されています。
 台湾はいまだ敗訴していない。むしろ、これは「台湾国家正常化路線を

後押しする判決」といっても過言ではない。そう読むべきであります。
 その理由を以下に申し述べます。

  * 敗訴したのは「中国を代表する中華民国」 *

 私は一法学徒として、この訴訟に注目しておりましたので、昨日の判決直後

に判決全文を読みました(最高裁ホームページで読めます)。
 この裁判にご関心のある方は、判決全文がこちら(最高裁ホームページ)

から読めますので、愚昧なマスコミ報道などに反応する前に、まずご自分で

ご覧になるよう是非お勧めします。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=34412&hanreiKbn=01

 法律学上の論点は多岐にわたり、今後学界で論議を巻き起こすと思われま

すが、専門的な議論はさて措き、「台湾の声」の読者諸氏にまず確認していた

だきたいのは、この判決は、

 「中国国家を代表する政府としての中華民国政府には、訴訟追行権がない」

ということを言明したに過ぎない、ということです。
 もっとあからさまに言えば、

中華民国は中国(の政府)ではない

「台湾は中国(の政府)ではない」

「中国(の政府)は中華人民共和国である」ということなのです。

 至極、当たり前のことではありませんか。少なくとも、台湾国家正常化路線を
支持する者にとっては。
 「中国国家を代表する中華民国政府」を支持する者以外に、この判断に憤り

を覚える人がいるでしょうか。

 判決文の一部を引用します。

 「・・・ 本件建物の所有権が現在中国国家以外の権利主体に帰属しているか
否かは別として,本件において原告として確定されるべき者は,本訴提起当時,
その国名を「中華民国」としていたが,本件が第1次第1審に係属していた昭和
47年9月29日の時点で,「中華人民共和国」に国名が変更された中国国家と
いうべきである。
・・・」

 この判決は、決して、「台湾に現存する中華民国政府(あるいは台湾政府)が
、訴訟主体あるいは権利帰属主体となり得ない」ということを言明したものでは
ありません。

 ご存知のとおり、光華寮訴訟は、1967年、「中国の代表権を有する政府とし

て承認されていた中華民国政府」が原告として訴訟提起したものです。
 最高裁が、この訴訟の原告本人は「中国国家の代表権を有する政府」で

あると解釈した、という点がポイントです。

 そのように解釈したのは、出訴当時の中華民国政府がそのように言ってきた

からである。そして、1972年の日中共同声明を境に、法律上、「中国国家の

代表権を有する政府」は「中華民国」という名の政府から「中華人民人民

共和国」という名の政府に移った。

だから、「中華民国」と名乗る者には、「中国国家の代表権を有する政府」から

の授権がない亡霊のようなものにすぎない、中国を代表する中共政府の

授権のある者が訴訟追行すべきである、こう判断したわけです。

 遅くとも1987年の大阪高裁判決の際に台湾側は本人名義を「台湾

(本訴提起時中華民国)」と改称したようですが、最高裁の解釈によれば、

本人と異なる者から授権された無権限者であることを自ら白状したことに

なります。

 ですから、中国とは別の国家(台湾)の代表権を有する政府が、何らかの

名義で、別訴提起する資格までを否定したものではありません。前記引用

部分にあるように、光華寮の所有権の帰属も確定していません。

あくまで否定されたのは、「1967年に訴訟提起された本件土地建物明渡

請求訴訟」の訴訟追行権限だけなのです。

 これで、「台湾の事実上敗訴」という見出しが全くの間違いであることを理解
していただけたでしょう。今回は誰も敗訴していないのです。あえて誰が敗訴し
たかを挙げれば、(中国の代表を建前とする)「中華民国」なのです。
 「台湾」はいまだ敗訴していません。

  * 「台湾」にとって歓迎すべき判決 *

 しかし、一方で最高裁は、「中華民国政府」あるいは「台湾政府」が日本国内
法上の権利帰属主体、訴訟主体となりうる、と積極的に判示したわけではあり

ません。
 今回、これに関する判断を最高裁は回避した格好なので、今後、台湾

政府が出訴(あるいは訴訟参加)する資格が認められるかどうか定かであり

ません。

 間違っていたら訂正いただきたいのですが、台湾は、「中華民国政府は、

 中国国家の代表権を有する政府である」との立場を公式に放棄してはいな

 いはずです。
 台湾が「中国国家を代表する政府」という建前を変えない限り、今回と同じ

 判断を招くこと必定です。

 台湾が今後、日本国内で出訴する場合、「中国とは全く異なる台湾(国)を

 代表する政府」という立場を明確にしない限り、当事者としての資格は

 得られないでしょう。それは、台湾政府が、中華民国憲法の原理原則
 に反する立場の明確化を否応なく迫られることを意味するのです。

 台湾政府が改めて日本で出訴する場合、裁判所は代理人に聞くでしょう。
 「貴方は誰の訴訟代理人ですか」
 「中華民国政府です」
 「わが国はそのような国を承認していませんが、どの国を代表する政府です

 から。」
 「建前は中国の政府ですが、実質は台湾にある政府です」
 「しかし、日本は中国の政府は中華人民共和国政府しか承認していません

 ので、中国の政府という建前では出訴資格がありません。

 他方、台湾国というのも存在していないようですね。一体、あなたは誰の

 訴訟代理人なのですか」

 そうすると、

 「訂正します。私は台湾国政府の訴訟代理人です。台湾国政府は台湾の

代表権を有する政府で、中国とは全く無関係です。

ですから、日本国政府が受け入れている「一つの中国」原則にも抵触しません。

残念ながら今は日本国に承認されていませんが、台湾には台湾国というのが

ありまして、それを代表する政府に授権されたので、いまここに訴訟を提起

する次第であります」
と言わざるを得ないでしょう。

 本判決が暗に伝えようとしたメッセージは、

 「中国国家の仮面を被った中華民国政府は、日本の国内法上保護され

ない。もし権利保護を求めたいのであれば、その仮面を脱ぎ捨て、正々堂々

と台湾の代表権を有する政府として出訴しなさい」

ということなのです。

 最高裁の裁判官が本当にそこまで考えたかどうかはともかく、台湾国家

正常化路線を支持する者は本判決をこのように粛々と受け止め、

中華民国政府の寿命が縮まったことをむしろ歓迎すべきなのであります。

  * 台湾国家正常化の大義とせよ *

 聞くところによれば、3月27日の判決日は台湾側の訴訟代理人に通知されな

かったとのことです。

いくら法律上の判断とはいえ、こんな簡単な判決を出すのに20年間も塩漬け

にした挙句、こんな仕打ちはないだろう、と憤りを覚える方もいらっしゃる

でしょう。私もそう思います。これで司法府の責任を果たしたといえるかは、

今後、日本の法曹界の大きな反省材料になるはずです。

 しかし、その憤りを日本の裁判所にぶつけるのは筋違いというものです。
 台湾政府も遺憾声明を出していますが、体面としてやむを得ないと思い

ますが、本当は遺憾に思う必要はないはずなのです。

 この判決は、現在の台湾の国家体制が不正常であることを改めて確認し、

しくも台湾国家正常化路線を進む以外に「台湾にある政府」が生き延びる

道はないという現実を明確に知らしめたものであり、これをもって台湾国家

正常化の大義とすべきことを、最後に強調しておきたいと思います。

『台湾の声』  http://www.emaga.com/info/3407.html

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そういうポジティブな見方もあるなあ。なるほど。