メニュー・フーズ社が中国から輸入した小麦グルテンに殺鼠剤が混入していた可能性がある。
米国でペットフードを食べた犬や猫が死亡するケースが相次ぎ、メーカーが計6000万点ものリコール
(無料交換)を発表した。これまでに判明した死亡例は猫と犬あわせて16匹だが、異常を訴える症例は数千匹規模に達する恐れがあり、全米の飼い主の間で不安が広がっている。
問題のペットフードからはネズミ駆除用の殺鼠剤(さっそざい)に使われる薬品が検出された。この薬品は、原料に使われた中国産の小麦のグルテン(粘着性のあるタンパク質)に含まれていた疑いが浮上している。
米国
はペット大国であるだけに、事態は前代未聞の“ペットフード・パニック”に発展。米メディアは連日、回収問題を取り上げ、安全なペットフードの入手方法などを特集している。
米食品医薬品局(FDA)によると、少なくとも15匹の猫と1匹の犬が腎不全で死亡した。獣医関係者によると、嘔吐(おうと)や食欲不振などペットの異常を訴える飼い主が続出している。
ペットフードのリコールを発表したのはカナダ・トロントのメニュー・フーズ社。昨年12月3日から3月6日までに米カンザス、ニュージャージー両州の2工場で製造された犬猫用フードを対象に16日から回収・無償交換を開始した。対象となる犬猫用フードは、缶詰など95種で、これまでに6000万点が北米で販売されている。
メニュー・フード社はペットフードの有力メーカーで、全米のスーパーで商品が販売されているだけに、波紋が広がった。
こうした中、ニューヨーク州食品安全当局は23日、死んだ猫が食べた製品から、殺鼠剤に使用される「アミノプテリン」が検出されたと発表した。2001年の米中枢同時テロ以後、食品の安全確保のために設立された検査機関が調査にあたった。
アミノプテリンは酵素阻害剤の一種で、米国で抗ガン剤のほか、人工中絶を目的に使われたこともある。だが、胎児の先天異常を引き起こす副作用が判明し、現在は処方されていない。
米当局はアミノプテリンの混入経路の追跡を開始。米ABCテレビは23日、ペットフードの原料としてメニュー・フーズ社が中国から輸入した小麦グルテンに殺鼠剤が混入していた可能性があると報じた。AP通信も23日、FDAの話として、「調査の焦点は小麦グルテン」と報じた。
メニュー・フーズ社のパウル・ヘンダーソン最高経営責任者(CEO)は「ペットは米国の家族の重要な一部」として、ペットが死亡した飼い主への補償に応じる考えを表明した。
米ペット製品製造協会によると、全米の63%に上る6910万世帯が何らかのペットを飼育。犬は全世帯の43%、猫は37%に上っている。
(ワシントン 渡辺浩生)