チャイナでは、毎年がんで死ぬ200万人のうち、70%が環境汚染が原因 | 日本のお姉さん

チャイナでは、毎年がんで死ぬ200万人のうち、70%が環境汚染が原因

全人代 軍備より環境対策を  

 全国人民代表大会(全人代)が始まった。約3千人が国政を論じ合う、中国の国会だ。

 07年予算案などが審議されるが、国防費は前年度実績比で17・8%増える。2けた増は19年も続くことになる。国際社会の対中脅威論に拍車をかけるのは確実だ。

 円に換算すれば5兆3300億円。初めて日本の防衛予算を上回る。それだけではない。米国防総省は「中国の国防費は公表額の2~3倍になる」と見る。日米両政府は中国に国防費の透明化を求め続けることになるだろう。

 胡錦濤政権が掲げる「和諧(わかい)社会」、つまり調和ある社会との整合性も大いに気になる。農村の貧困や社会保障、医療制度の確立など国内には急ぐべき問題がたくさんあるからだ。

 これだけ武力を整えた中国が、いま外敵の攻撃にさらされるとは考えにくい。軍事費の大盤振る舞いよりも国民の暮らしを優先すべきではないか。

 なかでも公害病の広がりは、大勢の生命にかかわる緊急問題になっている。

 水質汚染が原因とみられるがん患者の多い「がん村」が各地に出現している。NGOや学者らの報告はあるが、これまで当局は全体像の公表を避けてきた。調査さえ十分でないため、実情をつかめていないのかも知れない。

 当局が本格的に腰を上げねばならない状況に至り、情報が外部に流れだした。

 国家環境保護総局の幹部は「毎年、がんで死亡する約200万人のうち、70%が環境汚染と関係する」と語る。環境専門紙は「毎年、少なくとも40万人が大気汚染と関係する病気で死んでいる」と伝えている。この通りなら、毎年、環境汚染により100万人規模の国民が命を落としているという信じがたい事態だ。

 がん村では、汚染企業に対する自治体の対応が手ぬるい実態が浮かんでいる。貧しい村々が税収を工場に頼っていることなどが背景にある。格差問題の一断面といえる。

 また、新華社通信は、環境汚染の激化によって、身体に障害のある赤ちゃんの出産が急増し、新生児や乳児の死亡の主因になっていると報じている。

 国民の危機意識も高まり、新華社の世論調査では8割の人々が「経済発展の速度を落としても環境を守るべきだ」と答えている。

 中国政府はまず、公害の実態を正しく把握しなければならない。徹底した全国調査と情報公開が欠かせない。汚染企業の操業停止、患者の治療などに政府と自治体が協力して立ち向かうべきだ。

 各地から全人代に集まった代表たちも重い責任を負う。16日までの会期中、集中的に対策を議論し、その成果を持ち帰って各地の政策に生かしてほしい。

 すでに、河川の7割が汚染されているともいわれる。北部ではますます水不足に拍車がかかる。全国で増え続けているがん村の住民たちが求めるのは、「大砲よりも水」だろう。

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