最新軍事情報 byエンリケ航海王子
●米陸軍長官辞任
米陸軍のハーベイ長官は二日、『ワシントンにある「ウォルター・リード陸軍
病院」でイラク負傷兵の一部が劣悪な環境に置かれている』とする問題の
責任をとって辞任しました。
この問題は米紙「ワシントンポスト」が報じて明るみになったもので、病院ト
ップのワイトマン陸軍少将の解任も一日、明らかになっています。
⇒ひとことでいえば、「壁に穴が空いている」「カビが発生している」という
環境面のひどさ、という話です。
三日にブッシュ大統領はラジオ演説の中で、「同病院の現状は受け入れがたい」
と述べ、大統領直属の超党派委員会を立ち上げて負傷兵の処遇を早急に
調査する方針を明らかにしています。
同病院は陸軍最大級の医療施設で、規模は二百五十床。一日数千人の外来
患者を受け入れています。患者には、アフガンやイラクで負傷した兵士も多く、
ブッシュ大統領もたびたび慰問に訪れていました。
ハーベイ長官は同病院の実態に「失望」を表明し、兵士の福利厚生全般を
見直す「行動計画」の立案、実施を指示しています。
病院長だったワイトマン少将は、これらの欠陥を承知していなかったと釈明し
ましたが、二〇〇六年九月時点で、同病院の運営、負傷者の治療が危機
状態にあるとの認識を持っていたことが判明しており、同少将の「リーダー
シップ能力の不足」が浮き彫りになっています。
病院施設の劣悪さが明らかになったことは、米軍部隊の士気に直結する
重大事態と思われます。異例の早さでトップの首が飛んだのも、それが
最大の理由でしょうね。
わが国でこの種の話はそれほど注目されませんが、これが、米政治の強さ
なのかもしれません。
●ネグロポンテ国務副長官、「拉致問題を支持」
二日、塩崎官房長官と会談した米のネグロポンテ国務副長官は、「北鮮に
対するテロ支援国家の指定解除」を慎重に行なうようとの要請に対し、
「拉致問題における日本の立場を強く支持する」と述べました。その後
記者会見では、「北鮮に対するテロ支援国家指定の解除については、議論
することに同意しただけ」と発言しています。
⇒ネグロポンテ氏は外交官で、ニ〇〇五年に初代国家情報長官に就任、
その後二〇〇七年ニ月十四日に国務副長官になった人です。
「米の意図は、当面の間わが国と北鮮を緊張状態に置くことにある」とおき軍
事は思っています。そのためいろいろ世論操作を行うだろうと見ています。
この発言もそのひとつでしょう。
これを真に受けて、右往左往するのはよくない気がします。
わが国に大切なのは、誰が何を言おうが何をしようが、「踏みにじられた国家
主権へのオトシマエをつける」一点にあり、ここでブレを起こさないことでし
ょう。核関連の話はすでに「どう対処するか」を具体的に整備する行動段階に
入っています。
ちなみに一日、北鮮の金外務次官(六者協議の代表でよくテレビで見る人
です)が訪米しています。同次官は訪米前にシナも訪れています。
●アハマディネジャド大統領、サウジ訪問
三日、イランのアハマディネジャド大統領がサウジを訪問し、アブドラ国王ら
と会談しました。十日に行なわれる「イラク安定化に向けた国際会議」に参加
することを表明しているイランが、イラクで激化しているとされる「スンニ派」
と「シーア派」の対立緩和策を話し合うのが主目的とされています。
⇒主議題はイランの核保有にあると思います。イランは中東の盟主サウジに
対し核保有の目的を説明にいったのでしょう。
イランは中東で、歴史的にも民族的にも宗教的にもまったく孤立しており、
その中で生存するためには強大な武器がどうしても必要だ、という心情はよく
理解できます。
また、「輸出代金のドル決済をこれからも継続する」ことも、合わせて伝えて
いるのではないでしょうか。
●内閣情報分析官を新設
政府の「情報機能強化検討会議」は二月二十八日、首相官邸の情報要求に
対応できるための情報収集・分析能力強化に関する中間報告をまとめました。
半年のうちに具体策を盛り込んだ最終報告をまとめ、実行段階に移ります。
中間報告のエッセンスは以下のとおりです。
1.機密保護のための新規立法を行なう
1.内閣情報会議を再編し、必要情報を各省庁に指示できる体制にする
1.海外情報収集のための人的機能を強化する
1.内閣情報分析官を新設する
人的情報収集については、組織や体制を含めた検討を行なうとされ、諜報
機関創設に向けた話が活発化しそうです。
機密保護については、現在の「国家公務員法の守秘義務」ではあまりに抑止
効果がないことから、罰則強化を含む統一的な新規立法を検討する必要が
あるとしています。
内閣情報分析官については、官僚や民間研究者の中から高度の分析能力を
持つ数名を任命し、内閣情報調査室内に設置するそうです。
⇒笑ったのは、分析官の報告が首相に上がるまでの過程です。
分析官⇒内閣情報官⇒合同情報会議(外務・防衛省局長級が参加する
会議)
⇒首相、官房長官、国家安全保障問題担当首相補佐官に提出
一体何人が情報に触れるんでしょうね
(笑)
少なくともおき軍事であれば、貴重な情報を分析官に出すことはないでしょう。
「内閣情報会議」は、官房長官と関係省庁次官級による現行体制を拡張し、
国家安全保障会議事務局長、官房副長官補三名などのスタッフを参加させる
ことで、各省庁に対し官邸が必要とする情報を確実に伝えることとする。
現在すでにわが情報活動は、相も変らぬ官庁間の権益獲得戦争の真只中
にあるようです。政治の覚悟のなさが、わが情報活動をハイエナが餌を
食い散らかす場にしています。ふざけた話です。
「国家機密漏洩は無期懲役か死刑」
これをまず決めることです。
このリスクを負わない限り、いくら優秀な情報マンを育てても、いくら優秀な
組織を作っても、政治はいつまでたっても情報
を手にできないでしょう。
本当に情報がほしいなら、このあたり、よ~く考えるべきです。
●日興コーディアル上場廃止
世界同時株安(?)が報じられた当日、日興コーディアルグループの東証上場
廃止が事実上決定しました。「組織的な不正会計」が理由です。
日興のような大きな証券会社が上場廃止になるのは、極めて異例の出来事
です。
日興は今後米のシティグループに組み込まれることとなるようです。
⇒東証はこれまで不正会計を理由として、西武鉄道(二〇〇四年)、カネボウ
(二〇〇五年)、ライブドア(二〇〇六年)を上場廃止にしてきました。
上場廃止というのは、東京証券取引所での株発行を通じて投資家から資金を
調達することが不可能になった、ということですが、会社自体に信用と実力が
あれば、銀行借り入れや債券発行などでいくらでもお金を調達できます。
ですので、倒産・破産とは意味合いが違います。
ニューヨーク証券取引所と東証を統合する話も出ていると聞きます。
東証の十倍の規模をもつニューヨーク取引所と一緒になったらどういうことに
なるか・・・。わが上場企業はあっという間に米資本に食い散らかされるでし
ょう。
さて、わが国の大証券はこれで野村と大和の二グループのみになりました。
日興證券の事実上の創業者 故・遠山元一さんは、あの世からどんな思いで
今回の出来事を見ておられたでしょうか・・・
●国家安全保障会議、来春始動へ
国家安全保障会議創設に向けた有識者の集い「国家安全保障に関する官邸
機能強化会議」は二月二十七日、首相官邸で最終会合を開きました。
会議は報告書を正式決定し、首相に提出しました。
内容のエッセンスは以下のとおりです。
1.機密漏洩厳罰化のための新規立法の必要性を喚起
1.三月下旬に政府は安保会議設置法改正案を提出。来年四月に国家安全
保障会議を発足させる
1.国家安全保障会議の役割は以下三点の審議にある。
(1)外交安保の重要事項に関する基本方針
(2)複数省庁にかかわる重要な外交安保政策
(3)重大事態対処の基本方針
1.既存の安保会議の機能は国家安全保障会議に吸収する
1.国家安全保障会議は月二回以上開催する
1.現在安保会議が扱っている「防衛計画大綱」「わが国が攻撃された武力攻
撃事態対処」を審議する場合は、現行の安保会議と同じく財務相、国交相、
経産相、総務相、国家公安委員長が国家安全保障会議に加わり、九名で
会議を行なう
1.国家安全保障会議事務局は専従の十~二十名で構成する。
1.国家安全保障会議事務局スタッフには、制服自衛官、民間専門家を積極
的に活用する
1.事務局長は補佐官との兼任も可能。補佐官が国会議員の場合は事務
局長は兼任しない
1.事務局次長は外交担当と危機管理担当の官房副長官補が兼任する
⇒首相官邸のリーダーシップを背広官僚の手に戻す。
そういう方向に向かっている気がするのはおき軍事だけでしょうか。
●山東省の副市長解任
シナ外務省の秦報道官は二月二十七日、朝鮮半島問題担当大使を務めたことが
ある李浜・山東省威海市副市長が職を解かれた、と明らかにしました。
韓国のメディアはシナ公安当局が李氏を国家
機密漏洩容疑で拘束し、取調べを行なっていると
報じています。
ちなみに香港メディアは少し前に、李前大使が北朝鮮の金正日訪中(昨年1月)
に関する国家機密を漏えいした疑いを持たれている、と報じていました。
●ロシアの武器輸出が過去最高を更新
ロシア政府は二十七日、二〇〇六年の武器輸出額
が六十五億ドル(約七千八百億円)に
達し、過去最高を更新したと発表しま
した。
会見を行ったドミトリエフ連邦軍事技術交流局長は、輸出全体に占める割合の
中でシナとインド向けシェアは七十四%から六十二%に低下し、中東や中南米、
東南アジア向け輸出が増加したとしています。特に増えたのは中東と中南米向
けです。
現時点で契約先は八十カ国で、〇七年は八十億ドルに達する見込です。
⇒この一月にプーチン大統領は、国営のロスオボロンエクスボルト社会に武器
輸出を独占させる大統領令に署名し、これまでエネルギーを主役としてきた対
外路線を武器輸出にも広げてゆく国家方針が明らかになっています。
ちなみにわが国は、武器輸出ができないことで東南アジア各国から非難されて
きました。その結果それらの国々はロシアやシナから武器を導入し、結果、
長期にわたる外交関係の基盤を作っています。
●タイ、自由貿易協定を締結へ
訪日中のタイのニット外相は二月二十七日、わが国とタイの自由貿易協定を含
む経済連携協定に関し「四月のスラユット首相訪日時にも締結できる」と述べ
ました。
⇒昨年九月に合意されていましたが、クーデタ後の十月に「一年間の凍結」が
表明されていました。
ちなみに自由貿易協定を含む経済連携協定については、二十七日まで二日間に
わたってASEANとの交渉が行なわれましたが、この席では、日本が提示す
る貿易品目の九十二%の関税撤廃に対するASEAN側の結論は出ていません
でした。
円経済圏の誕生に向けた一里塚といえましょうか。
●欧州連合、「シナで機会損失」
欧州委員会(欧州連合の国会に相当する機構)はこのたび、中共当局による税
制や規制などによる関税障壁で欧州連合内企業のビジネス機会が大きく損なわ
れている、とする内容の報告をまとめました。
それによれば、シナでは環境技術・サービス分野でビジネス機会が多いが、
中共当局による税制や規制、知的財産
権保護などで欧州連合の企業が十分
成果を上げることができていない、と
指摘し、機会損失は少なくとも年間
二百十四億ユーロ(約三兆四千億円)に
上るとしています。
⇒とくに「中共の地方当局による規制は
世界貿易機関のルールに従って
いない」と強く批判しています。
シナ製品の大量流入で対シ貿易赤字も膨らんでいることもあり、マンデルソン
委員(通商担当 わが国では経産相に相当)などは「行動を起こすべき」とい
う声明も出しています。
●米、休耕地でトウモロコシを増産
これ、少し気になるニュースでした。
二十六日の日経に出ていたのですが、米農務省が休耕地の一部を、ガソリンの
代替燃料として期待を集める「バイオエタノール」原料用のトウモロコシ栽培
に切り替える方針を固めた、というものです。
記事では、現在バイオエタノールの原料向けトウモロコシ需要が急増しており、
最大でわが国の四国に相当する約二万平方キロが、増産用地に割り当てられる
そうです。
米の休耕地については、通常十年以上の期間を決めて政府に登録され、草木で
地表を覆うと政府から費用の補助を得られるという仕組みがあります。
この登録期限が切れる休耕地が二〇〇七年~二〇一〇年にかけて約一万
平方キロあると見込まれています。
⇒ドルとNY株式市場の暴落が、このニュースとほぼ期を一にして始まったん
ですよね。
●米軍司令官、「命令出れば辞任」
二月二十五日の時事通信が英紙「サンデー・タイムズ」の報道として伝えたと
ころによれば、ブッシュ米大統領がイラン攻撃を命じた場合、一部司令官は辞
任する考えだそうです。
米軍筋のリークみたいですが、「少なくとも四名ないし五名の将軍や提督が、
ブッシュ大統領から攻撃を命じられた場合、辞任するだろう」とのことです。
司令官(! と書いてありました)たちは「イラン攻撃は無謀」と考えている
とのことです。
⇒司令官というのは命令を出す権限を持つ高級軍人のことで、中央コマンド、
太平洋コマンドといった大部隊の最高位の人ですね。たぶん、中央コマンド次
期司令官のファロン提督が強硬に反対しているものと思料します。
「イラン攻撃は無謀」というのは世界の軍人の間では共通常識ですから、話に
は信憑性がありますね。
米がイラン攻撃を考えているという噂がさまざまな形で世界を駆け巡っていま
す。それがイラクの安定を損ないかねないとの危機感を、米軍はもっているの
かもしれません。
でもまあ、こういう報道自体が目くらましの可能性もあります。
かなり信憑性があると思料しますが、百%信用することはできませんね。
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