悪名高い中国当局の税金しぼりとり作戦=「増値税」制度 | 日本のお姉さん

悪名高い中国当局の税金しぼりとり作戦=「増値税」制度

さて、では今回の特集「世界の売り場」に登場した日系企業とはいったいどこでしょうか。

詳しくは、こちらを読んでください。↓

http://sakuratou.iza.ne.jp/blog/entry/118237/


・伊勢丹
・ユニクロ
・ヤクルト
・吉野家
・タカラトミー
・イエローハット
・コマツ
です。

非常に興味深いのですが、取り上げられている企業のほとんどが小売業(現金商売)、もしくはインフラ関連の企業「コマツ」などで、奇しくも以前の拙エントリ「NECも中国撤退、兵どもが夢のあと」で書いた私の見解と同じです。ここに日経の詭弁が隠されているのです。

確かに中国の沿岸部において富裕層の登場は紛れも無い事実です。しかし、日経ビジネスの特集では既に世界で周知の事実となっている違法コピー、模造品の問題、また中国当局の外資叩きについては触れていますが、中国市場の最大の問題である、債権回収のリスクについては全く触れられていません。

債権回収のリスクを説明する前に、中国の税制について簡単に説明すると、中国においては企業は企業所得税と増値税を収めなければなりません。これまでは外資企業の進出を促進するために、中国当局は企業所得税についてさまざまな優遇措置を取ってきました。一見メリットがあるように見える制度ですが、現地のローカル企業でまともに企業所得税を納めている会社などありません。

このことは中国当局は百も承知。そこで税金を確実に徴収するために考えられたのが、悪名高い「増値税」制度です。これは17%の付加価値税なのですが、企業は管轄の税務署から専用のパソコンを購入させられ、専用の伝票を購入し、売上が発生する度にこの専用の伝票を用いて顧客に請求しなければなりません。

そして、毎月自社が発行した増値税伝票(売上増値税)と仕入れの際に受け取った増値税伝票(仕入れ増値税)を税務署に提出して、差額(利益)の増値税を収めます。これで税務署は税金の取りっぱぐれがなくなる訳です(もちろん、偽の伝票を使った詐欺事件なども多々ありましたが)。

一方企業側は、法人所得税は現地の会計士を使えばどうにでもなるので、経理担当者の仕事はもっぱら資金繰りです。日本のように毎月決められた期日に払うのが当たり前の商習慣とは違い、催促しなければ払らってもらえない中国では、支払を如何に遅らせることができるか、如何に踏み倒すことができるかで経理マンは評価されます。ちなみに営業マンは売上だけではなく、顧客の購買担当者と如何にコネを作り、如何に早く払ってもらうかで評価されます。

このように中国の“B to B”の商取引においては、ごくごく一部のブランドメーカーを除いて全ての企業がこの不毛なビジネスを延々と繰り広げています。そして、ご存知の通りブランドメーカーは模造品や外資叩きの標的にされるのです。中国の工場が海外取引をしたがるのは、貿易ではお金が先にもらえ、最悪の場合でも50%は回収可能なためです。

つまり、中国国内では現金商売しか成り立たないのです。

このこと(特に増値税の実務)を、中国ビジネスのコンサルタントは絶対に説明しません。

さて、では日経ビジネスがいうところの“ニューリッチ”2億人の中国市場、消費者とはいったい誰なのでしょうか。彼らは外資企業で働くホワイトカラーなのか、それとも政府高官の親族縁者か、ダーティービジネスで私服を肥やす企業経営者か、カラオケ屋のお姉ちゃんか…。株と不動産しか上昇しない超デフレの中国市場。

外資の製造業が去った後、“ニューリッチ”2億人は生き残れるのでしょうか。
http://sakuratou.iza.ne.jp/blog/entry/118237/