この社説では、すぐに次の衛星が必要らしくて、なんだか落ち着かない。
2月25日付・読売社説(2)
[情報収集衛星]「宇宙からの監視網はできたが」
日本の安全保障を支える「宇宙からの監視網」が、やっと目指す形に近づいてきた。
4基目となる政府の情報収集衛星が、鹿児島県種子島から国産ロケット「H2A」12号機で打ち上げられ、予定の軌道に乗った。
監視網は、望遠カメラを備えた光学衛星2基と、夜間、曇天で撮影可能なレーダー衛星2基の計4基で構成される。今回は2基目のレーダー衛星だ。軌道上での点検を無事に終え、運用を始めれば、日本が独自に、地球のどこでも、1日に1回以上撮影できる体制が整う。
速やかに本格運用へ移行させたい。必要な場所を、必要な時に、確実に撮影して画像を詳細に分析し、活用する体制を早急に築かねばならない。
北朝鮮の核実験と、度重なる弾道ミサイル発射実験により、日本を巡る安全保障環境は一段と厳しくなった。中国も軍備の増強に力を注ぎ、日本近海などで活動を活発化させている。宇宙からの監視網にかかる期待は極めて大きい。
それにしても、監視網の形が整うまでに時間がかかった。1998年の北朝鮮の「テポドン」発射を契機に整備が始まり、当初計画では、4年前に4基体制になっているはずだった。
H2Aロケットが足を引っ張った。2003年3月に、まず2基を打ち上げたものの、続く11月の打ち上げに失敗して2基を同時に失った。この反省から1基ずつの打ち上げに変更し、昨年9月に光学衛星を打ち上げている。
機密の塊ともいえる衛星だけに、外国のロケットに打ち上げを依頼することはできない。ところが、打ち上げ失敗に備えて予備の衛星を準備しておくなどの対策は取られていなかった。
この間に、当初打ち上げた2基は、設計寿命の5年が迫っている。すでに代わりの衛星は待ったなしの状態だ。
次の打ち上げは、09年に予定されている。監視網に穴が開かないよう、これまでの遅延を教訓に、着実な衛星製造、打ち上げを目指さなくてはならない。
衛星の目の強化も急務だ。
現在は、地上の約1メートルの物体を見分ける能力しかない。トラックと乗用車を区別できる程度の解像度だ。世界では民間衛星でも同じ能力がある。
政府は、次の世代の光学衛星で、この解像度を60センチまで高める目標を掲げている。今回の打ち上げでは、その実証機も無事に軌道投入された。
日本が独自に情報を得て活用するには解析などのソフトを含め自前で高度な技術を持つ必要がある。そのための技術開発でも手を抜くべきではない。