李登輝発言の真相
【歴史の曲がり角】李登輝発言の真相
アンディ チャン
最近の李登輝発言をめぐって台湾は大きく動揺した。中国人のメデ
ィアがバッシングを開始すると、たちまち一部の台湾人が同調し、
民進党員も李登輝を貶すことで名を上げて得意がっている。メディ
アのデマ攻撃は陳水扁や彼の家族に始まって、教育部長の杜正勝に
続く李登輝バッシング、明らかな各個撃破である。中国人はメディ
ア、政治家、退役軍人とその家族、国民党員などを使って総体戦を
挑んでいるのに、台湾人は妥協を考えるだけで、政治家も民衆も敵
に対処する防御や反撃を考えない。
香港系週刊誌・壱週刊は刺激的な見出しを掲げた --李登輝は言
う:「独立放棄」「中国資本を受け入れろ」「大陸を訪問したい」。
みんなウソだった。
それにしても…、である。あれほど尊敬し、信じていた李登輝元総
統に対し、多くの人が簡単にメディアの歪曲報道を信じて李登輝バ
ッシングに走るとは情けない。なぜ自分で真相を調べてから判断し
ないのか。台湾人はそれほどバカなのか。新聞がウソを言うことは
百も承知の民衆がなぜコロリとウソに踊らされるのか。
それにしても…、民進党員はなぜ中国人メディアの尻馬に乗ってメ
ディアや国民党党員と同調し、自分の同志で民衆の敬愛する李登輝
を攻撃するのか。年末の立法委員選挙のため、敵の国民党を攻撃せ
ず台聯党と同士討ちをやるのは愚の骨頂である。
それにしても…、独立派の長老・辜寛敏までが簡単にメディア報道
を信じて李登輝を攻撃するのか?ブルタース、お前もか?
●李登輝発言の検討
李登輝は「台湾はすでに独立した
民主国家である。だから今更独立
を主張する必要はない。
必要なのは正名、制憲、国家正常化
である」と述べた。
するとメディアは「李登輝は独立を放棄した」と新聞の見出しに書いた。
歪曲であること本文を読めばわかることで、本文を読まないから誤解する
のだ。
李登輝は「台湾と中国は対等な国で
ある。台湾が中国に投資するなら
中国が台湾に投資することもできる
はず」と言った。
すると新聞は「李登輝は中国の台湾投資を奨励した」と書いた。
記者が李登輝に中国へ行きたいか?と訊ねて、李登輝が
「昔は孔子が諸国訪問をしたように、
行ってみたいと思った事もあった」と答
えた。
すると新聞は「李登輝は中国を訪問したいと言った」と書いた。
明らかな歪曲である。
問題はメディアが100%歪曲報道をすることを知っているはずの政
治人物、有名人などがコメントを求められると、見出しを見ただけ
で「李登輝は変わった。間違っている」などと答える、それを新聞
がまた歪曲して「独立派の人たちも李登輝を見捨てた」と報道する。
なぜ「私は新聞を信じない、李登輝を
信じる」と答えないのか。
もっと情けないのは民進党連中が挙って李登輝の批判を始めたことだ。
メディアに踊らされて同士討ちを始めるような無思慮では台湾は潰れる。
台湾が潰れる前に民進党を潰すほうがよい。
●「独立した民主国家」に疑義
李登輝の本意は、台湾が統一・独立の二極に分かれて論争を続けて
いけば国は疲弊し、人民が苦しむだけだ。台湾人政権が出来て7年
目になるが、台湾は正常な国ではないから、正常化に向けて努力す
べきだというのである。民進党も同じように台湾が独立した民主国
家だと主張している。それなら民進党員は攻撃の矛先をメディアの
歪曲に向けるべきである。李登輝が「路線変更」を言明したという
のは間違いである。
このような論争が起きる原因は、つまり台湾が正常でない「真の独
立した民主国家」でないからだ。台湾には政府があり選挙もある。
民主国家の形は存在している。しかし民主国家の形態はあっても実
情は国民党独裁であることに変わりはない。
この国は中華民国と呼ばれる亡命政府で、いまでも中国大陸、外蒙
古や新疆、チベットまでを自国領土と主張している。台湾の住民は
統・独両側ともこんなバカな主張を信じていない。そこで統一派は
中国と統一すればよいと主張し、独立派は国名を変えればよいと主
張する。
第三の林志昇グループは中華民国は亡命政府で、台湾は米国の暫定
占領領土であると主張する。歴史を見ればこれがが最も正しい、し
かし米国は台湾を暫定統治して中国と事を構える余裕がないので、
現状維持としか言わない。
統一とは台湾が中国に併呑され、台湾人は惨めな奴隷となることで、
殆どの台湾人は反対である。独立派は不正常な国でも一応、民主制
度を保っているから、公民投票で国名変更すれば米国も反対できな
いと主張する。だが米国は中国の反対を予期して難色を示している。
●「制憲」か「修憲」か
ここで独立派が二つに分かれる。陳水扁の民進党グループは中華民
国の体制を維持しつつ憲法を修正する、つまり中華民国を台湾に変
更しても「中国」に変わりはない。李登輝は台湾独立を投票で決め
て新憲法を制定すると言う。
修憲は中華民国体制から抜け出せないし中国の圧力がかかる。制憲
は人民の独立意識が強ければ可能だが、統一派と修憲派の反対があ
り、長年の迫害を受けた台湾人の独立意識は不足している。
制憲派と修憲派の大きな欠点はどちらも中華民国の体制化で公民投
票を行うことだが、両派ともこれを「仕方のない現状」とみなして
いる。現状を変えるなら公民投票か、さもなければ革命であるが、
人民は革命を望んでいない。
●一方的な「和解共生」
次期総統の候補者の一人として注目されている謝長廷が先週アメリ
カを訪問して、地元の台湾人に彼の持論の「和解共生」を主張した。
この理論は李登輝の考えと「似て非なるもの」である。
謝、李の両派は、台湾人民の志向を大別すると統一、中間層、独立
の三つに分かれるという。中間層とはどちらでもない一般大衆を指
す。統独の論争が進むと意見が両極化して中間層が減少し、M型に
なるというのである。そこで統・独の両側が和解すれば中間層の大
衆は板ばさみにならず、社会が安定するというのである。
しかし、謝長廷の主張は台湾だけでなく、中国とも相互の闘争をや
めて「共生」すれば両国とも繁栄が得られる、と言うのだ。この主
張は一方的な理想論であって、中国人は鼻であしらう。謝長廷もそ
れを知っているから、「共生には自存という大前提がある」と但し書
きをつけている。そして自存を遂行するには「民進党内だけでなく、
国民党とも和解して相互間に運命共同体の概念を普遍させるべき」
と言う。この和解主張に賛成できないのは台湾人、中国人の両方だ
から彼の理想は「ミミズのたわごと」である。
中国に対する謝長廷の共生理想は「與虎謀皮(虎に皮をくれと相談
するようなもの)」で、国内では自存さえ困難なのに900基のミサイ
ルの照準を台湾に向けている中国が相談に乗るはずがない。
●民進党の堕落は「選挙オンリー」にある
謝長廷の自存理想を分析してみよう。台湾の人口分布をみると、85%
の台湾人に15%の中国人である。台湾に亡命して60数年、今では
殆どの「外省人」と名乗る中国人は台湾生まれである。60年経ち、
台湾に生まれても台湾に同化せず、中国人を名乗る15%が台湾の政
治の50%を牛耳っている、この事実こそが台湾の大問題であり、
85%の台湾人の無気力が少数独裁を許しているのだ。
謝長廷も陳水扁もこの数年来、中間路線、和解路線を主張して、そ
の度に選挙で負けてきた。彼らの中間路線とはM型の谷間の部分を
引き入れて選挙で勝つことしか考えていない。だが中間に居る人々
は和解が不可能であることを知っている。民進党の中間路線はすで
に二度の選挙に失敗している。三度目をやるのはバカな話だ。
少数独裁を許して民進党と国民党の二大政党制度で民主国家を作る
というのはウソで、実は降参である。多数派が有利であるべき選挙
で少数派に負けるのは多数の人間が中間路線を信用せず投票しない
からである。その事実が厳然と存在しているのに社長廷はいまでも
和解共生という、民衆はバカでない。民進党の政治家は「多数派の
台湾人が民進党に投票しないで国民党に票を入れるはずがない」と
思っている。民衆は「少数派の外省人に投票しないが、民進党が彼
らと和解するなら投票しない」と言う。
元を正せば民進党は外省人に反対し、独立を主張したから人民の支
持を得て今日の大政党となったのである。ところが民進党が政権を
握るとすぐに変質して選挙オンリー、権力保持に化けてしまった。
大衆は民進党を支持しないで、だから民進党は李登輝・台聯党を攻
撃する。でも民衆の関心は台湾の将来にあり、民進党が政権を取る
ことではない。この間違いを直さなければ民進党は支持できない。
●李登輝発言は民進党への宣戦布告
つまり、李登輝発言は民進党に対する批判と決別宣言だった。国民
党メディアはこれを歪曲報道し、民進党員は国民党と一緒に李登輝
バッシングをやったのである。李登輝は当初からこのような論争が
起ることを予想して、台湾系の自由時報でなく中国系の「壱週刊」
で爆弾宣言をしたのである。もちろん歪曲報道もあることを予期し
ていたと言われる。産経新聞の長谷川記者のインタビューで李登輝
はこれをハッキリ認めた。
【台北=長谷川周人】台湾の李登輝前総統(84)は産経新聞と会
見し、「(独立か統一かを問う)統独論争は意味がない」と述べた上
で、これまで連合を組んできた与党・民主進歩党と一線を画す考え
を初めて明らかにした。今後、自らが後ろ盾となってきた台湾団結
連盟(台連)を再編成し、中道勢力の結集による「民主台湾」の再
生を目指すという。
「攻めに転じるのろしを上げた?」
「そう、民進党への宣戦布告ともいえる。政権はレームダック(死
に体)化し、将来の総統候補までがそれにしがみつくばかりで、政
権交代から7年間、何もしなかったのだから。これまで(李氏が推
す)台湾団結連盟(台連)は民進党の付属と思われてきたが、これ
からは違いますよ。どんなに頑固といわれようと私は自分の考え方
を貫く。台湾再生のためにやらざるを得ないのだから」
「台聯党の今後は?」
「1月に就任した黄昆輝主席の下で生まれ変わる。2月中に綱領を
全面刷新し、3月は公募で党名も変える。直面する課題は雑兵の処
分だ。不正をやった者は除名にし、若い新鮮な血液と入れ替える。
目指す方向は中道左派。絡みに絡んだ政治の糸はぶった切り、政治
の混乱にあきれ果てた中間層を取り込む。個人や政党の思惑を捨て、
台湾の主体性を軸とする民主台湾を取り戻す」
李登輝は台聯党の進路を変更し、民進党と決別したのである。歴史
の曲がり角をまがり、新しい台湾に向けて進む始まりだったとも言
える。
『台湾の声』 http://www.emaga.com/info/3407.html
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
李登輝は大分お年なのに、まだまだ台湾のために働かねばならないようだ。
それだけ、みんながだらしないのだろう。
台湾はメディアのほとんどが、チャイナに支配された党がコントロールしている
ので、大衆はそれに振り回されているようだ。