チャイナのために働く日本人スパイ
潜水艦情報持ち出し、防衛省元技官を書類送検へ
防衛省技術研究本部の元技官(64)が在職中、海上自衛隊の潜水艦に関する技術情報の資料のコピーを不正に持ち出していた疑いが強まり、警視庁公安部は6日、元技官を窃盗容疑で書類送検する。
元技官は、知人の元貿易業者(55)の依頼でコピーを持ち出したことを認めている。この元貿易業者は、在日中国大使館の元副武官が来日した際、頻繁に接触していたことなどが確認されており、公安部は、元貿易業者を通じ、防衛関連の技術情報が中国側に渡った可能性があるとみて引き続き捜査を進める。
調べによると、元技官は旧防衛庁技術研究本部第1研究所(東京都目黒区)に勤務していた2000年3月末ごろ、潜水艦の船体に使う特殊鋼材「高張力鋼」に関する論文34ページ分を複写し、無断で持ち出した疑い。この論文は、特殊鋼材の耐弾強度などの研究を専門にしていた元技官が、高張力鋼の材質や溶接方法などについて執筆したもので、機密文書には指定されていないが、許可なく持ち出すことは禁じられている。
調べに対し、元技官は「20年来の知り合いの元貿易業者に頼まれてコピーを渡した」と供述し、飲食店で元貿易業者と酒を飲むうちに、潜水艦に関する資料の提供を求められたことや、資料の具体的な内容についてはメモで指示されたことなどを認めているという。
公安部によると、元貿易業者は、固形燃料の納品などで防衛庁に出入りしたのをきっかけに人脈を広げ、元技官とも知り合ったという。
公安部では、元貿易業者が03年ごろから、在日中国大使館の元副武官が来日した際、車で送迎していたほか、04年までの約10年間に約30回も中国に渡航した事実を確認している。このため、元貿易業者が、防衛庁関係者らと幅広く接触しながら、集めた情報や資料などを中国側に流していた疑いもあるとみている。